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May 2012

05/04/2012

テレビ局は公共性に対する自覚を持て - 塩谷報道に見るメディアの低俗性

ここ最近のテレビの情報番組では、この話題に相当の時間を費やしているのは皆さんご存じだろう。
私は、この報道により塩谷瞬さんという俳優を初めて知った。

知らない人のために簡単にいうと、塩谷瞬さんという俳優が富永愛さんというモデルと付き合っていた他にも、付き合っていた女性が複数いたとかいう類の下らない報道である。

何が下らないかというと、タブロイド新聞や低俗なゴシップ雑誌なら格別、公共性が全くないこの話を限られた公共の電波を割当たられているテレビ局が、連日、長時間を割いて報道しているからである

私は、芸能ニュースすべてが下らないという立場ではない。芸能ニュースでも公共性のある報道というのはあるだろう。そういう話であれば、ある程度テレビ局が報道する価値はあるだろう。

たとえば、つい最近まで話題となっていた「オセロ中島さんに対する占い師の洗脳報道」とか、一昔前でいえば、「暴力団との関係が指摘されて引退した島田紳助の報道」とかである。

前者は、昨今の霊感商法に通じるような一般人にも危険が及びかねない話であり、霊感とか、占いとか、いわゆる、オカルトに属するものが社会に与える影響ということに鑑みれば、公共性がない話ではない。特に、金銭が絡んでおり、詐欺行為の可能性すらある話であれば、それは犯罪の疑いがある話であって、公共性及び公益性は極めて強いだろう。

後者についても同様である。反社会的勢力である暴力団との関係があるという話であれば、それには公共性が当然生じる。特に、島田紳助自身が「暴力団とは全く関係がない。」と会見で断言した数日後には、たとえ過去のものであっても、暴力団員との写真が週刊誌に出てくるなど、その報道の公共性及び公益性は極めて強いものがあった。

しかし、今回の報道はどうであろうか。

結婚詐欺をして、金銭をだまし取ったという話であれば格別、今報道されているのは、独身の俳優が結婚を前提に複数の知名度のある独身女性と付き合っていたという程度の話である。

複数の人と付き合っていたとして、感情論や道徳論は別として、婚約すらしていないのであるから、何が悪いのか私にはさっぱりわからない

それをテレビでは連日、「二股俳優」とか名付けて、人格攻撃をするかのごとき報道はいかがなものであろうか。

私には、叩きやすい者は徹底的に叩くが責任は取らないというマスメディアの無責任な姿勢が如実に表れているように思えて仕方がない。

同時期に美女数名と付き合っていることが許せないのであろうか。
報道の仕方を見ているとモテない男の嫉妬にしか見えないし、そんなことを限られた公共の電波を使って長時間報道する話なのかと思われてならない。

「こんな俳優を見ていると、女性は気分が悪い」という話なのだろうか。

複数の独身女性と関係を持つ独身男の話を聞いて、感情が害されたとでもいうのだろうか。

そんな感情は保護に全く値しないと私は思う。

ハッキリ言って、当事者間でやればいい話なのであって、いつまでも、「二股俳優」と銘打って報道するメディアの姿勢は、叩きやすい者を徹底的に叩くという集団リンチ以外の何物でもない。

こんな下らない報道しか続けられないのであれば、放送権の付与という特許的立場を与えられたテレビ局は、今すぐ放送権を返すべきである。

我が国に山積している問題はたくさんある。
しかし、その本質をえぐるような報道はあるだろうか。

陸山会事件における検察官の虚偽の調書作成の問題に対する厳しい報道姿勢は、その事件のインパクトに比べ、はるかに弱く感じる。

それを報道する能力がないのであれば、少なくともメディアは、小沢無罪判決の判決内容の誤報を見直すくらいのことはすべきではなかろうか。

それすらテレビメディアには期待できないということが、塩谷瞬さんに対する下劣な報道姿勢に表れているのかもしれない。


さて、連日の紹介。


法律を勉強したいまでは思わなくとも、司法のあり方に興味がある人はぜひこの映画を。

裁判所の事実認定に興味がある人はこの本を。

 

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05/03/2012

憲法記念日に改めて理解してほしい議論 - 憲法9条について

今日は、憲法記念日です。

憲法と言えば、どうしても、国民の関心事項は憲法9条で、改憲論者は9条問題を真っ先にこれを指摘してくるでしょう。

しかしながら、果たして、どれだけの国民が憲法9条の正確な議論を理解しているでしょうか

私は、2009年5月3日に、「憲法記念日なので」と題した記事を書いたことがあります。

そこで、憲法記念日である今日は、この記事を再度編集して、憲法9条議論の正確な理解を図るための記事を書いてみようと思います。

1.憲法9条1項は何を放棄しているのか。

まず、憲法9条1項ですが、解釈上重要な部分は、「『国際紛争を解決する手段としては』、永久にこれを放棄する」と定めている部分です。

まず、この部分で、何を放棄しているのかが問題となります。

1つの見解(憲法学上の通説)は、『国際紛争を解決する手段』という部分につき、国際法上の用例でいう、「国家の政策上の手段としての戦争」を意味しており、これは侵略戦争の放棄であると考えます。この見解に従うと、自衛権は放棄していないということになります。

もう1つの見解は、あらゆる戦争の放棄をしたと考えます。ただ、これは現実的ではありませんし、支持はあまり得られない見解ではないでしょうか。

2.憲法9条2項は自衛のための戦争も放棄したのか。

次に問題となるのが、9条2項です。2項は「前項の目的を達するため」と定めています。

まず、憲法が九条の通説的な見解は、前項の目的とは、1項のいう「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求すること」と捉え、この為にはあらゆる戦争を放棄したと考え、自衛の戦争も放棄したと考えます。

これに対し、政府見解をはじめとする現実的な見解は、前項の目的とは、侵略戦争の放棄のためと理解し、自衛の戦争は許されると考えます。

3.戦力とは何か。

さらに、解釈上の3つ目の問題点は、「戦力を保持しない」としている部分です。何が戦力なのかという議論があり、通説は警察力以上の力はすべて戦力と捉えます。

これに対し、政府見解は、自衛力を超える力が戦力であると説明します。

いずれにしても、これらの見解はあくまで、何の拘束力もありません。

我が国で唯一権力をもって判断できる機関は、違憲立法審査権を有する裁判所であり、その判断が判例としての法源性を有する最高裁の判例です。

最高裁が、9条をどのように判断しているかが重要であり、以上の議論は机上の空論でしかないといっても過言ではないかもしれません。

4.最高裁の判例はどう判示しているか。

そこで、最高裁の判断を見るわけですが、砂川事件(最判昭和34年12月16日)が最高裁判例の中でも一番、9条に踏み込んだ判断をしています。

まず、最高裁は、9条により、我が国が主権国としてもつ固有の自衛権は否定されたものではなく、憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではないと判示しています。

これは、自衛権の放棄はしていないということを明確にしています

次に、憲法9条は我が国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることをなんら禁じるものではないと判示し、2項は、我が国がいわゆる戦力を保持し、自らその主体となり、指揮権・管理権を行使して、侵略戦争を引き起こすことが無いようにするための規定という考え方をしています。

そうすると、判例は、9条で禁止される戦争および行為は、①侵略戦争、②侵略戦争のために我が国が主体となって指揮権・管理権を行使し得る戦力と考えているであろうことがわかります。

他方で、最高裁は、③自衛のための戦力を禁じたかどうかについては判断せず、④一見極めて明白に違憲無効と認められない限り、裁判所の司法審査権の範囲外にあるという統治行為論にも言及しています。

結局のところ、最高裁判決から明らかなのは、(1)侵略戦争は憲法上禁止されるということ、(2)自衛権は我が国に存在するということのみです。

また、本判例の事件は、日米安保を扱った事件の中で判断されており、特に、否定する文言が無いことから、最高裁は、自衛権の中の集団的自衛権についても、憲法が否定するものであるとは考えていないように思われます

5.私見

以上のことを前提に、私の私見を紹介します。

通常、政府見解や学説の多くは、現行法上、集団的自衛権は行使できないと説明しますが、少なくとも我が国で憲法の有権的解釈ができる最高裁がそれに言及したことはありません

したがって、勝手に言っているにすぎません。

政治家などが議論している9条改正議論ですが、改正しなくても、集団的自衛権の行使は可能でしょう。

問題なのは、政治家にそれをする器量がないだけです。であるならば、改憲してもそれらの政治家が適切な運用ができるかには疑問が生じます。

砂川事件で、最高裁は統治行為論を援用していますから、集団的自衛権の行使が侵略戦争に当たるような方法によりなされない限り、裁判所が一見極めて明白に違憲無効であると判断する可能性は低いと思います。

以上のような理解からすると、憲法改正をする必要性があるのかは疑問ですし、しなくても、海賊船対策やPKO等において、武器使用の規制を解除することは十分対応できるのではないかと思っています。

むしろ、私は、改正という名の下に、憲法の別の部分が国民の知らない間に改正され、権利利益を制限を認める余地ができる方が恐ろしいと感じます。

憲法改憲護憲の前に、最高裁の判断に対する検討や議論がなされ、国民に周知されるべきと私は思います。

今回は憲法学における正統な本を紹介しようと思う。

そもそも、憲法というのはどうしても価値判断が先行してしまうため、学者の色が出てしまう。

ただ、我が国の憲法が故・芦部信喜博士の通説的理解を中心に発達してきたのは紛れもない事実であろう。したがって、芦部憲法が未だに通説的理解の根底にあることはだれも否定できない。

もっとも、近年は最高裁判例が芦部憲法とは違う理解をしているという批判が多くなっているという。また、芦部博士が亡くなって久しく、取り扱っている判例も古くなっている。

そこで、 憲法判例の理解に当たっては、芦部憲法に加え、以下の本もお勧めである。

まず、この高橋先生は芦部博士の一番弟子といわれており、芦部憲法を前提に最近の議論が説明されていることは憲法学における通説的な理解をするのに良い本である。

最近の判例の理解を深めるという観点からは、戸松先生のこの本は訴訟的観点から判例を丁寧に分析しているので解りやすい。

なお、これらは法律家向けの専門的なものであることは否めない。

そこで、一般向けの本としては、渋谷先生の書かれた本がオーソドックスでよいのではないかと思う(渋谷先生は、基本的には独自説を通説がごとく記載する方ではないし、憲法学者としても実績がある方で、その方が一般向けに書いた文庫本であり、お勧めできる)。

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05/02/2012

小沢判決の解説・評価(最後)

数日にわたり、小沢無罪判決の解説・評価と題して記事を書いてきました。

○ 「小沢判決の解説・評価と往生際の悪いマスメディア」 - ブロゴス転載版

○ 「小沢判決の解説・評価(補足)」 - ブロゴス転載版

○ 「小沢判決の解説・評価(それでも「小沢は黒」という人たちへ)」 - ブロゴス転載版 


このブログがライブドアが運営するブロゴスというサイトに記事が転載されることになっているのはご存じだと思います。

そのブロゴスのコメント欄を読むと、私の記事の趣旨を理解され、判決の正確な理解をしてくれている方々が多く、メディアに踊らされないしっかりした人が結構いることに嬉しく思います。

しかしながら、メディアや小沢嫌いの政治家、メディアに踊らされている人たちや陰謀論を主張して判決内容を批判する人たちは、判決を独解する日本語能力がないことをさらけ出しているという自覚がないままに、「小沢は無罪だったが黒だ。」とか、「判決は裁判所と検察を守るために仕組まれた」とか声高らかに主張しているのですから、滑稽なものです。

そこで、今日は、そういう主張がいかに荒唐無稽かをさらに分かってもらうために、取り上げてみようと思います。

ただ、あまり長々と判決を引用しても、横着な「真っ黒論者」や「陰謀論者」は読解できないでしょうから、なるべく端的に書くように努力しますが、正確な判決の理解をするうえで必要な限度での引用はご容赦ください。


1.小沢は無罪だが黒だと判決が言っているという根拠

まず、一般的に、「小沢は無罪だったが黒」という判決だといわれている根拠をいくつか挙げてみます。

(1)判決は、小沢が秘書から報告を受け了承をしたと認定した。

(2)判決は、小沢の供述は信用できないと指摘した。

(3)判決は、指定弁護士の共謀の主張に相応の根拠があると言っている。

大方、「小沢は無罪判決だが、判決は真っ黒と認定している」という荒唐無稽な主張をする人々はこのようなことを言っているのではないでしょうか。


2.判決要旨に基づく反論

そこで、判決要旨からこれらの理解が間違いであることを説明します。


<(1)の主張について>

4月29日付ブログ記事「小沢判決の解説・評価(補足)」(ブロゴス版記事へ)でも説明していますので、そちらを参照してください。

判決が「報告・了承があった」認定しているとされているのは、2か所あります。

1つ目は、要旨80ページにあるとおり、

①本件土地の取得や取得費の支出を平成16年分の収支報告書には計上せず、平成17年分の収支報告書に計上することとし、

②そのために、本件売買契約の内容を変更する等の本件土地公表の先送りをする方針についても、報告を受けて了承したものと認められる。


という部分です。

しかしながら、これのみでは、何ら違法性を構成しません。

ここで判決が言っているのは、小沢氏が秘書から、①取引については平成17年分の収支報告書に計上するということと、②契約内容を変えて、公表を16年中ではなく17年中に先送りするという方針について、報告を受け、了承したという事実です。

つまり、この報告のとおり、契約内容が変更できていれば、秘書の行為すら虚偽記入には当たらなかったといえます。

判決は、この事実を重視して、要旨86ページにおいて、

以上のとおり、被告人は、本件土地公表の先送りのための交渉は不成功に終わり、所有権移転登記手続の時期のみを先送りする旨の本件合意書が作成され、本件土地の取得費が平成16年10月5日及び同月29日に支出され、同日、本件土地の所有権を陸山会が取得したこと等については、報告を受けず、これを認識していなかった可能性があり、かえって、本件売買契約の決済全体を先送りしようとしていた当初の方針どおり、本件土地の取得や取得費の支出が、実際にも平成17年に先送りされたと認識していた可能性がある

したがって、被告人は、本件土地取得及び取得費の支出を平成16年分の収支報告書に計上する必要があり、平成17年分の収支報告書には計上すべきでないことを、認識していなかった可能性がある。


と指摘し、この可能性が排除できていない以上、共謀なんて成立しえないと判断しています。

2つ目の「報告・了承」は、同じく要旨80ページにある

りそな4億円は、陸山会の被告人に対する借入金となること、本件4億円は本件預金担保貸し付けの担保として本件定期預金の原資にすることについて、認識し、了承した上で、本件預金担保貸付の目的が、本件4億円を収支報告書等で対外的には公表しない簿外処理にあることも承知していたものと認められる。

という部分です。

簿外処理という表現があるので、一見すると、それだけで違法との印象を持つ人がいると思いますが、それは間違いで、本件においては、簿外処理自体が違法性を構成するわけではありません

ここで、判決が重視しているのは、当初、本件4億円は、担保目的で、本件定期預金の原資とする認識と了承があったということです。

つまり、担保目的で定期預金の原資としたということであれば、いわば保証人となったようなものですから、陸山会に貸し付けたという行為ではありません。当然、これを記載しなくても、良いということになります。

そこで、判決は、要旨91ページで、

被告人には、本件4億円の簿外処理の方針を了承する動機があると認められるが、他方で、被告人は、本件4億円の公表を望まないにせよ、政治資金規正法に抵触する収支報告書の虚偽記入ないしは記載すべき事項の不記載をすることまでは想定しておらず、本件4億円の簿外処理を適法に実現することを前提として了承していたという可能性もある。

と指摘し、91ページないし92ページでは、

以上のとおり、被告人は、本件預金担保貸付についての石川の説明により、本件4億円の代わりに、りそな4億円が本件取りの購入資金等として借入金になり、本件4億円を原資として設定された本件定期預金は、本件4億円の返済原資として被告人のために確保されるものと認識した可能性があり、逆に、本件4億円が陸山会の一般財産に混入し、本件売買契約の決済等で費消されたことや、本件定期預金が実際には陸山会に帰属する資産であり、被告人のために確保されるとは限らず、いずれ解約されて陸山会の資金繰りに費消される可能性があることについては、石川から説明されず、これを認識しなかった可能性がある
と判示しています。

そして、判決は、要旨92ページで、

被告人において、本件4億円を借入金として収入計上する必要性を認識するためには、これらの事情の認識は、重要な契機となるはずのものであり、これらの事情の認識を欠いた結果、被告人は、平成16年分の収支報告書において、借入金収入として、りそな4億円が計上される代わりに、本件4億円は計上される必要がないと認識した可能性があり、したがって、本件4億円を借入金収入として計上する必要性を認識しなかった可能性がある。

と述べています。

以上から明らかなとおり、マスメディアのいう「報告・了承」は、何ら違法性を構成するような話の類ではないのであり、その「報告・了承」があったからといって、何が「黒」となるのか全く判然としませんから、メディアの批判は失当であること著しいといえるでしょう。


<(2)の主張について>

確かに、裁判所が小沢氏の供述につき、信用できないと判示した部分は存在しますが、重要なのは、どういう内容につき、どういう趣旨で、「信用できない」と評価したかです。

まず、裁判所が問題にした点ですが、要旨92ページで、判決は、

被告人は、本件売買契約の締結、本件売買の決済、本件土地の所有権移転登記手続といった取引や、本件土地公表の先送り、本件4億円の簿外処理といった方針について、秘書との間で、指示したことも、報告を受けたこともなく、虚偽の記入ないし記載すべき事項の不記載がされた平成16年分及び平成17年分の収支報告書の提出について、報告を受けたこともない旨公判で供述している。

としています。

つまり、小沢氏のいわば「すべては秘書任せにしていて自分は何も知らない」といった趣旨の供述について、検討しているわけです。

これにつき、裁判所は、要旨93ページにおいて、

このように、被告人の供述には、変遷や不自然な点が認められ、特に、本件が問題になった後も、「収支報告書は一度も見ていない」とする点などは、およそ措信できるものではない。

被告人が、石川や池田ら秘書から、本件各取引等や収支報告書の作成提出に際して報告を受けたことは一切ない旨の供述については、一般的に信用性が乏しいといわなければならない

と指摘した上で、続けて、

しかしながら、被告人は、公職や政党の役職を歴任した国会議員として、多忙であることに加え、平成16年10月当時から7年余りを経て被告人質問に及んでいることをも考慮すると、本件土地の取引に関する事柄や秘書からの報告内容についても、現段階において、具体的な記憶が薄れ、実際に確かな記憶がないこともあり得るといえる。
と判示しています。

つまり、裁判所は、小沢氏の供述は信用性が乏しいけれども、それは7年余りも経過している話だから、記憶が薄れて不正確になっていることもあり得るでしょうと述べているのであって、この後半部分の裁判所の評価を省略したマスメディアによる批判は失当です。


<(3)の主張について>

これについては、4月29日付ブログ記事「小沢判決の解説・評価(補足)」(ブロゴス版記事へ)で説明したとおりです。

「小沢は黒と判決は言った」と主張する人は、意図的かそうでないかは不明ですが、裁判所は、指定弁護士の共謀の主張につき、「相応の根拠がある」と言ったと主張します。

しかしながら、これは不正確です。

正確には、裁判所は、「相応の根拠があると考えられなくはない。」と要旨81ページで述べています

裁判所が、「相当の根拠がある」と言ったのではなく、「考えられなくはない」という否定することを前提とする表現を用いていることに注意しなければなりません。

「考えられなくはない」という表現は、一応、その主張は検討するに値するが、採用はできないという場合によく使います。

したがって、マスメディアがこの表現のニュアンスを書き換えて報道することは極めて悪質です。

以上のとおり、メディアの「判決は小沢は黒だが無罪とせざるを得なかった」という類の報道は、誤報ともいうべきものであって、事実の歪曲です。このような報道は、事実に基づいていませんから、場合によっては名誉毀損すら成立するのではないかと思います。謝罪広告ものですね。


3.陰謀論

さて、マスメディアの報道の対局にある看過できないものとして、いわゆる陰謀論があります。

この判決は検察を守るために行われたとか、登石郁朗裁判長を守る判決だとか、最高裁が陰謀を仕組んだとかいう類のものです。ツイッターやコメントを見ているとどうしても目に入ってくるので、気になります。

陰謀論というのは、ハッキリ言って、思考停止を招くだけです。百害あって一利ありません。現に、これまで見てきたように、今回の判決は極めてまっとうなものであり、私は練りに練られた質の良い判決だと思います。

また、4月30日付ブログ記事「小沢判決の解説・評価(それでも「小沢は黒」という人たちへ)」(ブロゴス版記事へ)で説明したとおり、今回の東京地裁刑事第11部の判決は、東京地裁刑事第17部(当時登石郁朗裁判長)が下した秘書の有罪判決において認定された本件4億円の原資の一部が水谷からの1億円の献金であるという部分には全く触れず、違法な原資を前提とした偽装工作の主張を排斥しているのであり、これだけ見ても、検察を守るとか、登石郁朗裁判長を守っているとの批判は失当ではないでしょうか。

いずれにしても、この判決は私は非常に優れた判決であったと思います。

以上、数日にわたった判決解説と評価はいかがでしたか。少しでも読者の方の理解の助けになっていれば嬉しい限りです。

連日紹介していますが、刑事訴訟法に興味があり勉強をしたいという人はこの本を読んでください。
一番オーソドックスな刑事訴訟法の基本書です。

法律を勉強したいまでは思わなくとも、司法のあり方に興味がある人はぜひこの映画を見てください。

また、裁判所の事実認定に興味がある人はこの本を読んでみてください。定番ですが、わりと薄いです。

 

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05/01/2012

世論調査って不思議

タイトルどおりの話だが、世論調査っていかに信用できないかってことがこの数字の違いに表れていると思う。

小沢氏党員資格停止処分「見直すべき」5割

< 2012年4月28日 2:41 >

 
 民主党・小沢一郎元代表が政治資金規正法違反の罪に問われた裁判で無罪判決が出されたことを受け、日本テレビと読売新聞は共同で緊急の世論調査を行った。それによると、小沢元代表の党員資格停止処分を「見直すべきだ」と答えた人が51%、「見直す必要はない」と答えた人は36%だった。

 小沢元代表が、自らの資金管理団体をめぐる「政治とカネ」の問題で、国民に説明責任を「果たしている」と答えた人は7%、「果たしていない」と答えた人は87%だった。

 また、政治資金収支報告書にウソの記載があった場合に、政治団体の会計責任者だけでなく、政治家本人の責任を厳しく問えるよう政治資金規正法を「改正すべきだ」と答えた人は86%、「改正の必要はない」と答えた人は6%だった。


 日本テレビ・読売新聞 電話世論調査
 【26~27日に調査】
 【全国有権者】1666世帯
 【回答率】56%

他方で、産経新聞の調査だと、数字が逆転する。

小沢氏の党員資格復活、6割が不要 内閣支持率は最低22%

産経新聞 4月30日(月)12時1分配信
 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が28、29両日に実施した合同世論調査で、野田佳彦内閣の支持率が10・5ポイント減の22・0%に急落し、政権発足以来、過去最低を記録した。一方、不支持率は過去最高の60・8%。菅直人政権の末期だった昨年6月下旬の調査結果(支持率23・0%、不支持率64・8%)に近く、政権運営に黄信号がともり始めた。

 野田内閣の支持率が急落した背景には、北朝鮮のミサイル発射に対する政府の対応のまずさや参院で問責決議を受けた田中直紀防衛相らの資質、さらに消費税増税などをめぐる党内対立の激化などがあるとみられる。

 北朝鮮のミサイル発射に対する政府の情報提供では、84・3%が「万全ではない」と回答。また、82・9%が田中防衛相の資質を疑問視した。

 参院で問責決議が可決された田中防衛相と前田武志国土交通相の交代を求める回答は計75・3%。「閣僚・党役員の交代は必要ない」(20・0%)を大きく上回った。

 一方、東京地裁で無罪判決を言い渡された小沢一郎民主党元代表の党員資格停止処分の解除については、57・6%が「すべきではない」と答え、「すべきだ」(35・9%)を20ポイント強も上回った。小沢氏の要職起用も76・2%が「すべきではない」と回答しており、小沢氏復帰に対する国民の厳しい視線も浮き彫りになった。

 消費税増税関連法案に関しては、今国会の法案成立を求める声が51・0%と半数を超す一方で、82・0%が食料品や生活必需品の税率を抑える低減税率を導入するよう求めた。野田首相が法案成立と引き換えに衆院を解散する「話し合い解散」は賛成が48・3%で、ほぼ半数。反対を約10ポイント上回った。

 石原慎太郎東京都知事が表明した尖閣諸島購入方針は71・3%が「評価できる」とした。尖閣諸島を「国有化すべきだ」とする回答は84・5%に達した。

 憲法改正については57・6%が「必要がある」とし、「必要はない」(30・4%)とする回答の2倍弱を占めた。

こういう大きな齟齬を見ると、世論調査ってメディアが自分たちの主張を正当化したいがための都合のいい数字の作出以外の何物でもないと思う。

26日~27日と28日~29日のこれだけ逆転しているのだから、「小沢は無罪だが黒と判決が言っている」というメディアの虚偽報道が成功したのか、それとも、そもそも世論調査の数字が信用できないのか。

まだアメリカのように調査会社が入る世論調査の方が信用できる気がする(私の知る限り、メディアのいうことを鵜呑みにする日本とは違い、アメリカでは世論調査会社に対する批判などの議論も活発であった)。

メディアの本質的な改革が必要だと痛感する。


今日もこのDVDの紹介。司法のあり方に興味がある人にはぜひこの映画を見てもらいたい。

 

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