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10/23/2009

足利事件再審とその報道に思うこと

ここ最近、ご存じのように様々な司法関係のニュースが多く流れていますね。

足利事件の再審、高相被告の初公判などなど。

芸能人の薬物事件には、別の観点から興味がそそられる事実(元弁護人が犯人隠避に当たるかのような行動をしたことを高相被告が証言したこと)がありましたが、それは色々複雑な背景事情との絡み合いもあるため、その話は今回はしません(というか、下手なことをいうと名誉棄損にもなってしまうため、今後もしないかもしれませんが・・・)。

やはり、足利事件についてです。

決して、この事件の上告審で審理した最高裁裁判官を弁護するわけではないのですが、やはり、今の謝罪すべきかどうかというマスメディアの論調には私は非常に大きな違和感を感じるわけです。

つまり、謝罪があるかどうかという感情論が問題なのではなく、「司法権と冤罪」というより高度な問題なわけですから、重要なのは、「客観的に、どうして冤罪を見抜けなかったのか」という点を裁判過程を振り返って慎重に検証することなのではないでしょうか。

その点で、今回の再審事件を担当している宇都宮地裁の受訴裁判所はなかなか丁寧かつ巧妙な裁判を尽くそうという姿勢がみられるのではないかと私は評価(むしろ現段階では期待というべきでしょう)しています。

さて、従来から指摘している私の考えについては、以下の過去の記事を参考にしていただければと思います。

私は足利事件の過程を特に評価できるほど十分にフォローしていませんし、提出された証拠を見て評価することもできないので、過去の裁判過程を振り返って、客観的にどこに問題点があったかを指摘できるほど事実関係に詳しいわけではありません

しかし、この事件を検証すべき方向性がどうあるべきかについては、少なくとも指摘できる程度の知識はあると思うので、ツイッターでもつぶやいたのですが、昨日の報道ステーションのこの事件の取り上げ方と、古館キャスター、および長野智子氏の報道姿勢に対する疑問について中心にお話ししたいと思います。

もちろん、以下で、同番組内で取り上げられた亀山継夫元最高裁判事のコメントにも言及しますし、亀山元判事のコメントについてについても、結果的に判断を間違った判事というレッテルを極力排除して、中立的に彼の考えが間違っているのかどうかも検証してみたいと思います。



1.報道ステーションにおける報道内容の方向性の問題点

まず、報道ステーションでは、「裁判所は謝れ」、「結果として間違っていたから悪い」などという感情論が先行報道姿勢でした。こうした主張を当事者の菅家さんがすることは理解できますし、耳を傾けるに値します。なぜなら、冤罪の苦しみというのは、当事者でなければ解らないですし、当事者だからこそその苦しみを他に伝えたいと思うことは当然のことだからです。

しかしながら、マスメディアという報道機関がそうした感情論先行の報道を行い、事実関係に詳しくない視聴者を感情論で誘導するのは、問題の本質を見誤らせ、衆愚的リアクションにより、思考を停止させることになるだけでなく、冤罪が起きた裁判過程の問題点を正しく洗い出すことの妨げになります。

先の報道ステーションでは、キャスターの古館氏も、レポーターの長野智子氏も、「裁判官はなぜ謝らないのか?」という事ばかりを追っており、当時の上告審の裁判長裁判官だった亀山継夫元最高裁判事に突撃取材をし、突然の取材攻勢に不快感をしめしつつも、答えている亀山元判事の姿勢を感情論先行で批判していました。

しまいには、古館氏は、今回の再審を担当している裁判長裁判官の「公平中立な立場で臨んだ上で、最終的に裁判所の対応について示します」という裁判所の謝罪を求める菅家さんへの発言を、「解りにくい言葉で言わず、なぜ率直に謝れないのでしょうか」と非常に馬鹿げた(裁判という本質を理解していない)発言をしていました。

私は当初、「この発言に共感してしまう一般視聴者は多いのかな?」と思っていたのですが、意外にツイッターで反応を見ている限りだと、今回の報道ステーションの報道内容に批判的な人も多く、また、法律関係の話しに疎い私の家族の一人も、「は?何言ってるのこの人(古館氏のこと)?」と言っていたので、案外、メディアのような劇場型、感情先行型の視聴者は少ないのではないかと安堵しました(裁判員制度もはじまって国民の司法に対する意識レベルが意外に高く知識も多いのかもしれませんね)。

さて、なぜ、上記古館氏の発言が馬鹿げているのか?

その答えは簡単です。

再審でありなんであり、裁判である以上、そこに提出された事実と証拠により、予断を排除して、公正中立に審理に臨み判断すべきなのであって、この佐藤正信裁判長の発言は何らおかしなことを言っているわけではないためです。

今まさに再審により無罪であるかどうかの確定をしようという時に、裁判の冒頭で、「冤罪でしたごめんなさい」と謝る方が、おかしな話なのです。

それに、佐藤裁判長は、「最終的に裁判所としての対応を示す」とまで言っているのであって、判決で冤罪が確定する際には何らかの謝罪を求める菅家さんへの回答をすることを約束しているわけですから、むしろ、菅家さんの主張に配慮した姿勢を示しているのです。

それを、「判断を誤った裁判所が悪い、謝れ!」と扇動して、「解りにくい言葉で言わず、素直に謝れないのか」と批判する報道自体、報道として不適切というのは明白でしょう。裁判とはそういう軽いものではないのです。

古館氏も長野氏も、終始、「裁判所が国民の意識からかけ離れている」と非難し続けましたが、佐藤裁判長の訴訟指揮を見る限り、今回の再審審理は非常に妥当なのもですし、国民意識からかけ離れているとは思えません。

弁護人の佐藤弁護士も指摘されていましたが、裁判所がテープの証拠提示を命じています(刑事訴訟法規則192条の提示命令)から、報道機関は「判断を先送り」と批判していますが、佐藤弁護士が言うように、おそらく多くが証拠採用されるのではないかと思います。

なお、補足的な話ですが、この提示命令が出されたからといって必ずしも積極的な証拠決定が出るとは限らず、裁判所の自由裁量によることとなります。

今回の場合、検察の主張を見ていると、①事件との関連性が乏しいとか、②証拠価値が低く取り調べに多くの労力を要するという形で、消極的判断を求めているようで、確かにこれらに当たる場合は、証拠採用されない場合もあります。

しかし、提示命令を出した以上は、その証拠内容を確認する必要があると少なくとも裁判所は考えているわけです。

もし菅家さんや弁護人の主張に反し、受訴裁判所が形式な再審で終わらせよう考えているとすれば、再審で検察も無罪を主張している以上、そもそも証拠調べが不要として、提示命令を出す必要はありません。

にもかかわらず、受訴裁判所は提示命令を出し、証拠採用の判断を次回まで見送りました(即断しなかったわけです)。

また、検察側の①②に当たるかどうかは、その内容を確認しなくても、その属性から客観的に解る場合が多いですから、提示命令をわざわざ出し、判断を次回に持ち越したということからすれば、裁判所は証拠採用可能性が高いだろうという推測が働くわけです。

したがって、最終的な判断は、受訴裁判所の合理的な裁量の範囲で判断されますから、どうなるかわかりませんが、おそらく積極的な判断になるのではないでしょうか。

いずれにしても、今回の再審事件の審理は、非常に妥当なものなのですから(少なくとも報道を見る限り、弁護人の佐藤博史弁護士も訴訟指揮に満足しているようでした。)、報道ステーションの放送内容は、どうも裁判所を批判しようという(似非)ジャーナリズムが先行しており、私は強い違和感を感じます。



2.亀山元最高裁判事へのインタビューについて

次に、亀山元判事への突撃取材が報道ステーションでは取り上げられていました。そもそも、あの手の突撃取材は、取材側を不快にわざとさせ、印象が悪く映るように見せている場合も多いわけです。

亀山元判事も例外なく突撃取材を受けたために不快感を示した態度で映っていました。

私はそれでも、感情をわざと逆なでするかのような長野智子氏のインタビューに答えていた亀山元判事には一定の理解を示します。

さて、亀山元判事のインタビュー内での回答について、私見がどう思うか以下で紹介します。

この点、亀山元判事は、

①上告審は法律審であり、原審の事実認定を前提に法解釈の適用及び事実誤認があるかを判断する制度であって、事実認定をやり直す場ではないこと、

②菅家さんが捜査段階だけでなく、公判廷で一度自白してしまっていることから、否認に転じた以後の供述の信ぴょう性が低くなってしまうこと、

③証拠そのものが上告審には提出されていないこと

という3つの点を指摘されていました。

①②はおっしゃる通りで、亀山元判事の言い分その通りとしか言いようがありません。

なぜ再鑑定しなかったのかという点について、③の指摘ですが、正直この点については、亀山元判事の指摘がそもそも正しいのかどうかすら、私は解りかねます。

弁護人は、上告棄却前までに不一致を示す独自の鑑定結果を提出したと言っています。亀山元裁判官がどういう認識をしていたかはわからないので、なんとも言いようがありません。

まさに、こうした点の検証が必要なのであって、弁護人提出の鑑定結果がなぜ重要視されていなかったのかが足利事件上告審の最大の問題であり、メディアを含めてこの部分の検証が必要でしょう。

なお、憶測で話しますが、おそらく、裁判所は、公判廷で自白した以上、自白供述の証拠価値は高く、その後に否認した供述についての信頼性が低いということを前提に、DNA結果について、安易に科学的立証ということから過信しすぎたということなのだと思います。

いずれにしても、以下にあるような報道ステーションの流した報道内容で、③および亀山元判事ら当時の最高裁の判断に改善すべき点があったか否かを判断することは困難です。

しかしながら、以下の動画を見れば明らかですが、報道ステーションのキャスター陣は、裁判所が悪いという価値判断先行で、物事を語ろうとしているため非常に薄っぺらい取材およびその報道になっていると私は思います。

【足利事件】 当時の最高裁裁判長 亀山継夫氏を直撃インタビュー 2009/10/21
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削除される可能性があるので、以下に再現しておきます。

長野智子氏(以下、長野):菅家さんに謝罪は何かしないのですか?

亀山継夫元最高裁判事(以下、亀山):そういう問題ではないと思うんですよ。

長野:(いきり立ちながら)どういう問題ですか?人一人の人生が奪われて、真犯人はまだ捕まってないんですよ!

亀山:それを言うなら、警察とか検察庁に言ってください。裁判所というのはね、裁判に出てきた場にある証拠だけを判断するわけです。それしか判断できない。

長野:(亀山の話を遮り)結果として判断を間違ったんですけど、それについてはどう思うのですか?

亀山:何が結果だか、私は自分のした裁判、自分のところに出てきた裁判のことしか考えてませんから、特段の感想はありません(もっとも、亀山元判事は、冒頭には遺憾のことだと思うと発言しているので、編集による作為も感じられる点は付言しておく)。

長野:間違った原因は何だと思われますか?

亀山:もしそれが間違っているとしたら、それは色々なことがあるでしょう。ただね。これ、私は自分の裁判のことではなくて、この事件のことをずっと客観的に見ています。この事件の一番の問題点はね。公判廷で犯人が自白しているということです。被告人がね。公判廷でね、後で、いやそれはウソだったんだというふうなことになっているんです。公判廷でそうむやみやたらにね、ウソでたらめを言ってもらうと困るんですよ。

突然、インタビュー映像は切れ、別の映像(公判廷での自白が仕方ないという印象付けの映像)が流れだす(私はこの後亀山元判事が何を言っているかが一番重要だと思うのですが、編集されてしまっています)。

長野:最高裁に弁護側が再鑑定を申し出て、それから、10年間、菅家さんは無罪のまま、中に入り、真犯人は外にいるわけですよね。

亀山:それに関してはね、なるほど、客観的には遺憾なことですが、それは遺憾だとしか言いようがないよ。そうでしょ?

長野:客観的にって、当事者で裁かれたのですよね?

亀山:当事者で裁くったって、我々は全力でベストを尽くして、やっているんですから、それで、あれ以外にやりようがなかったということですよ。

長野:何か菅家さんに対しておっしゃりたいことは?

亀山:いや、全然ありません。

長野:ないですか?

亀山:全然ありません。

長野:謝罪はされませんか?

亀山:いいえ、全然そういう気はありません。

長野:それはどうしてですか?

亀山:どうしてって、そういう筋合いじゃないんだもん。謝罪をする筋合いじゃないの。制度的に言っても、この事件から言っても。ともかくそういう気はありません。

また、別の映像が流れだす。

亀山:この証拠が怪しいから再鑑定をやってくれとか、そういうことをいちいちどんな事件でもやっていたら、最高裁で、事実審理を全部やりなおさないといけないじゃないですか。そういうことはできないんですよ。

長野:でも、7年たっていて、そこで再鑑定してもよかったんではないですか?科学的な進歩を鑑みれば。

亀山:それならそれでそういう風な再鑑定といわれる、あるいは鑑定をしたそういう風な証拠を、証拠自体を出すべきだったんですよ。

長野:でも出していますよね?

亀山:いや、再鑑定をしてくれという申請しか出していないんだから。それはよく調べて御覧なさい。

長野:弁護側はDNA鑑定出してます!出してますよね?

亀山:いや、それは全然別のDNA鑑定だもん。あの事件のじゃないもん。

長野:いえいえ、足利事件ですよ。

亀山:いやそうじゃないよ。

ナレーションが突然入りだし、その後の亀山元判事の会話が聞き取れない状態になる。

長野:足利事件というのはどういう事件だったんでしょうか?

亀山:どういうってことはない。普通の裁判でしたね。そんな特にあれだということはない。

なお、一般の方からすれば、この亀山元判事の態度が気に食わないとか、おかしいと思う人も多いかもしれません。

確かに、法律家特有の割り切った考え方に賛同できない人もいるかもしれません。

しかし、前述したように、私は同情的です。

まず、長野智子氏の突撃取材取材と質問が、謝罪謝罪を強調しすぎており、被取材者に対する礼儀がありません。亀山元判事の判断が結果的に間違っていたからといって、犯罪者ではありませんし、冤罪が起こったとしても道徳的責任は別として、その個人には一切の法的、社会的責任はないし、それは問えないと考えるべきです。

したがって、真相解明のために取材することは良いのですが、取材姿勢に重大な欠陥があるわけです。

にもかかわらず、亀山元判事が「自分の裁判とは別に、客観的に見た限りにおいて」と断ったうえで、ここまで答えていることには、逆に「よく答えてくれたな」と驚きすら感じます。

多少、割り切った言い方過ぎる部分もありますが、法律家特有の言い回しとして、許容範囲を超えないと私は思います。

なお、重複になりますが、今回、ツイッターなどを見ていて、マスメディアの嫌がらせ的取材攻勢と感情論先行の結論ありき報道に騙されない一般視聴者が多くいることを心強く思ったことを強調しておきます。

最後に、以下の新聞記事についても一言述べておきます。

この記者は、名誉回復と真実発見が対立するかのような検察の主張そのまんまの論理で記事を欠いていますが、真実発見を合理的な範囲でやることは名誉回復機能にも資するのですから、必ずしも相矛盾するものではありません。

宇都宮地裁の再審事件の受訴裁判所も、今回の再審でそのことを十分に意識したうえで、審理に臨んでいるように私は思います(少なくとも現時点においてはという留保をつけますが)。

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足利事件再審 救済と解明、どこまで両立
10月21日23時22分配信 産経新聞

 菅家利和さん(63)の無罪に向けた再審が始まった。逮捕から18年近くにわたり、無実の罪で苦しんだ菅家さんの名誉回復が求められるとともに、なぜ菅家さんが虚偽の自白をして有罪に至り、無実の訴えが受け入れられなかったのか、真相解明も期待される。ただ、「真相解明」と「名誉回復」のいずれに重きを置くかで、弁護側と検察側の方針は対立している。

 弁護側は、冤罪(えんざい)の真相解明を強く求める。DNA型鑑定とともに菅家さん有罪の決め手となった虚偽自白の経緯を検証するため、検察側が開示した別の幼女殺害事件(未解決)を自白する様子などが記録された取り調べの録音テープを法廷で再生するよう要求。当時の担当検事の証人尋問も求めた。

 検察側は、再審の場を菅家さんの名誉回復に向けた場ととらえる。無罪言い渡しには菅家さんと不一致となったDNA型再鑑定があれば足りるとして、スピードを優先したい考えだ。公判ではテープの再生などは「必要性なし」と述べた。

 宇都宮地裁の佐藤正信裁判長は「違法な裁判手続きだったかどうかを判断するために必要な証拠調べは可能」との立場を示し、弁護側の求める証拠調べを行うことに含みを残した。

 また、「公平中立な立場で臨んだ上で、最終的に裁判所の対応について示します」と、裁判所の謝罪と反省を求める菅家さん側に配慮した言葉も述べた。

 誤判の原因究明と速やかな名誉回復とをどう両立させるのか、裁判所のリーダーシップが問われる。(大泉晋之助)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091021-00000644-san-soci

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Comments

初めまして。いつも楽しみに読ませていただいています。インドネシアに住んでいる者です。
以前より、日本のメディア、報道のあり方について疑問に思っていました。今回の報道ステーションでもそうですが、全体的に日本の報道は「感情」的で、主観的だと思います。多くの日本人が正悪を判断する際に重視するのは、まずその人が”謝罪”したかどうか、ですよね。とにかくひとまず謝っておく(例えば最近の例で押尾被告)。今回の足利事件再審の件も、重点がそこに置かれてしまっているような、報道のあり方に疑問を持ちます。
長野智子氏は、確か米国の大学で報道を学ばれていたと記憶しますが、そこで一体何を学ばれたのでしょうか。
これからもブログ楽しみにしています。

Posted by: 仁美 | 10/23/2009 01:30 pm

>仁美さん

はじめまして。
インドネシアからのコメント有難うございます。
そうですね。
謝罪するかどうかという形式面ばかり問題視されていますね。
確かに謝罪は一つの誠意の見せ方なのでしょうが、被告の事件後の態様において、情状との関係で、重要なのは謝罪の事実の有無ではなく、自己の行為及びその結果に対し真摯に反省しているのかどうかという心理面です。

もちろん心理面ということになれば、推し量るのは困難ですから、謝罪の有無という外形的事実をもって推認することになりますが、どうも最近の日本での報道はこの事実の有無ばかりに着目して、被告の真摯な事後の態度などを十分に着目されていないと思います。

もっとも、足利事件の場合は、結果的に判断を誤ったとしても関与した裁判官が違法な行為をしたわけではありませんから、謝罪をする筋合いじゃないという亀山元判事の言い分は確かに論理的かつ正しいということになるとは思います(菅家さんの感情としてそういう姿勢が許せるかは別の次元の話ですね)。

もっと言えば、DNAが信頼できる科学的証拠だと当時菅家さんが犯人であると断定して報道してきた責任もメディアにはあるわけで、それを冤罪解明に事後的に協力したからその責任が帳消しになるが如き姿勢で、自己の問題を省みず、裁判所が諸悪の根源かのような報道にも疑問が残るわけです。

謝る謝らないという下らない取材で問題の本質に切り込まない薄っぺらいジャーナリズムを少なくともアメリカの大学が教えていると私は思いません。

私も一般教養科目で司法とジャーナリズムに関するの科目を受講したことがありますが、アメリカの司法ジャーナリストは法的議論ができる程度のレベルの高いものだったと記憶しています。

長野智子氏の今回の取材はそうした要素が感じられない非常に稚拙で大衆迎合的なものであり、センスがないと感じました(むしろ、貴殿の御指摘で、アメリカの大学で学んでいたという事実を知り、驚愕に近い感情を持った次第です)。

私はインドネシアに行ったことがありません。同じ海外とは言え、やはり欧米や日本とはまた違ったものの見方などをする機会があると思います。またぜひ色々なコメントをいただけると私も勉強になります。

Posted by: ESQ | 10/24/2009 08:18 am

はじめまして、
事後報告になりますが、貴ブログの一部を、拙ブログに引用させていただきました。マスメディア記事を引用することはあっても、個人ブログの引用は初めて故、作法が分かりません。このようなご挨拶でよろしかったでしょうか。不適切であれば削除いたします。

また、よろしければトラバさせてください。
取り急ぎ、

ベンダソン 拝

Posted by: ベンダソン | 10/27/2009 11:28 am

>ヘンダソンさん

はじめまして。
丁寧な御挨拶有難うございます。
今回の引用の件ですが、出典ところを明記されてくださっていますし、問題ありません。御連絡有難うございます。

貴殿のブログも拝見させていただきました。
結果的に貴殿とは考え方が違いますが(特に公判廷での自白といわゆる3号書面や検面調書上の自白との混同した議論については間違っていると思いますが)、なるほどそういう考え方をしているのかと思い読ませていただきました。

折角ですのでその感想も兼ねて、次回のシリーズ化した「節度のないメディア(2)」の方で、少しその点についても触れてみようと思います。

Posted by: ESQ | 11/04/2009 12:57 am

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Tracked on 10/27/2009 11:31 am

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