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09/20/2010

人事院、ちょっと待った! ― 国家公務員採用試験制度変更への疑問

先週、アクセス数がいつもより多いと感じていたのであるが、その理由が解った。

ライブドアニュースに配信された記事を「Yahoo!みんなの政治」でも取り上げられていたからのようである。

以下がそのリンクである。興味がある方がいれば、私の記事と関連する情報もまとめられているので、参照してみてほしい。

「鈴木宗男議員の上告棄却」を考える」

http://seiji.yahoo.co.jp/close_up/131/detail.html

「菅改造内閣 きょう発足へ」

http://seiji.yahoo.co.jp/close_up/100/detail.html

さて、今日の本題。

国家公務員の試験制度が変更になるのはご存じだろうか。

人事院は、平成24年度、つまり、再来年の試験から今までの、Ⅰ種、Ⅱ種、Ⅲ種という区別の試験から、総合職、一般職という区分での採用を実施しようとしている。

しかし、よくよく見てみると、この制度変更が本当に国家公務員としての有能な人材の発掘につながるかは疑問に思えてくる。

むしろ、改悪ではないかとの疑問すら抱いてしまう。

そこで、今日は、従来の制度と比較して、新制度の問題点と矛盾を指摘しよう。

1.受験年齢に対する疑問

現在の国家公務員Ⅰ種試験(いわゆるキャリア組の選考試験)の年齢制限は、受験をする年の4月1日における年齢が、21歳以上33歳未満の者としている。

それに対し、新試験制度下では、人事院は、30歳未満の者に限定しようとしており、年齢制限を一層厳しくしている。

しかも、新試験では、院卒者も30歳未満としており、一定の社会人経験を有した後で大学院へ進んだような人材の採用を困難にするだろう。

人事院が想定しているのは、大学から直接大学院に進学したような人々であり、多様な経験を持つ人材の確保という観点が乏しいといえるだろう。

そもそも、厚生労働省をはじめとして、年齢制限の撤廃、つまり、年齢差別の解消をしようというのが流れである。

例えば、雇用対策法7条は、募集・採用において、長期勤続によるキャリア形成の場合という例外があるものの、年齢に関わりなく機会を付与しなければならないことを定め、努力義務を強化している。

また、高齢者雇用安定法18条の2は65歳以下の年齢制限を付するときは、事業主は求人者に理由を示すべき義務を定めている

にもかかわらず、33歳未満の現行制度から30歳未満に受験年齢を引き下げることは、採用における年齢差別撤廃の流れに逆行するものではなかろうか

もちろん、若い人材を活用することは重要であるが、今、国家公務員に求められているのは、創造力の豊かな人材の発掘である。

確かに、新試験制度下でも、社会人試験、経験者試験があり、一定の人材確保はその試験が機能を果たすという反論もあるだろう。

しかしながら、現在でも、中途採用試験を行っているが、平成22年度の各官庁の募集人数を見ると、非常に狭き門であり、民間の優秀な人材を活用するに至っているとは到底言えない

現行制度下では、実質的に、Ⅰ種、Ⅱ種、Ⅲ種試験が国家公務員への門戸であり、これが総合職試験や一般職試験に変わったとしても、国家公務員のメインストリームを採用する試験であることに変わりはない。

中途採用制度が多様な人材確保という機能を果たしていない以上、受験資格年齢は、従来のⅠ種制度のように、ある程度余裕を持たせて、幅広い人物に試験の門戸を開いて、多様な人物を採用すべきではなかろうか

どうも人事院は、既存のキャリアシステムとノンキャリアシステムの温存し、終身雇用制度を前提として公務員の身分保障を厚くしたいだけなのではないかと思ってしまう。

新試験制度のメリットが私には理解できない。

2.法科大学院や公共政策大学院卒業生の受け皿にもならない

これは前述の年齢制限に関わる問題であるが、人事院の説明によれば、試験制度見直しの経緯として、「法科大学院や公共政策大学院などの設置やその後の定着の状況」を挙げている

しかしながら、これについても、必ずしも法科大学院や公共政策大学院などの専門的教育を受けた者の受け皿にはなりえない。

30歳未満という受験制限は、つまり、試験受験年において29歳以下であることを意味する。

法科大学院や公共政策大学院の設立においては、アメリカのロースクール制度などを参考にし、多様な社会人経験者の進学を確保することが目的であった。

現在は、新司法試験の合格率の低下や不況、雇用情勢の悪化などが起因し、社会人経験者の進学率が著しく低迷する傾向が強まっているが、本来は、大学時代に法律のみを勉強してきたような学生ではなく、社会人経験等から、幅広い視野を持てる法曹の育成や国家公務員の育成を目指し、これらの専門職大学院が設置されたはずである。

にもかかわらず、29歳以下しか受験できないということになれば、新司法試験の合格者数の低迷も相まって、これらの専門職大学院への社会人経験者の進学はさらに、低下するであろう。

そうなると、多様な人材を確保しようとした上記専門職大学院そのものの存在意義が疑われるし、専門職大学院の存在を理由の1つとしている以上、今回の国家公務員採用試験制度の改正の意義も乏しいということに論理的になるのではなかろうか。

3.試験科目はほとんど同じ

1次試験の試験科目は従来とほとんど変更がない

2次試験において、グループ討論などを設けているが、この程度の変更では、多様な人材の確保は無理である。

そもそも、国家公務員試験そのものには、官庁訪問システムと人事院面接システムの2重採用システムが存在してきた。

国家公務員試験に最終合格しても、官庁訪問を通じた各官庁による採用がなされないと、候補者になるだけで、就職はできない。

官庁訪問では、各官庁の採用担当者がいわゆる面接試験を実施するのであって、人事院面接そのものの存在意義は、実はあまりないといえる。

学閥、学歴偏重という批判を受けてか、人事院面接に際しては、学歴などを面接官が解らないようにして実施するものの、官庁訪問では、出身大学はもちろん、民間企業と全く同じような面接試験を受けるのである。

つまり、人事院面接は、形式的に、学歴偏重などの批判を回避するためになされているに過ぎない

こうした矛盾点を改善していないのであるから、例え、2次試験において、人事院によるグループディスカッションを導入しても、それは受験生にとって単に負担になるに過ぎず、根本的な採用の改善に至ることは無いだろう。

4.結論

どうもこの試験制度の変更は、国家公務員受験者数の負担を増やすだけで、多様な人材の確保とは程遠い内容に感じてならない。

従来のⅠ種試験やⅡ種試験では、一度民間に就職した者が、公共サービスへの意欲を持ち、働きながら公務員試験の勉強をして、受験するという者がかなりおり、優秀な人材も集まっていたように思う。

しかしながら、このような年齢制限の厳格化と無駄な受験生への負担の増加は、民間経験のある多様で、優秀な人材を門前払いし、安定志向の学生のみが受験するような制度になってしまうのではないかと私は危機感を感じている。

優秀な人物はドンドン海外に流れ、外資系企業に行き、国家公務員、とりわけキャリア組の志望者の質が低下しているという話はよく聞く。

形式だけの制度変更では、有能な人物を確保するのは無理である。

試験制度、採用後の昇格制度の改革を徹底的にして、やりがいを感じ、労働意欲を高める人事制度設計を急がねば、創造力のある優秀な人材の確保をすることができず、日本政府の国際社会における存在感も失墜する日も近いかもしれない。

引き続き今回も紹介します。

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