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02/05/2010

トヨタのリコール問題はジャパンバッシングなんかではない(製造物責任者の問題)

マスコミなどは飽きもせずに連日小沢問題や朝青龍問題を下らない調子で取り上げているが、これらの問題については既に記事にしたので今日は別の話題を取り上げようと思う(なお、私のブログでもたびたび紹介しているKyoさんという管理人の方の「永田町異聞」で、起訴状一本主義の観点からも興味深い記事を取り上げられていたので、興味のある方は是非読んでほしい)。

もっと日本にとって、さらには世界の消費者にとって、重大な問題。

そう。アメリカにおけるトヨタ自動車のリコール問題である。

多くのマスメディアはこの問題について、アメリカのジャパンバッシングではないかというような論調になろうとしているし、既にそうなっている感じがする。

しかし、トヨタの安全性に対する不備を追求せずして、この問題をジャパンバッシングと捉え済まそうするのは大きな間違いだと私は思う。最近のメディアのズレた報道を見ていると、「トヨタはメディアにとっても良い広告主なだけに、問題をする変えようとしているのでは?」と邪推すらしてしまいたくなる。

確かに、トヨタの安全性の問題が、GMをはじめとするビッグ3の回復をもくろむ絶好の機会になるという潜在性があるのは事実であろう。

しかしながら、去年の段階でアメリカ政府による指摘を受けていたにもかかわらず、トヨタが十分迅速に対応してこなかったのも事実である。

Japan Business Pressは以下のように報じている。

NHTSA(国家道路交通安全局)によって公式に危険性が指摘され、フロアマットの位置ずれによるペダル引っかかり問題が顕在化したのが2009年9月29日。これに対してトヨタ(米国法人)はユーザーへ手紙などで問題点を伝えたものの、NHTSAに促される形でリコールとして告知したのは11月2日になってからだった。「製品(クルマ)そのものの欠陥ではない」というスタンスを取り続けたのは分かるけれども。

アメリカ政府やアメリカメディアがトヨタの対応を強く批判している背景には、トヨタがアメリカで事業展開をする会社としての責任を果たしていないという不信感があるからである。

これをアメリカが自国の自動車産業保護のためにジャパンバッシングの格好のネタにしているなどという論調は、企業の社会的責任を本来は追及すべき立場にあるマスメディアの職責放棄といっても過言ではないだろう。

そもそも、アメリカにおいては、自動車の安全性に対する認識が日本以上に厳しいということをまず理解しておく必要がある。

自動車の安全性の問題といえば、弁護士で、最近では大統領選の無所属候補として二大政党制の問題点を指摘しているラルフ・ネイダー(Ralph Nader)氏の功績に言及しなければならない。

ネイダー氏は、1965年に自動車産業、特にGMを相手に、訴訟や「Unsafe at Any Speed(どのようなスピードをだしても車は危険である)」という本で、 自動車の安全性に欠陥があることを訴えた。

ネイダー氏の根本にある考えは、自動車メーカーが消費者に対し、通常有するべき安全性が確保しなければならず、それを欠いている場合は欠陥に当たるというものである。

この考え方は、現在の製造物責任の基礎となっており、わが国でも製造物責任法が、当該製造物が有すべき安全性を欠いていることを「欠陥」と定義して、無過失責任を製造業者等に課していることからも、その考えが反映されているといえよう。

当時、GMなどの自動車産業がネイダー氏の家などを盗聴するなどして、嫌がらせを続けたにもかかわらず、それ屈することなく、訴訟で、3000万円近い賠償金を得て、それを消費者擁護活動に費やしてきた。

いわば、ネイダー氏はアメリカの消費者擁護のパイオニア的存在の弁護士であり、ネイダー氏が設立した、アメリカのNGOで、監視機構であるPublic Citizenという団体もアメリカの消費者保護に重大な役割を果たしている。

そのラルフ・ネイダー氏は2月4日付Business Week誌のインタビューに対し、「トヨタは長らく不具合についても急ブレーキによるもので、車の安全性を欠いたものではないと説明し、へまを犯した。対応が遅いし、対応が不十分である。これは不適切な隠ぺいである」と強く批判している。

同時にネイダー氏は、国家道路交通安全局(NHTSA)の対応について、「トヨタはへまを犯したが、国家道路交通安全局はトヨタがへまを犯すことを許し、安全性の欠如という恐ろしい問題からアメリカ市民を守ろうとはしてこなかった」と問題があるとの認識を示している。

私は、日本のメディアもそれに乗せられた人々も、この問題をアメリカの自動車産業を守るための単純なジャパンバッシングと捉え、真摯に向き合おうとしていないように思えてならない。

ネイダー氏のように、アメリカの自動車産業とは全くの利権がない、むしろ、アメリカ自動車産業の敵として、純粋にアメリカの消費者擁護活動に取り組んできた人がこの問題について、トヨタ自動車の対応をこれだけ批判するのは、なぜだろうか。

この問題の本質が、貿易摩擦などの下らない問題ではなく、消費者の生命、身体を犠牲にし、車が通常有すべき安全性を欠いたことに対し迅速かつ十分な対応を取ってきていないトヨタ自動車の企業責任にあるからこそ、アメリカの消費者擁護の重鎮が痛烈に批判するのではないだろうか。

ネイダー氏の批判に対し、無知な方は「アメリカの弁護士は訴訟が好きだから批判しているんだ。消費者擁護なんていうなら、尚更怪しい」などと反論するかもしれない。

しかし、それはネイダー氏の活動と功績を知らない無知からくる故の論拠の無い空虚な反論といっても過言ではないだろう。

なぜなら、ネイダー氏は別のインタビューで、「訴訟は解決になるか?」という質問に対し、「訴訟をすることになれば、問題解決が非常に遅くなってしまう。訴訟をするというのは重要かもしれないが、時間がかかり過ぎてしまう。そんなことをすれば、トヨタは回復できない損失を抱え、GMの売り上げが回復することになるだけである」と答えていることから明らかなように、ネイダー氏の視点は、純粋なアメリカの消費者擁護にあるためである。

日本の自動車メーカーはもちろん、メディア、そして日本の技術力を自負する我々、日本国民も、今回の問題について、トヨタ自動車が企業としての責任を果たし、消費者のために十分な対応をしているか監視する必要があるだろう。

この問題をアメリカのジャパンバッシングだと捉えるだけで、本国である我が国が自浄作用を発揮できないようであれば、日本の技術力神話に対し、世界からの不信が突きつけられることになるのではないだろうか。

ネイダー氏の著書で翻訳されたものはほとんどありません。また、翻訳された本もあるのですが、翻訳が不自然で読みにくさが残ります。

この本は英語であり、かつ、なかなか難解な言い回しが多いですが、英語の自信がある方は是非、ネイダー氏の考え方を知る上でとても良い本ですから読んでみることをお勧めします。

そういえば今日は日弁連の会長選挙があった日ですね。激戦のようですがどうなったのでしょうか。法曹人口の削減を訴える宇都宮弁護士が特に地方でなかなか善戦しているようですが、就職ができないからとか、仕事が減ってるからという理由での、法曹人口を減らすという主張は、日弁連が既得権益の塊なんていう世間の誤解を招くのではないかと思います。そういう意味では、日弁連の会長は現状継承路線(年間2000人程度で推移)の山本弁護士の方が法曹界への不信も拡大しないように思いますが、どうなることやら。

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