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01/10/2011

外国人受け入れ政策に対する関心を持とう

今日は成人の日。日本は20歳で成人となり、選挙権が付与される。

選挙権といえば、以前、外国人選挙権付与の議論が世間では騒がれたが、最近この問題への関心は薄れている。

おそらく、この政策の旗振り役の一人であった小沢一郎前民主党幹事長が力を失い、この問題を進める場合ではなくなったという政治状況の変化によるものだろう。

しかし、私は、選挙権付与の問題にかかわらず、日本のマスメディアはもちろん、国民は、外国人の受け入れ政策に対する関心をもっと持ち、この問題について、議論を深めなければならないと考えている。

選挙権付与の問題に関しては、私の意見はすでに述べているので、そちら(「外国人の地方選挙権付与について」)を参照してほしいが、今回は、選挙権付与の問題ではなく、もっと広い意味での外国人の受け入れ政策を国民としてどう考えるべきかという観点からの一意見を紹介させてもらおうと思う。

1.日本にいる"外国人"はどのような国出身なのか。

そもそも、外国人というと、欧米の白系外国人を想定する人が、未だに多くいると思うが、日本に入ってくる外国人の多くは、アジア系の外国人が圧倒的に多い。

平成21年度に入国した外国人のうち、65%がアジアからの外国人である。その順は、韓国(24.2%)、中国(16.3%)、中国台湾(14.1%)となっている。

そして、国別の不法滞在者数は、法務省入国管理局の発表によれば、以下のようになっている。
① 韓    国 21,660人 〈構成比 23.6%〉
② 中    国 12,933人 〈 〃  14.1%〉
③ フィリピン 12,842人 〈 〃  14.0%〉
④ 中国(台湾) 4,889人 〈 〃   5.3%〉
⑤ タ    イ 4,836人 〈 〃   5.3%〉
⑥ マレーシア 2,661人 〈 〃   2.9%〉
⑦ ペ  ル  ー 2,402人 〈 〃   2.6%〉
⑧ シンガポール 2,107人 〈 〃   2.3%〉
⑨ スリランカ 1,952人 〈 〃   2.1%〉
⑩ インドネシア 1,820人 〈 〃   2.0%〉

不法滞在とは、在留期間を超えて、我が国に在留している者である。したがって、これら数は、摘発を受けた者の数ではなく、出入国記録上、在留期間を超えていることが明らかな者の数である。

そして、実際に摘発され、我が国にとって好ましくない者として、本国に強制的に送り返された、退去強制手続によった者の国別もやはり、アジア系の外国人がその大半である。

法務省によれば、「国籍(地域)別では,7年連続して中国(台湾,香港・その他を除く。以下同じ。)が最も多く,9,522人で,入管法違反者全体の29.2パーセントを占めた。国籍別では,中国に次いでフィリピン,韓国,タイ,インドネシアの順となっており,これら5か国で全体の71.3パーセントを占めている。」ということである。

ここまでを整理すると以下のことが、明らかであろう。
1.中国を中心とするアジア系外国人が日本には多く入ってきているということ。
2.我が国にとって好ましくない者として、退去強制された者の7割が、中国、フィリピン、韓国、タイ、インドネシア出身のもので、中国出身の者が全体の約3割と飛びぬけて多いということ。


最近は、「チャイナマネーを獲得せよ」との動きから、中国人観光客の受け入れやビザのさらなる緩和の議論も出ているが、上記実態を把握したうえで、果たして、その動きが日本にとって、利益になるのか、経済的利益だけでなく、治安や生活環境への影響といった点も踏まえて、きちんと議論されなければいけないが、全く十分な議論はされていないのではないだろうか。

国民規模で、まず、広く、外国人の受け入れをどうすべきかについて、国別の不法滞在や退去強制対象者数を把握したうえで、議論される必要があると思う。

2.既存とは違った観点からの永住要件の厳格化が必要ではないか

次に、外国人の選挙権付与問題にも関連する話ではあるが、日本には、「特別永住者」と「永住者」という者がいる。前者は、第二次世界大戦に関連し、認められている在留資格であり、「昭和20年9月2日以前から日本に在留する朝鮮半島および台湾出身者である者、その直系卑属として日本で出生し引き続き在留している者」がそれに該当する。

他方、後者は、法務大臣に対する永住許可により認められた者であり、永住許可は、法律上明確に定められている要件は、①素行が善良であること、②独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること、③その者の永住が日本国の利益に合すると認められることとなっている。

そして、③につき、法務省がそれを具体化し、公表している審査基準として、以下4つが存在する。

(ア)原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし,この期間のうち,就労資格又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。

(イ)罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。納税義務等公的義務を履行していること。

(ウ)現に有している在留資格について,出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。

(エ)公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。

もっとも、(ア)の基準は、以下の場合には、緩和されている。
(a)日本人,永住者及び特別永住者の配偶者の場合,実態を伴った婚姻生活が3年以上継続し,かつ,引き続き1年以上本邦に在留していること。その実子等の場合は1年以上本邦に継続して在留していること

(b)「定住者」の在留資格で5年以上継続して本邦に在留していること

(c)難民の認定を受けた者の場合,認定後5年以上継続して本邦に在留していること

(d)外交,社会,経済,文化等の分野において我が国への貢献があると認められる者で,5年以上本邦に在留していること。

なお、以上は、あくまで行政庁たる法務大臣が定める裁量要件であり、これらが法律上明確な根拠を有するわけではない。

したがって、この審査基準に反して、許可や不許可の処分をしても、それが直ちに法律上、処分の違法を構成するわけではない。

法律上は、あくまで、①素行が善良であること、②独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること、③その者の永住が日本国の利益に合すると認められることの3要件が定まっているにすぎないのであり、上記裁量要件に違反することが、裁量の逸脱・濫用に当たると評価されて初めて、処分が違法となる。

さて、法律論はこのくらいにして、ここからが、私の指摘したいことの核心部分であるが、このように審査基準を見てみると、確かに、10年継続して在留という基準は厳しいように思えるが、私はこの基準の中に、我が国の言語、文化に適合するという観点からの基準がないことについて、強い疑問を感じる

欧米の国では、一定の言語能力試験を課すなどして、永住という特別の身分を与える以上、社会適合性を判断する要件として、その国の母国語を運用できる能力を要件の一つとして課している

当然であろう。その国の母国語を十分に運用できないような人間が、永住者として、他の外国人とは違い特別の取り扱いを受ける特権的地位を付与するのであるから、そこには、利益基準として、言語や文化、社会適合性の要件が必要である

たとえば、市民権を与える上で、ポイント制を採用するカナダでは、移民局が実施する言語テストに合格することが1つの要件となっている。

100点満点中67点を取らなければならないが、そのうち、言語には、24点が配点されており、1/4の比重を与えているのである

しかしながら、現在の我が国の永住許可のガイドライン上は、そのような日本語運用能力に関する基準は存在せず、日本語がままならなくても、永住資格を有する者は現に存在するのである。

特に、日本人の配偶者としての在留資格があれば、大幅に年数は軽減されるのであり、最近ニュースで頻繁に報じられている中国人による偽装婚のケース(その1その2)が増えているのも、言語能力が要件になっておらず、単なる年数という安易な要件としていることが起因するのではないだろうか。

そうであるとすれば、日本語能力が十分でなかったり、我が国の文化、社会に対する適合性を十分に有しない永住資格を有する者が、選挙権をもち、住民自治に影響を行使するようになれば、これは必ずしも、その地方自治体にいる日本国民、ひいては日本国にとって、好ましくない影響があるのではないだろうか

年数というのは、客観的のようであって客観的ではない。

たとえ、何年もの間、日本に居たとしても、外国人コミュニティーの中だけで生活し、日本社会への溶け込みを拒否している人物であれば、本来、日本国の利益に適合するかには疑義が生じるはずである。

しかしながら、上記基準からは、「その者の永住が日本国の利益に適合する」という不合理な帰結を生み出してしまっている

外国人への地方参政権付与の議論の前提として、永住者としてどのようなものを認めるべきかという国民規模の議論をしなければ、やはり、国民主権の原理がある以上、国民の理解を得ている政策にはなりえないだろう。

この問題は、ある程度時間をかけて議論しなければならない問題であるが、マスコミの一時的な取り上げで終わってしまっている現状には、危機感を感じる。

私見を言えば、カナダの制度等を参考にし、むしろ年数による制限よりは、共通の言語能力試験を課し、一定の日本語能力が認められない外国人に関しては、永住許可は認めないという明確な基準を法律に定めるべきだと思うが、なかなかそうした議論すならされていないのが日本の外国人受け入れ政策の現状であろう

治安、社会、文化、経済という様々な要素を考えたうえで、どういう外国人を積極的に受け入れ、どういう外国人の永住者という特権的地位を付与するのか、という議論をもっと日本国民は真剣に考えなければならないように思う

最近は内向きで海外に関心を持たない若者が増えているとの指摘があるが、ぜひとも、今日成人式を迎え、其々の二十歳の誕生日には選挙権が付与される新成人の方には、日本の国の在り方として、外国人の受け入れ政策に対する関心を持ってもらい、日本の国際化の在り方を考える機会を持ってほしい。

さて、今日紹介する本も、外国人受け入れ政策関係の本。

外国人受け入れ政策を語る記事を見たときに、そのほとんどが、排他的な議論に終始し、現状を十分に見ていないものが多いと私は感じる。

ただ単に、外国人を敵視して、排他的になれば日本の利益が守れるというわけではない。

外国人の受け入れ制度全般を見渡し、それぞれの問題に対し、柔軟なアプローチと手続保障をして初めて、我が国の利益に適う結果がもたらされるはずである。

上記以外の問題として、外国人実習生の問題についても、我々日本人は目を向けて、日本の経済構造の問題とともに、人権問題でもあるこの問題について考えていかなければならない時期に来ているのではないだろうか。

現状として、日本の農業等の第一次産業が、外国人実習生頼みになり、この本がいうような外国人の奴隷化による搾取の構造がそこに存在しているのも事実である。

外国人受け入れ政策を考えていく上で、こういった事実上、安価な労働者として、受け入れが進み、それ頼みになっている第一次産業の問題をどう考えていくのかも、我々日本人が早急に解決すべき事柄であろう。

これらの本では、外国人実習生が、奴隷のごとく安価な労働力として、第一次産業において使われている現状が描かれている。

実習生と称し、実際は日本人が嫌がる仕事を押し付けて、最低賃金にもはるかに及ばない金銭の支払いで済ませている日本人による受け入れ機関の存在にも我々は厳しい目を向けなければならない。

責任感のない日本人による受け入れ機関が不法就労を助長し、そして、不法滞在や治安の悪化の原因、人権蹂躙による国際問題化という日本にとって不利益な行為を行っていることを知っている日本国民はどれだけいるだろうか。

外国人労働者を排斥せよという思考が停止した議論ではなく、どういう外国人労働者を受け入れるべきなのか、そのための法整備はどうあるべきなのか、成熟した国家に住む日本人として、ぜひ外国人受け入れ政策を考える際には、この実習生の奴隷化という現状にも目を向けてもらいたい。

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