マイケル・フェルプス(Michael Phelps) 選手の偉業
アメリカの競泳男子の金メダリスト、マイケル・フェルプス(Michael Phelps)選手が、北京オリンピックの8種目金メダルに続き、ロンドンオリンピックでは、3種目3連覇、通算22個目のオリンピックメダル獲得という歴史的偉業を成し遂げたが、皆さんはその瞬間を目撃したであろうか。
NHKのウェブサイトでは動画が出ているのでぜひ見ることをお勧めしたい(男子400メートルメドレーリレー決勝、表彰式)。
私は、残念ながら、女子バトミントン終了あたりで眠ってしまい、ライブでの瞬間を目撃することはできなかった。
フェルプス史上初 3種目3連覇「楽しかった」 ロンドン五輪競泳男子100メートルバタフライはフェルプス(米国)が51秒21で3大会連続優勝し、すでに史上最多だった通算の金メダル数を17に伸ばした。フェルプスは200メートル個人メドレーと、米国のメンバーとして出場した800メートルリレーでも3大会続けて金メダルに輝いており、史上初の3種目3連覇となった。女子200メートル背泳ぎは17歳のフランクリン(米国)が2分4秒06の世界新記録で制し、100メートル背泳ぎとの2冠を達成。同800メートル自由形は15歳のレデッキー(米国)が8分14秒63で勝った。
17度目の表彰台の真ん中で、怪物の目に光るものがあった。五輪後に引退するフェルプスは、個人種目では最後のレースを制し「最後に勝てたことが純粋にうれしい。楽しかった」と穏やかな笑みを浮かべた。
前半は出遅れ、50メートルを8選手中7位で折り返した。そこから、両手を広げると2メートルを超すリーチを生かしたダイナミックなストロークで猛烈な追い上げを見せた。残り25メートルを切って頭一つ抜け出し、トップでゴールすると、万雷の拍手を気持ちよさそうに浴びた。
8冠に輝いた北京五輪と違い、ロンドンでのテーマは「できる限りのことをする」。結果が4年前に及ばないことは目に見えていたが、バウマン・コーチは「どんな結果でも彼の伝説は汚れることはない」と挑戦を後押しした。いずれも3連覇が懸かっていた4つの個人種目を泳ぎ切り、2種目を制した。「いろいろな思いがこみ上げてきた」。完全燃焼だった。
http://www.sponichi.co.jp/olympic/news/2012/08/05/kiji/K20120805003838061.html
アメリカのニュースメディアは、この偉業について、「本当に最後の金メダル(One Last Gold)」と題して、大きく報じ、この動画のように彼の歴史的偉業を讃えている。
フェルプス選手は、実に18個のオリンピック金メダルを取り、22個のオリンピックメダルを獲得した。
ロンドンオリンピックでは初戦の400メートル個人メドレーで4位となり、不調と報じられたが、結果は、100メートルバタフライで金、200メートル個人メドレーで金、800メートル自由形リレーで金、400メートルメドレーリレーで金と、金メダルを4つ獲得し、200メートルバタフライと400メートル自由形リレーで銀メダルを獲得し、ロンドン大会だけで、金4つと銀2つの6つのメダリストに輝いている。
アメリカではフェルプス選手が27歳であることから、まだ2大会位はできるのではないかと引退を惜しむ声もあるようだが、当人は、「30歳になったら泳ぐのを絶対にやめるんだと自分に言い聞かせてきた。30歳の人を悪く言うわけではないけれど、それを自分にずっと言い聞かせてきた。あと3年後には30歳になる。だから、今後3年間を泳いでいきたいとは思わない。(I told myself I never want to swim when I’m 30.No offense to those people who are 30, but that was something I always said to myself, and that would be in three years. I just don’t want to swim for those three years.)」と述べている。
ガーディアン紙電子版は、「先に進む時(It's just time to move on)」というフェルプス選手の言葉を題名にして動画を配信している。
動画の最初に、フェルプス選手は、表彰台に上がった時の気分について、「表彰台に上がると直ぐに涙が溢れてくるのを感じた。チームメイトのネイサン(Nathan Adrian)に、『やばい。涙が出そうだ。』と言ったんだ。泣かないように我慢したけど、結局、なるようになると思って我慢するのをやめたよ。」と語っている。
私は昔、フェルプス選手の食事量に関する記事を読んで驚いたことがある。
彼は、1日に1万2000カロリーを摂取するという。これは20代男性の摂取カロリー量の目安が1800くらいであるから、実に10倍に近い。
朝食は、3つのフライドエッグ、フライドオニオン、レタスとトマト、さらにはチーズとマヨネーズたっぷり入ったサンドイッチを3つ食べ、さらに2杯のコーヒー、5つのオムレツ、あらびきトウモロコシをボール1つ、フレンチトースト3切れ、チョコレートのチップスを3袋を食べるというのであるから凄まじい。
さらに、昼には、トマトソースパスタを1皿、大きなハムとチーズ、マヨネーズが入った2つのサンドに、1000カロリーのエナジードリンクを飲む。
そして、夕食は、同じくトマトソースパスタに、6~8切れのピザを食べ、エナジードリンクを飲むというのである。
あの強靭な肉体を作るには、これだけの食事を消費できるだけの運動量もの努力があるのだろうが、それにしても本当に驚きであった。
ガーディアン紙の記者が実際にその食事を食べてみるという企画の動画を見たが、実際の量を見ると愕然とする。
ただ、これはフェルプス選手だけではないという。アメリカのライアン・ロクテ選手も、朝の練習後の朝食では、パンケーキや、ベーグル、シリアル、ワァッフル、卵を食べるというから、かなりの高カロリーの朝食である。
イギリスのデイリーメール紙電子版は、栄養に関する専門家の話として、男子の水泳選手は1日6000カロリーが必要とされるが、フェルプス選手のレベルであるとそれ以上のカロリーを消費する練習量をこなしているから代謝により直ぐ消費してしまうというコメントを紹介している。
それにしても、フェルプス選手の偉業は素晴らしい。ガーディアン紙電子版も、「さようなら、マイケル・フェルプス。前人未到のオリンピック選手(Farewell Michael Phelps, the Olympian beyond comparison)」と題して、彼の偉業を讃えている。
フェルプス選手は過去に酒気帯び運転で罰金を受けたり、2009年頃には、水たばこの器具(たばこの他、マリファナにも使用される場合がある)を使っている写真が流れるなどして、多くの失敗も経験している。後者については、実際にマリファナを吸引したのか否かはハッキリしておらず、何ら罪に問われていないが、これにより主要スポンサーであるケロッグが契約を打ち切るなど強い批判にも晒された。
そうした失敗がありながらも、逆境を乗り越えて、前人未到の記録を打ち立てるのは本当に称賛に値する。
面白いのは、上記ガーディアン紙の記事にあったフェルプス選手が水泳を始めた7歳の頃、彼が水に顔をつけるのを怖がり、背泳ぎしかしなかったという点である。その後、11歳の時に、長年のコーチとなるボブ・バウマン(Bob Bowman)氏と出会い人生が変わったという話である。
フェルプス選手が7歳の時に父親が家を出て行って、いわば母子家庭であったが、バウマンコーチが父親のようや存在になっていった。
そして、最後のレース直前、ウォームアップのためのプールに入っていたフェルプス選手は、バウマンコーチに、「最高の水泳選手になることができたのは、ここまであなたと一緒にやってこれたからです。」と感謝の言葉を伝えたところ、コーチは涙を流しながら、「ずるいぞ。プールの中にいるなんて」と応え、フェルプス選手は、「はい。僕の涙はゴーグルに隠れて見えないけど、コーチは涙が流れてますよ。」というやり取りがあったとフェルプス選手はガーディアン紙に語ってる。
歴史的瞬間の直前にあったこういった選手の人間ドラマがオリンピックの素晴らしさではないだろうか。
アメリカメディアもこの話題を取り上げており、フェルプス選手はバウマンコーチについて、「彼がしてくれたことがなければ、今僕はこの場になっていないでしょう。この15年間、クズみたいな僕にずっと我慢して面倒を見てくれた彼に心の底から感謝しているし、愛しています。文字とおり、感謝してもし尽くせません。」と語っており、これほど偉大な選手も一人では成功できなかったことが良くわかる。
フェルプス選手は元々、注意欠乏多動性障害という発達障害を持っている。簡単に言うと、1つのことに集中できず、色々なものに注意がいってしまって落ち着きがないといわれる症状である。
そして、これを克服するために水泳を始めたと言われている。
また、幼くして父と別れ、母子家庭で成長し、成功だけでなく、失敗もしてきた。
しかし、逆境を乗り越えるその姿こそある種の人間味があり、魅力がある。
若干27歳ではあるが、彼の競泳人生から、我々も学ぶ点が多くあると思う。
ぜひともNHKには、まさに歴史に新たな1ページを書き込んだフェルプス選手の偉業をNHKスペシャルかなんかで取り上げて、日本の学生に向けた教育教材にしてほしい。
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Comments
フェルプス選手については、NHKスペシャル「ミラクルボディー」で取り上げられています。4年前に。http://www.nhk.or.jp/special/onair/080316.html
Posted by: こじま | 08/07/2012 07:18 pm