イギリス司法の大転換
このブログの多くの人にとっては、あまり影響のないことだが、非常に歴史的なことなので、この話題を今日は取り上げてみたい。
イギリスで、最高裁判所が誕生したというのである。
これはブレア政権時代から進められていた改革の一つで、私がイギリスにいた頃、まさに議論されていた話であったので、それだけに興味深い。
イギリスでは現在に至るまで、アメリカ合衆国憲法や日本国憲法のような成文化された憲法を作るべきではないかという議論がなされており、イギリス最高裁の誕生は、成文法憲法誕生に向けた第一歩となるのかもしれない。
初代長官はフィリップ卿(Lord Phillips)である。
ただ、この写真は、貴族院が終審裁判所の機能を担っていた今年9月31日以前のフィリップ卿の裁判官としての正装姿であって、最高裁でもこうした伝統的な格好をするのかは不明であり、その点も注目したい。
日本の最高裁判事は15人だが、イギリスは11人により構成される。なお、アメリカは9人である。
BBCによれば、イギリス最高裁が扱う最初の事件は、民事事件で、テロリストを支援していた容疑で逮捕され、刑事事件で係争中の原告Xら5人は、英国財務相によりXらの資産が凍結されたことが、人権(日本でいう憲法29条の財産権)の侵害であると主張しているようである。
おもしろいのは、イギリスには日本のような憲法典が存在しないため、どの条文が争点になっているという説明ができず、漠然と人権侵害という主張になっているのである。
本件の争点は、政府に凍結権限があるのかどうかなのであるが、2006年に凍結権限をイギリス政府は行使しているが、その根拠づけをおこなう国内法は存在しておらず、国際連合の安保理決議がその根拠になっていると、被告である国側は争っているようである。
日本ではある意味、負け筋の国際法を持ち出した漠然とした国側の主張なのであるが、不文法ならではのイギリスにふさわしい(?)事件のようにも思える。
600年近い伝統のあるイギリスで、これだけ抜本的な改革ができるのであるから、日本でも本格的な司法改革が必要だろう。
もともと民主党は2001年頃に、開かれた司法や法曹の一元化などを提唱して、現在の法曹人口年間3000人という政府の政策よりも3倍以上の数を掲げていたのであるから、それを踏まえて、しっかり既得権益打破に努めてもらいたい。
ちなみに、イギリスとアメリカは異なり、訴訟社会というイメージは比較的少ないが、弁護士の数はかなり多い。実際、それほど訴訟社会ではないが、司法へのアクセスは容易であり、日本のように「先生」とお世辞でも崇められる存在ではない。
弁護士が増えれば訴訟社会になるというのは、思い込みにすぎない。
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英、1日に最高裁誕生=上院と分離「司法の新時代」に
【ロンドン時事】英国で1日、最高裁判所が誕生する。同国では過去600年以上にわたり議会上院が最高裁の役割を果たしてきたが、立法と司法の機能を明確に区別すべきだとの声が高まり、6年前から新設が検討されてきた。審理の様子がテレビ中継されるなど、伝統を重んじてきた同国の司法の舞台は様変わりしそうだ。
新しい最高裁は、ロンドン中心部の国会議事堂の向かいにある建物で活動を開始。旧最高裁判事を兼務していた上院議員ら12人が判事を務めるが、正式任命後は全員議員職を離れる。「開かれた司法」を目指し、メディアからの要請に応じて審理内容を公開するほか、訴訟手続きなどについて説明する専用ウェブサイトも特設された。(2009/09/30-20:12http://www.jiji.com/jc/zc?k=200909/2009093001020&rel=y&g=int
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