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11/20/2010

それにしても質が悪い柳田法相の失言

昨日、14日に三日月章元法相がお亡くなりになったという話を聞き、時代の移り変わりを感じた。

民訴法において、新訴訟物理論の基礎を築くなど法律家としては大変な功績を残された人物である。新訴訟物理論は実務上は受け入れられるものではないが、三日月先生やその後の新堂先生の主張は、紛争の一回的解決という要請の重大さを再認識させ、現在の実務でもその観点は非常に重要な価値を有しているといえる。

そうした三日月章元法相のご逝去のニュースを聞き、私は現在の法相の失言について、一つの意見を表したいと思った。


今や柳田法相の失言の話は毎日のように取り上げられている。

一部では、揚げ足取りの議論とか、無意味な議論という話も出ているが、私はこの法相の失言は、過去の失言とは比にならないほど看過しがたい重大な失言であると考えている。

それにしても、法務大臣という要職の在り方について、与野党問わずもっと真剣に考えてもらいたいものである。

法務大臣の職責は非常に専門的かつ広範囲なものであり、生半可な人物がなるべきポストではない。自民党政権下でもたびたび単なる派閥の割り振りポストという色彩が強かったが、これは民主党政権になっても変わらないようである。

もっとも、私は最近は千葉景子前大臣に対する評価を改めつつある。他の法相と比較すれば、マシなほうだったように思うからである。この点、千葉大臣に対する見解はかなり分かれるところがあるかもしれないが、少なくとも多くの読者は、千葉大臣が柳田大臣よりはマシだったという点には賛同してくれるのではないかと考えている。

では、なぜ私が柳田大臣の失言が過去の大臣の失言とは比にならないと考えるのかを説明しよう。

まず、柳田大臣の発言は、11月18日付読売新聞の電子版が要約するところによれば、以下の2つである。

「9月17日(の内閣改造の際)新幹線の中に電話があって、『おい、やれ』と。何をやるんですかといったら、法相といって、『えーっ』ていったんですが、何で俺がと。皆さんも、『何で柳田さんが法相』と理解に苦しんでいるんじゃないかと思うが、一番理解できなかったのは私です。私は、この20年近い間、実は法務関係は1回も触れたことはない。触れたことがない私が法相なので多くのみなさんから激励と心配をいただいた」

 「法相とはいいですね。二つ覚えておけばいいんですから。『個別の事案についてはお答えを差し控えます』と。これはいい文句ですよ。これを使う。これがいいんです。分からなかったらこれを言う。これで、だいぶ切り抜けて参りましたけど、実際の問題なんですよ。しゃべれない。『法と証拠に基づいて、適切にやっております』。この二つなんですよ。まあ、何回使ったことか。使うたびに、野党からは責められ。政治家としての答えじゃないとさんざん怒られている。ただ、法相が法を犯してしゃべることはできないという当たり前の話。法を守って私は答弁している」

まず、最初の発言であるが、自分が法相として不適格である、少なくとも、経験不足であるという認識があるにもかかわらず、それを受けるという、エゴイスティックな姿勢である。本気で日本の抱える課題の解決を図らないといけないと考えているのであれば、少なくとも自分にそのポストをこなすだけの経験と実績がないのであれば、かたくなに断るのが、政治家としてあるべき姿ではなかろうか。

この第一発言は、就任当初から、法相として何をやるかという確固たる意思もなく、ポスト欲しさのために受けたということを明らかにしているようなものである。

次に、これが最も質の悪い、看過しがたい部分なのであるが、第二の失言部分である。
これは、本当に許しがたい発言である。なぜかといえば、職責を放棄していることを告白している発言だからである。2つのことだけ覚えておけばいいとして、あらゆる国会での質疑に対して、法務官僚に言われたのかどうかは知らないが、まともに思考せずに回答をしていることを言っているのだから、これを職責の放棄と評さずして、なんと評すべきであろう

仮に、法務省の組織である、法務局の職員などが、窓口で、国民からの問い合わせに対し、「個別の事案にはお答えできません。」とか、「法と証拠により適切に処理しています」しか回答せず、その後、ニヤニヤしながら、職員同士で、「法務局の仕事って楽だよなー。2つのことだけ言っていれば良いんだから」なんて言ってるとすれば、これは、懲戒ものであろう。

自民党時代には、過去に、「友達の友達はアルカイダ」とか、「私の宗教上の観念から死刑執行にはサインしない」等の発言があったが、いずれも、柳田法相の職務放棄ほどの低俗なレベルではない。

後者の杉浦法相の発言は、ある種、自己の信念と法相の職責との対立の末にでた発言であり、葛藤の現れなのであって、職務放棄とも評価できなくはないが、柳田発言のように、自己の職責に向き合わずしてなされたような、懈怠による失言ではないのであって、そこに大きな質の差がある。

こうして考えると、私は、柳田失言の質は非常に悪く、即刻罷免に値する看過しがたい重大な発言だと思うのである。

法務大臣の職務は、非常に重大である。死刑執行はもとより、国相手の訟務、刑事事件にかかわる問題、外国人の受け入れ管理に関する入管難民法の問題など人々の人権そのものにかかわる重大な分野の事件を扱っている。

一歩間違えれば、国内問題では済まず、国際的な非難を浴びるような重大な事務を取り扱っている省庁のトップが、こんな懈怠そのものと言える発言を平然としてしまい、これがおそらく本音であろうと誰しもが感じてしまうのであるから、非常に質が悪いとしか言いようがない。

民主党も自民党時代と何も変わらず、この発言の重大さを認識せずして、いまだに罷免をしない。これでは、変化に期待した有権者はますます政治不信と民主党への怒りを感じるのではないだろうか。

懈怠からくる職責放棄という失言は前代未聞である。

三日月先生は14日にご逝去されたので、現在の法務大臣の失言にまつわる問題は目にされずに亡くなったのだと思うが、この法務大臣のありさまをどのように思われるのであろうか。非常に恥ずかしい話である。

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