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12/30/2020

後手後手を先手先手という菅内閣の詭弁と国民の不信

前回の「アメリカ社会の分断はトランプ政権が原因ではない」という記事の配信から約2か月が経過したが,今週,記事を書きたいという衝動に駆られたニュースがあったので,今日はそれについて記事を書くことにした。

12月28日月曜日,私はメディアの先手先手の対応指示 」というタイトルを見て,「ガースー」発言以来の衝撃を受けた。この人は官房長官時代と変わらない詭弁政治家であることを更に国民にさらけ出したのである。既に同じような感想をもった人が多いことも報じられている

そこで,今日のこの記事では,①今回の外国人の新規入国制限に関する措置がいかに「後手後手」であって「先手」とは微塵も言えないのかということとともに,②出入国管理行政を巡る行政文書の分かり難さ,ひいては,③はんこ文化を批判して行政改革をやった気になっている菅政権がいかにこの決定においても何ら行政改革による縦割り行政ができていないかについて,この措置を例に論じたいと思う。

1.今回の外国人入国制限が「先手」とは全く評価できない理由

今回の措置について,メディアも全世界からの外国人の新規入国を28日午前0時から2021年1月末まで停止すると発表などと極めて不正確な報道をしている。この報道に接した人は,「すべての外国人が新規入国できない強い措置を新たに採った」と理解するのではないだろうか。しかし,今回の措置は,公表された行政文書をきちんと読めば,今まで緩和していた措置を止めて,10月1日以前に元に戻しただけということが明らかである。

まず,内閣官房のHPに掲載されている「水際対策強化に係る新たな措置(4)」という行政文書を見ると,1として,「本年 10 月 1 日から、防疫措置を確約できる受入企業・団体がいることを条件として、原則として全ての国・地域からの新規入国を許可しているところであるが、本年 12 月 28 日から令和3年 1 月末までの間、この仕組みによる全ての国・地域(英国及び南アフリカ共和国を除く)からの新規入国を拒否する」との記載がある。

つまり,10月1日始めた緩和を止めましたというだけである。国内の新規感染者数が爆発的に増加している以上,こんなのは当たり前のことで,これを「先手」と評価する思考回路が全く理解できない。こんな頓珍漢な「先手」という言葉が,目がうつろな菅総理から出てきたのを見て,「この人大丈夫?」と思ってしまうのは私だけではないだろう。

また,この措置を止めたとしても,外国人が新規に入国する例外が2つあるということを多くのメディアはきちんと正確に報じていない(多くのメディアが1つの例外にしか触れていない)。

例外の1つ目は,一部メディア(主に中国・韓国について報じることが多いサンケイグループ)は,「中韓は“ザル入国” 政府の水際対策に親中派・親韓派の影響力か」という形で触れているが,これは「国際的な人の往来再開に向けた段階的措置」に基づき,入国を認めている事案である。

これは,二国間の取り決めに基づき,入国させているケースで,12月29日時点で,11カ国について認めて入国を認めている。11カ国の外国人については,短期滞在以外の全ての在留資格又は短期商用査証により本邦に入国する者を対象としており,かなり広範囲に認めている。つまり,全面停止の例外とはいえ,11カ国については観光客以外は一定条件満たせば原則受け入れるという措置と言っても過言ではない(この一定条件による水際対策の実効性にもそもそも疑問があるがここでは論じない)。

中国・韓国がやり玉にあがっているが,そういった思想・理念は別として,やはりこの措置を止めていないのに,「先手先手の新規外国人の入国全面停止!」と胸を張っているあたりに,菅義偉の器の小ささを感じられずにはいられない。こんな措置はさっさと停止すべきである。

例外の2つ目は,「特段の事情」による入国であり,これは,国籍や出発地を問わず認めている。

特段の事情とは,個別具体的な事情を考慮して判断するものであるが,法務省出入国管理庁が出している文書からも明らかなとおり,再入国する外国人は格別,在留資格が日本人・永住者・定住者の配偶者などの外国人(当該文書2(1)及び(2)ア~オに該当する者)も,在留資格認定証明書の交付と査証の発給を受けることで入国は可能である。

また,特段の事情による入国の場合は,イギリスや南アフリカに滞在していたとしても,特段の事情による入国が可能であるという点はあまり報道されていない。

政府の発表した文書をきちんと読めば理解できるが,イギリスと南アフリカからの入国について当面禁止しているのは,あくまで10月1日に緩和した措置に関してである。この点,出入国管理庁の文書も若干わかりずらいのは,2ページ目の冒頭の「なお書き」はあくまで,(2)のカの措置にかかっているのだが,読み方を間違えて,なお書きが(2)全体に適用されると誤解している人が多い。

したがって,特段の事情の(2)ア~オに該当する外国人については,どの国の国籍で,どの国に滞在していようと,特段の事情として入国を認める方針であることがわかる。

この例外の2つ目の部分についてどこまで認めるべきかという議論をして切り込んだのであれば,「先手」という評価もできるだろう。

私は,特段の事情の範囲が広くなりすぎていると私は思う。例えば,(1)の再入国外国人の往来を本当にこのまま認めるべきなのかは議論すべき点ではなかろうか。特段の事情による入国というのであれば,(2)イ~オに列挙される外国人に制限するのがあるべき姿だと私は思う。もちろん,イやウに列挙される日本人・永住者・定住者の配偶者や子についても一律に特段の事情による入国を認めるべきではないという意見もあるだろう。しかしながら,出入国管理庁の文書からもわかるが,家族が分散された状態に置くというのは,人道上望ましい措置ではない

そもそもの問題は,上陸の問題と隔離の問題を切り離して対応してこなかった点に起因している。

本来は,特段の事情による上陸を認め,特段の事情により上陸を認めた者についても,一定期間の隔離措置を空港施設に併設する場所で行うべきだったのではなかろうか。アジアの抑え込みに成功している国はそうした措置を取っていたのであったから,そうした措置を特措法などで盛り込んでおくべきだったと思う。

こういう検討を一切してこなかった自民党議員にも責任がある。「中国・韓国が!」とネット右翼みたいな批判をする前に,本当に国民目線で,人道上必要な人々について,上陸と隔離をいかに分離してしっかり行うかについて議論しておくべきだったのではなかろうか。その時間は沢山あったはずである。

2.今回の措置に関する行政文書の分かり難さとバラバラな関係省庁

さて,私が次に問題視したいのは,今回の措置の行政文書や国民への通知の分かり難さである。

まず,新型コロナウイルス対策本部がある内閣官房外務省法務省がそれぞれ別の文書で案内を出しているから,情報が一元化されておらず,国民に周知する姿勢が著しく欠如しているのが明らかである。

この中でも,一番,国民目線なのが,私は法務省の文書であると思うが,この法務省出入国管理庁の文書も,上述のとおり,なお書きの位置が2ページ目にズレたため,これがどの部分にかかってくるのか,一見読み違えてしまうおそれがある文書になっているのは厄介な点である。

本来であれば,3省庁,とりわけ,内閣官房がコーディネートしてが国民目線で分かりやすい文書に一本化し,一元的に情報が得られるようにすべきであるのに,3省庁それぞれが自分たちの所管の観点からの文書を作っているから,誤解と混乱を招きやすい文書となっている。

法務省出入国管理庁の文書が一番国民目線で分かりやすいのは,法令に従って書いているからである。あらゆる人(日本人及び外国人の両方)の出入国については,出入国管理及び難民認定法が規定しており,所管は法務省である。したがって,法務省は法律に基づいて行政文書で国民の案内を作成しているので,人の出入国に対する措置について,原則と例外がはっきりしており,他の省庁の文書よりはわかりやすくなっている。

外務省に至っては,「Mess(ひどい状態)」としか言いようがないくらい分かり難い。レジデンストラック・ビジネストラックなど法律にない概念を持ち込み何を言いたいのか全く理解できない。そもそも,これらのトラックが何を意味しているのかすらよくわからない。他のHPに行かないと,これらが何を意味しているのかわからない。さらに,カタカナ表現のスキームなどと説明し,法律上のどういう根拠に基づいて行っているのかが全く見えないのである。

昔から,外務省は,ふわふわとした仕事の仕方をするという印象があるが,本当にこのHPの説明は,外務省の好きな英語表現をすれば,「Total mess!(しっちゃかめっちゃか)」としか言いようがないのである。

私は外務省がこの意味不明な「トラック」という概念を持ち込んだ理由は,外務省があくまで国民目線ではなく,対相手国目線での説明をするために,持ち込んだ概念だからではないかと思えて仕方がない。

外務省は,「法律による行政の原理」という概念が欠如していると言っても過言ではないだろう。

さらに,極めて無責任なのが内閣官房である。

新型コロナウイルス感染症対策本部を設置し,決定を行う強い立場にあるのだから,ここがきちんと国民目線の文書をわかりやすく出す義務があるのではなかろうか。

にもかかわらず,例外措置が何かなどの詳細は,所管庁に丸投げして,一番分かり難い行政文書を発表している。単に「10月1日に緩和した措置を12月28日から1月末まで停止し,緩和を認めない」と言えばいいだけであるのに,あたかも新しい強い措置を取ったかのアピールをしたかったのか,「拒否する」などと紛らわしい文書になっている。

行政文書としても統一感がない。14日間の待機措置については,「緩和を認めない」としているのであるから,統一して「緩和を停止する」という端的な説明をすれば良いのではないだろうか。

こうした点からも,私はどうも行政文書の改ざんをさせた安倍政権を継承する菅内閣には,事実関係を捻じ曲げて国民への印象操作をしようという小手先感を感じずにはいられない

いずれにしても,3省庁がそれぞれ一元化されていない文書を出していることで,出入国管理行政として今政府が行っている措置が正確に把握しにくくなっているのは,こういう第三波は容易に想像できたはずなのに何も準備していないことの現れであって,本当に情けない限りだし,怒りすら湧いてくる。

3.今回の措置から透けて見える薄っぺらい行政改革

他の大臣に比して河野太郎大臣は人気があるようであるが,私は,今回の措置を巡る行政文書の分かり難さからも明らかなとおり,菅内閣には国民目線の本当の意味での行政改革は無理だと思う。河野大臣は,ハンコを目の敵にして行政改革をやったつもりでいるのかもしれないが,今回の人の出入国に関する措置を巡る行政文書の分かり難さと,3省庁バラバラの文書が,縦割りの行政が一切変わる兆しがないことを如実に示してくれているのではなかろうか。

ハンコを失くすより,こうした国の基本的方針を示す際に,わかりやすい国民目線の一元化された情報が統一的に示されるのが,何よりも行政改革の成果であるし,国民の生命・身体の安全と基本的人権に関わる出入国に関する決定の案内こそ,率先して,改善すべきものだったと思う。

行政改革による縦割り行政の改善とは,まず国民目線でどうやってわかりやすい行政文書を書くかということに注力すべきではなかろうか。国民も過去の民主党政権の時に学んだように,こうした人気取り大臣のパフォーマンスに騙されてはいけない。本質的な行政改革による縦割り行政の解消は,今回の措置の発表を見ても,何ら行われていないことは明らかなのである。

既存の与党の政治家たちは,与党という権力に胡坐をかいてきたから無理なのかもしれないが,国民からどう見られているかを真摯に意識して,国民目線に全集中してほしいと思うのは私だけではないだろう。

 

  

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