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07/07/2010

法律の資格と職域問題(ちょっとだけ選挙と憲法の話)

選挙が近くなり、特に週末は、選挙カーでの演説が多いですね。

先週末、駅の近くの交差点で、自民党の候補者が演説をしていました。

内容は自分たちの失政を省みない、陳腐な批判ばかりだったので、暑さも相まって嫌悪感すら感じました。

暑い夏の選挙戦では、下手な演説をすると、票を減らすのではないかとすら感じます。蒸し暑いにもかかわらず、「おっさん」のどうでもいい話は聞きたくないですよね。

蒸し暑い中、イライラしていたこともあるのですが、「聞きたくない自由」という消極的聞き手の自由って重要だなと感じ、ふと、「とらわれの聴衆事件」という憲法判例を思い出しました。

与野党関係無く、選挙カーでの大音量のどうでもいい陳腐な演説と名前の連呼という定番の選挙戦って、日本の特徴的なものですよね。

多くのまともな有権者は、名前連呼の選挙戦に嫌気がさしているのではないでしょうか。

さて、どうも、選挙関連の話題を書きたいという気持ちが生まれてきません。

先日、私は菅民主党政権は支持できないという話をしましたが、本来受け皿となるべき政党が存在しないのがその原因です。

特に、自民党は本当に情けないですね。このニュースを見て驚きました。

自民、日刊ゲンダイの記事で中央選管に質問状
7月6日22時57分配信 産経新聞

 自民党は6日、参院選公示後の夕刊紙「日刊ゲンダイ」(日刊現代発行)の記事や見出しが公職選挙法(法定外、脱法文書の領布禁止)違反の恐れがあるとして、大島理森幹事長名で中央選挙管理会の伊藤忠治委員長あてに質問状を提出した。

 日刊ゲンダイは公示後、「民主党への投票が最良の選択」(6月29日付)や「迷わずに民主党へ投票しよう」(7月3日付)などの見出しを付けて記事を掲載した。

 公選法では国民が選挙で適正な判断をするための『報道と評論』を認めている。これを踏まえ、自民党の質問状は日刊ゲンダイの見出しや記事について「民主党や同党公認候補者への投票を、端的に、直接的に、あからさまに求める表現で埋め尽くされている」と指摘。

 また「根拠薄弱で抽象的な他党批判をした上で、民主党礼賛の一方的な記事に終始している」として、「報道や評論」には該当せず、公選法に抵触するのではないかとしている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100706-00000617-san-pol

こんな低俗なタブロイド紙を相手に、抗議や批判をしなければいけないほど落ちぶれたということでしょうか。

大島幹事長って方、麻生政権以降幹事長を続けていますが、この方の批判ややっていることは、どうもトンチンカンでズレており、この方が本当に自民党をぶっ壊しているのでは?と思ってしまいます。

いずれにしても、選挙に行くことすら億劫になるこの政治的状況は、考えるだけで、気分が悪くなるので、今日も違う話題をしたいと思います。

なお、2点だけ選挙関連の話題について。

1.国会議員の定数が選挙での争点の1つになっているようですが、私は地方議員の方が多すぎるという指摘をしています(ライブドアニュースに配信されたのはこちら)。

ぜひ私の見解に興味のある方は、ご参照ください。

2.阪口先生がこの選挙の正しいの争点を提示していらっしゃいます。ぜひ、阪口弁護士の記事「選挙の隠れた真の争点・情報公開」をご覧ください。お勧めです。

では、本題です。

不景気が相まって、資格ビジネスのCMなどが近年増えてますよね。

法律系の資格の代表的なところでは、法曹、司法書士、行政書士、社労士、税理士、公認会計士、弁理士、海事代理士、宅建といったところでしょうか。

書店などでも多くのこれらの試験に関連する本はあるのですが、1つ気になっているのが、これらの職域関係に関する書籍が少ないことです。

弁護士、司法書士、行政書士、社労士、税理士、公認会計士、弁理士などは、具体的に見ていくと、どこまでがこれら各々の資格で出来る業務なのかが問題になっているし、今後ますます問題になるように思います。

実際、例えば、非弁行為のように、紛争性の有無など基準として曖昧な部分も多く、個別事案においては、非弁、非司、非行行為の無資格行為等を意識せずに行ってしまうこともありえるでしょう。

しかしながら、それぞれの独占業務はどこまでなのか等を解説する本って意外に少ないように思います。

受験生向けの本は市場が広いですから、ピンからキリまで様々な本が溢れかえるのですが、今後は法曹人口の拡大や隣接法律資格取得者が増加するでしょうから、職域を解説する本は、結構、需要があるのではないかなと思っています。

それぞれの強制加入団体は、自らの職域の拡大と他の士業の職域拡大の防止に必死です。これらの団体は本来公益性を図るために存在しますが、これらの団体が自分の職域を定義して、首を絞めるような書籍を積極的に出すとは思えません。

しかし、確実に職域のぶつかり合いは生じています。

例えば、離婚相談などを無資格者や行政書士などがやっているケースがあります。

離婚が当事者間で問題化している以上、当然に紛争性はあるでしょうから、これは弁護士の独占業務でしょう。

にもかかわらず、インターネット上でも、弁護士で無い者が離婚相談をしているケースがあり、非弁行為など本来できない業務を平然とやっている人々もいます。

無資格者の場合、よく、「法律上の話ではなく、精神的にサポートしているだけ」とか、「当事者が合意した事項を文書化しており、紛争性が無い」という反論があります。

ただ、私個人の見解としては、実質的に一方の代理人のような動きをしている限り、紛争性があり、非弁行為に当たるのであり、むしろ、紛争性が無い事案や純粋な精神的サーポートに留まる事案の方が、極めて例外的な事例ではないかと考えています。

問題は、非弁行為の問題などが取り上げられたときに、多くの場合、弁護士の既得権益確保だと見られてしまうことです。

弁護士会側にも、既得権益にしがみついているとみられ、社会の賛同を得られないような主張や行動をすることが多々あるため、非弁行為という本来は、既得権益とは全く関係の無い、別個に問題視されなければいけないことが、既得権益の問題に収斂されてしまって一般社会で認識されているという現状があり、このことは非常に危険です。

もっとも、弁護士会がテレビドラマなんかに文句をつけたりしているということがありましたから、弁護士会もそういう下らないことをやってしまっている点で、既得権益団体とみられてしまうことへの非はあると思います。

テレビドラマなんかにクレームをつけたらきりがありません。

テレビ朝日の相棒やフジテレビの古畑任三郎、ヒーローなどの刑事ドラマなんかでも、明らかに違法捜査だったり、法定の手続に反する捜査がされていることは多々あります。

でも、これらにいちいちクレームを付けていたらきりがありません。一般人に誤解を生むというのであれば、誤解が無いように弁護士会が非弁行為に対する啓蒙活動に力を入れれたり、非弁で告発すれば良いだけです。

そういう努力を十分にしていないにもかかわらず、薄っぺらいクレームを入れたりするのは私は賛同できません。

極めて政治的な問題に対しても会長声明という形で、弁護士の総意があるか疑わしい問題についても、声明を出すなどことは必死にやっていますが、こういう現在の弁護士会の姿は、やはり社会の理解は十分に得られないでしょう。

ただ、非弁行為等の問題は、前述のように、既得権益や強制団体の問題とは別にきちんと対処されなければなりません。

非弁行為等の最大の被害者は、国民です。

無資格者が、報酬を得てとして行うにより、不適切な事件処理をされてしまうことがあり、国民の利益を害する恐れのある問題です。

こういう問題を減らすためにも、職域について、整理された解説書が出れば、かなりの需要はあるのではないでしょうか。

大学の学者の先生で、司法政策の問題を専門されている方などが解説書を出せば、かなり儲かるのではないかとビジネスチャンスの一つとして感じています。

さて、今日紹介する本は、冒頭触れました、「とらわれの聴衆事件」で、非常に解りやすい補足意見を示した伊藤正巳元最高裁判事の本です。この本はタイトル通り、2006年に発行された一般向けの入門書です。

憲法改正も考えている政党が多いようですから、安易な改憲論に走る前に、憲法はどう解釈されているのかをまず有権者は勉強しておくべきでしょう。

伊藤判事は非常にバランス感覚に優れ、最高裁の憲法判例においてはかなりの影響をもたらした英米法専門の学者出身の裁判官でした。

憲法改正に賛成か反対かと安易な議論をする前に、現行の憲法規定および解釈がどうなっているのかぜひ学んでほしいと思います。

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Comments

>こんな低俗なタブロイド紙を相手に、抗議や批判をしなければいけないほど落ちぶれたということでしょうか。

日刊ゲンダイが低俗なタブロイド紙であるかどうかの問題ではなく、公職選挙法第148条にまったく抵触してないのに「評論性の有無」という話のすり替えで、報道機関を牽制し、たかが選管に内容を評価させようという甚だしく人権感覚が麻痺した言辞を公党が公式に表明したことが問題なのではないでしょうか?

二大政党制で負けた方の正統派一時的にイデオロギー的に尖鋭化してさらに支持者を減らしていくのが、英米では普通ですが、自民党もすっかりそのパターンにハマって当面再生不能に陥ったように思いますね。

Posted by: 丙野三郎 | 07/07/2010 08:48 am

初めてコメントします
弁護士に限らずこの国の司法システムは壊れかかってるんじゃないでしょうか。警察も役にたちませんしね。弁護士の職域の問題は弁護士自身に問題があるからと思います。医師と同じで都会偏重ですし金にならない事件は受けないし、そもそもアクセス自体が難しい。そういう問題を解決するために法曹人口を増やしてみたものの、今度は食えない弁護士が問題だとかで合格者を減らせ!でしょう?食えないなら小さい事件でも拾ってみるとか米国みたいに事故車を追いかけてみたらどうでしょうか。不当な依頼には応じない、反社会勢力の依頼は受けないという当たりまえの基準を確立していれば、需要の開拓は品位とは無関係と思います。弁護士自身が数々の不適切な処理を行ってきたことを思えば、資格を問うこと自体が国民からすれば既得権にすがっているとしか見えないし国民不在の縄張り争いにしか見えません。それに今まで適切に処理してきたと思っているものも本当に適切だったでしょうか?国民は司法システムを信頼し問題解決できると思っているでしょうか。思っていないと思いますよ。あまりにも長すぎ、あまりにも遅すぎ、あまりにも非実際的です。判決という紙ぺらをもらっても何の解決にもならんじゃないかというのは今までさんざん言われてきたことですが、抜本的な解決はなされていない。法曹の責任です。縄張り争いの咆吼を垂れ流すよりやるべきことがたくさんあるんじゃないでしょうか。

Posted by: 初心者 | 07/07/2010 02:44 pm

いつも私のブログを紹介して下さりありがとう。

官房報償費公開問題も仙谷官房長官は≪水清ければ魚棲まず≫とか言って、しかも25年先に公開するとか検討中という。1日350万円を使えるとなると、仙谷も俗物政治家の仲間入り。


Posted by: 弁護士阪口徳雄の自由発言 | 07/07/2010 07:09 pm

>阪口先生

いつも先生の記事を確認させていただいています。
阪口先生のように、バランス感覚の優れた記事を発信される方がインターネットの世界では非常に少ないため、大変共感する部分が多いです。

既存のメディアは報じる内容をスクリーニングしすぎで、これはで思想の自由市場は存在し得ません。
他方で、私も先生と同じように、特定の思想を妄信したりするのは非常に危険だと思っていますが、残念ながらインターネットでは、そういうコメントも多く見かけます。

したがって、先生のようなバランス感覚に優れた御意見は非常に貴重だと思っています。
残念ながら、仙谷官房長官も先生のおっしゃるように俗物だったようですね。クリーンと叫んでいても、結局、仙谷官房長官も、平野官房長官と変わらないのでしょうね。

弁護士出身だっただけに一時は期待しましたが、どうも政治家に転身してしまう弁護士は、憲法精神や法令解釈の精神を忘れてしまっているかのようで残念です。

特に政治とカネに関しては、先生の御意見が一番説得的かつ現実的だと思っていますが、そのような意見すら、既存の政治家には受け入れがたいのが不思議でなりません。

Posted by: ESQ | 07/08/2010 12:46 am

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