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11/26/2009

アメリカ合衆国大統領に対する歪められた歴史的評価

11月13日にオバマ大統領が来日したことで、最近は日米関係などを論じたニュースが飛び交った。

また、11月21日にはオバマ大統領の最新の支持率が過半数以下になったと多くのニュースが取り上げていた(私としては、そもそもオバマ大統領には批判的な意見を持っているし、自国の政治家ではないからどうでも良いと思うのだが、日本では、自国のリーダーのようにすべてのテレビ番組で取り上げられていた気がする)。

そこで、今日は、日本の教科書や歴史の授業からは学ぶことがないアメリカ合衆国大統領の姿を紹介してみようと思う。


1.アメリカで人気の大統領は?

アメリカでもっとも人気のある大統領はご存じだろうか。

USNEWSによると、ギャラップ社がアメリカ国民を対象に今年2月に実施した調査では、

第1位がロナルド・レーガン第40代大統領、

第2位がJ・F・ケネディー第35代大統領、

第3位がエイブラハム・リンカーン第16代大統領、

第4位がフランクリン・ルーズベルト第32代大統領、

第5位がジョージ・ワシントン初代大統領

だったという。

確かに、レーガンは強いアメリカの時代を象徴する大統領であるし、フランクリン・ルーズベルトも大恐慌からアメリカの経済を復活させた強いリーダーシップのある大統領だったので、なるほど上位に入るのも不思議ではない。

A・リンカーンとG・ワシントンは歴史上きわめて大きな役割を果たした人物なので、これも納得である。

しかし、私はケネディーがなぜここまで人気なのかがよく理解できない。なぜならば、オバマ現大統領もよくメディアなどに例えられるケネディー大統領であるが、とくに実績という実績が私には思い当たらないためである(両方とも目立った実績がなく、初のアイルランド系移民かつカトリックの大統領ということと、初の黒人大統領という「お初」ものという実績くらいだと私は評価している)。

他方で、アメリカ国内はもちろん、日本でも陰謀説などの陰に隠れ、その実際の実績の割には、あまり評価されていない大統領がいる。

その人物は、故・リンドン・B・ジョンソン(以下、「LBJ」)第36代アメリカ合衆国大統領である。


2.LBJが人気のない理由

LBJは、アメリカでも日本でも過小評価されている。

その第一の原因はベトナム政策の失敗にある。とりわけ、日本の評論家がアメリカ大統領を評価する場合は、その比重が過度に外交政策に置かれることが多い。日本で、LBJに対する評価が低いのはこれに起因している。

また、第二の理由として、日本に限らずアメリカでもいえることだが、LBJのアメリカ国内の実績が、J・F・ケネディー大統領の過大評価により、反射的に過小評価に至っていることも挙げられる。

しかし、アメリカの国内政治の歴史を客観的に見れば、LBJの実績が与えたアメリカへの影響の大きさは、ケネディーのそれとは比較にならない。

そこで、以下、アメリカ大統領として私が最も評価しているLBJの本当の姿を紹介する。


3.LBJの本当の姿 ― 若かりしき頃のジョンソン

アメリカの人種差別撤廃の転換点となったものとして、1964年の公民権法が挙げられる。

この公民権法が1964年に成立したのは、LBJによる功績が大きい。

この点、オバマ大統領との予備選挙中に、ヒラリー氏が同様の発言をしてオバマ支持者の反発を買ったのは記憶に新しい。しかし、ヒラリー氏の歴史認識が本来的には正しく、批判していたオバマ支持者は歴史に無知なだけであった。

歴史の話をする上で、「仮に」というのは、ありえないことで、こんなことを言うこと自体間違っているといわれるが、LBJの対議会運営の手法がなければ、1964年の公民権法は成立していなかったし、アメリカの人種差別の撤廃の動きは遅れたと私は思う。

なぜならば、LBJが人種差別撤廃に消極的な南部を基盤とする民主党の政治家(テキサス州出身)であったからこそ、人種差別撤廃に反対する議員への対応方法も十分に熟知しており、その知識と経験がLBJの巧みな対議会戦術を支えていたためである。

もっとも、アメリカでは、JFKがキング牧師の釈放に関与したことから、JFKが人種差別撤廃への道筋をつけたとの理解があり、LBJは当初から人種差別撤廃には積極的ではなかったという評価をしている人も多い。

しかし、繰り返しになるが、後者のLBJの理解の部分は大きな誤解である。

その理由は、LBJの学生時代の活動にまで遡る。

LBJは公立学校に通っていた。高校時代に生徒会の会長に選出されているが、当時から社会的不正義に対してかなりの反発をもっており、この頃に人種差別等の不正義に対するLBJの基本的姿勢が構築されたという記録が残っている。

また、大学での政治活動として、社会的不正義(とりわけ、貧富の格差や人種問題)について、熱心に大学新聞の記事を数多く書いている

さらに、卒業後は貧困層であるメキシコ系の子供が通う学校で教職を取っており、この時期に、貧困により教育を受ける機会が無いという人々の存在を知り、生涯をかけて改善したいという気持ちを述べている

しかし、多くのアメリカ人も、こうしたLBJの若いころからの活動の事実は十分に考慮せず、前述のように、南部出身という事実だけを持って彼を評価する。

LBJの人種問題解決への尽力は、どうしてもアメリカ社会では、考慮すべき事実を考慮していない不当な評価を受けていると言っても過言ではない。

予備選挙中、ヒラリー氏も指摘していたが、LBJが大統領としてリーダシップを発揮したからこそ、キング牧師の想いを1964年公民権法という形で、法案化できたという側面があるのは否定できない事実である。

そうであるにもかかわわず、黒人層を中心にこの事実の側面は受け入れたがらない。

その理由は、ある意味当然のことで、黒人の指導者にしてみれば、自分たちの権利が差別主義の残る南部の典型的な白人の政治家から与えられたという印象を排除したいという願望が根底にあるためと考えられる。


4.LBJの本当の姿 ― 在任中の実績

LBJは、サーグッド・マーシャル判事をアメリカ連邦最高裁の判事として任命し、黒人初の最高裁判事の誕生を実現させている。

この人選の際に、LBJは、「サーグッドという黒人の子供が今年は増えるぞ。黒人の親はこれを記念してサーグットと子供を名づけるだろう」と自慢げに語ったと言われており、黒人の公民権拡大には特に個人的な思い入れが強かったことが窺われる発言である。

さらに、LBJが在任中に提唱した「偉大な社会計画(Great Social Plan)」は、現在のアメリカ政治においてもリベラル派の基本理念として根付いている。

例えば、ヒラリー氏が提唱し、オバマ大統領が導入としている国民皆保険制度の根底にある理念は、まさに「偉大な社会計画」の理念そのものである。

つまり、実際には、LBJは、積極的に、格差是正を提唱したリベラル本流の政策(フランクリン・ルーズベルト大統領のニューディール政策の継承として)を実行してきたといえる。

その根拠として、まず、LBJが上記計画の一環として、「貧困との闘い(War on Poverty)」を提唱し、アメリカの貧困層に対する医療制度の拡充や教育機会の均等が実現したことが挙げられる。

さらに、雇用機会均等法を導入したのもLBJである。

以上のような事実を総合すれば、LBJは、階層による成功の固定化を打破し、アメリカン・ドリームといわれる概念の基礎となる『機会の均等』を実現した大統領と称すべき人物である。

つまり、LBJの国内政策なくして、1970年代以降のアメリカの景気拡大と繁栄の基礎はなかったと言っても過言ではない(もっとも、1970年代は国内需要の拡大により輸入が増加し、経常赤字も増加したことから、反日製品運動に結びついた)。

そして、LBJが残した日記や手紙などを検証すると、LBJの実績のほとんどが、実際には、政治的駆け引きにより行うのではなく、彼の青年期に構築された「社会的不正義」に対する反発心に起因しているということが良く解る。


5.過大評価されるJ・F・ケネディー

他方で、JFKの政治手腕は、キューバ危機の回避という政治的なイベントを理由として、異常なほどに美化されている。

「そもそも、JFKの実績が何か?」と問われると私には何も思い浮かばない。

ビッグス湾事件(キューバ危機回避ばかり注目されており、そもそもの原因であるこの事件が取り上げられない傾向にある)では、明らかに無謀な作戦を実行し、完全に失敗している。

これは、集団極化という心理学的事例として紹介されるほど悪名の高い実績である。

さらに、JFKは、ベルリン危機とキューバ危機という2つの危機に在任中、直面している。

これらを「乗り切った」ということばかりが、評価されているが、そもそもこの危機を作り出したのは、JFKとフルシチョフの対話の欠乏と外交手腕の欠如にあるといえるのではなかろうか。

例えば、ベルリン危機により、ベルリンの壁が建設されたが、この際にJFKが単にソ連に対し強行的な姿勢を見せるだけでなく、直接対話のラインを残すなどより巧みな外交戦術をしていれば、1961年から1989年まで壁で分断されることもなかったのかもしれない。

歴史ではタブーの「If」の問題となってしまうが、この問題に対するJFKの姿勢が必ずしも評価するに値するとは言えないのである。

また、キューバ危機も一触触発の事態に至ったのは、ケネディーの外交手腕の失敗が原因である。

当時の状況からすれば、キューバとソ連が軍事的関係を強めるのは確実な状況であったにもかかわらず、ビッグス湾事件をケネディーは引き起こした。この事件を経験したカストロにとっては、ソ連の核の笠に入ろうとするのは当然の成り行きである。

つまり、アイゼンハワー時代から、冷え込んでた関係を一層冷え込ませたのがケネディーによるビッグス湾事件の実行とその後の暗殺計画だったのではなかろうか。

多くの記録をみると、カストロは1959年の革命実行時点においては、共産主義者ではなかったとされている。ケネディーによる外交上の失敗がカストロをさらに孤立化させ、ソ連にミサイル建設をさせることになったと考えるのが自然であろう。

しかしながら、そうしたJFKの負の側面はほとんど知られていない。メディアなどで特集をされるときも、暗殺された悲劇の大統領として、取り上げられるだけである。

では、なぜ、ケネディーが過大評価されるのか。

ケネディーが好かれるのは、彼がアメリカで最初のアイルランド系の移民の大統領であるというたった一つの理由に支えられていると考える

つまり、人種のるつぼであるアメリカ社会において、人種撤廃も、現代リベラルの価値も、南部出身の旧来的政治家に見えるリンドン・B・ジョンソンではなく、初の移民大統領による新しいリーダーにより作られたと語ることの方が、アメリカの歴史を美化できるというわけである。


6.終わりに

確かに、LBJのベトナム戦争開始に代表される外交政策は、はっきり言って失敗であった。

しかし、その失敗の原因も、LBJの性格である社会的不正義への抵抗とそれへの執着にあると考えられる。

例えば、ケネディーの在任中、副大統領であったLBJは、当時のベトナムに大統領の命令で、派遣され、その状況を報告する任務を任された。その報告書をみると、LBJが査察を通じ、ベトナムにおける不正義を何とかしなければいけないと考えていた記録が残っている。

LBJは、黒人屋貧困層の地位解放という国内問題と同様に、ベトナム国民を共産主義からの解放することが社会正義であると捉えてしまったのである。

すなわち、LBJは、若いころから培ってきた「強者により弱者を救済して社会正義を実現しなければならない」という信念の下で、「強者であるアメリカは、共産主義支配される弱者のベトナム国民を、共産主義による不正義から解放しなければならない」と強く信じてしまったのである。

そして、この信念に従った決断が、ベトナム戦争の泥沼化への第一歩になってしまった。

残念ながら、このベトナム戦争開始の決断という失敗が、リンドン・B・大統領の評価の全てとなってしまい、彼の実現した国内政策への尽力は正当な評価がなされていない。

もっとも、以上のLBJに関する私の考えは、きちんとした根拠がある。

それは、『Lyndon Johnson and the American Dream』という題で、ピューリッツアー賞をとったことのあるDoris Kearns Goodwin氏により書かれた本が私の上記考察のベースになっている。

そもそも私はジョンソン大統領にはあまり興味がなかった。しかし、この本を読んで、教科書だけで伝えられる歴史とは違う側面があることを痛感した。

この本は、ジョンソン大統領の私生活を含めて彼の人物像を細かく書かれており、ジョンソンの人間性が豊かに描かれている。

そして、ジョンソンのすべてに賛同するのではなく、ベトナム戦争などに至った経緯について、厳しい視点を織り交ぜながらも、国内政策の実績と正当に評価して、ジョンソン大統領の良い面と悪い面が公平に評価されている。

アメリカや日本では、外交政策の失敗という面ばかりだけが強調され、低い評価となっているが、この本を読めば、そうした評価は断片的なものに過ぎず、リンドン・B・ジョンソン大統領の歴史的実績に対する評価はもっと公平であるべきと感じるであろう。

本書は洋書であるが、英語に苦労してでも読む価値がある本の1つといえる。

最後に、一言。

私には、オバマフィーバーによって誕生したオバマ大統領をみると、ケネディー大統領への①過剰な評価及び②外交経験の未熟さという2点において重なって見える。

本当のオバマ像を知った時、もしかすると、我々は、評価されるべき人物は別にいることに初めて気がつくのかもしれない。

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オバマ米大統領支持率、50%割り込む=ギャラップ調査
11月21日10時5分配信 ロイター

 [ワシントン 20日 ロイター] ギャラップの調査によると、オバマ米大統領の支持率が50%を割り込んだ。医療保険制度改革法案や経済の弱さが支持率低下につながったことが示された。
 ギャラップによるとオバマ大統領の支持率は49%。18日に公表された米キニピアック大学の世論調査の結果でも支持率が48%となっていた。
 ギャラップの調査は17─19日に1533人を対象に実施された。誤差は4ポイント。
 同社は調査結果についての分析で、医療保険制度改革や景気の低迷に加え「連邦財政赤字が増大していることも国民は懸念している」と指摘した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091121-00000853-reu-int

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Comments

http://www.pbs.org/wgbh/amex/presidents/
をテレビで見たのですが,オンラインでも番組が見られるようです。ジョンソン大統領のところをぜひご覧ください。私も彼のことをほとんど知らなかったけれど,勉強になりました。

Posted by: K | 11/26/2009 at 03:40 PM

>Kさん
はじめまして。
ビデオのリンク有難うございました。
少しだけ見ましたが面白そうですね。
時間があるときに全部見てみます。
今後もまた情報よろしくお願いします。

Posted by: ESQ | 11/28/2009 at 12:56 AM

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