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11/14/2009

外国人参政権問題の反響がもたらしたネットに対する認識の変化

ブログで色々私見を発していますと、コメント欄に、誹謗中傷に代表されるように、「相手にする時間が馬鹿馬鹿しいコメント」を書く人がどうしてもいます。

そして、そういった誹謗中傷がネット社会では溢れているというイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。

私もその一人でした。

今回ライブドア社に記事が掲載されることになり、このブログが、今まで以上に多くの目にさらされることになったので、誹謗中傷のようなコメントが増えることを予想していました。

さらに、先日、立て続けに議論を呼ぶトピックを扱い、アクセス数が急増したため、そういう誹謗中傷の幼稚なコメントが増えるなと覚悟してました。

しかし、意外にも、「ネットは誹謗中傷をする人で溢れており、マナーが悪く、陰湿だ」という前提は多少間違っているのではないかと思い始めました。

というのは、今回扱ったテーマが、永住外国人への地方参政権付与というホット・トピックで、訪問者が案の定急増したにもかかわらず、意外にも、新規訪問者の読者の皆様のマナーが良く、1200人を超える訪問者数を記録したのですが、誹謗中傷コメントは1件だけでした。

誹謗中傷を割合にすると、「1/1200」、「0.08%」ですから、1%にも程遠いわけです。

そうしますと、「ネットは誹謗中傷をするような人で溢れている」という前提が間違っており、「誹謗中傷をする人はネット利用者全体からみると本当に極僅かな人間によって行われている」のかもしれません。

さて、この1件の誹謗中傷コメントですが、「閉鎖しろよ、売国奴」という一言で、典型的な誹謗中傷でした。

もちろん、削除しましたし、書き込んだIPアドレスとホストサーバーは把握しているため、書き込みの禁止措置を取りました(ネットは匿名と言いますが、アクセスや書き込んだ時点でのIPアドレスとホストサーバーは解ってしまうので完全な匿名の世界ではないですよね)。

ネットでこうした「売国奴」というような表現が多々見られますが、厳密に言えば、こういう書き込みは刑法231条の侮辱罪に該当します。

刑法231条は、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱したものは、拘留または科料に処する」と規定します。

ネットと言う不特定多数が知りえる状態は、「公然」といえ、『売国奴』などという表示は、他人の人格に対する単なる軽蔑の価値判断を示す行為で、「侮辱」の構成要件に当たります。

いつもはこういう書き込みがあると、すぐにニフティーに迷惑行為と通知して削除し、書き込みを禁止するという措置をとり、コメントそのもにはほとんど気に止めません。

しかし、今回わざわざこうやって皆さんにお知らせした理由は、極めてマナーが良い方が大多数であって、こうした馬鹿な書き込みをするという人の割合は、1/1200の確立、0.08%であるという現実に驚き、それをお知らせしたかったためです。

読者の皆さんも、今回のような価値判断が先行するトピックを扱うと、いわゆる、ネット右翼といわれるような人たちが嫌がらせをしたりするのではないかと思ったのではないでしょうか。

私もそう思っていました。

しかし、結果は、承認制にしていることも起因しているのかもしれませんが、誹謗中傷(侮辱罪に該当する行為)は0.08%という数字で、これはかなり意外なものでした。

そのような結果から推察しますと、誹謗中傷にあたるような書き込みを行う人は、実際、極僅かな少数者で、そういう人間があたかも複数人になり済まして、侮辱罪に当たるような書き込みを複数回行うことで、ネットが犯罪の温床とか、無法地帯とかいうイメージをもたれているのかもしれません。

そうだとすれば、こうした少数のマナー違反が多数人の迷惑になっているという構図は、ネット社会も現実の社会も同じと言えそうです。

話題をこの永住外国人の参政権付与の問題に戻しますと、記事公開後に、非常に有益な質問をしてくださった人もいました。

それが以下の質問です。

今回の判決文で重要となるポイントは憲法93条の「住民」という単語をどう解釈するか。という事だと思われます。
傍論前半では憲法前文及び憲法15条に触れ、憲法93条でいう「住民」とは「日本国籍を有する日本国民」であると定義しています。
しかし傍論後半部分では上記の定義に触れず「住民」というのは国籍関係なく居住地域の公共自治体と緊密な関係をもつものである。したがって法律により選挙権を付与することは憲法違反には当たらないとしています。

前半部分の論点に従って憲法15条と93条を合わせ読むと(特別職とは言え)公務員の一員たる地方議会議員を選定・罷免することは日本国籍を有する国民固有の権利である。というように解釈出来るのですが それがなぜ後半部分につながるのでしょうか?
判決文の読み方に詳しくないのでこの前半と後半の違いが全く理解できません。
お忙しいところ申し訳ございませんがご教授願えませんでしょうか。

これに対する私の回答は、以下のとおりです。

貴殿の抱えた疑問ですが、非常に筋の良い疑問だと思います。

判決文の読み方に詳しくないとのことですが、かなり読み込まれているなと感心しました。

ただ、本題に入る前に1つ説明させてください。

貴殿のおっしゃる「傍論」という点ですが、記事でも書きましたが、傍論という制度がないため、どの部分を指して行っているのか正確に把握できません。

察するに、判決理由の部分を傍論と言い間違っているだけなのかと思いますが、一応説明させてもらいます。

判決には、2つのパートで構成されています。
1つは「主文」、もう1つは「理由」です。これだけです。

したがって、傍論と言われても、「なお」とか、「念のため」という接続語を使っている判例なら格別、そうでない以上は、どこを指しているのかわからないので、以後判例の判旨部分を説明するときには、使わない方が良いと思います。

以降の私の回答は、「貴殿がおそらく理由中の第一パラグラフを前半、第二パラグラフを後半部分と言う意味で話しているのだろうな」という理解で書きますので、仮に質問の趣旨とズレた回答でしたら、お許しください。

まず、貴殿のご質問の趣旨ですが、、「第一パラグラフ部分において、憲法上の国民と住民をともに日本国民と限定しつつ、第二パラグラフ部分で、一定の外国人に参政権を認めてもよいとすることは矛盾するのではないか?」という疑問を持たれているのではないでしょうか。

これは、判決に対する学説からの有力な批判の1つです。

したがって、判例がそうした矛盾を抱えておかしいという批判は、禁止説や保障説(憲法上の参政権の保障が外国人にも及ぶという説)から行うのは可能ですし、現にそういう批判があります。

もっとも、判例が、貴殿の言うように、「地方議会議員を選定・罷免することは日本国籍を有する国民固有の権利」という解釈していると読み込むことはできないと思います。

その点につき、以下、説明します。

判決理由中の第一パラグラフ部分の「『住民』とは日本国籍を有する日本国民である」という定義に至る判例の論理の流れですが、端的にいえば、国民主権の原理から導いています。

つまり、
1.憲法は前文、1条から、国民主権原理における「国民」とは日本国籍保有者である。

2.そうとすれば、憲法15条の権利の保障は日本国籍保有者を対象とし、外国人は保障の対象ではない(つまり、保障が及ばない)ということになる。

3.地方自治も我が国の統治機構の不可欠な要素

4.よって、住民とは、日本国民を意味し、外国人に選挙の権利を保障したということはできない。

という流れですね。

ここまでの流れで、判例は、「憲法による権利保障が誰に及ぶか」という話をしているに過ぎません。

そして、判例は一言も、「国民固有の権利である」とは言っていません。

15条の参政権は憲法第3章の基本的人権の1つですが、それにつき判例は、冒頭「保障は、権利の性質上国民のみを対象としているものを除き、...外国人に等しく及ぶ」とも言っています。

つまり、あくまで、判例は、「憲法上の権利の保障が誰に及ぶか」という話を前半部分(第1パラグラフ部分)で言っているわけです。

この前半部分の文言から、「地方議員を選定・罷免する権利が日本国籍を有する者の固有の権利と言っている」とまでは読み取ることは困難です。

したがって、前半部分はあくまで、「誰に保障が及ぶか」という話をしており、後半部分は、「『地方自治という重要性』、つまり、『地方自治の本旨である住民自治(地方自治は住民の意思が反映され、それに基づいて行われるべきとする価値)』に鑑み、一定の関係を持つに至ったものに対して、立法で権利を付与することは憲法が禁止したものではないという許容性の話」をしているにすぎないわけです。

簡単に言えば、前半部分は「誰に保障されているか」という話で、後半部分(第二パラグラフ部分)は、「立法措置で付与するのが許容されるのか」という話をしているのです。

しかし、このように説明しても、最初に言ったように、判例は、国民主権の原理を持ち出して、「あたかも国民固有の権利であるか」のような思考をしたうえで、「国民」、「住民」を日本国籍保有者に限定しておきながら、外国人への参政権付与を許容するのは、内在的論理に矛盾があると感じるという指摘も説得力があります。

以上のように、貴殿の御指摘は、判例の矛盾点をつくものとして、かなり筋の良い思考です。

ただ、あくまで、判例に対する批判としてありえる思考であって、判例が貴殿の言われる思考をしていると読み込むべきではないと思います。

紹介した渋谷先生の本を今日手に取る機会があったので、目を通してみましたが、この部分につき、判例の批判として貴殿と同じような疑問を指摘されていました。

参考になると思うので、折角興味を持たれたのでしたら、当該部分(外国人の参政権という論点について書かれている部分)だけでも本屋などで目を通して見られると良いかもしれません。

法律を学んだことのないという一般の方にしては、鋭い指摘で有益な議論だと感じたので、この記事の中で、紹介させていただきました。

さて、次回の予告(最近忙しくて、シリーズ化した「節度のないマスメディア」の続編もまだ書いていないので、本当にこの内容になるかわかりませんが・・・)ですが、民法の話題で、「意見・評論と名誉棄損の成否」などについて、判例の考え方なんかを紹介できればと思っています。

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※ 今回の一件の侮辱罪に該当するコメントですが、当初この記事の中で、IPアドレスやリモートホスト名も公開しようかと思いましたが、大人げないですし、そのIPアドレスが知れ渡り、他の人のサイトなどで、閲覧禁止や書き込み禁止とかにされてしまうと、自業自得とはいえ可哀想なので公開しません。また、別の方が同じIPアドレスを使っている場合に迷惑を被る可能性もあるそうです。いちいち反応すると、似たような行為に快感を抱く方が増えても面倒です。もっとも、この方の本ブログへの書き込みは禁止しました。今回こうした誹謗中傷コメントをあえて記事で取り上げたのは、「この0.08%の誹謗中傷率と言う結果が私のネット社会に対する認識に変化をもたらせた」という話をするための特例であって、誹謗中傷や迷惑コメントは公開せずに削除するのが私の管理方針ですので御了承下さい。

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Comments

最近のネット世論は直接的な罵倒を避け、狡猾に動いております。

例えば、自分の反対する政策についてのアンケートを組織票で埋め、それをデータとして持論を有利にするという手法が見られます。
外国人参政権問題については、この組織票による世論操作が顕著です。

cf
「外国人参政権アンケートと組織票 」 http://d.hatena.ne.jp/fut573/20091118/1258499307
「外国人参政権アンケートと組織票2 産経新聞のアンケートでも」
http://d.hatena.ne.jp/fut573/20091118/1258516222

Posted by: fut573 | 11/20/2009 at 09:54 PM

>fut573さん

はじめまして。コメント有難うございます。
確かに、ネット上の世論調査はとりわけその信憑性と言うのが問題になりますね。

世論調査というのは、1つの目安に過ぎず、これをもって国民の総意であるという帰結を導くことはできません。
結局は、最大で4年ごとに行われる衆院議員選挙、3年ごとの改選をする参院議員選挙など、選挙を通じて出した結果のみが唯一正当性担保された世論と言えます。

電話やインタビュー方式でマスメディアの行う世論調査も、問題がないわけではありません。

しかし、公認会計士の山田真哉先生も著書で指摘されていますが、数字と言うのはインパクトが強く、独り歩きしてしまいます。

例えば、貴殿の御指摘の9割が反対という数字を聞くだけで、何か説得力があるように思えてしまいます。ただ、数字は、それが正しい判断かという点は何も語りません。数字を見たときに、思考停止してしまうことはおそろしいですね。

外国人の参政権問題については、やはり、最高裁の判例の正確な理解を前提に、①そもそも最高裁判断が妥当なのか、②仮に最高裁判断が妥当だとして、現在の有権者団体を構成する国民の意思として、その団体の拡大行為を許すのかという議論を熱く行うべきで、世論調査の数字が9割反対か否かということは、何ら説得力も持たないと私は考えます。

Posted by: ESQ | 11/20/2009 at 11:58 PM

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