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01/23/2011

BBCの二重被爆者嘲笑問題に対する反響について

先日、ブログで「イギリスBBCの二重被爆者嘲笑問題について」と取り上げ、それがライブドアニュースのサイトに転載されたこともあり、この問題に対して色々な反響があり、正直驚いている。

いろいろな見解があるのは良いのだが、中には賛同できないものもあるので、この問題を取り上げた以上、すでに、ツイッターでは、述べているが、このブログでも、反響に対する私の率直な意見についても、言及していこうと思う。

まず、私が賛同できない見解は2つある。

1つは、この問題が笑いに対する感覚の違いであるとし、文化の違いによるものという形で説明をつけてしまおうとするものである。

こうした見解は、一見合理的な理由を述べているようであるが、なにも述べていないに等しいと私は思う。異なる国同士の意見が違えば、文化の違いであるとして理解するアプローチは、問題の本質を矮小化しており、思考停止に陥っているのではないだろうか。

私がこの問題をやはり取り上げるべきで、もっとBBCは真摯に反省すべきだと感じた最大の理由は、この番組の二重被爆者である山口さんの取り上げ方が、笑いに対する感覚の違いがあるのは当然としても、製作者側の無知に起因し、ブラック・ジョークとしては成立しないほどに至っていると判断したからである。

つまり、笑いに対する感覚の違いがあるのは当然としても、この笑いの取り方は、ブラック・ジョークとして許される範疇を超えているということである。

私が思うところ、欧米のブラックジョークにも、それが成立するには、いくつかの暗黙の条件があり、この条件を逸脱してしまうと、いくら欧米社会でも、ブラック・ジョークとしては許されなくなる。

実際に、私が欧米に留学していた際、ブラックジョークやサーカシズム(sarcasm)な笑いの取り方が原因で、最初は一緒になって笑っていた欧米人のルームメイトやフロアーメイト同士が喧嘩するような光景を何度も目撃している。

しかしこれも、ブラックジョークが成立する暗黙の条件を逸脱したような場合であり、ブラックジョークだからなんでも許されると考えるのは、欧米の社会でも受け入れられないのである。

したがって、今回のBBCの番組を、笑いに対する文化の違いと説明してしまおうというのは、問題の本質を探究することを放棄しており、私は賛同できない。

さて、暗黙の条件といったが、これには以下のようなものがあると私は考えている。

①個別具体的な人物を笑いのネタの対象とする場合には、その人物が政治家等のPublic Figureであること。
②①に当たらないとしても、自虐的なものであること。
③そのネタをした場合に、相手方憤慨しない程度であることの暗黙の了解が取れていること。

①②は容易に想像がつくとして、③は非常に抽象的な話なので、少しエピソードを入れて解説しようと思う。

私のルームメートに、ユダヤ系アメリカ人の友人とドイツ系アメリカ人の友人がおり、ブラックジョークが好きで、アジア人の英語の発音について話しており、私が「アジア人の英語の発音は聞き取りにくい時がある」といった時に、「日本はナチスと同盟を結んでいて、日本人はレイシストだから、アジア人の発音を聞きたくないんだろう」と笑いながらジョークを飛ばしてきた。

それに対し、そこにいた別のドイツ系アメリカ人は笑いながら、私に向かって、「じゃあ、今度、俺と一緒にあいつをガス室に連れていこうぜ。」と応じ、3人で爆笑しあったことがある。

これは、普通では受け入れられないジョークである。

しかし、相手方との信頼関係に基づき、相手方が憤慨しないことの暗黙の了解が、ユダヤ系アメリカ人の友人、ドイツ系アメリカ人の友人、私との間で取れていたという特段の事情がある状況が存在したので、成立するブラックジョークなのである。

他方で、大したことのないブラックジョークが憤慨に至るケースもある。

私が寮の談話室みたいなところで、テレビを観ていたら、数人の女性が入ってきて、楽しそうの会話をしていた。
しかし、突然、その楽しそうな会話が一転した。

ショッピングで同じものを買ったという会話をしていた一人の中国系アメリカ人の女性に対し、黒人女性が、「やっぱり人の真似をするのは上手ね」と中国の海賊版文化をネタにジョークを飛ばしたところ、中国系アメリカ人の女性が、「どういう意味よ」と怒りだし、しまいには、アメリカで黒人とアジア人のどちらが差別されてきたかという議論にまで発展し、激しい口論にまでなっていた。

おそらく、この女性たちの友人関係は、相手の属性をネタにしてブラックジョークを飛ばすほどには成熟しておらず、相手方が憤慨しない程度のものであるとの暗黙の了解がなかったために、ジョークでは済まない口論に至ってしまったのであろう。

つまり、上記の①②に当たらないようなジョークは、かなり巧みに、その状況や聞いている者、タイミングを考えながら、やらないといけないのであり、それに失敗すると、ブラック・ジョークでは済まないことになるのは、欧米でも同じなのである。

今回のBBCの番組内容を観る限り、二重に被爆した不運と、にもかかわらず90歳を超えて長生きしたことに対するサーカシズムすら込められた笑いであり、被爆の後遺症等々にはまったく無知識で、軽薄にブラックジョークを飛ばしているように思える。

イギリスの鉄道事情をネタにしているという説明があるが、これは非常に後付け的な釈明であり、これにより、簡単に、被害者及び被害者遺族や在英邦人が納得できるとは到底言い難いであろう。

あの番組を見て被爆者がネタの対象になっていないと思う人は、英語力がないか、よっぽどのお人好しではないだろうか。私には、非常に「筋の悪い」釈明や擁護的意見に思えてならない

私はイギリスのコメディが好きだし、日本のやらせ的な馬鹿馬鹿しいお笑いなんかより面白いと思うが、どう好意的に見ても、あの番組の取り上げ方は、不適切であるといわざるを得ない。

たとえば、私が好きなイギリスのテレビ司会者のAnt and Decなんかも、英国流のジョークをかなり飛ばしているが、彼らのジョークは、まさに、政治家や有名人などのPublic Figureを対象にしていたり、自虐的なネタだったり、私人をネタにする場合でも相手方が憤慨しないことの暗黙の了解を取った上でネタにするので、今回のような問題を起こさないのである。

なお、私の知る限り、昨晩の時点で、日本人が関与していないニュースサイトとして、インドのニュースサイト、オーストラリアのニュースサイト、ロシアのニュースサイトでそれぞれ今回のBBCの問題は取り上げられているようである。

Japan-protests-BBC-jokes-about-atomic-bomb-survivor」- The Times of India

BBC sorry for jokes about atom bomb survivor | The Australian

BBC apologizes over gag - The Voice of Russia

前者2つではかなり詳細に説明しており、これを文化の違いとか、笑いに対する取り上げ方の違いというような矮小化した意見は載っていない。

さらに、スコットランドのメディアや、AFP通信も「BBCが謝罪した」として、この問題を取り上げており、BBCも今回の番組内容について、やっと報道を始めたようである。

やはり、ジョークとしては済まされない程度に至っていると見るのが私は妥当だと思う。

次に、2つ目の賛同できない見解についてであるが、それは、今回の問題をきわめて短絡的に理解し、白人社会によるアジア蔑視思想によるものだとか、国粋主義的な主張である。

こういう話題が出ると、思考が停止してしまい、「鬼畜米英」とかおよそ現代の民主主義国家で生きる合理的判断能力を有する通常人であれば、到底発想しないような陳腐な主張が平然と出てくることには、たとえインターネットという少数者が叫びやすい環境であるといっても、本当に驚くし、怖さすら感じる。

やはり、こういう問題が起こった時には、先のブログ記事でも指摘したが、なぜ日本の原爆に対する価値が伝わっていないのかという自問自答がまず先に来るべきではないだろうか。

この問題はそもそも原爆に対し、我々日本人が自己満足的な内弁慶の議論に終始し、国際社会の場で、積極的に原爆の負の側面を効果的に訴えて来なかったことに起因しているのであり、アジア人蔑視とか、国粋主義的、愛国主義な議論にすり替えてる意見を見ると、どうも「筋の悪さ」を通り越し、恐ろしさを感じてしまう

いずれにしても、日本人が黙っているのではなく、声を上げるようになったことは良いことだし、在英邦人が「冷静に」番組の問題点を指摘し、在英日本大使館がその在英邦人の声に耳を傾け、確固たる抗議をしたことは、非常に有益なことだったのではないだろうか。

きちんと声をあげて、二重被爆者や原爆の恐怖を世界に発信する機会を作ってくれたといっても過言ではないだろう。

ただ、一方で、声の上げ方を間違えている少数者の国粋的で頓珍漢な意見がネット上で氾濫してしまい、日本の民度が低くとらえられることがないことを祈りたい

最後に、これを機会に、私たち日本人も二重被爆者の経験に再度目を向けることも重要であろう。


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