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08/30/2012

映画、アベンジャーズ(The Avengers)の評価

前回のブログ記事では、アメリカのエンターテイメント業界で成功を目指す若者たちの新たな資金調達方法を紹介ライブドアのブロゴス版)したが、今日もエンターテイメントに関する話題を取り上げてみたい。

今日は、映画、「アベンジャーズ(The Avengers)」を観た感想を紹介しようと思うが、まだ観ていない人が多いと思うので、ストーリー内容には極力触れず、映画の論評をしようと思う。

動画はマーベル社公式チャンネルの予告。

端的に感想を言えば、アメリカンコミックのヒーローもの映画としては、かなり原作のキャラクターの個性はもちろん、既に個々のキャラクター映画として上映され、成功している「キャプテン・アメリカ、ザ・ファースト・アベンジャー(Captain America, the First Avenger)」、「アイアンマン(Iron Man)」、「マイティー・ソー(Thor)」、「インクレディブル・ハルク(Incredible Hulk)」といったそれぞれの映画の世界観が融合し、かつ、調和のとれた作品となっており、ヒーローもの映画としては、まさに、「素晴らしい(Marvelous)」の一言に尽きる

ハリウッドの一大事業ともいうべき壮大なプロジェクトとアメリカ特有のユーモアに基づいて制作されており、原作の版権元であるマーベル(Mervel)社の作品として恥じない出来であった。

ただ、アメリカンコミックに親しみのない日本人にとっては、始めてこの映画を観ると、100%この映画の完成度を楽しむことは少し難しいかもしれない。

もっとも、私も、アメリカンコミックに詳しいわけではなく、アメリカに住んでいた時に、キャラクターを知ったという程度だったり、後述で紹介する映画を観たことによって知っている程度であるが、この映画をしっかり楽しみたい人は、ぜひ、既にDVDやブルーレイが出ている「マイティー・ソー」「Captain America」「アイアンマン(Iron Man)」「アイアンマン2」「インクレディブル・ハルク(Incredible Hulk)」を観た上で行くと、この映画の世界観とこれらそれぞれの映画との調和やコラボレーションのあり方が十二分に楽しめると思う。

動画はマーベル社公式チャンネルの予告。

何が「壮大なプロジェクトか」ということを具体的に説明すると、「アベンジャーズ(The Avengers)」は、前述のすべての映画の集大成として作られているということである。

まず、舞台設定を理解するうえでは、「マイティー・ソー」のSFの世界観がこの映画のストーリ展開のベースとなっている。

「マイティー・ソー」で繰り広げられた、地球を含む全宇宙の成り立ちに関する舞台設定を知ることが、「アベンジャーズ」の本質を理解する上では欠かせない

また、「アベンジャーズ」において、「そもそもどうして地球が危機にさらされるのか」という根本的な答えは、北欧の神話を元に作られた「マイティー・ソー」の中にあるのである。

次に、当然こうした壮大なSF映画においては、良く出てくる話ではあるが、地球に住む人間の側の落ち度が危機を招いたという側面が描かれることが多い。

アベンジャーズにおいても、その要素があるのだが、その答えは、「キャプテンアメリカ」の中で描かれている内容に関連するのである。

したがって、5つも事前に映画を観ている余裕がないという人は、「マイティーソー」と「キャプテンアメリカ」を観た上で映画を観に行くと、何も観ないで行った場合に比べ、2倍は楽しめるのではないだろうか。

しかしながら、「アイアンマン」や「ハルク」を知らなくてよいというわけではない。

「アベンジャーズ」を100%楽しむには、これらも観た方が良い。

特に、「アイアンマン」の主人公、ロバート・ダウニー・Jrが演じるトニー・スタークの父親、ハワード・スタークは、「キャプテンアメリカ」で、キャプテンアメリカ誕生に関わる重要な任務を担っているし、トニー・スタークがハワード・スタークの息子だということは、「アイアンマン2」でも重要な意味を持ってくる。

また、「アベンジャーズ」に登場するスカーレット・ヨハンソンが演じるブラック・ウィドーは、そもそも「アイアンマン2」に登場する。

ちなみに、「キャプテンアメリカ」で、若き日のハワード・スターク役を演じる、ドミニク・クーパー(Dominic Cooper)はなんとなくロバート・ダウニー・Jrに似ている姿で描かれているのも、すべては「アベンジャーズ」につながる布石なのである。

「インクレディブル・ハルク」の中でも、ロバート・ダウニー・Jrが演じるトニー・スタークが登場し、アベンジャーズに関係する計画について触れるシーンがある。

また、「アベンジャーズ」の一人、フォークアイは「マイティーソー」に登場する。

そして、これらのすべてのキャラクターをつなぐのが、サミュエル・ジャクソン演じるニック・フューリーSIELD長官とクラーク・グレッグが演じるフィル・コールソンの2人である。

このコールソンというキャラクターが脇役ながら、「マイティー・ソー」でも、「アイアンマン」でも重要な役回りを演じており、「アベンジャーズ」でも、ストーリーの展開上、重要な人物である。クラーク・グレッグの脇役としての目立たないが印象に残る演技も素晴らしい

このように、それぞれの映画がいわば、パズルのように重なり合って完成した集大成が「アベンジャーズ」といえるだろう。

私が、「壮大なプロジェクト」と称賛する理由は、それぞれの映画がそれぞれ個々に完結しているにもかかわらず、それがすべて「アベンジャーズ」への布石となっている点にある。

つまり、これらの映画を観てから「アベンジャーズ」を観ると、さらに深く理解でき、映画が描く世界感を本質的に理解することができるのである。

ところで、この映画で私がもっとも光っていた演技をしていたと感じたのが、悪役、ロキ(Loki)を演じた、トム・ヒドルストン(Tom Hiddleston)というイギリス人俳優である。

スティーヴン・スピルバーグ監督の「戦火の馬」では、全く正反対のいわゆる「良い人」として描かれているニコルズ大尉を演じ、「アベンジャーズ」のロキ役とは全く違った演技を見せている。

このロキという悪役は、通常の悪役とは異なり、同情すべき過去とそれに伴う複雑な感情を抱いているキャラクターであるが、この複雑な感情の変動をトム・ヒドルストンは見事に演じている

彼の演技で注目すべきは、「マイティー・ソー」のロキと「アベンジャーズ」のロキでは、後者がより邪悪さが増しているという点である。

前者は、兄の陰に隠れてきた嫉妬心とともに、自分の今までの人生が偽りによるものだったことに対する怒りにより、悪へと突き動きながらも、その根底は悪というより、父親に認められたいという感情による行動という形で描かれていたのに対し、後者では、より自分の欲望に駆られて、支配への欲望という悪の道を進むロキという姿が見事に描かれている

「アベンジャーズ」のロキも、邪悪でありながらも、どこか悪に染まり切れない側面を見せてくれる

つまり、この悪役ロキは、「キャプテン・アメリカ」に登場するレッド・スカルなどのいわゆる「ザ・悪役」とは違い、境遇に悩む人間味が溢れたキャラクターといえる。その意味では、オペラ座の怪人に登場するファントム(怪人)に近いものがあるかもしれない。

これは、トム・ヒドルストン自身が演じる上でも意識していた点のようで、彼はTotal Film社の「一番ホットな俳優」(Total Hotlist Award)に選ばれた授賞式後のメディアのインタビューで、「ロキの鋼鉄のように冷たいベニヤ詐欺師のような魅力の根底には、ぜい弱性と傷つきやすさがあるんです。つまり、見捨てられた弟、見捨てられた子として傷ついた心です。ロキの心は(懐いているように見えて油断をすると爪で引掻くといったような)捨て猫のようなものなんですよ。でも、僕はロキのキャラクターが大好きです。(Underneath the steely cold veneer of his trickster charm is a certain vulnerability and sensitivity – the wounded fragility of an outcast brother and son. His mind IS a box of cats though! But I love him.)」と答えている。

動画はTotal Film社公式チャンネル上のトム・ヒドルストンの受賞後のコメント。

彼の演技は世界的にも評価が高く、悪役を演じているにもかかわらず、ロバート・ダウニーJrを抑えて、「一番ホットな俳優」に選ばれるなど、今、英米で注目の俳優となっている。

Youtubeにいくつかメディアの公式チャンネルで公開されているインタビューの動画があったので紹介しておこう。

こちらのインタビューでは、アベンジャーズの具体的な内容に関する発言をしているので、まだ観ていない人は観てから見てみると面白いだろう。

トム・ヒドルストンは、来年(2013年)公開予定の「マイティー・ソー2(The Thor, The Dark World)」で再び、ロキ役を演じることとなっているのだが、報道によれば、悪役ロキを上回る悪役が二人も登場するという。Examinar.comのDaniel Souto氏は、「ロキとソーがチームを組んで強大な敵に立ち向かうのではないか」との推測をしている。

「マイティー・ソー」、「アベンジャーズ」とそれぞれ感情の変化が見事に描かれたロキであったが、今度はどのよう形で、ロキの人間味あふれるキャラクターを演じてくれるのか、トム・ヒドルストンの今後の演技にも注目したい

このように、マーベル社が同社が版権を持つコミックのキャラクターを映画化し、そのそれぞれの映画がさらなる映画への布石として続く壮大な映画プロジェクトはまだまだ続くのである

今回の「アベンジャーズ」はその中間点といっても良いだろう。今後3年以上かけて行われるこのプロジェクトを見逃すのはもったいないではなかろうか。

未だ映画、「アベンジャーズ」を観ていない人はぜひ、上記DVDを観て予備知識をつけて行くと、マーベル社が作り上げた壮大な映画プロジェクトがより一層楽しめるだろう。

なお、唯一残念に感じたのは、ハルク役が前作のエドワード・ノートンが引き継いでいない点である。もっとも、今回ハルク役を演じたマーク・ラファエロの演技も素晴らしいのである(アメリカメディアもマーク・ラファエロの演技について高評価である)が、当初は、エドワード・ノートンがこの役を引き続き演じるとされ、交渉も進められていただけに残念であった。

この点からもわかるように、映画のシリーズをまたいで、主役を演じた俳優が引き続きその役を演じるのは、金銭面等も絡むために難しいが、こうしたいわゆる大人の事情を乗り越えながら継続するこのプロジェクトには今後も期待したい。


以下、前述した「アベンジャーズ」をより楽しむための映画DVDを紹介する。

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