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November 2020

11/16/2020

アメリカ社会の分断はトランプ政権が原因ではない

アメリカ大統領選挙についてメディアはバイデン前副大統領に当確を報じており,今のところ私の予想記事は当たらなかったが,アメリカ社会が更なる分断に進んでいることは間違いない。アメリカメディアも日本のメディアも,アメリカ社会や世界の分断がトランプ大統領にあるような薄っぺらい報道を行っているが果たしてそうだろうか。今回は,選挙を巡るアメリカの混迷について解説するとともに,この分断の原因が「リベラリズムの奢り」にあるという私見を発したい。

まず,現在のところ,アメリカ議会上院は,共和党50議席(1議席減),民主党(独立系議員2議席含む)48議席,そしてジョージア州2議席が決選投票の選挙となる見通しである。下院は,422議席が改選され,民主党が219議席,共和党が203議席となっている。ほとんどすべてのメディアが,民主党の大幅な勝利を報じていたにもかかわらず,共和党と民主党の勢力は拮抗している。

バイデン支持者は,報道機関による当確情報を得て,感染症対策の概念も虚しく,町で大はしゃぎに「勝利」を叫んでいたが,果たしてそう「短絡的」なのであろうか。トランプ支持者の間では,数多くの選挙不正の動画等が出回っており,結果の如何にかかわらず,共和党の大多数は選挙不正を明確にすることを望んでいるようである。

多くのメディアはトランプ大統領が「負け」を認めないことについて,「潔くない」などという妄言を発しているが,果たしてこれもそう「短絡的」な思考で良いのであろうか。選挙不正の情報を見ると,日本のまともなスタンダードからは考えられないアメリカの発展途上国さながら,いや,それ以下の選挙の実態が見えてくる。

例えば,この記事では,選挙後に投票用紙を回収するアメリカ郵政の姿が映されている。もちろん動画の真偽というのはわからないが,私が驚いたのは,この動画の争点が「選挙『後』」であることを問題視しているだけで,回収方法ではないのである。投票用紙を公道で黒いバッグに詰め込んで運ぶという感覚を私は全く理解できない。よもやよもやだ。とりわけ,これほど大規模に郵便投票を認めた時点で,選挙の公平性は最も重要な事項として担保されるべきであったにもかかわらず,このような回収をしているとすれば,トランプ大統領やその支持者が選挙不正を今も訴えている点には「なるほど」と思わざるを得ない。

にもかかわらず,アメリカの大手メディアは,共和党側の主張については,門前払いで荒唐無稽と決めつけ,一方的に不正はないという民主党側の主張を報じている。おそらく,これが日本のように,公務員全体のレベルが高いまともな国であれば,荒唐無稽と思うだろうが,この選挙はアメリカである。あの国の杜撰さや下級公務員のレベルの低さを知っていれば,こうしたあり得ない回収方法も,普通に行っていて何ら問題視されていなかったのではないかと思えて仕方ない。

もう一つ驚いた事実は,手作業での集計は原則として行われておらず,機械により集計し,僅差だったときにおいて手集計が求められた場合に限り,手作業の確認が行われるということである。日本では,機械や手作業で票を振り分け集計した上で,必ず人の目でそれが正しいか確認される。怪しい票は審議される。アメリカのように手作業が絡んでいないということはあり得ない。私はかなり前に自治体の選挙管理委員会に関与したことがあるが,その時は目視で票を振り分け,10枚の束にした上で,10個の束が集まった段階で機械でも確認するという方法で集計していた。これが当たり前だと思っていたがアメリカでは単に機械に載せるだけという州が多いらしい。にもかかわらず,結果が数日確定しないという一事を取っても我々はアメリカが中国やロシア,それ以下の後進国と同じレベルの公正さに欠ける社会制度が存在する極めて不安定な社会であると再認識しなければならないだろう。

ここまで,共和党側の主張にも一理あるという話をしてきた。ここからはなぜ分断がトランプのせいではないのかについて論じたい。そもそもトランプが当選した時点でアメリカは相当程度分断されていた。これはオバマ政権が口先だけで何の実績も作ることができず,さらにはアメリカ経済が安価な中国製品により製造部門を中心に疲弊していたからである。そんな中,オバマ政権は,社会主義的政策を推し進め,地方はどんどん疲弊したのである。いわば,オバマが分断を深めたといっても過言ではないだろう。アメリカ社会の根源は,FederalismとAnti-federalismの対立にある。共和党はAnti-federalismが伝統的な流れであり,大幅な減税政策を志向する。共和党支持者にとって,田舎の人間たちも,オバマケアのような負担が増えることは嫌がる傾向にある。つまり,保険は自分で考えて入るものであって政府に強制されるものではないという考えが根底にあるのである。オバマケアは日本では好意的に捉えられているが,前提とする社会観念が異なるため,アメリカでは更なる分断を招いたのである。

それだけではない。欧米では,いわゆる,リベラリズムを志向する層がそうでない者を徹底的に敵視し,攻撃的な言動に出るケースがオバマ政権以降顕著に出てきている。メディアの報道では,トランプ支持者が白人優越主義者と組んでいるとか,銃を購入しているとか,極めて一面的な報道しかしていない。しかし,現実にBlack Lives Matterを利用して暴動に興じていたのは反トランプのグループである。だからこそ,今回の選挙でも国民の約半分が以前としてトランプを支持してきたのである。

はっきり言って私はトランプは大嫌いである。人間性は最低であるし,言動が癇に障る。しかしながら,アメリカ国民の約半分がそれでもトランプを支持しているという事実を冷静に受け止めなければならないのである。

しかしながら,欧米のリベラリズムは,この事実を無視するか,あたかも,「国民の半数が支持するのは残念」などという極めて見下した言動をするのである。ここにアメリカの分断の根底があると私は思う。リベラリズム層が,それ以外の思考のものを見下し,受け入れない。これがまさに,アメリカ社会の分断の根本的原因であろう。この点,私は基本的にこの人の意見に同意することはほとんどないが,橋下徹氏が同様の指摘をしていたようである。この指摘は正しいと思う。

このリベラリズムの傲慢さが現れたのはアメリカだけではない。

去年のイギリスの総選挙で,労働党が大敗したのはJeremy Corbin氏率いる同党の旧態依然とした労組中心の社会主義国家への逆戻り主張に原因があり,この時の労働党幹部は,主張に間違いはなかったなどと強弁し,方向転換に失敗した。面白いのはこうした極左的な主張を支持しているのが,アメリカの反トランプのグループと同じ若者層だということである。大学教育を受け,エリート意識を志向し,異なる意見を切り捨てるといういわゆる典型的な共産党のようなリベラリズムが欧米社会で幅を利かしてきていることに私は危機感を感じざるを得ない。そして,必ずと言っていいほど,このグループは,本筋とは違うことを争点にして議論の本質から目を遠ざけようとする。オバマ大統領が口だけ何の実績もなかったのと同じように。

このようなリベラリズムの傲慢さにはまさに「黙れ。何も違わない。私は何も間違えない。全ての決定権は私に有り,私の言うことは絶対である。お前に拒否する権利はない。 私が正しいと言った事が正しいのだ。」という発言をした誰かを思い起こさせる。

さて,アメリカ政治の今後として,この選挙不正問題がどうなるか,上院の過半数がどうなるかは気になるところであるが,バイデンに変わっても,世界は混沌することに間違いはない。なぜなら,欧米社会で幅を利かしているリベラリズムこそが,偽善的な顔をした分断の原因であり,これがますます台頭すると考えているからである。

一方,日本では,映画「鬼滅の刃」が一大センセーションとなっていが,私はこれについても,日本人としてこのアニメがこれほど人気を博していることが日本人として誇らしいと思う。鬼滅の刃がヒットする理由はまさに主人公の炭治郎が敵である鬼に対して慈悲と敬意を常に示す懐の深さであろう。これは優しさとは違う。相容れない存在を一方的に否定しない慈悲深い心。利他の精神であろう。自分勝手な言動が幅を利かして分断されているアメリカとは真逆の精神である。

今まさにアメリカで,無責任に大声で騒いでいる輩こそ,鬼滅の刃からこうした他者を否定しない慈悲深さと利他の精神を学んでほしい。このアニメは非常にわかりやすいので,傲慢なリベラル層にはぜひ炭治郎から自信を顧みてもらいたいものである。

  

 

  

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11/04/2020

アメリカ大統領選挙の行方

今日は,4年に一度のアメリカ大統領選挙の投票日。

多くのメディアはトランプ苦戦を報じてきたが,私も木村太郎氏と同じように私はトランプ大統領が再選すると考えている。

日本のメディアに登場する自称専門家の米国政治専門の大学教授などは隠れバイデン支持者が多くいる一方,隠れトランプ支持者が今回は少ないなどとリベラル的視点で希望的観測を述べているのをよく見てきたが,私は今回も大方のメディアは予測を外すと思っている。

つまり,トランプが再選するだろう。

私の友人の中にはアメリカ政府高官もいることからその友人からの情報については今まであまり鵜呑みにしてこなかったが,今回一般市民レベルのアメリカ人の友人たち(20~40代)がいわゆる隠れトランプ化していることからも,メディアが報じるほどトランプの人気が落ちているようには思えないのである。そしてこれらの友人たちが共通して言うのは,彼らはトランプの政策により生活が4年前よりも良くなっているし,トランプの政策は良いというのである。

多くの日本人はトランプに対して良いイメージを持っていないだろう。これはアメリカ人にとっても同じだと思う。ただ,大統領を選ぶ際にアメリカ人の大多数は,その人物が相応しいかというよりも,政策がどうかで判断している。換言すれば,生活が豊かになったか否かである。この点,木村太郎氏が早々に指摘していたが,56%のアメリカ国民がトランプ政権下で暮らしが良くなったと世論調査で答えている。これは非常に大きな点で,私のアメリカ人の友人を見ても,「個人的にトランプに大統領の資質があるとは思わないが,経済が良くなり,彼は仕事をしているから投票する」という20代後半から30代後半までの若い層が結構いる印象である。

また,この人たちが共通して言うのは,「大手メディアはバイアスが酷く信用できない。テクノロジー関係の大手企業が言論統制をしようとしている」というのである。つまり,隠れトランプを世論調査会社が把握できない状況は改善していない。なぜならば,彼らは大手メディアや世論調査会社を信用しておらず,敵視しているので彼らはまともに世論調査やメディアに対してその声を回答をしないためである。

例えば,私のニューヨークに住む20代後半の友人は,元々民主党支持者であったが共和党員になった。彼が強く主張していたのは,この数年の間にニューヨーク市をはじめとする民主党が首長を務める市や州において劇的に治安が悪化しているということであった。ニューヨーク市については,デモとは名ばかりで暴動と犯罪が急増しており,民主党の首長たちはこれを容認しているという強い不信感を語っていた。

また,日本ではもてはやされているクオモ知事についても,「ニューヨークを破壊している」と極めて低い評価をしていた。こういった声は日本のメディアでは報じられることはない。

面白いことに,こうした民主党所属の首長に対する批判については,私のアメリカ政府で高官を務める友人が同様のことを数年前から私に話していた点である。当時,私は「まあ,共和党の米国政府の高官だからそういうのだろう」という程度にしかとらえていなかった。しかし,一般市民であるニューヨーク州に住むアメリカ人からも同様の見解を聞くと,私たち日本人がメディアや自称専門家の大学教授たちなどから見聞きしているアメリカの虚像からは,かけ離れた事実がそこにはあるように感じる。

このニューヨークの20代後半のアメリカ人の友人は,オバマ支持者であったが前回の選挙でヒラリーを支持できず,トランプに投票したという。彼がいうには,4年前にヒラリーが嫌でトランプに投票した人は,今回もトランプに投票するだろうし,トランプが好きで投票した人は今回もそういう投票行動になるだろうという。さらには,黒人層はバイデン支持などという単純化は難しく,今回はより多くの黒人票がトランプに流れると予測していた。これはバイデンが何か強い政策やリーダーシップを示すことのできる強い候補者ではなく,トランプに対する批判しかできない候補という認識が強いことや2週間ほど前に木村太郎氏も紹介していたバイデン氏に対する疑惑がさらに深まっている点にあるという。

また,日本では報じられないが,アメリカ人の友人たちによれば,黒人の芸能人や著名人がトランプ支持を公言するケースが増えており,黒人の裕福な層には,トランプ支持が確実に増えているというのである。特に中産階級や自宅保持者に対して行われたトランプ政権の減税政策がバイデンが勝てば廃止されるため,これを嫌う黒人層はトランプ支持だという。

ではなぜ日本のメディアはこうした違う「声」を報道しないのだろうか。それは,日本のメディアはアメリカメディアが報じることを真実として報道するだけで,自分たちの情報リソースをきちんと持っていないからである。日本の外国メディアのほとんどが薄っぺらい日本の表層的な情報しか報じないのと同様に,アメリカにおいて外国メディアである日本のメディアにはこうした違う「声」を拾う能力はないのである。

次の疑問は,なぜアメリカのメディアがこうした情報を取り扱わないのか。それは,アメリカメディアがもはや自分たちが聞きたい情報以外を報じたくないという姿勢に陥ってしまっているのである。逆を言えば,リベラル色が強いメディアが自分たちが聞きたい情報のみを報じ続けてきた結果,多くの国民がメディアにそっぽを向いてしまったと言ってよいだろう。もちろん,リベラル層はそれが心地良いからますます事実が真実か否かを問わず,心地の良い情報しか報じられないのである。

例えば,トランプに都合の悪いロシア疑惑は前回の選挙からこの4年間ずっと報じられてきたが真実性を決定づける証拠がイマイチ出てこなかった一方で,バイデンに関する上記疑惑は大手メディアが報道を避けているという根強い批判が隠れトランプ支持層には多い。また,トランプ政権の成果とも言える中東の和平合意についても米国内ではほとんど報じられていないというのである。

こうしたメディアに対する強い不満がある層は圧倒的にトランプ支持であるという。私の友人の中には,今回の選挙ではトランプが圧倒的支持で勝つだろうという人もいた。

多くのメディアは,トランプがアメリカを分断などと報じているが,私はこの見方こそアメリカメディアが意図的に事実を歪めて報道しているのを日本のメディアが垂れ流しいる証拠だと思っている。

私は,アメリカの分断は,オバマ政権の誕生から始まったと見ている。そもそも,私が留学していた頃,ナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)という政治家が下院院内総務などという重要なポジションにつくとはよもや思いもしなかった。それは彼女が当時は極左のような思想の持主でおよそ要職に付けるような人物ではなかったからである。しかしながら,オバマ政権を経て民主党はより左にシフトした。その結果,共産主義のような思想が幅を利かせることになり,穏健派や中庸を好む層は,民主党支持者から離れたという事実は無視できないが,メディアは何の実績もないオバマ政権について批判的検証を一切せず,トランプがアメリカを分断したと報じているのである。

現に,デモと称する暴動や犯罪を犯しているグループは,反トランプのグループのデモに起因しているし,Black Lives Matterの運動をしているグループの一部がそうした過激な行動に出ているのも皆わかっているが,なんとなくトランプが分断したというイメージのみが広がっているのも,メディアが問題の本質を報じていないからである。つまり,今のメディアには,あらゆる事象に対する偽善的リベラル主義がはびこっているのである。

ところで,ある日本の自称専門家の大学教授は今回の選挙が最高裁で揉めるなどと予想し,ロバーツ最高裁長官とLGBTに有利な判断をしたニール・ゴーサッチ判事がトランプを裏切りバイデンが・・・などという戯言を自称情報番組で語っていたが,こんな短絡的な話にはおよそならないと私は思う。

そもそも,アメリカ最高裁をリベラルと保守で分けるのが間違いである。アメリカ最高裁判事を分類するなら,憲法の趣旨を解釈してその範囲を広げる手法を取る判事か,制定当時の立法事実を重視して解釈を限定的に行う判事かという分類であって,保守かリベラルかというのはおよそ法律をわかっていない人間が短絡的思考で行うことである。

現に,米国連邦最高裁は,民主党に有利なノースカロライナ州での不在者投票の受付期限を6日間延長する措置を支持する判断を下しているが,評決は賛成5、反対3で、クラレンス・トーマス判事とニール・ゴーサッチ判事、サミュエル・アリート判事は延長に反対したとされているが,これもリベラルか,保守かの問題ではない。この3判事は極めて限定的に解釈する考え方の判事であるため結論が同じになっただけである。また,選挙前に判断すべきかどうかが争われており,これも判事の司法に対する考え方の違いが今回の結果にも表れており,終身の判事が短絡的に保守だからトランプ有利にとか,LGBTに有利な判断をしたからバイデンに有利になる可能性があるとか,そういう浅い,上っ面な解説は全くもって資質がないと言いたい。司法を保守かリベラルかで語る時点で司法の本質を分かっていない人なのであるが,そんな人が専門家として日本でいわゆるフェイクニュースを広めているかと思うと恐ろしい。

さて,私は,トランプが勝つのではないかと予想するが,マスメディアが今後のアメリカを報道していくのか注目していきたい。

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