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January 2015

01/26/2015

ツイッターによるコラ画像をめぐる海外の評価(その2)とISISアカウントの凍結

昨日の記事(「イスラム国(ISIS)に対するツイッター利用者の攻撃と海外からの評価」)は,非常に大きな反響があったようで,このブログへの直接のアクセス数が約4万PVもあった。

また,本ブログが転載されるLINE社が提供するBLOGOSにおける昨夜の転載記事も最も読まれ,最も支持されたようである。

今回このような反響が多かったのは,今まさに日本で起こっている現象について,肯定的に報じている海外メディアが存在することについての情報が少ないからであろう。

そこで,今日もこの現象を肯定的に報じる海外メディアの記事を紹介しようと思う。

1.ツイッターによるコラ画像をめぐる海外メディアの肯定的評価

まず,RYOT Newsは,「日本のツイッターにおけるイスラム国人質事件に対する反応は全く素晴らしい(Japan’s Response on Twitter to the ISIS Hostage Crisis Is Absolutely Brilliant)」と題した記事で,この現象を紹介した上で,次のとおり指摘する。

【略】

結局のところ,テロという重大で恐ろしい不正義に立ち向かう上で,正しい方法も,悪い方法もない。しかし,近時のテロリストに対して,嘆いたり,激怒することから,ユーモアをもってテロリストを馬鹿にすることへの転換は,過激派が狙っている効果や望んでいる結果への対抗手段として,実行性があることは否定できない

(At the end of the day, there’s no right or wrong way to cope with a horrific injustice of this magnitude. But it’s hard to deny the recent shift from weeping outrage to humorous belittling does far more to defy the desired outcome these misguided radicals hope to effect.)

さらに Breitbart Newsは,「日本がツイッターにおけるコラ画像のタグ付けコンテストでイスラム国の人質ビデオに対抗(JAPAN MOCKS ISIS HOSTAGE VIDEO WITH PHOTOSHOP HASHTAG CONTEST ON TWITTER)」という記事で次のとおり指摘している。

交渉期限とされる72時間が経過し,日本がテロ組織と協調して,人質解放のために身代金を支払うのか否かははっきりしない。

(The 72-hour deadline has since passed, and it is not clear whether Japan will collaborate with the terrorist organization and pay them for the release of their citizens.)

結局,次の1つの呟き(ツイート)が,「#ISISクソコラグランプリ」というハシュタグの裏に込められたテロリストに対するメッセージを要約している。テロリストは,「地獄に落ちろ」ということである

(In short, one tweeter summarized the message behind the hashtag directed at ISIS, namely telling them to “go to hell”:)

【同紙はPeter Payneさんというツイッター利用者のツイートを引用】 「#ISISクソコラグランプリ」のメッセージは,「お前たちは,我々の同朋を殺すことができるだろう。しかし,日本は,早いインターネットがある平和で幸せな国である。地獄に落ちろ。」

また,RadioFreeEurope/RadioLibertyは,「(日本のツイッター利用者がイスラム国を馬鹿にして嘲笑うことで,人質事件に反抗(Japanese Twitter Users Defy Hostage Crisis By Mocking Islamic State)」と題した記事で,ネットでイスラム国のテロリストをコラ画像で嘲笑われた現象は,今回が初めてではなく,匿名のロシア人インターネット利用者により行われたことがあると紹介している。

テロリストのジハード戦士を名乗る「ジョン」は,「日本の国民(少なくとも日本のソーシャルメディアの利用者)」が彼のテロの脅威に対し,コラ画像コンテストという形で,対抗するとは予期していなかったと考えるのが合理的であろう。

(It is reasonable to assume that “Jihadi John” was not expecting that the “Japanese public” (or at least Japanese social-media users) would react to his threats in quite the way they have -- with a Photoshop contest.)

「#ISISクソコラグランプリ」と題したツイッターのハッシュタグを使い,日本のツイッター画像は急速に広まり,数百もの画像が共有されている。1月20日時点で,ツイッター上では,4万回もこのハッシュタグが使われている

(Using a Twitter hashtag that translates roughly as “ISIS crappy photoshop grand prix,” the Japanese Twitter meme has gone viral, with hundreds of images being shared. On January 20, there were around 40,000 mentions of the hashtag on Twitter.)

【中略】

ユーモアによって,イスラム国武装グループのプロパガンダに対する反撃を行うということは今や最も大きく広まり,最も人気な現象となっているが,日本のコラ画像グランプリが初めてのものではない

(While it is the largest and most popular phenomenon to date of using humor as a counter to the Islamic State group’s propaganda, the Japanese “Photoshop grand prix” is not the first case of its type.)

ロシア人の匿名インターネット利用者のグループがイスラム国のグループ(ロシア語を話す武装集団)に対して,数か月にわたって反撃したことがある。

(A group of anonymous Russian Internet users have been mocking the Islamic State group -- and Russian-speaking militants in Syria and Russia in general -- for months via a parody group known as TV Jihad, which claims to be a “joint project of Kavkaz Center (the media wing of the North Caucasus militant group the Caucasus Emirate) and TV Rain (a liberal Russian TV channel).")

【中略】

このツイートでは,イスラム国の指揮官, Umar al-Shishaniを雪の中の入れた画像を掲載し,ウクライナのドネツク州ドンバスのロシア分離主義者「Arseny Pavlov」のニックネームである「モトローラーか?」というメッセージ載せている。

(This tweet shows an image of IS military commander Umar al-Shishani in the snow and asks, “Motorola?” -- a reference to Arseny Pavlov, a pro-Russian separatist in the Donbas:)

この記事の最後の部分であるが,私は,ロシア情勢に詳しくないので,どういう説明なのかいまいち理解できないが,おそらく,イスラム国の武装リーダーを雪の中に入れて,ロシア分離主義者のモトローラーなる民兵と見た目が似ていることを馬鹿にしているのではないだろうか。

インターネット上で調べたところ,このモトローラーなるロシア分離主義者はドネツク州で死亡したという話もあるので,その関係でも意味があるのかもしれないが,はっきりとはわからない。

2.イスラム国関係者のツイッターアカウントが凍結

ツイッターが欧州の若者をイスラム国に参加させるプロパガンダの手段となっていることはよく知られている。

これに関して,非常に興味深いニュースをイギリスのデイリーメール紙電子版が報じている。

同紙によれば,数百ものイスラム国関係者・支持者のツイッターアカウントと疑われるものが,反テロキャンペーンにより,凍結されたという。

特に,1月20日の一晩(イギリス時間と思われる)で,400ものアカウントが凍結されたというのである。

ISISクソコラグランプリの影響か否かは不明であるが,私も確認したが,ツイッター上の「ISISクソコラグランプリ」の現象に反応していたイスラム国のアカウントは軒並み凍結されている。

また,日本のインターネット上では,「#ISISクソコラグランプリ 小市民が40びょうで出来る社会貢献」と題する記事などもあり,日本のツイッター利用者も,ISISクソコラグランプリに参加しつつ,ツイッターにイスラム国関係者のアカウントを通報する動きをしているのではないだろうか。

実際,私自身も,一部のイスラム国のツイッターアカウントが残忍な写真を掲載していることから,ツイッターで迷惑行為として通報している。

この点,デイリーミラー紙に対し,ツイッターの広報担当者は,「我々は,他者に対する直接又は特定の暴力を禁止した利用規約に違反したという報告を受けたアカウントをすべて精査しています(“We review all ­reported accounts against our rules, which prohibit direct, specific, acts of ­violence against others.”)」と述べており,こうしたイスラム国関係者の疑いがあるアカウントを通報するということは,テロリストのプロパガンダ活動を邪魔する点において有効なのかもしれない

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01/25/2015

キャメロン英国首相の日本人人質事件に関する声明

今朝,イスラム国により拘束されていた湯川さんが殺害されたとするニュースを受け,駐日イギリス大使のティム・ヒッチンズ(Tim Hitchens)氏がデイビット・キャメロン(David Cameron)総理の声明を紹介している。

英文でしか掲載されていないため,仮訳を付して紹介する。

キャメロン首相の声明は次のとおりである。

報道されている湯川遥菜さんの残忍な殺害とイスラム国による更なる脅威は,テロリストの残忍な蛮行を知らしめるものとなってしまいました。

(The reported brutal murder of Haruna Yukawa and the further threats made by ISIL are yet another reminder of the murderous barbarity of these terrorists.)

湯川さんのご家族のご心痛を心よりお察しいたします。
(My thoughts and prayers are with Mr Yukawa’s family.)

英国は,困難な状況にある日本国民と結束して立ち上がり,あらゆる可能な支援を引き続き日本政府に提供いたします。

(Britain stands in solidarity with the Japanese people at this difficult time and we will continue to offer the Japanese government all possible assistance.)

日本がテロに頭を下げて屈することを拒絶したことは正しい判断です。英国は,安倍晋三総理と同政府が示した毅然とした姿勢を強く支持するとともに,我々の市民のために,平和の進展とより安全かつ安定した将来を実現のため,日本及び世界の同盟国とともに引き続き協働していきます。
(Japan is right to refuse to bow to terrorism. Britain strongly supports the firm stance Prime Minister Abe and his government have taken and we will continue to work with Japan and other partners around the world to promote peace and to build a safer, more secure future for our citizens.)

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イスラム国(ISIS)に対するツイッター利用者の攻撃と海外からの評価

イスラム国により拘束された人質の殺害予告事件が行われ,連日メディアで報じられている中,一部のメディアでは取り上げられているが,まだあまり知られていないのが,日本人のツイッター利用者が,イスラム国の関係者と思われるツイッター利用者のアカウントに対して行った「ISISクソコラグランプリ」という『攻撃』である。

今日は,この現象について,海外,特に英字メディア等の評価を紹介する形で取り上げてみたい。

1.ツイッター上で行われている「ISISクソコラグランプリ」の概要

事の発端は,日本人拘束者の殺害予告動画をツイッター上で掲載していたイスラム国(ISIS)の関係者と思われるツイッター利用者のアカウントに対して,日本人のツイッター利用者が「#ISISクソコラグランプリ」と題したタグを付けて,殺害予告動画の一部の画像を加工して,送り付けたというものである。

この「クソコラ」というのは,糞みたいなコラージュ作品の略であり,クソというのは,「酷い」という意味で使われている。

具体的に言うと,日本人のツイッター利用者が,人質2人と「ジョン」というニックネームの黒づくめのテロリストの顔などを入れ替えたり,別の画像(例えば,アニメーションのキャラクターなど)と入れ替えたりするなどして加工し,イスラム国関係者の思われる利用者に送り付け,それが,「#ISISクソコラグランプリ」と題して,ツイッター上でイスラム国と思われるアカウントなどが炎上しているのである。

どのような画像であるかについては,以下のようなサイトに掲載されているし,ツイッター上で「#ISISクソコラグランプリ」というタグで検索をすれば,発見できるであろう。

本ブログでは著作権の侵害に当たるような画像であるため,かかる画像そのものは掲載しないが,次の2つのサイトから具体的な本件の流れは理解できるであろう。

○ ツイッターで #ISISクソコラグランプリ が流行 → イスラム国の人が洒落にならないほどキレてる

http://matome.naver.jp/odai/2142181104980381001

○ 【謎展開】イスラム国メンバーが #ISISクソコラグランプリ に参戦しだしたんだけど・・・

http://blog.esuteru.com/archives/8026850.html

私は,この行為を発見した当初,「酷い。テロリストに馬鹿が挑発攻撃できてしまう時代。とてつもないことがツイッターで行われてしまっている。」と極めて否定的に受け止めていた。

また,日本のメディアで本件を報じているものも,「不謹慎である」,「人質の命にかかわるのですぐに辞めるべきだ」などと全面的に否定的に報じる風潮である。

また,他のツイッター利用者の反応を見ても,「酷い」とか,「日本でテロが起きたらどうする」とか,「フランスでテロが起きた原因を理解していない」などと極めて厳しい評価が多く見られた。

しかしながら,この日本人ツイッター利用者達の『攻撃』を,意外にも海外メディアは全否定せずに報じている例えば,「テロにユーモアで対抗」とか「アメリカ政府すら成し得なかったことを日本のツイッター利用者が実現した」などとむしろ肯定的に報じているのである。

2.肯定的に報じる英字メディア

そこで,いくつかの英字メディア,ジャーナリストの反応を紹介する。

なお,和訳は私が簡易に仮訳を付したものであり,誤訳等があるかもしれないことを前提に読んでいただきたい。

日本のツイッター利用者がイスラム国にコラージュ画像で対抗(Japanese Twitter Users Stand Up to ISIS with...a Photoshop Meme)」と題した英字記事は,各コラージュ画像を紹介した上で,次のとおり指摘する。

いくつかのコラージュ画像をみると,ツイッター利用者が単にテロリストによる身代金要求という状況を軽視し,ふざけているだけなのかは判然としない。

他方で,日本人のツイッター利用者は,コラージュ画像で,イスラム国をからかっているように見える

人質の命を軽んじ,呑気過ぎるのではないかという懸念があるのは明白である。

しかし,日本のツイッター利用者は,恐怖を通じて人々をコントロールしようというテロリストの手法に対し,ユーモアで対抗しているのではかなろうか

(With some of the Photoshops, it's unclear if people are simply making light of the situation. In others, it does appear that they are poking fun at ISIS. The concern, obviously, is that people might seem too light-hearted about the lives of these men. Or perhaps, they're using humor to resist being controlled through fear?)

【中略】

はっきりしていることは,日本のツイッター利用者が日本政府に対し身代金を支払うように圧力をかけろというテロリストの要求に対して,それを拒否しているということである。

(What is clear, however, is that there are some Twitter users refusing to bow down to demands that they pressure the Japanese government to pay up. For now, that is.)

このように,全面否定することなく,客観的な視点から分析し,肯定的な面を指摘しているのである。

また,アメリカのNBC Newsの電子版も「日本のツイッター利用者がインターネット画像でイスラム国を嘲笑う(Japanese Twitter Users Mock ISIS With Internet Meme)」と題し,この現象を紹介した上で,次のとおり指摘する。

日本のツイッター利用者は,日本人人質事件において,全国的なコラージュ風刺画像を用いた戦いで,イスラム国を嘲笑うことで反抗している

(Japanese Twitter users are defying their country's hostage crisis by mocking ISIS with a nationwide Photoshop battle of satirical images.)

【中略】

ソーシャルメディア分析会社のTospy社によると,「ISISクソコラグランプリ」という日本語のフレーズは,この1日,2日で,6万回以上もツイッター上で言及されているという。これらのつぶやきでは,イスラム国の様々な人質映像の一部を切り取り,面白おかしく日本のゲーム文化の画像などとともに,多くが加工されている。

(The phrase, which loosely translates to "ISIS Crappy Photoshop Grand Prix," has been mentioned more than 60,000 times over the past few days, according to social analytics company Topsy. These tweets include screengrabs from various ISIS hostage videos photoshopped in comical ways, and many of the images reference Japanese gaming culture.)

このとおり,アメリカの大手メディアも必ずしも否定的には報じていない。

さらに別の英字メディアは,「日本の馬鹿げたイスラム国のプロパガンダに対する対応は,アメリカ政府でさえ成し遂げられなかったことをやってのけた(Japan's silly response to ISIS propaganda did what the U.S. government couldn't)」と題し,次のとおり指摘する。

今週,日本のインターネット利用者は,団結してイスラム国を嘲笑うためにコラージュ画像を用い,馬鹿馬鹿しく,軽蔑した画像をテロリストに送り付けるという戦いを展開した。

この努力は人質の救出には繋がらないであろうが,将来のテロを防止するという点において,少なくとも役立つものである。

(This week Japanese Internet users rallied together to mock the Islamic State (a.k.a. ISIS or IS) with a Photoshop battle that shows the terrorists in a series of  absurd and contemptuous images. This effort won’t save the hostages, but it could, in at least a small way, help prevent future terrorism.)

【中略】

アメリカ政府は,イスラム国のネット上でのプロパガンダに対し,反論のためのプロパガンダ技術を駆使してきたが,これまでのところ,アメリカ政府の試みは失敗に終わっている。

アメリカ政府の手法は,ジャーナリストに反イスラム国のメッセージを送ったり,粗末に作られたビデオを作成したりするというものであって,時代遅れであり,いずれもパッとしないものであった。

アメリカ国務省の前顧問であるShahed Amanullah氏もガーディアン紙に対し,アメリカの戦略はイスラム国のグループを強くしてしまったに過ぎないと認め,「イスラム国は彼らの支持者に対し,『見てみろ?我々はすべてにおいて力がある。アメリカがそれを証明している。』と言わせてしまっている」と述べている。

(The U.S. government has tried counter-propaganda techniques by engaging with IS online, but has failed thus far. Their methods, which include sending anti-IS quotes to journalists and creating poorly produced videos, are dated and lackluster. In a piece for the Guardian, former State Department advisor Shahed Amanullah says that America’s tactics have only made the group stronger: “They turn right around to their followers and say, ‘See? We’re every bit as powerful as we say we are, the US government is proof.’”)

では,なぜ今回の日本での出来事が貴重なのであろうか。それは,アメリカ政府が失敗してきた試みを効果的にやってのけたからである。

(So, why is Japan’s response so valuable? Because it was effective where America's attempts have failed.)

プロパガンダに対する反論を展開する上で重要なのは,相手の効果を減殺することにある。イスラム国についていえば,武装グループは,自らが正義であり,かつ,獰猛であると見せたいのである。

しかし,イスラム国のプロパガンダを間抜けなアニメのキャラクターと合成することで,日本のインターネットユーザーは,イスラム国自身が馬鹿げた存在であるように見せることに成功したのである。

テロリストグループに参加しようとする人々を,テロリストを世界の指導者が強く警戒しているということを知り,テロリストが自らの正義のために闘っているということが,参加を促すものとなってしまっている。

しかし,日本のツイッター利用者は,テロリストを取るに足らないものとして描写し,弱体化させることで,テロリストが発するメッセージの重さを破壊したのである。

(The point of counter-propaganda is to undercut the other side's efforts. In the case of IS, the militant group wants to look righteous and fierce. By combining IS propaganda with goofy anime characters, Japanese Internet users in turn made IS look silly. Those looking to join the terrorist group know that it is admonished by almost every world leader, which is part of the draw—standing up for what they see is right. But, emasculating these terrorists and depicting them as anything but serious subverts the gravity of their message.)

これは,小さな勝利かもしれない。しかし,テロリストが参加者を増やすことで力を増していることを考慮すれば,日本人がイスラム国に対する完璧な武器を用いて,世界に,そのメッセージを発したことが,新たな参加者を妨げる唯一の方法となるだろう。

(This may sound like a small victory, but considering that a terrorist group is only as powerful as its number of recruits, and it can only draw new fighters through the strength of its messaging, the Japanese may have just provided the world with the perfect weapon against IS.)

このとおり,全面的にこの現象を肯定的に捉えているものもあるのである。

実際、この現象が続く中で,いかなる理由かは不明であるが,いくつかのイスラム国関係者と思われるツイッターのアカウントが凍結されている。

確かに,この現象極めて不謹慎であるようにも思うが,英字メディアの指摘は必ずしも的外れの指摘とは切り捨てられない説得力があることは否定できない。

3.日本の自己責任論の検証

多数の日本人の世論は,イラクでの人質事件の時と同様に,今回の人質事件についても,自己責任論が徹底して浸透していると思われる。

この自己責任論を批判する動きもあるようであるが,なぜ自己責任論が日本では根強く徹底して浸透しているのかについて,以下,少々検討してみたい。

まず,自己責任論は結局のところ日本人の規範意識の高さにある意味起因しているのではないだろうか

つまり,我が国は,規範意識が諸外国に比べて高く,政府などが「危険などで行くべきではない」とか,「危険なので行うべきではない」という明確な忠告があり,その忠告を十分認知できる状況であったにもかかわらず,その忠告を破って,当該行動を行い,それに伴う危険が現実化したとしても,そのような人を助けることの必要性は極めて低いという思考につながっているのであろう。

これはコース外滑走の遭難者への非難という現象についても同じことがいえる。

これは,刑法における故意論にも似ていると思われる。

故意犯を強く批判する本質は,規範に直面して反対動機の形成が可能であったにもかかわらず,あえて当該犯行を行った点にあると説明される。

つまり,「反対動機形成可能であった」というのは,「犯行を踏みとどまることができたにもかかわらず」ということである。

これと似た思考が自己責任論の根底にあるのであろう。

この当否は別途議論されるべきであろうが,自己責任論そのものは,我が国の国民の規範意識の高さを示すものであり,人質に対して冷たいかもしれないが,テロリストには屈しないという姿勢を示すものとしては,否定されるべきものではないと考える。

また,上記の英字メディアの指摘を踏まえ,改めて考えてみると,テロの恐怖に屈し,畏怖した姿勢を示してしまうことがテロリストの目的であるプロパガンダ効果に利することになるのであって,我が国及び国民がいかなることがあっても,不当な犯罪者の要求を受け付けないという姿勢を示すことが,更なる被害を防ぐことになるだろう。なぜならば,日本人を拉致し,殺しても,一切響かないとテロリストに思わせることができるからである。

いずれにしても,テロリストも日本国民の多数が自己責任論を再び強く唱え,さらに,「ISISクソコラグランプリ」などという現象を展開し,テロリストの要求を呑むように働きかける動きがほとんど起きていなかったことは予想していなかったのではなかろうか

※ コラ画像をテロリストと思われるアカウントに送付する行為が刑法の外患に関する罪に当たるとかいうわけのわからない主張があったので,言及しておくが,単に送付する行為は外患に関する罪には当たりえない。当たると言っている人はいかに無知な主張をしているか刑法81条以下の各条文を読んでみることをお勧めする。他方で,コラ画像は著作権を侵害し違法なものもある。

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