アメリカ政治

04/23/2010

日本がアメリカに言うべきこと

この記事を読むと、親米的立場であることを自認する私ですらアメリカの高慢さと時代錯誤が露骨に現れていると感じる。

アメリカに言うべきことは、ただ1つ。

Watch Yourself!(その態度は何だ。気をつけろ)ということである。

日本が日米関係を悪化させているという考え方は、非常に高慢であり、アメリカは自分の立場をわきまえていないと感じる。

仮に普天間問題が日米関係悪化の原因だとするならば、私はアメリカ政府、オバマ政権自身にも日米関係悪化の原因があると考える。

そもそも、アメリカは我が国の統治権たる主権が及ぶ領土の一部を日米同盟という条約によって、「借りている」のである。アメリカ軍の基地内で、アメリカの統治権が及ぶのは日本がそれを条約に基づき、認めてあげているからにすぎない。

条約というのは、国家間の書面化された約束である。これは憲法に劣後する。もちろん、条約を結ぶにあたって、我が国にも当然メリットはあるのであって、日米同盟締結を否定するつもりはない。

しかし、記事中にある「鳩山首相に対する信頼感はすっかりうせ、米政府高官はひそかに日本を見放す姿勢をますます強めている」、「オバマ政権の中には両国の関係がすぐに改善されると信じる者はほとんどいない。少なくとも鳩山首相が政権の座に就いている間は、あり得ない」という発言は看過できないアメリカの高慢さが現れている。

我が国が日米安保条約締結以来、憲法との整合性に苦心し、米兵による種々の非行に対し、牙を抜かれたように、寛容に取り扱ってきたことに対し、こうしたアメリカの発言等々は非礼にもほどがあるのではないだろうか。

まさに、中国の三国志演技の中に出てくる呉の宰相、張紹の気分である。

張紹は元々、大国魏に対し、親和的であり、映画「レッドクリフ」でも描かれていた赤壁の戦いでは、魏と戦うことに消極的だった人物である。その張紹も、魏が君主である孫権を呉王というくらいに封じようとしたときには、魏の使者に対し、激怒したという話は、横山光輝等々の三国志を読んだ歴史好きなら記憶にあるところであろう。

我が国は、アメリカの第51州でもなければ、アメリカの傀儡政権による独裁国家でもない。最高独立性としての「主権」を有し、最高決定権としての「主権」が国民に認められた立憲民主主義国家である。

にもかかわらず、アメリカの高慢で主権を侵害するかのような種々の発言に対し、怒りを示すどころか、日本のマスコミはいつまでアメリカの御意向を覗うような政治を認容し、主体的な民主主義国家に反する報道を続けるのであろうか。

私はアメリカが大好きであるし、アメリカの一部がこうした高慢な態度を示していることは非常に残念である。

感覚的な話で言えば(この部分は根拠を示すことができないアメリカ生活経験者としての感覚的な話なので独断と偏見に満ちていることをハッキリ断っておくが)、アメリカの7~8割は日本になんか関心が無い。残りの2、3割のうち、1割がこうした高慢な態度を見せる似非親日派で、後の1、2割が日本文化等々に関心のある「変わり者」である。

最後のグル―プに属する人々を「変わり者」と称したのは、何もオタクだとかそういう意味だけではない。アメリカのマジョリティーと比較すると、海外に対する関心があり、教養がある層でもあるためである。

世界もアメリカ国民の多くも、オバマ政権の誕生に色々期待したのであろう。私は当初からオバマ大統領のリーダーシップには懐疑的だったし、口だけの政治家の典型だと考え、全く評価してこなかった。

結果、オバマ政権になって良いことは何かあったであろうか。

アフガン、イラク戦争においては、毎日多くの兵士が死亡し続ける一方で、何ら有効な解決策、打開策は見つかっていない。

核不拡散も何ら実効性のある成果は得られていない。金融問題では、ゴールドマンサックス社に対する新たな犯罪嫌疑がアメリカおよびイギリスで生じており、第二の金融危機の懸念も出ている。

さらに、アメリカの国民皆保険制度も、実効性や賛否が渦巻いており、ブッシュ政権が保守化して、国家を二分したのに対する「統合」的な姿勢が期待されたにもかかわらず、極端な社会的リベラル派の色彩が強いオバマ政権は国家の二分化をさらに深めている。

アメリカは、こうした自分たちの姿を客観的に省みて、自分たちの高慢さに反省すべき時が来ているのではないだろうか。

金融危機以降、アメリカに対する超大国としての信用は世界的に見ても地に落ちている。

アメリカはジャパンバッシングやジャパンパッシング(Passing)とか言って高慢な態度を示す前に、自分自身を見つめなおさなければ、逆にU.S. パッシングが広がると私は思う。

現に、他国を見ても、イギリスの選挙でも、UK自由民主党(アメリカとは一線を画しEU色を強める第三政党のリベラル色の強い政党)のニック・クレッグ党首の人気が高まっている一方、親米路線の保守党、労働党は苦戦している。

日本のメディアや一部の新保守主義者(似非愛国高揚主義者)は飼いならすことができても、私のような中庸派、穏健派はアメリカの種々の高慢な態度に嫌気がさしている。

穏健派が嫌悪感を感じ始めている以上、元々反米的な人々が過激な方向に走らない保証はない。そのことに早く気付くべきであろう。

今まさに「アメリカがなぜ嫌われるのか」をアメリカ人自身が考える時が来ているのではないだろうか。

そして、我々日本人も、そんなアメリカがいつまでも日本を中国や北朝鮮から守ってくれると考える能天気な楽観主義もそろそろ捨てるべきだろう。

自衛権に関して言えば、憲法の番人である最高裁は、砂川事件で明言しているように、個別的自衛権は放棄していないのであり、日米安保条約(集団的自衛権等々)について、統治行為で、司法審査になじまないとしている。

私は前にも何度か記事やツイッターでつぶやいているが、これらの法的状況を前提にして、憲法改正を経ることなく、自衛隊のみで、自衛としての「実力」を機能させうる制度構築をすべきと考えるし、必要があれば、アメリカ以外の国々を含めた(イギリス、フランス、カナダ等)との多国的安全保障条約など新たな安全保障体制を構築すべき等の議論がなされるべきだと感じている。

しかし、メディアではそういった議論はなく、安全保障の問題は、日米同盟に固執した現状維持派と改憲論者の対立議論で、面白おかしく終わってしまっているのはどうも複眼的な考察が乏しいと感じてならない。

---

以前にも紹介した以下の本は洋書で英語ではありますが、比較的平易に書かれており、アメリカでベストセラーにもなりました。価値観の多様性から見えるアメリカの歴史、アメリカの強さを知る上では、非常に良い本です。学生が英語を学ぶ際の副読本の1つとして、アメリカについても学ぶためには非常に良くできている本です。アメリカのこうした良さが最近は失われつつあるのではないかという懸念を感じます。

記事中に出てきた横山光輝氏の作品は以下。

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02/05/2010

トヨタのリコール問題はジャパンバッシングなんかではない(製造物責任者の問題)

マスコミなどは飽きもせずに連日小沢問題や朝青龍問題を下らない調子で取り上げているが、これらの問題については既に記事にしたので今日は別の話題を取り上げようと思う(なお、私のブログでもたびたび紹介しているKyoさんという管理人の方の「永田町異聞」で、起訴状一本主義の観点からも興味深い記事を取り上げられていたので、興味のある方は是非読んでほしい)。

もっと日本にとって、さらには世界の消費者にとって、重大な問題。

そう。アメリカにおけるトヨタ自動車のリコール問題である。

多くのマスメディアはこの問題について、アメリカのジャパンバッシングではないかというような論調になろうとしているし、既にそうなっている感じがする。

しかし、トヨタの安全性に対する不備を追求せずして、この問題をジャパンバッシングと捉え済まそうするのは大きな間違いだと私は思う。最近のメディアのズレた報道を見ていると、「トヨタはメディアにとっても良い広告主なだけに、問題をする変えようとしているのでは?」と邪推すらしてしまいたくなる。

確かに、トヨタの安全性の問題が、GMをはじめとするビッグ3の回復をもくろむ絶好の機会になるという潜在性があるのは事実であろう。

しかしながら、去年の段階でアメリカ政府による指摘を受けていたにもかかわらず、トヨタが十分迅速に対応してこなかったのも事実である。

Japan Business Pressは以下のように報じている。

NHTSA(国家道路交通安全局)によって公式に危険性が指摘され、フロアマットの位置ずれによるペダル引っかかり問題が顕在化したのが2009年9月29日。これに対してトヨタ(米国法人)はユーザーへ手紙などで問題点を伝えたものの、NHTSAに促される形でリコールとして告知したのは11月2日になってからだった。「製品(クルマ)そのものの欠陥ではない」というスタンスを取り続けたのは分かるけれども。

アメリカ政府やアメリカメディアがトヨタの対応を強く批判している背景には、トヨタがアメリカで事業展開をする会社としての責任を果たしていないという不信感があるからである。

これをアメリカが自国の自動車産業保護のためにジャパンバッシングの格好のネタにしているなどという論調は、企業の社会的責任を本来は追及すべき立場にあるマスメディアの職責放棄といっても過言ではないだろう。

そもそも、アメリカにおいては、自動車の安全性に対する認識が日本以上に厳しいということをまず理解しておく必要がある。

自動車の安全性の問題といえば、弁護士で、最近では大統領選の無所属候補として二大政党制の問題点を指摘しているラルフ・ネイダー(Ralph Nader)氏の功績に言及しなければならない。

ネイダー氏は、1965年に自動車産業、特にGMを相手に、訴訟や「Unsafe at Any Speed(どのようなスピードをだしても車は危険である)」という本で、 自動車の安全性に欠陥があることを訴えた。

ネイダー氏の根本にある考えは、自動車メーカーが消費者に対し、通常有するべき安全性が確保しなければならず、それを欠いている場合は欠陥に当たるというものである。

この考え方は、現在の製造物責任の基礎となっており、わが国でも製造物責任法が、当該製造物が有すべき安全性を欠いていることを「欠陥」と定義して、無過失責任を製造業者等に課していることからも、その考えが反映されているといえよう。

当時、GMなどの自動車産業がネイダー氏の家などを盗聴するなどして、嫌がらせを続けたにもかかわらず、それ屈することなく、訴訟で、3000万円近い賠償金を得て、それを消費者擁護活動に費やしてきた。

いわば、ネイダー氏はアメリカの消費者擁護のパイオニア的存在の弁護士であり、ネイダー氏が設立した、アメリカのNGOで、監視機構であるPublic Citizenという団体もアメリカの消費者保護に重大な役割を果たしている。

そのラルフ・ネイダー氏は2月4日付Business Week誌のインタビューに対し、「トヨタは長らく不具合についても急ブレーキによるもので、車の安全性を欠いたものではないと説明し、へまを犯した。対応が遅いし、対応が不十分である。これは不適切な隠ぺいである」と強く批判している。

同時にネイダー氏は、国家道路交通安全局(NHTSA)の対応について、「トヨタはへまを犯したが、国家道路交通安全局はトヨタがへまを犯すことを許し、安全性の欠如という恐ろしい問題からアメリカ市民を守ろうとはしてこなかった」と問題があるとの認識を示している。

私は、日本のメディアもそれに乗せられた人々も、この問題をアメリカの自動車産業を守るための単純なジャパンバッシングと捉え、真摯に向き合おうとしていないように思えてならない。

ネイダー氏のように、アメリカの自動車産業とは全くの利権がない、むしろ、アメリカ自動車産業の敵として、純粋にアメリカの消費者擁護活動に取り組んできた人がこの問題について、トヨタ自動車の対応をこれだけ批判するのは、なぜだろうか。

この問題の本質が、貿易摩擦などの下らない問題ではなく、消費者の生命、身体を犠牲にし、車が通常有すべき安全性を欠いたことに対し迅速かつ十分な対応を取ってきていないトヨタ自動車の企業責任にあるからこそ、アメリカの消費者擁護の重鎮が痛烈に批判するのではないだろうか。

ネイダー氏の批判に対し、無知な方は「アメリカの弁護士は訴訟が好きだから批判しているんだ。消費者擁護なんていうなら、尚更怪しい」などと反論するかもしれない。

しかし、それはネイダー氏の活動と功績を知らない無知からくる故の論拠の無い空虚な反論といっても過言ではないだろう。

なぜなら、ネイダー氏は別のインタビューで、「訴訟は解決になるか?」という質問に対し、「訴訟をすることになれば、問題解決が非常に遅くなってしまう。訴訟をするというのは重要かもしれないが、時間がかかり過ぎてしまう。そんなことをすれば、トヨタは回復できない損失を抱え、GMの売り上げが回復することになるだけである」と答えていることから明らかなように、ネイダー氏の視点は、純粋なアメリカの消費者擁護にあるためである。

日本の自動車メーカーはもちろん、メディア、そして日本の技術力を自負する我々、日本国民も、今回の問題について、トヨタ自動車が企業としての責任を果たし、消費者のために十分な対応をしているか監視する必要があるだろう。

この問題をアメリカのジャパンバッシングだと捉えるだけで、本国である我が国が自浄作用を発揮できないようであれば、日本の技術力神話に対し、世界からの不信が突きつけられることになるのではないだろうか。

ネイダー氏の著書で翻訳されたものはほとんどありません。また、翻訳された本もあるのですが、翻訳が不自然で読みにくさが残ります。

この本は英語であり、かつ、なかなか難解な言い回しが多いですが、英語の自信がある方は是非、ネイダー氏の考え方を知る上でとても良い本ですから読んでみることをお勧めします。

そういえば今日は日弁連の会長選挙があった日ですね。激戦のようですがどうなったのでしょうか。法曹人口の削減を訴える宇都宮弁護士が特に地方でなかなか善戦しているようですが、就職ができないからとか、仕事が減ってるからという理由での、法曹人口を減らすという主張は、日弁連が既得権益の塊なんていう世間の誤解を招くのではないかと思います。そういう意味では、日弁連の会長は現状継承路線(年間2000人程度で推移)の山本弁護士の方が法曹界への不信も拡大しないように思いますが、どうなることやら。

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11/26/2009

アメリカ合衆国大統領に対する歪められた歴史的評価

11月13日にオバマ大統領が来日したことで、最近は日米関係などを論じたニュースが飛び交った。

また、11月21日にはオバマ大統領の最新の支持率が過半数以下になったと多くのニュースが取り上げていた(私としては、そもそもオバマ大統領には批判的な意見を持っているし、自国の政治家ではないからどうでも良いと思うのだが、日本では、自国のリーダーのようにすべてのテレビ番組で取り上げられていた気がする)。

そこで、今日は、日本の教科書や歴史の授業からは学ぶことがないアメリカ合衆国大統領の姿を紹介してみようと思う。


1.アメリカで人気の大統領は?

アメリカでもっとも人気のある大統領はご存じだろうか。

USNEWSによると、ギャラップ社がアメリカ国民を対象に今年2月に実施した調査では、

第1位がロナルド・レーガン第40代大統領、

第2位がJ・F・ケネディー第35代大統領、

第3位がエイブラハム・リンカーン第16代大統領、

第4位がフランクリン・ルーズベルト第32代大統領、

第5位がジョージ・ワシントン初代大統領

だったという。

確かに、レーガンは強いアメリカの時代を象徴する大統領であるし、フランクリン・ルーズベルトも大恐慌からアメリカの経済を復活させた強いリーダーシップのある大統領だったので、なるほど上位に入るのも不思議ではない。

A・リンカーンとG・ワシントンは歴史上きわめて大きな役割を果たした人物なので、これも納得である。

しかし、私はケネディーがなぜここまで人気なのかがよく理解できない。なぜならば、オバマ現大統領もよくメディアなどに例えられるケネディー大統領であるが、とくに実績という実績が私には思い当たらないためである(両方とも目立った実績がなく、初のアイルランド系移民かつカトリックの大統領ということと、初の黒人大統領という「お初」ものという実績くらいだと私は評価している)。

他方で、アメリカ国内はもちろん、日本でも陰謀説などの陰に隠れ、その実際の実績の割には、あまり評価されていない大統領がいる。

その人物は、故・リンドン・B・ジョンソン(以下、「LBJ」)第36代アメリカ合衆国大統領である。


2.LBJが人気のない理由

LBJは、アメリカでも日本でも過小評価されている。

その第一の原因はベトナム政策の失敗にある。とりわけ、日本の評論家がアメリカ大統領を評価する場合は、その比重が過度に外交政策に置かれることが多い。日本で、LBJに対する評価が低いのはこれに起因している。

また、第二の理由として、日本に限らずアメリカでもいえることだが、LBJのアメリカ国内の実績が、J・F・ケネディー大統領の過大評価により、反射的に過小評価に至っていることも挙げられる。

しかし、アメリカの国内政治の歴史を客観的に見れば、LBJの実績が与えたアメリカへの影響の大きさは、ケネディーのそれとは比較にならない。

そこで、以下、アメリカ大統領として私が最も評価しているLBJの本当の姿を紹介する。


3.LBJの本当の姿 ― 若かりしき頃のジョンソン

アメリカの人種差別撤廃の転換点となったものとして、1964年の公民権法が挙げられる。

この公民権法が1964年に成立したのは、LBJによる功績が大きい。

この点、オバマ大統領との予備選挙中に、ヒラリー氏が同様の発言をしてオバマ支持者の反発を買ったのは記憶に新しい。しかし、ヒラリー氏の歴史認識が本来的には正しく、批判していたオバマ支持者は歴史に無知なだけであった。

歴史の話をする上で、「仮に」というのは、ありえないことで、こんなことを言うこと自体間違っているといわれるが、LBJの対議会運営の手法がなければ、1964年の公民権法は成立していなかったし、アメリカの人種差別の撤廃の動きは遅れたと私は思う。

なぜならば、LBJが人種差別撤廃に消極的な南部を基盤とする民主党の政治家(テキサス州出身)であったからこそ、人種差別撤廃に反対する議員への対応方法も十分に熟知しており、その知識と経験がLBJの巧みな対議会戦術を支えていたためである。

もっとも、アメリカでは、JFKがキング牧師の釈放に関与したことから、JFKが人種差別撤廃への道筋をつけたとの理解があり、LBJは当初から人種差別撤廃には積極的ではなかったという評価をしている人も多い。

しかし、繰り返しになるが、後者のLBJの理解の部分は大きな誤解である。

その理由は、LBJの学生時代の活動にまで遡る。

LBJは公立学校に通っていた。高校時代に生徒会の会長に選出されているが、当時から社会的不正義に対してかなりの反発をもっており、この頃に人種差別等の不正義に対するLBJの基本的姿勢が構築されたという記録が残っている。

また、大学での政治活動として、社会的不正義(とりわけ、貧富の格差や人種問題)について、熱心に大学新聞の記事を数多く書いている

さらに、卒業後は貧困層であるメキシコ系の子供が通う学校で教職を取っており、この時期に、貧困により教育を受ける機会が無いという人々の存在を知り、生涯をかけて改善したいという気持ちを述べている

しかし、多くのアメリカ人も、こうしたLBJの若いころからの活動の事実は十分に考慮せず、前述のように、南部出身という事実だけを持って彼を評価する。

LBJの人種問題解決への尽力は、どうしてもアメリカ社会では、考慮すべき事実を考慮していない不当な評価を受けていると言っても過言ではない。

予備選挙中、ヒラリー氏も指摘していたが、LBJが大統領としてリーダシップを発揮したからこそ、キング牧師の想いを1964年公民権法という形で、法案化できたという側面があるのは否定できない事実である。

そうであるにもかかわわず、黒人層を中心にこの事実の側面は受け入れたがらない。

その理由は、ある意味当然のことで、黒人の指導者にしてみれば、自分たちの権利が差別主義の残る南部の典型的な白人の政治家から与えられたという印象を排除したいという願望が根底にあるためと考えられる。


4.LBJの本当の姿 ― 在任中の実績

LBJは、サーグッド・マーシャル判事をアメリカ連邦最高裁の判事として任命し、黒人初の最高裁判事の誕生を実現させている。

この人選の際に、LBJは、「サーグッドという黒人の子供が今年は増えるぞ。黒人の親はこれを記念してサーグットと子供を名づけるだろう」と自慢げに語ったと言われており、黒人の公民権拡大には特に個人的な思い入れが強かったことが窺われる発言である。

さらに、LBJが在任中に提唱した「偉大な社会計画(Great Social Plan)」は、現在のアメリカ政治においてもリベラル派の基本理念として根付いている。

例えば、ヒラリー氏が提唱し、オバマ大統領が導入としている国民皆保険制度の根底にある理念は、まさに「偉大な社会計画」の理念そのものである。

つまり、実際には、LBJは、積極的に、格差是正を提唱したリベラル本流の政策(フランクリン・ルーズベルト大統領のニューディール政策の継承として)を実行してきたといえる。

その根拠として、まず、LBJが上記計画の一環として、「貧困との闘い(War on Poverty)」を提唱し、アメリカの貧困層に対する医療制度の拡充や教育機会の均等が実現したことが挙げられる。

さらに、雇用機会均等法を導入したのもLBJである。

以上のような事実を総合すれば、LBJは、階層による成功の固定化を打破し、アメリカン・ドリームといわれる概念の基礎となる『機会の均等』を実現した大統領と称すべき人物である。

つまり、LBJの国内政策なくして、1970年代以降のアメリカの景気拡大と繁栄の基礎はなかったと言っても過言ではない(もっとも、1970年代は国内需要の拡大により輸入が増加し、経常赤字も増加したことから、反日製品運動に結びついた)。

そして、LBJが残した日記や手紙などを検証すると、LBJの実績のほとんどが、実際には、政治的駆け引きにより行うのではなく、彼の青年期に構築された「社会的不正義」に対する反発心に起因しているということが良く解る。


5.過大評価されるJ・F・ケネディー

他方で、JFKの政治手腕は、キューバ危機の回避という政治的なイベントを理由として、異常なほどに美化されている。

「そもそも、JFKの実績が何か?」と問われると私には何も思い浮かばない。

ビッグス湾事件(キューバ危機回避ばかり注目されており、そもそもの原因であるこの事件が取り上げられない傾向にある)では、明らかに無謀な作戦を実行し、完全に失敗している。

これは、集団極化という心理学的事例として紹介されるほど悪名の高い実績である。

さらに、JFKは、ベルリン危機とキューバ危機という2つの危機に在任中、直面している。

これらを「乗り切った」ということばかりが、評価されているが、そもそもこの危機を作り出したのは、JFKとフルシチョフの対話の欠乏と外交手腕の欠如にあるといえるのではなかろうか。

例えば、ベルリン危機により、ベルリンの壁が建設されたが、この際にJFKが単にソ連に対し強行的な姿勢を見せるだけでなく、直接対話のラインを残すなどより巧みな外交戦術をしていれば、1961年から1989年まで壁で分断されることもなかったのかもしれない。

歴史ではタブーの「If」の問題となってしまうが、この問題に対するJFKの姿勢が必ずしも評価するに値するとは言えないのである。

また、キューバ危機も一触触発の事態に至ったのは、ケネディーの外交手腕の失敗が原因である。

当時の状況からすれば、キューバとソ連が軍事的関係を強めるのは確実な状況であったにもかかわらず、ビッグス湾事件をケネディーは引き起こした。この事件を経験したカストロにとっては、ソ連の核の笠に入ろうとするのは当然の成り行きである。

つまり、アイゼンハワー時代から、冷え込んでた関係を一層冷え込ませたのがケネディーによるビッグス湾事件の実行とその後の暗殺計画だったのではなかろうか。

多くの記録をみると、カストロは1959年の革命実行時点においては、共産主義者ではなかったとされている。ケネディーによる外交上の失敗がカストロをさらに孤立化させ、ソ連にミサイル建設をさせることになったと考えるのが自然であろう。

しかしながら、そうしたJFKの負の側面はほとんど知られていない。メディアなどで特集をされるときも、暗殺された悲劇の大統領として、取り上げられるだけである。

では、なぜ、ケネディーが過大評価されるのか。

ケネディーが好かれるのは、彼がアメリカで最初のアイルランド系の移民の大統領であるというたった一つの理由に支えられていると考える

つまり、人種のるつぼであるアメリカ社会において、人種撤廃も、現代リベラルの価値も、南部出身の旧来的政治家に見えるリンドン・B・ジョンソンではなく、初の移民大統領による新しいリーダーにより作られたと語ることの方が、アメリカの歴史を美化できるというわけである。


6.終わりに

確かに、LBJのベトナム戦争開始に代表される外交政策は、はっきり言って失敗であった。

しかし、その失敗の原因も、LBJの性格である社会的不正義への抵抗とそれへの執着にあると考えられる。

例えば、ケネディーの在任中、副大統領であったLBJは、当時のベトナムに大統領の命令で、派遣され、その状況を報告する任務を任された。その報告書をみると、LBJが査察を通じ、ベトナムにおける不正義を何とかしなければいけないと考えていた記録が残っている。

LBJは、黒人屋貧困層の地位解放という国内問題と同様に、ベトナム国民を共産主義からの解放することが社会正義であると捉えてしまったのである。

すなわち、LBJは、若いころから培ってきた「強者により弱者を救済して社会正義を実現しなければならない」という信念の下で、「強者であるアメリカは、共産主義支配される弱者のベトナム国民を、共産主義による不正義から解放しなければならない」と強く信じてしまったのである。

そして、この信念に従った決断が、ベトナム戦争の泥沼化への第一歩になってしまった。

残念ながら、このベトナム戦争開始の決断という失敗が、リンドン・B・大統領の評価の全てとなってしまい、彼の実現した国内政策への尽力は正当な評価がなされていない。

もっとも、以上のLBJに関する私の考えは、きちんとした根拠がある。

それは、『Lyndon Johnson and the American Dream』という題で、ピューリッツアー賞をとったことのあるDoris Kearns Goodwin氏により書かれた本が私の上記考察のベースになっている。

そもそも私はジョンソン大統領にはあまり興味がなかった。しかし、この本を読んで、教科書だけで伝えられる歴史とは違う側面があることを痛感した。

この本は、ジョンソン大統領の私生活を含めて彼の人物像を細かく書かれており、ジョンソンの人間性が豊かに描かれている。

そして、ジョンソンのすべてに賛同するのではなく、ベトナム戦争などに至った経緯について、厳しい視点を織り交ぜながらも、国内政策の実績と正当に評価して、ジョンソン大統領の良い面と悪い面が公平に評価されている。

アメリカや日本では、外交政策の失敗という面ばかりだけが強調され、低い評価となっているが、この本を読めば、そうした評価は断片的なものに過ぎず、リンドン・B・ジョンソン大統領の歴史的実績に対する評価はもっと公平であるべきと感じるであろう。

本書は洋書であるが、英語に苦労してでも読む価値がある本の1つといえる。

最後に、一言。

私には、オバマフィーバーによって誕生したオバマ大統領をみると、ケネディー大統領への①過剰な評価及び②外交経験の未熟さという2点において重なって見える。

本当のオバマ像を知った時、もしかすると、我々は、評価されるべき人物は別にいることに初めて気がつくのかもしれない。

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11/06/2009

アメリカで気候法案が成立に向け前進(鳩山イニシアティブに追い風か)

日本でも一部のメディアや識者から批判の強い鳩山イニシアティブだが、アメリカでは、温室効果ガス削減に向けた取り組みが連邦議会にて具体化し始めた。

AP通信の報道によると、議会上院において、民主党が提案している気候法案(Climate Bill)の成立に向けた動きが活発化している。

上院の環境・公共事業委員会は委員長であるバーバラ・ボクサー議員(民主党)が「未だ法案がアメリカ経済に与える打撃について検証されていない」という共和党の抵抗を考慮し、気候法案の委員会採決を先延ばしにしてきたが、上院民主党が早期採決を求めて動議を提出したことをうけ、共和党議員が欠席する中、11対1で委員会採決が行われた。

これにより、アメリカ史上初めて温室効果ガスの削減目標を定めた法案が成立に向け第一歩を歩み出した。

.今回の法案は2004年の大統領選の民主党候補でもあったマサチューセッツ州選出のジョン・ケリー議員らにより、9月下旬に提案されたもので、ケリー上院議員は「共和党のボイコットにもかかわらず、この法案が成立に向け一歩進んだことを嬉しく思う」とのコメントを発表している。

ただ、法案を問題なく成立させるには、100議席中60人の賛成が必要となる。なぜ、過半数以上の60人が必要かと言うと、アメリカ上院にはフィリバスターと言う制度があるためである。

このフィリバスター(filibuster)というのは、法案の本会議における議決をする前に、上院議員が一人で演説する限り、採決はできないという合衆国憲法により定められた制度。

つまり、たった一人の意見で、法案の採決を妨害できる。上院というのは、各州から2人ずつ選出され、各州を代表する議員により構成され、元々の性格は元老院のようなものであるため、非常に強い権限がある。

このような上院議員の性格上、フィリバスターにより、その議員の体力が尽きるまで、多数派の横暴を防止しようという多数決民主主義への歯止めとして用意された立憲民主主義の性格が強い制度である。

しかし、たった一人によって、議会が機能不全に陥ることもしばしばあった。

そこで、現在では憲法が修正され、60人以上の賛成があれば、フィリバスターを止めさせることができる。

そこで、現在でも60人の賛同を得られる法案でなければ、成立が困難だといわれているのである。

今回委員会採決では、民主党議員の1人が採決に反対した。

反対したのは、モンタナ州選出のマックス・バウカス(Max Baucus)議員で、同氏は2020年までに温室効果ガスを20%削減するという現在の法案は法案可決に必要な60票を獲得するのが難しいとし、17%に下げるべきと主張している。

もっとも、同議員も「他の国が20%近い目標を採用する場合は、20%の削減目標にすべき」、「私は上院で可決できる法案を目指しているにすぎない」とも言っており、同議員が抵抗勢力として、法案化阻止に向けた民主党の内部対立を引き起こす意図はないようである。

今回の法案について、ペンシルバニア州選出の民主党のアーレン・スペクター(Arlen Specter)上院議員は、「他の先進国に対して、同じような削減目標を採用するように促すシグナルになる」とも語っているように、鳩山首相が2020年までに25%削減という目標を掲げたことに対する追い風になることは間違いないだろう。

いわば、鳩山イニシアティブがアメリカ国内の民主党リベラル派の追い風になり、そして、今回の上院での法案化の進捗具合が、今度は逆に日本の国会における法案化の追い風になるという関係にあると言えるのではないだろうか。

したがって、今後、鳩山イニシアティブに対する批評をする場合、アメリカ議会の動きも考慮した世界の流れを注意深く見なければ、「井の中の蛙」として、遅れた発想というレッテルを貼られてしまうかもしれない。

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11/04/2009

前哨戦の知事選では共和党がすべて勝利しオバマ大統領に暗雲。日米外交に影響も。

おかげさまで、ココログに移転して以降の累計訪問者数が9万人を超えました。

今後も、できるかぎり、既存のメディアとは違った独自の視点を紹介できればと思います。

さて、昨日のツイッターでつぶやいたのですが、アメリカでは今後のアメリカ政治を占う上で、重要な3つの選挙が行われ(選挙自体は3つ以上行われたのですが注目されたのが3つと言う意味です)、その結果がでました。

なぜ、アメリカ政治に重要かというと、アメリカでは来年、連邦議会下院の改選、いわゆる、中間選挙が行われ、今回の3つの選挙区は、その前哨戦として注目を集めていたわけです。

まず、バージニア州の知事選。

同州は伝統的に民主党優位の地域ですが、今回は事前の世論調査でも、共和党候補が11ポイント差を付けていました。結果は58%を共和党のボブ・マグドーネル(Bob McDonnell)候補が獲得し、41%の民主党候補を破りました

次に、ニュージャージ州、ここも民主党の牙城ですが、事前の予測では、共和党とデットヒート状態でした。

結果は、泡沫候補の無所属が5%を獲得、現職の民主党候補、ジョン・コージィーン(Jon Corzine)知事が41%にとどまったのに対し、共和党の新人、クリス・クリスティー(Chris Christie)氏が49%を獲得して、共和党の知事が誕生しました。

最後に、ニューヨーク州第23選挙区選出の連邦議会下院議院選挙です。

なぜ米国メディアの注目を集めているかと言うと、同州には保守系の政党として共和党の他に保守党というのがあり、この地域は、保守分裂選挙となりました。

しかも途中で共和党候補が棄権し、民主党候補を支援するという動きも…。

このような保守分裂という混沌とした中であるにもかかわらず、最新の世論調査では保守党の候補が民主党の候補に対し5%から17%の差をつけて優位といわれており、本来保守分裂選挙で、有意であるはずの民主党候補が苦戦していることでも注目を集めました。

ここで、もし保守系が勝利すれば、「中間選挙で民主党が大きく負けるのでは?」とオバマ政権の行き先に暗雲が立ち込めているわけです。

結果は、かろうじて民主党候補が、保守党候補に4%リードし死守した報道がなされました。

さて、このアメリカ情勢ですが、日本にとっても極めて重要な問題です。

アメリカCNNの報道では、今回の選挙が前哨戦という位置づけから、「オバマ大統領へのリファレンダム」という意味があったのではないかとの分析をする政治アナリストが多くいます。

もちろん、民主党系のアナリストは地方選に過ぎないとこれを否定し、共和党系のアナリストはこれを強調しているという状況で、どっちもどっちです。

ただ、今回の結果から明らかなのは、オバマ大統領に対するリファレンダムという意味があるかどうかは別として、オバマ政権に批判を強める共和党陣営が重要視された2つの知事選でかなりの大差で勝利し、そのことはオバマ政権も無視できないということでしょう。

今回の結果を受けて、共和党が、オバマ政権の進めようとする国民皆保険制度に対する批判と反対運動を強めることは予想されます。

また、最新のCNNの世論調査では、この問題に対するオバマ大統領への支持が42%であるのに対し、57%が不支持という数字が出ています。

こうした状況を考え併せると、オバマ政権は今までのようなリベラル色の強い政策を打ち出しにくい状況に追いやられていると言えます。

例えば、共和党はもちろん、民主党の保守系議員がリベラル色の強い国民皆保険制度に対して抵抗し、本年度中の成立が困難になる可能性がでてきています。

さらに、アフガン問題に対する糸口が見いだせていない状況の中、オバマ政権は国内だけでなく、国際問題においても未解決の問題が積み重なっており、今回の選挙結果は、いわゆる風が共和党に吹き直している(少なくとも民主党やオバマ政権への風は止まってしまった)ということが明らかになったわけで、来年の中間選挙を考えると大きな痛手といえます。

さて、これが日米外交にどういう影響を与えるかですが、このように国内問題で失点が続いているオバマ政権にとって、日米首脳会談で、さらに、米軍問題に対する日本の抵抗に会うとなると、オバマ政権の失点はさらに増えてしまいます。

このような国内状況を見越して、オバマ政権は、先日ゲーツ国防長官を使って、日本に日米合意を覆す動きをさせないように、暗黙のプレッシャーをかけて来たわけです。

今までの自民党政権なら、問題なくホワイトハウスの思惑通りの展開になったのでしょうが、現在の鳩山政権では、鳩山首相や岡田外務大臣といったアメリカに対して、はっきりと日本側の主張を伝えるという意思を表明している閣僚が多いことから、ホワイトハウスの思惑通りには現在のところ行っていません。

そこで、考えられるホワイトハウスの戦略としては以下のことがありえます。

まず、日米首脳会談を突然キャンセルし、自民党への水を向ける。

日本のメディアも、日本の国民も、アメリカの国内情勢の分析はできていませんから、突然日米首脳会談をキャンセルすれば、日米関係が鳩山政権により悪化したと大々的に報じるでしょうし、自民党もそういう批判をするでしょう。ホワイトハウスが、今の民主党政権を来年の参議院選挙で終わらせたいと思えば、このような強硬な手段を使うことも考えられます。

また、日米首脳会談をこのまま開催した場合に、オバマ政権が得られる利益は非常の乏しいわけですから、こうした会談キャンセルという手法もないとはいえません。理由は、アフガン情勢や国内問題の見通しがつかないという理由でいくらでも作れます。

ただ、この強行手段はもろ刃の剣です。オバマ政権も馬鹿ではありませんから、日本の民意の分析を十分に行っています。

やはり衆議院での300議席超えは大きく、補選でも民主党が勝利していることに鑑みると、強行手段は日本国民のアメリカに対する抵抗感を増幅させることにつながることはわかっているでしょう。

また、民主党政権が日本で基本的には4年間続くことを考えれば(念願の政権交代を氏、300議席以上あるのに簡単に解散をするわけありませんから)、下手に日本の民主党政権との関係をこじらせるのは得策ではありません。

そこで、今回の日米首脳会談では、沖縄の問題を抽象的にしか取り上げないということが考えられ、これが一番有力だと私は思っています。

というのも、鳩山首相はあまりアメリカ国内の情勢を読み込んで、弱みに付け込んで外交を優位にしようというほど戦略的なリーダーではありませんから、アメリカの状況を慮って、沖縄問題に踏み込まないという予測です。

日米関係悪化というわけのわからない批判を真に受けて、民主党政権が上記のような行動をとってしまうように私は思います。

私見としては、弱っている今がチャンスなのですから、オバマ大統領に対し、日本の、沖縄の直近の選挙で示された民意を伝え、政権としては現在の日米合意は受け入れられないという強い姿勢で臨むべきだと思います。

オバマ大統領も、日本に来た以上、日本の意見を無視するような反論は彼のリベラル色の強い政治姿勢からはすることができないでしょう。

また、アフガン問題で他国の負担を求めたいアメリカの現状を考えれば、日米関係悪化のイメージが出てしまうことも、避けたいはずです。

日本にとっては今が沖縄問題解決の絶好の機会のはずです。

このような機会に付け込まずに、アメリカに恩を売るという日本的な発想で、自民党政権がやってきた外交の結果が、沖縄への負担増大とアメリカの思うがままの日米同盟だったのではないでしょうか。

知り合いの外務省職員にも多いのですが、どうも日本人は外交交渉になると下手に出てご機嫌伺いをするのが効果あると思っているようですが、友人の米国国務省職員にいわせれば、外交交渉とはいかにふっかけるかが重要だということでした。

日米の外交官の意識には大きな差があります。

先日の国会の予算委員会の質疑でも、従来型の外交姿勢から抜け出せない自民党の町村信孝議員は「オバマ大統領が来日とり辞めたらどうするか」と鳩山首相に言ってましたが、米国の「お菓子をくれなきゃ行かないよ」っていうのに付き合う必要ありません。外交はハロウィーンではありません。

今日も、自民党の石破議員が、「日米同盟が危機にひんしている」などと国民の不安をあおるような大衆迎合的発言をしていましたが、これもおかしな話です。

アメリカに沖縄の負担の軽減や、沖縄県民の声を日本政府が代弁すれば、日米同盟が危機にひんするほど脆弱な関係だと本当に思っているのでしょうか。

そうだとすれば、日本は敗戦国としてアメリカの言うことを未来永劫聞き続け、自国の意見を発することができない状況になければ、日米同盟は堅持できないのでしょうか。

そんな日米同盟なら、だれも望んでいないはずです。

石破議員や町村議員のいうような脆弱な日米関係ならば、北朝鮮が攻めて来たって、アメリカがきちんと対応し日本の防衛に寄与してくれるとは思えません。それこそ、日米同盟に固執せず、日英同盟や日豪同盟、日加同盟などアメリカ以外の民主主義、自由主義という価値を共有する国と軍事協力をし、日本の防衛力を高める方が日本にとってより安定的な安全保障をもたらすことになるでしょう。

アメリカの言うことを何でも聞く外交は、アメリカの国際的プレゼンスが著しく低下し始めている現状では、日本の国益に適いません。

にもかかわらず、国民を犠牲にし、「対等」ではない日米地位協定の存在なども無視し、日米関係は対等と言い張る町村信孝議員や、米国を恐れて、「日米同盟の危機だ」と煽り、アメリカの言うとおりにすべきと主張する石破茂議員ような、国民を犠牲にする政治家は要りません。

もっとも、私は鳩山政権の外交方針を積極的に評価しているわけではないことも付言しておきます。というのも、現状では外交方針を評価しきれるだけの実績がなく、評価の対象が存在しないからです。

したがって、鳩山外交に下での日米関係のあり方はこれからが勝負なのであって、今の段階で、アーダコーダ言っている自民党議員も、メディアも薄っぺらく感じるわけです。

自民党議員も、既存の主要メディアも、そういう下らないことに時間を費やす前に、対米外交を本当に考えるのであれば、今回のアメリカの重要な前哨戦の2州の知事選とニューヨーク州第23区連邦議会下院選挙の結果がアメリカの国内政治に与える影響をしっかり分析すべきでしょう。

なお、今回のアメリカでの選挙ですが、このほかにも注目すべき選挙がありました。

例えば、ニューヨーク市長選もあり、結果は現職のブルームバーグ市長が事前の予想に反して苦戦はしたものの、4%リードして勝利しました。

オハイオ州ではカジノの合法化の住民投票が行われ、賛成がややリードしています。

また、メーン州では同性間の婚姻を認める法案の廃止をめぐる住民投票が行われ、結果は53%の得票率で現在リードしている廃止派が既に勝利宣言をしています。

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10/11/2009

オバマ米大統領がノーベル平和賞受賞も、唯一の被爆国の国民は納得できないと8割が回答

オバマ大統領の受賞コメントです。

This morning, Michelle and I awoke to some surprising and humbling news. At 6 a.m., we received word that I'd been awarded the Nobel Peace Prize for 2009.

To be honest, I do not feel that I deserve to be in the company of so many of the transformative figures who've been honored by this prize -- men and women who've inspired me and inspired the entire world through their courageous pursuit of peace.

But I also know that throughout history the Nobel Peace Prize has not just been used to honor specific achievement; it's also been used as a means to give momentum to a set of causes.

That is why I've said that I will accept this award as a call to action, a call for all nations and all peoples to confront the common challenges of the 21st century. These challenges won't all be met during my presidency, or even my lifetime. But I know these challenges can be met so long as it's recognized that they will not be met by one person or one nation alone.

This award -- and the call to action that comes with it -- does not belong simply to me or my administration; it belongs to all people around the world who have fought for justice and for peace. And most of all, it belongs to you, the men and women of America, who have dared to hope and have worked so hard to make our world a little better.

So today we humbly recommit to the important work that we've begun together. I'm grateful that you've stood with me thus far, and I'm honored to continue our vital work in the years to come.

Thank you,

President Barack Obama

色々言ってますが、言葉のみで何の実行もしていない人間が、大統領として核兵器の削減ということを言っただけで、得られる賞ってとんでもなくチープな賞ですね。

そう感じている人も多いのではないでしょうか。

そして、これを喜んで受ける大統領も、話題性と人気取りしかできない政治家という馬脚を現した感じがします。

どことなく我が国にもいた、首相数名に似ている気がします。

ヤフーの意識調査では、オバマ大統領のノーベル平和賞受賞に80%が納得できないと答えています。

ライブドアの世論調査では、81.5%の人が納得できないと答えています。

インターネット調査は多少若い世代に偏った意見がでますが、ユーザー層がYahooとLivedoorで多少異なることを勘案しても、ほぼ同じ結果で、8割の日本人(唯一の核兵器による被爆国の国民)が納得できないと回答しているのは、かなり重大なことだと思います。

核兵器削減を提唱したことで受賞したわけですが、唯一の被爆国である日本人の8割がこの受賞に疑問を持っているというのは、何と皮肉なことでしょう。

また、佐藤栄作元首相が非核三原則の提唱などで受賞した平和賞ですが、日本ではその密約問題が浮上しています。

ノーベル平和賞に限って言えば、何の価値もない政治的玩具と言ってしまっても過言ではないでしょう。

まさに、「Rediculous(馬鹿げている)」という言葉がよく似合う受賞ニュースだったと思います。

アメリカでもこのニュースで喜んでいるのは、単純な思考をする人が割と多い、オバマ支持者と一部の理想主義者だけではないでしょうか。

私の数名の海外の友人たちも、このニュースを聞いて、ノーベル平和賞の程度の低さに呆れているようでした。

なお、イギリスメディアは早速、「一人のアメリカ人男性が何もせずにノーベル平和賞を受賞した」との題名で、辛辣な批判をしています。

あと、アメリカが衆愚政治に陥っているのがよくわかる情報も追加しておきます。

アメリカの政治専門メディアサイトによれば、オバマ大統領の受賞に懐疑的な共和党党員に対し、オバマ支持の民主党全国大会の幹部が、「オバマ大統領の受賞を批判するのはテロリストと同じだ」という暴論を述べたそうです。 

オバマ民主党政権からすると、今回の受賞に納得できないと答えた8割の日本人はテロリスト扱いなんですね。

アメリカも恐ろしい国家になったものです。異なる意見への寛容を訴えた米国民主党はどこ得いってしまったんでしょう。

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09/22/2009

米メディアの報道から岡田・クリントン・スミス日米豪外相会談を考察

クリントン・岡田・スミスの日米豪の外相会談が行われました。

Okada_clinton_smith

クリントン長官の発言が国務省にアップされているので、関心のある方は、日本の報道だけでなく、原文を見た方がよいでしょう。

私は、アメリカ政治を専門にしてましたが、どちらかというとアメリカの国内的視点でのアメリカ政治に注目していたので、日米外交という形での知識はどちらかというと乏しいです。

しかし、私はあえてその方がよいと思い、アメリカの国内的視点からの問題の考察という点に注目してきました。その理由は簡単です。国内問題が与える外交への影響が大きいからです。

そういった視点で、今回の会談に関する情報を収集し、分析してみました。

まず、国務省のウェブサイトにある会談の原文からです。

Well, let me say what a great privilege it is for me to welcome the foreign minister so soon after he has taken his new position – five days. And obviously, the alliance between the United States and Japan is a cornerstone of our foreign policy and indispensable to the security and prosperity of the Asia Pacific. We are both representing new governments, although the minister is much newer than I am now. And I look forward to working with him to develop and strengthen even stronger bonds of partnership, friendship, and alliance in pursuit of our common values, and a future that we hope will be even better for our people.

クリントン長官の発言およびその報道を見る限り、従来既存の主要メディアにより報じられていた鳩山政権に対する危惧は感じられません。

むしろ、岡田外相が就任わずか5日後であること、日米で起こった政権交代による新しい政府であることを強調し、ともに問題に取り組もうという趣旨の発言です。

また、この会談に対するアメリカのメディアの扱いもそれほど大きくありません。

その後、クリントン長官は、グリジアやチェコ、コスタリカの首脳と会談しており、日本との注目も、いわば、そのOne of Themといったところでしょう。

さらに、クリントン長官とメディアとの対談でも、日米問題についてはおろか、「日本」や「岡田外相」に対する言及すら一切ないことからすれば、「鳩山新政権にアメリカが懸念している」とか言うたぐいの話は、日本のメディアの過剰反応というのを如実に表していると思います。

つまり、アメリカの国内的視点からすれば、日米同盟の問題よりも、「アメリカ自身の」アフガニスタンに対する外交政策をどうすべきかに関心があるのです。

もっとも、キャンベル国務次官補から、日本の国内世論に対して配慮した重要な発言がありました。ロイター通信の記事では、以下の発言をしたと言っています。

"We have, and others in the U.S. government, have underscored that there are certain areas on Okinawa and elsewhere that we think a degree of continuity is critical -- the best way forward," Campbell told reporters.

"However, the truth is that the United States -- as an alliance partner and a strong friend of Japan -- at this early stage, we cannot be in a position to dictate," he added.

"We must make clear that we are committed to a process of dialogue and discussion," Campbell said.

やはり、注目すべきは、「このような初期的な段階で、アメリカが決定権を握る(アメリカが一方的に指示する)立場にはない」という部分の発言です。

308議席で大勝した鳩山民主党政権の背後にある日本の国内民意を配慮し、対話と議論をするという姿勢を強調しています。

もちろん、一度合意したものですから、アメリカにとっては再度蒸し返されるのは通常良い思いはしないでしょう。

しかし、アメリカ政府がこのように柔軟な姿勢を示していることは、日本のメディア以上に、日本で起こった政権交代の意味をアメリカ政府が正確に捉えていることの表れだとと私は思います。

そして、この会談の取り上げ方が少ないアメリカメディアですが、あえて言えば、その関心は、岡田外相の以下の発言にあるようです(以下、AFP通信の記事より)。

Foreign Minister Okada hinted Sunday that Japan could offer more development aid to Afghanistan in place of the naval support mission.

"If Japan can generate the situation where Taliban soldiers on the frontline would be able to feed their family members and offer education, then the situation in Afghanistan will change," he said.

"There is a significant number of people who work for Taliban to earn money."

アフガン問題については比較的中立性のある日本が、資金援助というソフト面でのアフガン支援をすることで、タリバンから金をもらうために働いているアフガニスタン人に武器を持たずとも食べていける状況を作り出すという役割を表明した岡田外相に対して、アメリカ政府はもちろん、アメリカののメディアも比較的好意的な反応を示しているようです。

海外の目は、いかにアフガンの状況を改善するかに注目しており、現在、軍事作戦が功を奏していない状況から、日本の非軍事的な貢献について関心が高まっているようです。

クリントン長官もかねてから、非軍事的なものと軍事的なものを柔軟に使い分ける外交方針を打ち出していましたから、アメリカの関心は給油継続ではなく、日本の非軍事的貢献に映っているのかもしれません。

なお、オーストラリアのメディアは、この会談について、日米豪の三ヵ国によりイニシアティブを維持することが極東アジアの安定につながるという観点から報じています。

国務省の公式ブログ(記者は国務省のオーストラリアの担当官)でも、この会談が取り上げられており、専ら日米豪の三ヵ国による戦略会議の意義や今後の共通の利益の模索などについて説明がされています。

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07/29/2009

人種差別は被差別者の意識も変わらないと解決できない

久しぶりに、アメリカ政治の話題。

しかも、ちょっと議論を呼びそうな話題を取り上げる。

アメリカで、黒人研究の権威の教授が、警察に空き巣として誤認逮捕され、黒人差別だという議論が沸き起こっているのはご存じだろうか?

黒人のオバマ大統領が警察批判に便乗したことから、人種差別の問題に火をつけることになり、さまざまな議論がアメリカで沸き起こった。

主要メディアはあまり報じないのだが、オバマ大統領というのは、非常に軽々しい言動をする人間で、良く言えば、小泉元首相のようにパフォーマンスに長けているのだが、悪く言えば、政治家としての重みがないので、たびたび自分の発言を撤回することがある。

話をこの誤認逮捕に戻すと、どうも状況からすると、誤認逮捕も仕方ないのではないかと思える状況も浮き上がってくる。

ドアをこじ開けようとしていれば、やはり不審者だと思うし、まして通行人からの通報で駆け付けた警察官であれば、不法侵入の現行犯として逮捕しようとするのが当り前であろう。

とりわけ、犯罪率が高く、銃が横行し、警察官の殉職が絶えないアメリカにおいては、被疑者が警察官に反抗的な態度をとれば、逮捕者の安全の確保のためにも、身柄の拘束を最優先とするのはやむをえないのであり、この警察官の行動はそれほど常軌を逸した行動ではないだろう。

もちろん、誤認逮捕自体は責められるべき点があるが、これが人種差別の話に置き換わっている点に非常に違和感を覚える。

また、この警察官が名指しで大統領に批判されることになったわけだが、誤認逮捕後の手続きに不当な差別行為がないことにかんがみれば、国家の最高権力者が名指しで批判するのはやはりおかしいだろう。

なぜここまで話が大きくなってしまっているのか。

それは、アメリカの人種差別問題に対する意識の根深さがあるためである。特に、黒人コミュニティーでは、人種差別の被害者意識が根深い。

誤解を恐れずに言えば、黒人コミュニティーに帰属意識の強い黒人であればあるほど、自分に対する理不尽な現象を、人種差別に起因していると何事もとらえがちな傾向があることは否定できない。

もちろん、私がアメリカにいた時は、私自身がマイノリティーであり、潜在的な人種差別の対象だったわけだが、私自身が「人種差別だ」と感じたことはそれほどなく、むしろ、馬鹿にされたような態度を受けてもそれは自分自身の語学の未熟さにあったと感じる方が多い。

アメリカは特に、英語を話せない人に対しては、日本で日本語を話せない人に対する姿勢より、厳しい姿勢で臨まれる。つまり、「なぜ英語を話せないんだ?それなら、アメリカに来るな。」と思っている人も結構いるわけである。

現に、英語が話せるようになってから(図太くなって、「俺の英語を理解しろ、理解できないお前が悪い」という感覚を持つようになってから)は、理不尽な対応を受けることは少なくなった。

私のような外国人かつマイノリティーの目線から、アメリカの人種問題を見ると、マイノリティー、とりわけ、黒人コミュニティーは、自分たちに降りかかる理不尽な現象はすべて、人種問題に起因していると単純化して、ある種の思考停止に陥っている人も少なくないのではないかと思うわけである。

面白いことに、アメリカでこういう議論をすると、すぐに、「アジア人は、黒人の差別の歴史がわかってない。」とか、「黒人の方がアジア人やヒスパニックよりひどい差別を受けている。」とか、生産性のない議論になることが多い。

私のある友人で、アジア系アメリカ人とアフリカ系アメリカ人がこの種の議論をしていたのを思い出す。

アフリカ系アメリカ人の言い分はさらに次のようなものに発展する。

「アジア系やヒスパニック系アメリカ人が、自分たちのコミュニティーで仕事を回すため、結果としてアフリカ系アメリカ人の仕事が奪われる」というものである。

確かに、このようなマイノリティー同士の衝突(Conflict)が生じているのは事実である。しかし、他方で、アジア系やヒスパニック系の労働者の方が勤勉である傾向が強いのも事実で、私はどうも人種差別がために、黒人の労働者だけが苦しんでいるかのような議論には激しい違和感を感じた。

今回の黒人研究の教授に対する誤認逮捕の問題も、教授自身が人種差別の問題に過剰反応しているように感じる側面がある。もちろん、白人警官による黒人住民への不当な差別による暴行事件がアメリカで起こっている点も見過ごせないが、今回の事件に限っては、その種の差別暴行事件とは質が異なるように思うわけである。

オバマ大統領も、人気取りしか考えていないから、事件の本質を見ずに軽はずみな発言をして、撤回せざるをえなくなり、かつ、失点を取り戻すために、ホワイトハウスに招くなどの大げさなパフォーマンスを行っていると私は考えている。

オバマ大統領も、こんなパフォーマンスをしている場合ではなく、実効性ある経済政策をしっかり出さないと、アメリカのGDPすら、中国に抜かされるということになりかねないだろう。

差別の問題は、潜在的な差別者になりうるマジョリティーの意識はもちろん、潜在的な被差別者となるマイノリティーの意識が変わらなければ、解決できない問題ということである。

米大統領が仲裁役、誤認逮捕事件で黒人教授と警察をホワイトハウスに招待へ

7月25日8時7分配信 産経新聞

 【ワシントン=山本秀也】オバマ米大統領は24日、名門ハーバード大学(マサチューセッツ州)の黒人教授が自宅で空き巣狙いと間違われ、地元警察に逮捕された問題について、教授と警察官の双方を近くホワイトハウスに招き、和解を図る考えを表明した。警察の逮捕を「愚か」と批判した大統領自身の発言についても、「警察側を傷つける意図はなかった」と釈明し、発言を事実上撤回した。

 この騒ぎは、米国の黒人研究で権威とされる著名教授が誤認逮捕され、黒人差別に敏感なオバマ大統領が教授擁護の発言で介入したのに対し、警察側が激しく反発したことで、米国内で政治問題化する兆しが出ていた。

 オバマ大統領は同日、逮捕された黒人問題の権威、ゲイツ教授と、教授を逮捕したケンブリッジ市警本部のクラウリー巡査部長に電話をかけ、事態の収拾に理解を求めた。

 また、自らホワイトハウスの記者室に姿を現し、同巡査部長を「すばらしい警察官だ」と称えた上、22日の記者会見での警察批判について釈明。「声高な批判に替わって、関係者が事態の収拾に動くよう望みたい」と訴えた。

 ゲイツ教授は今月16日、故障したドアをこじ開けて自宅に入ったところ、空き巣狙いと誤認した目撃者の通報でパトカーが出動。教授は身分証明などを示して釈明したが、「私が黒人だからか」などと声を荒げたため、公共の秩序を乱したとして逮捕された。

 教授は不起訴処分となり、市警本部も21日になって教授に陳謝していた。しかし、オバマ大統領が警察批判に出たことで、巡査部長本人が謝罪を拒んだほか、警察関係者も「大統領発言は不適切だ」として反発していた。

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07/19/2009

在外日本人も警戒を

先日、「米流時評」というブログを運営されているysbeeさんという方からトラックバックをいただいて知ったこのニュース

最初は、トラックバックをしてくださった記事の内容と全然違う話だったので、失礼を承知で告白すると、なんかのセールスか、一部の極端な思想を持っている人のブログ記事かなと思っていたのだが、非常に重大なニュースであることに気が付いたので、お詫びの気持ちもこめて紹介させていただく。

既に、朝日新聞など一部日本メディアでも報道されているように、アルカイダのアフリカ組織が、在外中国人を標的にした報復テロを宣言したという。

どんな理由であれ、テロ行為という残虐かつ非人道的行為は許されない。

もっとも、このニュースを聞いても、「中国人の問題で日本人には関係ない」、「遠い国の話」と思ってしまう人は多いのではないだろうか。私も最初は似たような感想を持ったのだがよくよく考えると、メディアの注目度は低いが重大な問題だということに気がついた。

この夏、海外で過ごす人などいると思うが、我々がアフリカの国々の人を見た眼で、どこの国の人か判別が困難なように、人種が異なるとアジア人は皆中国人に見えてしまうことが多い。

人種のるつぼであるアメリカに滞在していた頃、正確に日本人と中国人を判別できるアメリカ人の友人はごく少数で、よく間違われたものである。日本と交流の多いアメリカの人々でさえ、正確には判別できない人が絶対的マジョリティーである。

したがって、残念ながら、日本人がテロに巻き込まれる可能性は今回の中国のウィグル人虐殺問題によって格段に上がってしまったと言わざるを得ない。

できれば、日本政府は在外日本人の安全を考えて、中国に対するウィグル族の民族自決権問題としての非難声明を出すべきであるが、イランの選挙不正問題でも、目をつぶるような外交しかできない現状ではそのような期待はするだけ無駄であろう。

アフリカ地方に旅行する方は特に、自衛策として、中国人が集まる場所などを避けて行動すべきだと思う。

また、イスラム諸国はアラブ諸国だけではないことを肝に銘じておく必要がある。

フィリピンでは南部がイスラム教信仰者の多い地域であり、フィリピン政府も中国人をターゲットにしたテロへの警戒を強めているとロイター通信などは報じている。

さらに、アメリカなどの非イスラム国でもテロの危険性はあるだろう。今回の標的は、中国人、とりわけ、漢民族を対象にしていると考えられ、在米中国人を対象にすることだって考えられる。

テロの脅威に対して、日本人には温度差があるが、2001年の米国での同時多発テロの現場近くにたまたま居合わせた私にとっては、今回の報道は日本人が巻き込まれる蓋然性があると思わずにはいられず、ぞっとするニュースである。

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さて、テロが今日のテーマだったので、9・11テロから9年目になるわけであるが、この事件をテーマにした映画で最も優れている作品を紹介しておきたい。人間忘れやすいもので、家族や友人など事件で何かを失ったりした者でなければ、あの衝撃が年々薄らいでしまう。私のように当時事件発生の現地近くにいたというだけでは、9年も経つと思うと、次第に当時の緊迫した状況な衝撃の大きさを思い出すのも難しくなってくる。

しかし、この映画を見るたびに、当時の衝撃が鮮明に蘇ってくるし、忘れてはいけない事件だということを思い起こさせてくれる。このユナイテット93には、当時大学生だった久下季哉さんが搭乗していた。宇宙飛行士を目指して、留学先に向かうために搭乗していたと記憶しているが、私も同じように夢をもってアメリカに留学したことがあったため、混乱するアメリカのメディア報道から久下さんの一報を知った時は、他人ながら、何とも言えない悲しみを感じたことを思い出す。また、彼以外にも世界貿易センタービルで働いていた多くの日本人が死亡、重軽傷を負った。

事件の丁度一か月前に、私は、日本から来た家族とともに、世界貿易センターなどを巡っていたので、あと1か月遅かったらと思うとぞっとした。私はその後もアメリカに滞在し、2001年9月11日は、たまたまテロの現場近郊(幸いなことに、事件に巻き込まれるほど近くには居なかったが)に居合わせたのだが、その衝撃と混乱は説明するのが難しいほど壮絶なものであった。

年月が経つにつれ、日本での9・11テロの報道や番組に私は違和感を感じつつある。

事件が起った現場の近くで、混乱するアメリカを直に目撃した者からすれば、視聴率を稼ぐような下らない陰謀論にまみれた番組が公然と報道されていることには非常に疑問である。また、事件自体が日本人から忘れられているのも悲しいことである。

この映画は、個人的にはあまり見たい映画ではないが、見るたびに当時の経験を鮮明に思い出させてくれる。

ウルムチ騒乱「アルカイダ報復宣言」 中国紙が報道 

2009年7月16日19時11分

 【北京=坂尻顕吾】新疆(しんきょう)ウイグル自治区ウルムチの騒乱をめぐり、北アフリカに拠点を置く国際テロ組織アルカイダ系のグループが中国人らを対象に「報復」を宣言したと15日付の中国紙が報じた。北アフリカには出稼ぎ労働者など数十万人の中国人が滞在しているとされ、騒乱が「中国対イスラム」の構図へ広がることに懸念が高まっている。

 報復宣言は、英字紙「チャイナ・デーリー」と中国共産党機関紙・人民日報系の国際情報紙「環球時報」がいずれも1面で取り上げた。報道によると、この組織はアルジェリアに拠点を置く「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ組織」で、ウルムチの騒乱でイスラム教のウイグル族が多数死亡した報復として、アルジェリアで働く約5万人の中国人と中国が北アフリカで展開する企業プロジェクトを標的にすると宣言したという。

 両紙はともに「アルカイダ系組織が中国を直接威嚇したのは初めて」と指摘。専門家の見方として、「この組織の活動範囲は限られているが、似たような動きが他のアルカイダ系組織に広がる恐れもある」との懸念を伝えている。

 中国外務省の秦剛副報道局長は14日、定例会見でイスラム国家に駐在する中国企業や中国人の安全確保を問われ、「中国政府はいっさいのテロに断固として反対している。関係国が我々との協力を強め、テロ撲滅に立ち向かい、駐在する中国企業と中国人の安全を維持するよう望んでいる」と語った。

 ウイグル族への同情はテロ組織だけでなく、イスラム国家の政府首脳にまで及んでいる。トルコのエルドアン首相は11日、「同化政策をやめるよう中国政府に求める」などと発言。中国の楊潔チー(ヤン・チエチー、チーは竹かんむりに褫のつくり)外相が翌12日、トルコのダウトオール外相と電話会談し、トルコ側から「中国の主権と領土保全を尊重しており、中国の内政には干渉しない」との言質を取るなど、中国当局は対応に神経をとがらせている。

    ◇

 15日の中国国営新華社通信などによると、ウルムチの騒乱の死者は192人、負傷者は1721人に増えた。

http://www.asahi.com/international/update/0715/TKY200907150396.html

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06/02/2009

アメリカ経済はまだまだ回復できない?!

以前、ある経済評論家の自動車に対する理論を紹介したが、これがいよいよ現実味を帯びてきた。

以前の記事はこちら

アメリカに大手自動車メーカーは1つで十分という理論だが、私はこの理論は2000年頃に聞いた覚えがある。残念ながら誰が提唱していたのかはっきり覚えていない。

もし、2000年頃にこの理論を提唱していたという人を知っている人がいたらぜひ教えてもらいたい。

この理論を聞いたときに、私は何人かにこの理論を紹介したが、私の親友であるアメリカ人の友人以外は誰一人、そんなことあるはずがないと応えていた。

この経済学者、先見の明があったのであろう。

ちなみに、私が調べた限りのアメリカ経済の将来に対する予測はこちらの記事を確認してもらいたい。もっとも、これは多くの日本の経済学者が同じような指摘をしているのを私なりにまとめたに過ぎないので、仮に当たっても私が発案者というわけではないが、このGM破綻のニュースを聞いて、この予測も当たるのではないかと考えている。

GMが破産法申請=米製造業史上最大の倒産-「国有化」で再建へ
6月1日21時9分配信 時事通信

 【ワシントン、ニューヨーク1日時事】米自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)は1日、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)適用をニューヨークの連邦破産裁判所に申請した。3月末時点の負債総額は1728億ドル(約16兆4000億円)。総資産は822億ドル(約7兆8000億円)で、米メディアによると、米製造業最大の倒産。過去の米企業破綻(はたん)では、昨年9月の証券大手リーマン・ブラザーズなどに次いで、3番目の大きさとなった。
 米政府は景気や金融市場への影響を最小限に抑えるため、301億ドル(約2兆9000億円)の追加融資を実施。最長でも3カ月の破産手続きを経て誕生する「新生GM」を実質国有化し、スピード再建を実現する方針だ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090601-00000195-jij-int 

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