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02/22/2010

小沢問題と検察審査会制度とそれに関するお薦めブログの紹介

小沢氏の不起訴という検察の判断に対し、検察審査会への申立てがあったというニュースがしばらく前に流れたのは覚えているだろうか。

今日はタイトル通り、この問題に関する情報を発信したい。

なお、今回の小沢氏の問題関する捜査機関の問題点とマスメディアの問題点については、以前の記事で触れているので、そちらを参照してほしい。

1.刑事事件に対する未熟な報道 ― 小沢問題からの考察を中心に

2.小沢問題に関する考察 - 検察の捜査方法への疑問

3.なぜ著名ジャーナリストがここまで騒ぐのか(検察捜査と報道の問題点)

まず、検察審査会制度について。

刑事訴訟法は原則として、国家訴追主義、起訴独占主義という立場に立っており、同法247条は起訴独占主義に基づき、起訴権限を検察官にのみ認めている。

その起訴独占主義の例外が、①検察審査会制度であり、②付審査請求である。

後者は公務員の職権濫用罪など刑法194条から196条に当たる罪に対して、同じ公務員である検察官の判断に疑問が生じ、不公正な不起訴決定であるとの批判を回避するため、裁判所にその判断を委ねるものである。

他方、今回問題となる前者の制度は、「公権力の行使に国民の意見を反映させようとする目的で設けられた」(池田、前田「刑事訴訟法」p191)制度であり、裁判員制度同様、一般の国民(衆議院議員選挙の有権者)から無作為に選ばれた11人により、1つの合議体が構成される(検察審査会法4条)。

したがって、今この記事を読んでいる方々は、裁判員だけでなく、検察審査会の審査員に選ばれることがあるということである。

もちろん法律の素人に判断を全く任せてしまうのは、審査員に負担であるため、弁護士の中から審査補助員を付けることになっている。

検察審査会法39条の5第1項は、検察審査会が行う決議につき、3種類を規定している。

1号:起訴を相当と認めるとき・・・起訴相当決議

2号:1号の起訴相当決議を除き、公訴提起をしない処分が不当と認めるとき・・・不起訴不当決議

3号:公訴提起しない処分を相当と認めるとき・・・不起訴相当決議

そして、1号の起訴相当決議をする場合には、11人の審査員のうち8人以上の多数による必要がある(39条の5第2項)。

手続的概要をいうと、まず、最初の審査で、1号の「起訴相当」決議および2号の「不起訴不当決議」がなされた場合、検察官は再度起訴をすべきかどうか判断することになる。

このときに、検察官が再度不起訴処分にするか、公訴提起を定められた期間内におこなわなければ、再度、事件が検察審査会で問議されることとなる。

そこで、再び、「起訴相当」の判断をした場合に、「起訴決議」というものが出され(検察審査会法41条の6)、検察官に代わって裁判所が選任した弁護士が公訴提起を行うこととなる。

そこで、おそらく注目の的は、自民党の二階氏の事件のように、小沢氏に対する「起訴決議」が出るのか否かというところであろう。

この点、公益通報者問題等に熱心の取り組まれておられる弁護士の阪口徳雄先生が自身のブログで御見解を紹介されている。私も阪口先生の御見解は非常に的確で、おそらく、阪口先生の予想通りになるのではないかと思う。

このブログの読者方々には、ぜひ以下の阪口先生の記事を参照していただきたい。

「小沢幹事長の事件で検察審査会は起訴相当を議決するか(政治とカネ198) 」

また、阪口先生も検察の強制捜査に関する批評を2月3日付の記事でなされており、非常に解りやすく、なぜこの問題において、検察の捜査が「検察の暴走」との批判を受けるのかについて、本質的な説明をなされている。

「小沢不起訴なら「大山鳴動、ネズミ3匹」(政治とカネ193)」

私も阪口先生と同じ見解を取っているが、同じ見解でも、違う人の説明を読むことで、この問題の本質がより解るということもあるだろう。したがって、本ブログの読者の方々や検察捜査の在り方に疑問を持っている方々はぜひ阪口先生のブログを参照いただきたい。

阪口先生は公益通報者支援だけでなく、政治とカネの問題を鋭く突いて、活発的な行動をなさっておられる。したがって、小沢氏の問題だけでなく、政治とカネという広い視点からの問題提起を続けてきた方なだけに、記事には非常に説得力がある。

「企業・団体献金禁止法の制定を求めて民主党に直接要請(政治とカネ199)」

さらに、多少古いトピックではあるが、鳩山首相の偽装献金事件に関しても、法的見地から的確な意見を述べられており、既存のメディアからは十分に伝わってこない情報であるので、再度この事件の正しい法的認識をしたいという方はこちらの記事もおすすめである。

「鳩山総理の偽装献金事件を論じる(政治とカネ171)」

なお、阪口先生は修習生時代から、言論の自由、手続保障の確保のために、最高裁という司法権力に果敢に立ち向かった方である。興味がある方は、当時の阪口先生を支持する日弁連の声明を参照されたい。

この事件を振り返っても、権力があくまで人間により行使されるということに鑑みれば、権力に対し国民の不断の努力による監視が必要であることが良く解るだろう。

さて、恒例の本の紹介。

検察審査会をはじめ、刑事訴訟法を知りたい方には、裁判官の池田修先生と刑法学者でもある前田雅英教授の下記の本がスタンダードなものとしておすすめです。

また、検察審査会を舞台にした推理小説もあるようです。これに関しては私自身まだ読んだことがないので、わかりませんが、検察審査会が舞台の推理小説ということで興味が沸いたので一応紹介しておきます。作者は日本ミステリー文学大賞を受賞された方のようです。

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Comments

私のブログの紹介ありがとう
その上、身にあまるお誉めまで頂き恐縮です

年を取るとマスマス発言、行動が過激になります。若い時もそうだったかな(笑い)
弁護士 阪口徳雄

Posted by: 弁護士阪口徳雄の自由発言 | 02/25/2010 02:38 pm

阪口先生

わざわざコメントまでいただき、こちらこそ恐縮です。
今後も先生のブログを紹介させていただきます。

Posted by: ESQ | 02/26/2010 12:27 am

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