近藤崇晴裁判官が関与した判例

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近藤崇晴裁判官は、最高裁第三小法廷に属している。近藤裁判官は、長年裁判官として民事部を中心とした経歴を持っており、前職は、仙台高裁長官を務めている。


1.
最判平成21年4月28日(第三小法廷)

<事例>

公立小学校の教員が、女子数人を蹴るなどの悪ふざけをした2年生の男子を追い掛けて捕まえ、胸元をつかんで壁に押し当て大声で叱った行為が、国家賠償法上違法となるかが争われた。

<判断>

全員一致。裁判長裁判官として関与。

国賠法上の違法には当たらない。

<理由の要旨>

本件行為は、児童の身体に対する有形力の行使ではあるが、他人を蹴るという男子児童の一連の悪ふざけについて、これからはそのような悪ふざけをしないように男子児童を指導するために行われたものであり、悪ふざけの罰として肉体的苦痛を与えるために行われたものではないことが明らかである。

本件行為にやや穏当を欠くところがなかったとはいえないとしても、本件行為は、その目的、態様、継続時間等から判断して、教員が児童に対して行うことが許される教育的指導の範囲を逸脱するものではなく、学校教育法11条ただし書にいう体罰に該当するものではないというべきである。


2.
最判平成21年4月28日(第三小法廷)

<事例>

被害者を殺害した加害者が、被害者の相続人に対し、被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出したため、相続人がその事実を知ることができなかった場合において、上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権が民法724条後段の除斥期間により消滅するか否かが争われた事例

<判断>

全員一致。

(上記特段の事情がある場合には)民法160条の法意に照らし,同法724条後段の効果は生じない(不法行為に基づく損害賠償請求権は消滅しない)。

<理由>

民法160条の趣旨は,相続人が確定しないことにより権利者が時効中断の機会を逸し,時効完成の不利益を受けることを防ぐことにあると解され,相続人が確定する前に時効期間が経過した場合にも,相続人が確定した時から6か月を経過するまでの間は,時効は完成しない。

そして,相続人が被相続人の死亡の事実を知らない場合は,同法915条1項所定のいわゆる熟慮期間が経過しないから,相続人は確定しない。

被害者を殺害した加害者が,被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために相続人はその事実を知ることができず,相続人が確定しないまま除斥期間が経過した場合にも,相続人は一切の権利行使をすることが許されず,相続人が確定しないことの原因を作った加害者は損害賠償義務を免れるということは,著しく正義・公平の理念に反する。

このような場合に相続人を保護する必要があることは,前記の時効の場合と同様であり,その限度で民法724条後段の効果を制限することは,条理にもかなうというべきである。


3.
平成21年4月21日(第三小法廷)

<事例>

和歌山カレー毒物混入殺人事件において、有罪・死刑判断をした原審判断の是非が争われた。

<判断>

全員一致。裁判長裁判官として関与。

有罪・死刑という原審の判断を是認。

<理由>

被告人がその犯人であることは,①カレーに混入されたものと組成上の特徴を同じくする亜砒酸が,被告人の自宅等から発見されていること,②被告人の頭髪からも高濃度の砒素が検出されており,その付着状況から被告人が亜砒酸等を取り扱っていたと推認できること,③夏祭り当日,被告人のみがカレーの入った鍋に亜砒酸をひそかに混入する機会を有しており,その際,被告人が調理済みのカレーの入った鍋のふたを開けるなどの不審な挙動をしていたことも目撃されていることなどを総合することによって,合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に証明されていると認められる。

犯情等に照らせば,被告人の刑事責任は極めて重大であるというほかはないから,カレー毒物混入事件における殺意が未必的なものにとどまること,前科がないことなど,被告人のために酌むべき事情を最大限考慮しても,原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は,当裁判所もこれを是認せざるを得ない。


4.
最判平成21年4月14日(第三小法廷)

<事例>

①満員電車内における強制わいせつ被告事件について,被害者とされた者の供述の信用性のみを全面的に肯定して、有罪とすることができるか。

②事実誤認の主張がある場合に、法律審である最高裁はどのような審査をすべきか。 

<判断>

3対2で、原審・第一審を破棄し、無罪とする多数意見に同調。

近藤補足意見あり。

<理由(補足意見のみ記載)>

①本件公訴事実が証明されているかどうかは,Aの供述が信用できるかどうかにすべてが係っていると言うことができる。このような場合,一般的に,被害者とされる女性の供述内容が虚偽である,あるいは,勘違いや記憶違いによるものであるとしても,これが真実に反すると断定することは著しく困難なのであるから,「被害者」の供述内容が「詳細かつ具体的」,「迫真的」で「不自然・不合理な点がない」といった表面的な理由だけで,その信用性をたやすく肯定することには大きな危険が伴う。

②上告裁判所は,事後審査によって,「判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認がある」(刑訴法411条3号)かどうかを判断するのであるが...原判決の事実認定に合理的な疑いが残ると判断するのであれば,原判決には「事実の誤認」があることになり,それが「判決に影響を及ぼすべき重大な」ものであって,「原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるとき」は,原判決を破棄することができるのである。

事後審制であることを理由にあたかも立証責任を転換したかのごとき結論を採ることは許されないと信ずるものである。


5.
最決平成20年11月10日(第三小法廷)

<事例>

迷惑防止条例の「卑わいな言動」の意義,および,ズボンを着用した女性の臀部を撮影した行為が,被害者を著しくしゅう恥させ,被害者に不安を覚えさせるような「卑わいな言動」に当たるかが争われた。

<判断>

4対1で、有罪(卑わいな言動に当たる)とする多数意見に同調。

<理由>

卑わいな言動とは、社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作をいう。

本件撮影行為は,被害者がこれに気付いておらず,また,被害者の着用したズボンの上からされたものであったとしても,社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな動作であることは明らかであり,これを知ったときに被害者を著しくしゅう恥させ,被害者に不安を覚えさせるものといえるから,「卑わいな言動」に当たる。


6.
最判平成20年6月10日(第三小法廷)

<事例>

ヤミ金業者からお金を借りたことにより、損害を受けた不法行為の被害者が、損害賠償請求(民709条)をヤミ金業者に対してした場合に、ヤミ金業者は、貸付金と同額で損益相殺することはできるか(ヤミ金業者の主張は民法708条の不法原因給付に反しないか)が争われた。

<判断>

全員一致(田原裁判官の意見あり)。

ヤミ金業者の損益相殺の主張は民法708条に反し許されない。

<理由>

民法708条は,不法原因給付,すなわち,反倫理的行為に係る給付については不当利得返還請求を許さない旨を定め,これによって,反倫理的行為については,同条ただし書に定める場合を除き,法律上保護されないことを明らかにしたものである。

したがって,反倫理的行為に該当する不法行為の被害者が,これによって損害を被るとともに,当該反倫理的行為に係る給付を受けて利益を得た場合には,同利益については,加害者からの不当利得返還請求が許されないだけでなく,被害者からの不法行為に基づく損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として被害者の損害額から控除することも,民法708条の趣旨に反するものとして許されない。


7.
最判平成20年6月4日(大法廷)

<事例>

以下の2点が争点となった事例である。

①国籍法3条1項は,日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子につき,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した(準正のあった)場合に限り日本国籍の取得を認めているところ,このことが父母が法律上の婚姻をしているか否かで非嫡出子の日本国籍取得の可否に区別を生じさ,法の下の平等を定める憲法14条1項に違反するか

②「父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した場合」という要件以外のすべての要件を満たしている場合に、日本国籍を取得するか。

<判断>

10対5で、①につき憲法違反、②につき日本国籍を取得するとする多数意見に同調。

近藤補足意見あり。

<理由(補足意見のみ記載)>

②につき補足意見

父母両系血統主義を基調としつつも,日本国民との法律上の親子関係の存在に加え,我が国との密接な結び付きの指標となる一定の要件を設けて,これらを満たす場合に限り出生後における日本国籍の取得を認めることとするという立法目的自体には,合理的な根拠がある。

ただ,その目的を達成するために準正を要件とすることは,もはや立法目的との間に合理的関連性を見いだすことができないとしたのである。

本判決の後に,立法府が立法政策上の裁量権を行使して,憲法に適合する範囲内で国籍法を改正し,準正要件に代わる新たな要件を設けることはあり得るところである。

このような法改正が行われた場合には,その新たな要件を充足するかどうかにかかわらず非準正子である上告人らが日本国籍を取得しているものとされた本件と,その新たな要件の充足を要求される法改正後の非準正子との間に差異を生ずることになる。

しかし,準正要件を除外した国籍法3条1項のその余の要件のみによっても,同項及び同法の合憲的で合理的な解釈が可能であることは多数意見の説示するとおりであるから,準正要件に代わる新たな要件を設けるという立法裁量権が行使されたかどうかによってそのような差異を生ずることは,異とするに足りないというべきである。


8.
最判平成19年12月13日(第三小法廷)

<事例>

第1審裁判所で犯罪の証明がないとして無罪判決を受けた場合,被告人を控訴裁判所が勾留する為には,勾留の要件を定める刑訴法60条1項にいう「被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」の有無をどのように判断すべきが争点となった。

<判断>

全員一致。

刑訴法法60条1項にいう「被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」の有無の判断は,無罪判決の存在を十分に踏まえて慎重になされなければならず,嫌疑の程度としては,第1審段階におけるものよりも強いものが要求される。

近藤補足意見あり。

<理由(補足意見のみ掲載)>

第1審裁判所が被告人を無罪としたときは,いわば無罪の推定がより強まった状態になったのであるから,十分な重みをもってこれを尊重すべきであり,それにもかかわらず控訴裁判所が被告人を勾留するのは,社会通念に照らすならばかなり違和感のある事態だといわなければならない。

したがって,勾留の要件が満たされているかどうかの判断は,起訴前あるいは第1審で審理しているときの勾留におけるそれよりも更に厳格なものでなければならないと考える。

また,控訴審においては原則として被告人の出頭を要しないのであるから(刑訴法390条),控訴審の審理のために勾留の必要性があると認められるのは,第1審裁判所が審理を尽くしたとは認められない場合などの極めて例外的な場合にとどまるものというべきであろう。


9.最決平成19年11月14日(第三小法廷)

<事例>

廃棄物の処理を受託した者が、不法投棄罪に問われた場合に、委託した者が未必の故意しかない場合でも、不法投棄罪の共謀共同正犯の責任を負うかどうかが争点となった事例。

<判断>

全員一致。裁判長裁判官として関与。

未必の故意だけでも共謀共同正犯は成立する。

<理由>

(受託者)Aにおいて,被告会社が上記ドラム缶の処理に苦慮していることを聞知し,その処理を請け負った上,仲介料を取って他の業者に丸投げすることにより利益を得ようと考え,その処理を請け負う旨被告会社に対し執ように申し入れたところ,被告人5名は,Aや実際に処理に当たる者らが,同ドラム缶を不法投棄することを確定的に認識していたわけではないものの,不法投棄に及ぶ可能性を強く認識しながら,それでもやむを得ないと考えてAに処理を委託したというのである。

そうすると,被告人5名は,その後Aを介して共犯者により行われた同ドラム缶の不法投棄について,未必の故意による共謀共同正犯の責任を負うというべきである。


10.
最判平成19年9月18日(第三小法廷)

<事例>

広島市暴走族追放条例に違反して起訴された被告人が、同条例の文言が広範であり、憲法21条1項、31条に違反すると主張したため、その当否が問題となった事例。

<判断>

3対2で、合憲限定解釈により、憲法21条1項、憲法31条には違反しないとする多数意見に同調。

<理由>

本条例19条が処罰の対象としているのは,同17条の市長の中止・退去命令に違反する行為に限られる。

本条例が規制の対象としている「暴走族」は,本条例2条7号の定義にもかかわらず,暴走行為を目的として結成された集団である本来的な意味における暴走族の外には,服装,旗,言動などにおいてこのような暴走族に類似し社会通念上これと同視することができる集団に限られる。

したがって,市長において本条例による中止・退去命令を発し得る対象も,被告人に適用されている「集会」との関係では,本来的な意味における暴走族及び上記のようなその類似集団による集会が,本条例16条1項1号,17条所定の場所及び態様で行われている場合に限定されると解される。

限定的に解釈すれば,本条例16条1項1号,17条,19条の規定による規制は,広島市内の公共の場所における暴走族による集会等が公衆の平穏を害してきたこと,規制に係る集会であっても,これを行うことを直ちに犯罪として処罰するのではなく,市長による中止命令等の対象とするにとどめ,この命令に違反した場合に初めて処罰すべきものとするという事後的かつ段階的規制によっていること等にかんがみると,その弊害を防止しようとする規制目的の正当性,弊害防止手段としての合理性,この規制により得られる利益と失われる利益との均衡の観点に照らし,いまだ憲法21条1項,31条に違反するとまではいえない。 

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