選挙における「言葉」の影響力
世間では,安倍総理による突然の大儀が不明瞭な解散,小池新党の誕生などで選挙一色である。そして,今日はいよいよ選挙の告示日である。
このような状況の中,ふと今回の選挙について思ったことを記事にしようかと思った時,残念ながら前回の記事から約1年以上ブログを更新していないことに気が付いた。
安倍政権による公私混同と思われる事象が多く報道され,大儀が不明瞭で,安倍総理の権力維持のためだけに行われたであろう今回の解散。
混迷の世の中において,はやり言論活動を通じて,一定の情報発信を続けなければならないと改めて思っている。
そこで,解散から今日までを振り返り,今回の選挙について私見を発したい。
私は,今回の選挙は,政治家の「言葉」の重さ・影響力を痛感する選挙戦になるのではないかと思っている。
1.安倍総理らに見る「まともに答えないではぐらかす」言葉
まず,最初に指摘すべきは,安倍総理や菅官房長官らの言動に見られる「質問や疑義にまともに答えようとせず,はぐらかす」姿勢である。
加計・森友疑惑の本質を勝手に「自分(安倍)が指示したかどうか」という点に絞り込もうと必死になり,この点について十分に説明したなどと主張しているが,このような言葉のトリックに,多くの国民は辟易としているのではなかろうか。
多くの国民が加計・森友疑惑において抱いている疑念は,安倍が直接指示を出したかどうかではない。国民の関心がある核心的争点は,「安倍総理又はその周辺のオトモダチが何らかの形で通常では通らないことを何か通したのではないか。」という点である。
だからこそ,安倍総理が説明する事実と異なる話や証拠が出てくるたびに国民の不信が深まり,支持率低下が続いていたと私は思う。それに対して,安倍総理や菅官房長官らは引き続き,「質問や疑義にまともに答えようとせず,はぐらかす」という言葉で説明と続けた時,この選挙において国民はどういう判断を下すのであろうか。
2.小池都知事の「排除」という言葉の力
もう一つ私が今回の選挙のターニングポイントと考えているのが,小池知事が発した「排除」という言葉だろう。この言葉が出てくるまでは,マスメディアは,希望の党が自民党を叩き潰すだろうといった勢いで,小池劇場化を手伝った。多くのメディアも有権者も,安倍自民に対抗する勢力誕生かと色めき立った。
しかし,「排除」という極めてキツイ言葉を小池都知事が発したことにより,①現実は路線の人は,希望の党の規模は二大政党制にはならないと考え,熱が醒め,②反安倍の原動力の中心であるリベラル派は,小池は危険だと移り,熱が醒めたと分析している。
その後,小池都知事自身が発言を少し抑制していることからも明らかなとおり,「排除」という言葉が持つ力は強すぎたというべきであろう。この言葉一つで,反安倍で一致した勢力の結集に失敗したと言わざるを得ない。
この失言により,都民ファースト内のごたごたも相まって,小池都知事は独裁的というイメージすらついてしまったのである。イメージ戦略の策士としては,大きな失言をしてしまったのではなかろうか。
3.言葉がSNSにより増強される時代
SNSによる言葉の発信という点では,先日報じられた「立憲民主、フォロワー11万人 ツイッター4日目で自民を追い越す」という記事も気になるところである。
偽アカウントでの水増しではないかというニュースまで出ているが,この記事が示す通り公式に同党は否定している。このようにFake Newsに対して否定をしなければいけない時代であるという点も新しい動きなのではなかろうか。
この記事にもある通り,立憲民政党が直ぐに偽アカウントでの水増しではないかという声に公式に否定するということは,今の政治家がいかにSNSによる言葉の拡散による影響力を意識しているかが良く分かる。
4.「言葉の力」を検証するシンポジウムが投開票日に
安倍総理の不誠実な言動や小池都知事の「排除」という言葉がどのような影響を今回の選挙戦の結果に与えるのであろうか。
今回の選挙選では,候補者が発した言葉がいかにその結果に影響を与えるのかについて特に注目し,選挙結果が出た時に改めてこれを検証していきたい。
ところで,私がちょうどこの言葉の影響力について今回記事を書こうと思った時,慶應義塾大学で,言葉の影響力に関する大変面白いイベントが選挙の投開票日である10月22日(日)に開かれることがわかったので,ぜひ紹介したいと思う。
記事によれば,オックスフォード大学インターネット研究所でデジタル・メディアの政治への影響を研究するフィリップ・N・ハワード教授が来日し,講演するようである。同教授は東洋経済で「ソーシャルメディアと旧勢力の新たな冷戦」という記事にも登場していることからもわかるとおり,SNSと政治の関係についての第一人者的学者である。
また,同イベントでは,日本の憲法学者の中でも有名な慶應義塾大学で常任理事も務める駒村圭吾教授もトランプ大統領の例を踏まえ,権力と言葉の関係について発表があるようである。駒村教授は,ジャーナリストの池上彰氏とともに,2015年には「ジャーナリズムは甦るか」という本も出版しているなど幅広い活動をしている。
同教授は,法律時報において,同じような内容の記事を寄稿しており,非常に面白いものであった。
選挙当日なので,おそらく選挙そのものへの言及は避けるのであろうが,奇しくも衆議院議員選挙の投開票日に,「ことばの力」について,検証が行われるイベントが行われるというのは大変面白いと思う。
このイベントはオックスフォード大学出版局と慶應義塾大学が共催し,英国大使館のブリティッシュカウンシルが後援しているようである。
事前登録が必要なようなので,参加する場合は以下から登録する必要があるようである。
https://www.oupjapan.co.jp/ja/events/od2017/index.shtml
自分の投票行動が何らかの「ことばの力」に影響を受けているのかについてイベントに参加し検証してみるもの良いかもしれない。
今回の選挙戦,我々有権者はいかなる言葉に影響を受け,いかなる投票行動をすることになるのであろうか。言葉の力がどういうものなのか,この12日間考えていきたい。
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