LCC、ジェットスターを利用して
7月3日(火)にLCCの1つジェットスターが就航し、初日に最終便が欠航となったニュースはご存じだろう。
欠航となった理由については、他のニュース記事で紹介されているが、フライトスケジュールに余裕がないことが原因なのだろう。
先日、所用によりどうしてもジェットスターを利用せざるをえない状況が生じたため、利用したのだが、その感想を今回紹介しようと思う。ただ、今回紹介するのは、あくまで、私個人の経験に基づくものであり、別の意見もあろう。利用を考えている人は、あくまで1つの参考意見としてほしい。
1.航空券購入まで
LCCということもあり、ホームページが全日空や日本航空のものと比べると簡易である。
容易に利用できるという反面、情報が少なく、通常の航空会社と比べ、航空券にどういう制限があるのかなど分かりにくい印象があった。
特に、就航初日に欠航等があったばかりであったから、それがどういう原因なのかとりあえずは知りたいというのが、利用客としての通常の思考だろうが、ホームページ上には、何らその説明がなく、欠航も当然という認識なのかとすら思ってしまい、利用にあたり不安が増した。
そこで、とりあえずは、この簡易なホームページにより予約する前に、疑問点を解決したいと思い、予約センターに電話をして予約をしようとした。
電話対応というのはその担当の個人差が出るという点は否めないが、基本的に、すべての回答がいかに責任を回避するかに終始しており、あまり良い印象は感じないというのが率直な印象である。
私が一番知りたかったのは、欠航した場合、他社振替を行うのか否かという点であったが、「欠航の理由によるので、なんとも回答できません」などと、一般論として他社振替するように努力するという規定になっているのか否かすらわからない不明瞭な回答で、不安感ばかりが増すものであった。
状況により異なることは当然知っているのであり、私としては、LCCであるから他社振替をしないというポリシーがあるのか否かを知りたかったのだが、何らその疑問点に応えてくれることなく、不安が解消されるどころか、「この会社本当に大丈夫なのか?」と思ってしまう対応だったのは残念である。
この点、全日空や日本航空の予約センターの対応は秀逸と感じる。
同様の質問をしたが、これについては、両社とも、「欠航理由にかかわらず、他社振替をするようにして、お客様のご要望に沿えるように努力することとなっている。ただ、空席が他社にない場合など、希望に沿えないこともあるかもしれない。」という回答で、基本姿勢がどうなのか明確である。
この程度の回答は、LCCであってもできると思うのだが、ジェットスター社の電話対応は、とにかく責任を発生させるような回答はするなという点が先行し、利用者の不安を解消するという姿勢を感じ取ることはできなかった。
むしろ、利用者がLCCに抱く「対応の悪さ」という不安をさらに助長させる対応であり、ここにLCCと既存の国内大手、JALとANAとの間の大きな差があるのかもしれない。
さらに、ジェットスター社の電話予約にはもう一つ不満が残った。というのは、予約をする上で必要な情報を全部聞かれた最後の最後で、「電話にて予約すると手数料が別途発生しますがよろしいですか」というのである。
これは基本的に、一番最初に聞く話ではなかろうか。
金額も数百円程度にとどまるものではなかったので、私は予約対応してもらった後で、申し訳ないと思ったのだが、「それではホームページで予約してみます」と電話を切った。
このように、できたばかりの会社であるとはいえ、顧客対応の不備が目立った。
2.チェックインまで
当日、LCCなので、かなり余裕を持って空港に行った。案の定、30分前までに搭乗口前にいなければ、乗ることはできないという説明があり、JALやANAの感覚で利用することはできない。
カウンターには日本人職員のほか、カンタス航空が出資しているだけあり、オーストラリア人職員もおり、英語対応はできるので、LCCにしてはその点は意外で、評価できると感じた。
他方で、自動発券機に案内され、列に並んで待ったところ、チケットカウンターに行けという案内が出て、さらに待たされるなどJALやANAでは起こり難いことが生じるので、やはり時間には余裕も持って行かなければならない。
さらに、手荷物検査の空港職員とジェットスターの職員の意思疎通ができておらず、搭乗券を見せろという空港職員に、「まだチェックインできていないから、こっちのカウンターに行くように言われた」と説明しても、空港職員がピンと来ていなかったりと、やはり、ANAやJALを利用する感覚では利用できないと感じる局面が多かった。
3.搭乗から離陸まで
日本航空や全日空の搭乗口集合時間が15分前であることと比べると、30分前に搭乗口に集まれというのはその2倍も速い。LCCなので、定時運行が絶対というのかもしれない。
しかしながら、乗客が30分前に集まっていても、機内の準備ができていないのか少し待たされ、搭乗後、定刻を過ぎても出発をしない。
何の説明もなく、フライトアテンダントとグランドスタッフが慌ただしく話しをしており、これも乗客の不安を助長させるように感じた。その後、定時運行ではない理由の説明もなかったのは、LCCとはいえ、どうも対応に不備があるのではないだろうか。
これがJALやANAであれば、何らかの機内アナウンスがあり、定刻出発となっていないことについて説明があるはずである。
地上にはカンタス社の関係者と思われるオーストラリア人スタッフがいたが、機内では、外国人客がいるにもかかわらず、アナウンスはすべて日本語で行われ、一切英語による説明はなかった。
フライトアテンダントが出発前にグランドスタッフと大声で慌ただしく英語でやり取りをしていた状況からして、英語対応できるにもかかわらず、機内アナウンスがすべて日本語というのもどこか違和感を感じた。機内には、複数の英語圏の乗客がいたのだから、英語によるアナウンスがあっても良かったのではなかろうか。
さらに、JALやANAのフライトアテンダントは、荷物の収納を手伝おうとする姿勢に溢れているが、ジェットスター社のフライトアテンダントからはそのような姿勢が感じられない職員も目立った。年寄りや女性が荷物を収納しようとしているのであれば積極的に手伝う姿勢が必要なのではないだろうか。それがむしろ定時運行にも資すると個人的には思う。
この程度はまだ良いにしても、私が特に問題だと感じた点がある。
それは、乗客が既に乗っているにもかかわらず、コックピットの出入り口の開け閉めが複数回なされるなどテロ対策上も疑問が生じるような対応が目立ったことである。
特に、トイレがコックピットの出入り口の直ぐ横であるから、乗客が乗った後に、コックピットの出入り口のドアが開けたりなされると、トイレに行くのを装って、ドアが開いた瞬間に押し入ることもできてしまうのではないだろうか。
飛行機が離陸していないとしても、既に乗客が乗っている状況で、コックピットのドアの開け閉めが複数回なされ、乗務員が立ちはだかることもせず、乗客席からコックピット内が丸見えというのは、テロ対策の見地からもかなり不安が残った。
4.飛行から着陸まで
気象状況により、飛行機の揺れというのは変わるので一概に評価するのは難しい。
しかしながら、あくまで個人的な感想ではあるが、JALやANAより機体の揺れが大きく、多かった印象がある。
当然、飛行機の大きさが、JALやANAとは違うので、その点は考慮しなければならないが、JALやANAの小型機を乗った場合と比べても、やはり、今回のフライトは揺れが大きかった気がする。ただ、気になる程度であって、恐怖に感じるというほどのものではないし、機長も副操縦士も日本人であり、着陸などはスムーズだったと感じる。
5.預入手荷物の返却
日本航空や全日空と比べると、返却までの待ち時間が長い印象を受けた。
ただ、うんざりするほどということではないので、そこまで気にすることもないのかもしれないが、どうしてもその長さは気にはなる。
6.その他
まだ就航間もない未成熟の会社ということなのかもしれないが、上記以外にもかなり不備は目立った。
たとえば、ギリギリに来た客を乗せるために、グランドスタッフが焦っている場面に直面したが、その職員間での対応は、大きな声で、「これは違うから!」とか、「だから、○○なんでってー」とか、本当に日本の航空会社?と思うような場面を見かけた。
つまり、その遅れた客への対応というよりは、職員間でのやりとりが、見ている人間をハラハラさせるのである。
職員同士で、いわば「テンパっている」状況は、見ていて気持ちが良いものではないし、そういった対応を大勢の潜在的な乗客(他社の利用客が多くいるようなスペースで)がいる前でおこなわれているのであるから、どうしても未熟だなと感じてします。
7.結論
私は、今回、どうして利用せざるを得ない事情から、初めてLCCを利用したが、LCCは全日空や日本航空とは違う乗り物だという認識が必要であると感じた。
ジェットスター社の内部事情を全く知らないが、今回利用して感じたのは、会社が未熟であるため、個々の職員の力量に依存している部分が多大にある点が、同社の最大の弱点なのではないかということである。
当然、今回の利用においても、対応の良い職員もおり、職員全ての対応が悪いという訳ではない。中には、一見して対応に余裕があるベテラン職員もいた。だからこそ、個々人の職員の力量の差が歴然としており、対応能力の均一化ができていない点こそが同社の最大の弱点だと感じてしまう。
利用者にとって、どうしても目立ってしまうのは対応の悪い職員であり、その職員を基準として、LCCと他社と比較してしまうものである。
JALやANAについては、昔より対応が悪くなったという話を聞くこともあるが、それでも、全体的な職員の顧客対応意識は高いし、サービスの姿勢も、他の海外の航空会社とは比にならないくらい良質である。
例えば、フライト30分前のギリギリのチェックインで、同伴者との座席がバラバラになってしまった場合で、満席に近い状況でも、搭乗後にフライトアテンダントが調整してくれるなどのきめ細やかなサービスは全日空や日本航空でなければやってくれない極めて質の高いサービスである。
以前、海外の友人が日本航空においてこのようなサービスを受けたそうで、「こんな丁寧なサービスは海外では考えられない。日本は本当に素晴らしい。」と大絶賛していた。
私が、日本の航空業界を取り巻く現状を説明したところ、その友人は同時に、「日本の消費者の質が高いから高品質のサービスを維持できる。格安の航空会社が参入してきた場合、アメリカ人であれば、安すければ多少サービスを犠牲にしても良いと格安航空会社を選ぶだろう。それは消費者の質が低いからだ。日本の消費者の質は高いから、格安航空会社が参入しても、消費者の質が下がらない限り、高品質のサービスは維持できるように思う。」とも語っていた。
つまり、高いサービス品質というのは、消費者の高い質に起因するという考えである。価格だけで判断しない消費者の質がサービス産業の品質を高めるというものである。
確かに、LCCの参入により、既存の航空会社が大打撃を受けるとの見方もある。しかし、私は今回の利用により、またLCCを積極的に利用したいとは思えなかった。
むしろ、全日空や日本航空のサービスや対応の良さを再認識し、その質の高さに感謝しながら、今後も特段の事情がない限り、高いサービスを提供する両社を応援する意味も込めて、利用していきたいと感じた。
ジェットスター社をはじめとするLCCはこれからの会社である。
閉鎖的な航空業界に競争をもたらすという点では歓迎しべきであると思うが、安さだけによる戦略では一部の消費者は獲得できても、質の高いサービスを目指さなければ、継続的に安心して利用したいと思う安定的な顧客は獲得できないのではないだろうか。
個人的には、安いのでサービスは期待しないでくれとかいう会社や、スカイマークのように対応を消費者センターに丸投げするような会社に命を預けたくはない。
以上のように、私の感想としては、上記で紹介した日経トレンディネット版とは大きく異なり、かなり辛口の評価とならざるを得なかった。やはり、マスコミへの対応と一般客しか乗らない場合の対応には差が出てしまうのかもしれない。
いずれにしても、対応の良い職員もいることは確かであり、これがジェットスターのすべてだとは誤解してほしくない。あくまでも一利用者の意見として、参考にする程度にしてほしい。
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