不法残留者を増やす政府の査証免除政策
前回は,ディズニー社の映画「アナと雪の女王」に関する著作権侵害を活用した発信力について記事「侵害排除ではなく機会を逃さずに侵害を活用する柔軟な発信力が重要」 を書いたが,この映画,特に,劇中の歌と音楽は世界的な大ヒットを続けており,全世界の興行収入は4月27日時点で11.4億ドルを突破したらしい。
さらには,日本では珍しいが,映画館で映画を見ながら,観客が歌うという「みんなで歌おう歌詞付上映」という試みも先週の土曜日から行われており,ディズニー社の攻めの姿勢がよく見える。アメリカでは,このような試みはミュージカル映画では時々行われているのは知っていたが,日本でも好評のようで,私が調べたところ,週末や祝日は軒並み完売のようである。日本人の観客がどのように楽しむのかを見てみたいし,個人的にも映画館で一緒に歌うというものを経験してみたいので,行ってみたいと思っている。予約が取れれば,ぜひ行ってみたい。
1.タイ人の不法残留者急増とそれを検証すらせずに更なる査証免除に突き進もうとする政府
さて,今日は,前回のカルチャーの発信というような話題とは変わり,より政治的な話題を取り上げたい。それが,安倍政権の査証政策である。
既に一部の新聞が盲目的肯定姿勢で,査証緩和政策について,報じているが,どの官庁の意向を受けているのかわからないが,この政策が失政ともいうべき重大な負の遺産を生じさせていることについては,一切報じていないのである。
それが,安倍政権が行った査証免除が原因と考えられるタイ人の不法残留者の急激な増加という問題である。
私は以前,中国人に対する数次査証の発給に対する外務省の姿勢を厳しく批判したが,どうも我が国の政治家たちは,バブル経済の幻想から逃れられない経済界の意向のせいなのかわからないが,目先の経済的利益を確保したいという思惑で,日本の治安の良さや平穏な社会という極めて貴重な財産を犠牲にしたいようである。
一部報道によれば,政府自民党は,インドネシア,ベトナム,フィリピンの査証免除を実施することを考えているということである。
しかしながら,政府は昨年7月にタイ人に対する査証免除を実施しているところ,タイ人の不法残留者の急激な増加について,国民的な検証はおろか,十分な情報公開を一切行っていないのであり,我々国民には,治安の悪化や平穏な社会の毀損につながる重大な情報を知らせないまま,更なる不法残留者増加政策を進めようとしていると言っても過言ではないだろう。
そこで,法務省が唯一公開している大雑把な情報から,タイ人の不法残留者がいかに急増しているか検討したい。
法務省の公表資料によれば,平成24年1月1日時点のタイ人の累積不法残留者数は,3,714人である。
そして,平成25年1月1日時点のタイ人の不法残留者数は,3,558人である。
つまり,当時は,タイ人が我が国に入国するには外務省が所管する在外公館から必ず査証を受けることとなっていたことから,この数字からは,外務省による査証発給拒否や入国審査官による水際での入国拒否の努力により,不法残留の可能性があるタイ人の入国を排除して,増加を抑制していたことはもちろん,退去強制されたり,自ら出頭して出国したことにより,平成24年1月1日から25年1月1日までの間,タイ人の不法残留者は,少なくとも,156人の減少に成功していることがわかる。
ところが,平成25年7月1日に査証免除が実施されたことに起因するとしか思われないような数字の増加が平成26年1月1日時点のタイ人の不法残留者数に見られる。
平成26年1月1日時点のタイ人の不法残留者数は,なんと,4,391人である。つまり,833人もの新規不法残留者が発生しているのである。
他方で,報道によれば,法務省は平成25年12月に税金を使ってチャーター機を使用した退去強制を実施しているところ,退去強制されたタイ人は,46人ということである。
査証免除の実施は7月1日からであるから,そうすると,約半年の間で,約900人近いタイ人が新規に不法残留化しているのではないかという推論が成り立つだろう。
仮に,このままのペースで増加し続けているということであれば,1年間(昨年7月1日から本年6月末に向け)で,約1,800人の不法残留者が増加している可能性があり,平成25年1月1日時点の約3500人の半数にも及ぶことになる。いずれにしても,半年で約900人というのは異常であり,不法残留者を安倍政権と外務省及び外国人観光客の誘致を急ぐ観光庁の失政により増加させたと言えるのではなかろうか。
政府は,まず新たな査証免除をフィリピンやベトナム,インドネシアなどに対して実施する前に,きちんとした情報公開を国民に対して行った上で,タイ人の新規不法残留者が一見して急増している原因につき,国民的な議論をして検証すべきではなかろうか。
しかしながら,政府がこれについて検討しているという話は一切我々国民には聞こえてこない。
もちろん,この833人が査証免除開始の昨年7月1日より前に発生したということも考えられなくはないが,公開情報からすれば,原因が査証免除にあると考えるのが自然であろう。
査証を免除するということは,国家が有する外国人に対する強力なスクリーニング権限を放棄するということである。我が国の入国審査では,東京ディズニーリゾートもビックリするような,待ち時間を20分以内にするという目標が設定されているようで,せいぜい1人に係る時間は数分ということになるから,入国審査という水際において,不法残留の懸念がある外国人を十分審査することは不可能に近いだろう(個人的には不審な外国人を排除するためには徹底した入国審査を行うべきであり,その結果,1時間以上の待ち時間が生じたとしても,外国人は甘受すべきであると思うし,現に,他の国に私が行くときはこれくらいの待ち時間は普通である)。
つまり,日本で不法就労目的で入国し,不法残留者となって,犯罪に手を染めていくような外国人をいかに排除するかは,在外公館における査証審査にかかっていると言っても過言ではない。
にもかかわらず,不法残留者が多い,東南アジアの国に対して査証免除を実施するというのは,不法残留者増加政策と言っても過言ではなく,政府は,目先の経済的利益を優先し,我が国の治安と社会的平穏を犠牲にする極めて売国的政策を実施しようとしているのではなかろうか。
政府や自民党は,経済効果があると言っているようであるが,これは目先の利益である。不法残留者が増えることによる社会的経済負担の増加については,一切検討されていない。
上記でも述べたが,政府は,退去強制者を送還するため,数千万円の予算を計上し,チャーター機を手配している。これだけでも大きなコストであるが,不法外国人が逮捕され,刑事裁判を受け,さらには退去強制されるまでに,警察官,検察官,裁判官,刑務官,入国警備官,入国審査官と様々な官憲が関与しており,これらの公務員が関与したことに対するコストは膨大なものであるし,さらには,刑務所や収容所での食費等も税金で賄うのである。なぜ不法外国人に対する税金を増やすような政策をするのか私にはさっぱりわからない。
法務省の推移表をみても明らかなとおり,5年をかけてやっと,約9万人近い不法残留者を削減してきたにもかかわらず,半年で約900人のタイ人の不法残留者の急増という問題に対する検討はもちろん,情報公開を一切していない政府は売国政策を推進しているとの誹りを免れないのではなかろうか。
外国人労働者の受け入れを拡大するという報道も多々見られるが,日本政府は,社会の平穏がいかに貴重であり,治安が良いというのはタダではないという事実をより真剣に考えるべきである。
そして,外国人の労働者の安易な受け入れは,イギリス,フランス,ドイツをはじめとする欧州各国が抱えている不法移民と共存の難しさについて,もっと開かれた真摯な議論を尽くしたうえで行われるべきではなかろうか。
私は,今の自民党政権が行おうとしていることは,今後,100年以上にわたって我が国に重大な社会的不安要因をもたらす極めて危険な政策であると考えている。
外国人労働者を受け入れるということは,彼らとの社会的共存と社会への統合をいかに行っていくかという問題と表裏一体の問題のはずである。
しかしながら,現在報道されているような話は,いかに経済成長を進めるのかという目先の議論のみである。
2.フランス,ドイツ,イギリスが抱える移民問題
この目先の利益を優先した結果,フランスではアラブ諸国からの移民が急増し,フランス社会への統合を望まないアラブ系移民が治安を悪化させると同時に,フランス文化を毀損し,さらには社会保障費の負担を増加させているという話はよく聞く話である。
フランスの国民戦線という政党が支持を伸ばしているのも,そうした移民への不満が根強いとされている。
あるフランス人の友人は,アラブ系移民が増えて,宗教的価値観や自分たちのイスラムの価値観を他者に押し付けた結果,パリではおいしくないハラルの肉ばかりとなり,フランス料理のレベルが落ちていると述べていた。
実際,フランスでは,ハラル肉の問題は2012年の大統領選挙の争点となっているほどである。
つまり,少数者の権利保護を優先したあまりに多数者が同じハラル肉を食わされてしまっていることへの不満が根強く,その声は大統領選の争点となるほど高まっているのであり,このことは,フランスがいかにイスラム系移民との共存と社会への統合が失敗しているかを如実に表わしているだろう。
また,ドイツは,トルコ系移民の共存及び社会への統合の問題を抱えている。ドイツはまさに今日本が行おうとしているような期限付きの単純労働者の受け入れを第2次世界大戦後に実施した結果,その問題が未だに尾を引いている。社会に統合されないトルコ系移民が犯罪に走ったり,社会保障費を増加させているのである。さらには,そうしたトルコ系移民に対するヘイトクライムも多々発生していると聞く。
イギリスも同じである。
今年2月のイギリス紙電子版の報道によれば,世論調査において,70%のイギリス人がこれ以上移民を受け入れるべきではないと回答したという。
また,左派で移民を推し進める主張が強い英国自由民主党を支持する人を見ても,およそ半数が移民受け入れ政策を改め,現在の受け入れ人数の半数以下にすべきと回答していることも注目に値する。さらに,注目すべきは,44%の人が移民が英国国民の生活に何ら寄与していないと感じている点である。こうした数字の背景には,社会的統合ができていない現実が如実に表れているのである。
こうした欧州の主要国の現状を見ると,我が国が進めようとしている目先の利益を優先した政策が,長期的な視点で見れば,百害あって一利ないことは明らかではなかろうか。
3.まとめ
よく国家100年の計などといわれるが,安倍政権及び自民党の性急な査証政策及び外国人受け入れ政策は,不法残留者増加推進政策及び社会的不安増大政策と評されても仕方ない。
外国人犯罪は増加傾向にあり,警察庁の発表によれば,特にベトナム人による犯罪が目立っている。
政府は,まず,タイ人の不法残留者増加の原因についてきちんと検証した結果を国民に提示し,そのうえで,今進めようとしている政策が今後の日本社会のあり方に重大な危機を及ぼすかもしれないという強い危惧感を持ち,欧州の抱える移民問題と同じ道を進まないためにはどうすべきかという視点で,情報を国民に開示し,十分に国民的な議論を進めるべきではなかろうか。
また,与党の政治家も野党の政治家もくだらない国会質問をするのではなく,政府が積極的に公表したがらない情報を追及するような質問や主意書を作成して,国民の代表使者としての機能を果たし,我が国の治安や社会の平穏に影響を重大な影響を与える政策が主権者抜きで進まないように監視すべきである(残念ながらそのような気骨のある政治家はおらず,短絡的な視点で目先の経済的利益を優先し,貴重な治安や社会の平穏を安売りする売国的な政治家が与党にも野党にもあふれているようであるが・・・)。
そして,我々,国民も政府が流す都合のよい情報を垂れ流すだけの主要メディアの情報のみをうのみにせず,公開情報をつぶさに検証し,不都合な情報が隠されていないかという視点から慎重に外国人の受け入れの問題について,議論を巻き起こしていかなければならないだろう。
今,日本の進むべきあり方が問われている。
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