近藤崇晴裁判官に対する評価(私見)

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※ 評価に当たっては、民事、刑事、公法関係事件という3つのカテゴリーに分けつつ、①具体的妥当性を図っているかどうか、②判断理由を丁寧に説明しているかどうか、③法規の実質的な趣旨解釈をしているかなどを中心に評価する。

経歴だけを見れば、従来の職業裁判官の典型的なエリートに思えるが、最高裁裁判官に就任してからの判断は、弁護士出身の那須弘平裁判官とともに、常識的な判断をする裁判官であるように推察する。


1.民事事件の判断について

とくに民事裁判においては、被害者救済という観点から、不法行為に基づく損害賠償請求の時効の起算点をずらす判断は画期的である。また、ヤミ金からの損益相殺の抗弁についても、被害者救済の観点から、不法原因給付の趣旨を優先させており、事件における具体的妥当性を図る姿勢が見て取れる。



2.刑事事件の判断について

また、名倉防衛大教授が被告人となった満員電車での痴漢冤罪事件でも、無罪とする多数意見に同調し、補足意見では、最高裁判所が法律審(事実の有無ではなく法律の適用のみを審理の対象とする)という特徴に注意しつつ、上告理由の有無の判断につき、「疑わしきは被告人の利益に」という原則の転換につながらるような運用をすべきではないと断言している点は、高く評価すべきである。

さらに別の刑事事件でも、無罪推定の原則を理由に、控訴審での勾留要件を厳格にするべきという意見を述べており、刑事事件における冤罪回避の一般原則を重視する傾向があるように思われる。



3.公法関係事件の判断について

国籍法違憲判決においても、緩やかな憲法審査基準を採用し、国籍法の立法目的は合理的としつつも、目的達成の手段のために、準正(婚姻により嫡出子たる身分を取得した)という要件の有無により、国籍取得の可否を決することの合理的関連性がないとの判断をしており、手段審査において、実質的な判断をして、違憲に導いている。

この事件の争点である、国籍法の準正要件が違憲・無効の場合にそれ以外の要件を充足する者に対して、国籍を付与する判決は、立法府の裁量を不当に制限するのではないかという点につき、将来立法府において考えられるべき合理的関連性のある追加要件に言及したり、将来立法府により要件が付加される前とされた後の差異に言及して、丁寧に説明して、不当な制限にならないという結論を導いている点も高く評価すべきである。

また、むやみやたらに違憲判断をするのではなく、憲法上の権利を重視しつつも、合憲限定解釈により法規そのものの違憲を避けられないかを検討しており、憲法の番人としての役割を十分になっていると評価すべきだろう。



4.結論

以上の考察からすれば、民事においては最高裁判例がその後の法的運用に与える影響の大きさを気にしつつ、具体的妥当性を図るために、条文の趣旨解釈から丁寧な結論を導いており、最高裁判所裁判官として高い資質がある裁判官だと考える。

刑事事件においても、冤罪防止の観点から、「疑わしきは被告人の利益に」、「推定無罪」という軽視されがちな一般原則を再度見直すべきという姿勢が見て取れ、これらを重視する姿勢は、終審裁判所としての裁判官として、ふさわしい判断と考える。

また、公法関係事件においても、立法府の裁量を害しないかどうかという視点を持ちつつも、極端な司法消極主義の立場をとることなく、立法裁量を実質的に判断しようという試みが見て取れる。ときには合憲限定解釈を行う姿勢はバランスが取れた違憲判断を行っているといえる。

さらに、補足意見を示し、多数意見を丁寧に説明しようとする姿勢は、従来の極端な司法消極主義とは違う姿勢で、高く評価すべきである。

したがって、私は、近藤崇晴裁判官は最高裁判所裁判官として理想的な人物であり、国民審査において罷免すべき理由は見当たらないと考える。

なお、余談ではあるが、最高裁ホームページにある近藤裁判官の自己紹介の「趣味」の項目には、感銘を受けたアーティストを紹介しており、王貞治、イチローや中島みゆきなど一般人でも共感できる人物が挙がっている。

こういう紹介の仕方をする裁判官は珍しく、一般社会とのかかわり合い、国民の意識を重視している現れではないかと思う。

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