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April 2014

04/30/2014

不法残留者を増やす政府の査証免除政策

前回は,ディズニー社の映画「アナと雪の女王」に関する著作権侵害を活用した発信力について記事「侵害排除ではなく機会を逃さずに侵害を活用する柔軟な発信力が重要」 を書いたが,この映画,特に,劇中の歌と音楽は世界的な大ヒットを続けており,全世界の興行収入は4月27日時点で11.4億ドルを突破したらしい。

さらには,日本では珍しいが,映画館で映画を見ながら,観客が歌うという「みんなで歌おう歌詞付上映」という試みも先週の土曜日から行われており,ディズニー社の攻めの姿勢がよく見える。アメリカでは,このような試みはミュージカル映画では時々行われているのは知っていたが,日本でも好評のようで,私が調べたところ,週末や祝日は軒並み完売のようである。日本人の観客がどのように楽しむのかを見てみたいし,個人的にも映画館で一緒に歌うというものを経験してみたいので,行ってみたいと思っている。予約が取れれば,ぜひ行ってみたい。

1.タイ人の不法残留者急増とそれを検証すらせずに更なる査証免除に突き進もうとする政府

さて,今日は,前回のカルチャーの発信というような話題とは変わり,より政治的な話題を取り上げたい。それが,安倍政権の査証政策である。

既に一部の新聞が盲目的肯定姿勢で,査証緩和政策について,報じているが,どの官庁の意向を受けているのかわからないが,この政策が失政ともいうべき重大な負の遺産を生じさせていることについては,一切報じていないのである。

それが,安倍政権が行った査証免除が原因と考えられるタイ人の不法残留者の急激な増加という問題である。

私は以前,中国人に対する数次査証の発給に対する外務省の姿勢を厳しく批判したが,どうも我が国の政治家たちは,バブル経済の幻想から逃れられない経済界の意向のせいなのかわからないが,目先の経済的利益を確保したいという思惑で,日本の治安の良さや平穏な社会という極めて貴重な財産を犠牲にしたいようである。

一部報道によれば,政府自民党は,インドネシア,ベトナム,フィリピンの査証免除を実施することを考えているということである。

しかしながら,政府は昨年7月にタイ人に対する査証免除を実施しているところ,タイ人の不法残留者の急激な増加について,国民的な検証はおろか,十分な情報公開を一切行っていないのであり,我々国民には,治安の悪化や平穏な社会の毀損につながる重大な情報を知らせないまま,更なる不法残留者増加政策を進めようとしていると言っても過言ではないだろう。

そこで,法務省が唯一公開している大雑把な情報から,タイ人の不法残留者がいかに急増しているか検討したい。

法務省の公表資料によれば,平成24年1月1日時点のタイ人の累積不法残留者数は,3,714人である。

そして,平成25年1月1日時点のタイ人の不法残留者数は,3,558人である。

つまり,当時は,タイ人が我が国に入国するには外務省が所管する在外公館から必ず査証を受けることとなっていたことから,この数字からは,外務省による査証発給拒否や入国審査官による水際での入国拒否の努力により,不法残留の可能性があるタイ人の入国を排除して,増加を抑制していたことはもちろん,退去強制されたり,自ら出頭して出国したことにより,平成24年1月1日から25年1月1日までの間,タイ人の不法残留者は,少なくとも,156人の減少に成功していることがわかる。

ところが,平成25年7月1日に査証免除が実施されたことに起因するとしか思われないような数字の増加が平成26年1月1日時点のタイ人の不法残留者数に見られる

平成26年1月1日時点のタイ人の不法残留者数は,なんと,4,391人である。つまり,833人もの新規不法残留者が発生しているのである。

他方で,報道によれば法務省は平成25年12月に税金を使ってチャーター機を使用した退去強制を実施しているところ,退去強制されたタイ人は,46人ということである。

査証免除の実施は7月1日からであるから,そうすると,約半年の間で,約900人近いタイ人が新規に不法残留化しているのではないかという推論が成り立つだろう

仮に,このままのペースで増加し続けているということであれば,1年間(昨年7月1日から本年6月末に向け)で,約1,800人の不法残留者が増加している可能性があり,平成25年1月1日時点の約3500人の半数にも及ぶことになる。いずれにしても,半年で約900人というのは異常であり,不法残留者を安倍政権と外務省及び外国人観光客の誘致を急ぐ観光庁の失政により増加させたと言えるのではなかろうか。

政府は,まず新たな査証免除をフィリピンやベトナム,インドネシアなどに対して実施する前に,きちんとした情報公開を国民に対して行った上で,タイ人の新規不法残留者が一見して急増している原因につき,国民的な議論をして検証すべきではなかろうか

しかしながら,政府がこれについて検討しているという話は一切我々国民には聞こえてこない

もちろん,この833人が査証免除開始の昨年7月1日より前に発生したということも考えられなくはないが,公開情報からすれば,原因が査証免除にあると考えるのが自然であろう。

査証を免除するということは,国家が有する外国人に対する強力なスクリーニング権限を放棄するということである。我が国の入国審査では,東京ディズニーリゾートもビックリするような,待ち時間を20分以内にするという目標が設定されているようで,せいぜい1人に係る時間は数分ということになるから,入国審査という水際において,不法残留の懸念がある外国人を十分審査することは不可能に近いだろう(個人的には不審な外国人を排除するためには徹底した入国審査を行うべきであり,その結果,1時間以上の待ち時間が生じたとしても,外国人は甘受すべきであると思うし,現に,他の国に私が行くときはこれくらいの待ち時間は普通である)。

つまり,日本で不法就労目的で入国し,不法残留者となって,犯罪に手を染めていくような外国人をいかに排除するかは,在外公館における査証審査にかかっていると言っても過言ではない

にもかかわらず,不法残留者が多い,東南アジアの国に対して査証免除を実施するというのは,不法残留者増加政策と言っても過言ではなく,政府は,目先の経済的利益を優先し,我が国の治安と社会的平穏を犠牲にする極めて売国的政策を実施しようとしているのではなかろうか

政府や自民党は,経済効果があると言っているようであるが,これは目先の利益である。不法残留者が増えることによる社会的経済負担の増加については,一切検討されていない。

上記でも述べたが,政府は,退去強制者を送還するため,数千万円の予算を計上し,チャーター機を手配している。これだけでも大きなコストであるが,不法外国人が逮捕され,刑事裁判を受け,さらには退去強制されるまでに,警察官,検察官,裁判官,刑務官,入国警備官,入国審査官と様々な官憲が関与しており,これらの公務員が関与したことに対するコストは膨大なものであるし,さらには,刑務所や収容所での食費等も税金で賄うのである。なぜ不法外国人に対する税金を増やすような政策をするのか私にはさっぱりわからない

法務省の推移表をみても明らかなとおり,5年をかけてやっと,約9万人近い不法残留者を削減してきたにもかかわらず,半年で約900人のタイ人の不法残留者の急増という問題に対する検討はもちろん,情報公開を一切していない政府は売国政策を推進しているとの誹りを免れないのではなかろうか。

外国人労働者の受け入れを拡大するという報道も多々見られるが,日本政府は,社会の平穏がいかに貴重であり,治安が良いというのはタダではないという事実をより真剣に考えるべきである。

そして,外国人の労働者の安易な受け入れは,イギリス,フランス,ドイツをはじめとする欧州各国が抱えている不法移民と共存の難しさについて,もっと開かれた真摯な議論を尽くしたうえで行われるべきではなかろうか。

私は,今の自民党政権が行おうとしていることは,今後,100年以上にわたって我が国に重大な社会的不安要因をもたらす極めて危険な政策であると考えている。

外国人労働者を受け入れるということは,彼らとの社会的共存と社会への統合をいかに行っていくかという問題と表裏一体の問題のはずである。

しかしながら,現在報道されているような話は,いかに経済成長を進めるのかという目先の議論のみである。

2.フランス,ドイツ,イギリスが抱える移民問題

の目先の利益を優先した結果,フランスではアラブ諸国からの移民が急増し,フランス社会への統合を望まないアラブ系移民が治安を悪化させると同時に,フランス文化を毀損し,さらには社会保障費の負担を増加させているという話はよく聞く話である。

フランスの国民戦線という政党が支持を伸ばしているのも,そうした移民への不満が根強いとされている。

あるフランス人の友人は,アラブ系移民が増えて,宗教的価値観や自分たちのイスラムの価値観を他者に押し付けた結果,パリではおいしくないハラルの肉ばかりとなり,フランス料理のレベルが落ちていると述べていた。

実際,フランスでは,ハラル肉の問題は2012年の大統領選挙の争点となっているほどである。

つまり,少数者の権利保護を優先したあまりに多数者が同じハラル肉を食わされてしまっていることへの不満が根強く,その声は大統領選の争点となるほど高まっているのであり,このことは,フランスがいかにイスラム系移民との共存と社会への統合が失敗しているかを如実に表わしているだろう。

また,ドイツは,トルコ系移民の共存及び社会への統合の問題を抱えている。ドイツはまさに今日本が行おうとしているような期限付きの単純労働者の受け入れを第2次世界大戦後に実施した結果,その問題が未だに尾を引いている。社会に統合されないトルコ系移民が犯罪に走ったり,社会保障費を増加させているのである。さらには,そうしたトルコ系移民に対するヘイトクライムも多々発生していると聞く。

イギリスも同じである。

今年2月のイギリス紙電子版の報道によれば,世論調査において,70%のイギリス人がこれ以上移民を受け入れるべきではないと回答したという。

また,左派で移民を推し進める主張が強い英国自由民主党を支持する人を見ても,およそ半数が移民受け入れ政策を改め,現在の受け入れ人数の半数以下にすべきと回答していることも注目に値する。さらに,注目すべきは,44%の人が移民が英国国民の生活に何ら寄与していないと感じている点である。こうした数字の背景には,社会的統合ができていない現実が如実に表れているのである。

こうした欧州の主要国の現状を見ると,我が国が進めようとしている目先の利益を優先した政策が,長期的な視点で見れば,百害あって一利ないことは明らかではなかろうか。

3.まとめ

よく国家100年の計などといわれるが,安倍政権及び自民党の性急な査証政策及び外国人受け入れ政策は,不法残留者増加推進政策及び社会的不安増大政策と評されても仕方ない

外国人犯罪は増加傾向にあり,警察庁の発表によれば,特にベトナム人による犯罪が目立っている。

政府は,まず,タイ人の不法残留者増加の原因についてきちんと検証した結果を国民に提示し,そのうえで,今進めようとしている政策が今後の日本社会のあり方に重大な危機を及ぼすかもしれないという強い危惧感を持ち,欧州の抱える移民問題と同じ道を進まないためにはどうすべきかという視点で,情報を国民に開示し,十分に国民的な議論を進めるべきではなかろうか

また,与党の政治家も野党の政治家もくだらない国会質問をするのではなく,政府が積極的に公表したがらない情報を追及するような質問や主意書を作成して,国民の代表使者としての機能を果たし,我が国の治安や社会の平穏に影響を重大な影響を与える政策が主権者抜きで進まないように監視すべきである(残念ながらそのような気骨のある政治家はおらず,短絡的な視点で目先の経済的利益を優先し,貴重な治安や社会の平穏を安売りする売国的な政治家が与党にも野党にもあふれているようであるが・・・)。

そして,我々,国民も政府が流す都合のよい情報を垂れ流すだけの主要メディアの情報のみをうのみにせず,公開情報をつぶさに検証し,不都合な情報が隠されていないかという視点から慎重に外国人の受け入れの問題について,議論を巻き起こしていかなければならないだろう。

今,日本の進むべきあり方が問われている

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04/08/2014

侵害排除ではなく機会を逃さずに侵害を活用する柔軟な発信力が重要

政府は平成23年5月にクールジャパン官民有識者会議の提言を発表し,経産省がそれに基づいて,施策を進めているが,提言から約2年経った今,この「クールジャパン」によりいかなる効果があったのであろうか。

少なくとも,個人的なレベルで,このクールジャパンの効果が出ているなと感じる現象は海外とのやり取りや外国人の友人とのやり取りの中でまったく感じることはできていない。

また,経産省の平成25年度のクールジャパン戦略推進事業の概要を見ると,パワーポイント資料もごちゃごちゃとしてて見づらく,そこに記載されている事業は,どれもピンと来ない話ばかりではなかろうか。

資料がごちゃごちゃして見づらく何を伝えたいのか一見して分かりにくい時点で,税金をつぎ込み,その事業に投資すべき価値はないと思うのであるが,日本の官僚はこのようなごちゃごちゃと詰め込んだ資料で,いかにも「凄いことをやるぞ感」を出し,物事の本質を見えにくくして,無駄遣いという批判を回避するのには長けている。

いずれにしても,提言から2年経つが,このクールジャパンという施策の効果は,巨額の税金を投入したものの,かつてのイギリスのブレア首相主導の「Cool Britannia」(Rule Britanniaという歌をもじった造語)のような経済構造の根本に影響を与えるような抜本的な改革につながるようなものは,我が国の「Cool Japan」政策からは一つも見えてこない。

むしろ,経産省が示している資料をみると,経産省という極めて古い,バブル意識から脱却できない利権体質の省が担当しているということで,このクールジャパンという施策がいかに税金の無駄遣いではないかと益々思えてくるのである。

既に,クールジャパンがいかに無駄であるかという点は,様々な人が指摘しているので,今日は,クールジャパンなどという税金の無駄遣いをしなくても,我が国の文化発信は視点を変えることでいかに成功に導くことができるかについて,著作権侵害に対する対応という観点から,私見を発することとする。

日本企業は,特に日本のエンターテイメント産業は,ネット上での著作権侵害を発見した場合,その著作権に基づき,侵害を排除することを常に考えているようである。

しかしながら,インターネットがこれ程普及し,ネットのない生活は極めて不自由という時代において,程度の大小はあるにせよ,ネット上での著作権侵害は日常的に行われている。

日本のエンターテイメント産業にとって,そのコンテンツ力を世界に発信する上では,この現状を直視し,侵害の排除より,侵害行為をいかに有効利用して,PRにつなげていくかという視点が重要ではなかろうか

例えば,3月に公開された映画,「アナと雪の女王(英語題名:Frozen)」では,アメリカのディズニー社は,この映画の核となる歌,「Let it go(ありのままで)」を映画公開後にYouTube上に公開し,積極的にPRとしてネットを活用している。

YouTube上に公開するということは,その動画そのものや音源を違法にダウンロードされ,さらには,それらの違法なダウンロードにより取得した動画や音源を活用して作られた動画等により二次的な著作権侵害も発生するおそれがあることは明らかである。

現に,YouTube上には,この曲のカバーとして素人が歌う動画が沢山存在するが,私がネットを調べた限りではあるが,ディズニー社が昨年12月6日に「Let it go」の動画を公開して以降,現在まで,カバー曲の動画について削除を申し立てたという話は,ネット上ではほとんど見つからなかった。

むしろ,米国ディズニー社は,動画を積極的に公開し,コメント欄も自由に書き込める状態にしたうえで,カバーにより話題となることをむしろPR戦略として,積極的に著作権侵害を許容しているように思われる。

例えば,次の動画は,大学で音楽を専攻する19歳のジェアードさんがアップロードした男声バージョンの「Let it go」のカバー曲動画である。

もともと女性向けのこの歌を見事に男声で歌い上げており,この19歳の青年の歌唱力の高さは大変素晴らしい。

もっとも,この動画で,彼は,歌詞を「I'm the king」とか「good boy」,「perfect boy」と変更して歌われているところ,かかる変更であっても,厳密にいえば,同一性保持権の侵害ということになると思われるが,むしろ,ディズニー社は,彼のような素人が作成した二次的著作物に当たるカバー曲の動画を積極的に許容しているようである

つまり,素人であるにもかかわらず,彼のように才能のある若者が素晴らしい歌声で,自由に男声バージョンのカバー曲を作成することができるインターネットという空間と対峙するような形で自分たちの著作権を保持しようとするのではなく,むしろ,彼のようなカバー曲の動画がアップロードされ,YouTube上でディズニーの音楽が評判となることそのものが,同社社の広告となり,同社の収益につながるという柔軟な発想があるように思われるのである。

アメリカのメディアは,「『Let it go』のカバーのトップ5」などと取り上げる記事やイギリスのテレグラフ紙電子版も「inside Disney's billion-dollar social media hit(ディズニーの10億ドルのソーシャルメディアにおけるヒットの内幕)」と題した記事で,ネット上での同映画とこの「Let it go」という歌への反響の大きさを報じている。

そして,YouTube上では,素人のカバー動画にとどまらず,様々なプロの歌手によるカバー動画が続々と登場しているのである。その一例が次の動画である。

ところで,「Let it go」のオリジナル動画は,米・ディズニー社のアカウント上のものだけで,約4か月の間に,1億7,000回以上も再生されており,この数字だけでも人気の高さは明らかであるが,イギリスディズニー社や日本のディズニー社もそれぞれ別のアカウントで,同じ動画を公開していることから,動画の再生回数は2億回は優に超えている

さらに,米・ディズニー社は,今年1月22日に,積極的にYouTubeに「Let it go」の25か国版をアップロードし,これも話題を呼んでいる。

そもそもディズニー社は著作権に厳しい企業であるとされているが,これだけネット上で話題となっている「Let it go」については,この絶好の時機を逃さず,積極的に,YouTubeを宣伝の場として捉え,本来は著作権侵害に当たるカバー動画等に寛容な姿勢を示していることは,結果として,この歌が更なる話題を呼び,安く絶大な効果のある広告となっているのであって,これは侵害を活用する柔軟な発信力の一例といえよう。

他方,同じディズニー社でも,日本のディズニー社はスタンスが少し違うようである。

例えば,ロケットニュース24の英語版サイトの記事は,松たか子さんが歌う日本語バージョンの「Let it go」について,「力強い歌は,オリジナルの言語ではなくとも,うまくいくことを立証している」と高く評価しており,日本語バージョンの「Let it go」にも世界的に関心が高まるっている。

しかしながら,米・ディズニー社や英国・ディズニー社のアカウント上の動画については,コメント欄も自由に書き込みができるようになっている一方,日本のディズニー社の動画コメント欄は書き込みが禁止されており,動画に対する自由な論評を避けようとする制限的な姿勢が表れているのである。

これでは,折角,松たか子さんが歌う日本語版の「Let it go」が素晴らしい歌声だと世界で絶賛され,既に900万回以上も再生されているにもかかわらず,世界中の人の生の反響をコメント欄からは窺い知ることができない

コメント欄を制限的に運用した結果,900万回以上の再生回数があるにもかかわらず,世界の反響である生の声を確認できないのであるから,折角の広告のチャンスを自ら喪失しているのではなかろうか

コメント欄の取扱いという極めて小さな違いではあるが,私は,ここに,日米の権利意識に対する柔軟さの違い(権利侵害を排除するのが利益なのか利用するのが利益なのかという視点に対する日本企業の鈍い姿勢)があるように思えて仕方ない

松たか子さんが歌う日本語バージョンの「Let it go」が世界でさらに評判となることは,日本語の響きの良さを世界に発信するチャンスとなると思うのであるが,こうした機会を的確に捉え,日本企業が柔軟に対応することで,無駄税金をつぎ込むことなく,コンテンツ力の発信は十分できるのではないかと思うのである。

なお,これは,スーザン・ボイルさんが一世を風靡した時にも見られた違いである。

スーザン・ボイルさんが話題となると,イギリスのITVは積極的にYouTubeにその動画を公開し,「Britain's Got Talent」という番組そのもの絶大な宣伝効果を生んだが,スーザン・ボイルさんを日本に招へいしたNHKは,紅白歌合戦での出演映像を軒並み,著作権侵害を理由に排除するという措置をとったと記憶している。

もちろん,権利侵害を排除することは一つの方法ではあるが,話題となっている人物について積極的に公開することで,NHK紅白歌合戦という番組そのものを世界にPRする絶好チャンスであったが,それを十分生かすことができなかったように思われる。

いずれにしても,日本企業がこれからコンテンツ力を外に発していく際には,著作権保護を図ることはもちろん,YouTubeなど世界的なインターネットメディアにおける権利侵害をいかに利用していくかという柔軟な対応を図っていくことで,世界への日本文化の発信に絶大な効果を発揮するのではないだろうか

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