衆議院選挙2009を振り返る(自民党にゾンビ議員が大量発生等に思うこと)
選挙日当日のブログの訪問者数が7699人と驚異的な記録となった。
表示はしていないが別のアクセスカウンターでは、1万2125人というアクセス数を記録しており、国民審査に関連して、ブログを訪問してくれた方が多かったのだろう。
事前の予測を懐疑的に見ていたが、マスメディアも選挙に関する報道技術は高いようで、事前の予想通り300議席を超え、308議席を民主党がとり、社民、国民新、民主系無所属議員を合わせると、320議席に達し、2/3を獲得した。
まさに、郵政解散の逆の現象が出たわけである。
この選挙結果を振り返り、私は以下の点に注目している。
1.自民党の派閥の領袖といわれる大物議員が続々小選挙区落選
まず、指摘しておくべきは、連続当選回数が多い議員で、自民党の牙城と言われた地域で、軒並み自民党議員が小選挙区落選をし、比例でゾンビ議員として復活当選した点である。
私はもともと比例の復活当選という制度に疑問を持っているわけであるが、この制度により何とか復活した自民党議員が多数を占めた点である。
北は、武部勤氏、町村信孝氏に始まり、東京では、小池百合子氏、与謝野馨氏、岐阜では、野田聖子氏、京都では、伊吹文明氏、広島では中川秀直氏など派閥の領袖や総理大臣候補として名前が出たことのある人物が軒並み小選挙区で落選したことは、自民党に対する強い不信の表れであるといえよう。
これだけ多くの有名議員がゾンビ化した例を私は知らない。また、ゾンビ化できればまだ良い方で、北海道の中川昭一氏や、群馬の笹川尭氏、山梨の堀内光雄氏、愛知の海部俊樹氏、福岡の山崎拓氏などは議席を失い、ただの人になり下がった。
小選挙区で、ノーを突きつけられた人が比例で復活するのは、いくら死票の反映といっても、非民主的であると思えて仕方ない。死票となった声を反映しているのだから、むしろ民主的という考え方もあり得るとは思うが、やはり、小選挙区での敗北を見越した保険制度のような気がしてならないのである。
そもそも比例制度は少数者の声の反映という意味合いで作られたものであるが、私はむしろ重複制度はやめて、比例単独候補を増やして活動させる方が、良いと考えている。
なぜなら、いわば有権者は一人2票持っているわけであって、そのうちの比例票はあくまで小選挙区の候補ではなく、政党に対する票なのであるから、その票により小選挙区で落選した人物がゾンビとして復活するというのは、制度の本来的趣旨からいって、整合的ではないように感じるわけである。
いずれにしても、ゾンビ化した大物議員の影響力低下は避けられない。私はある種自民党にとって、ふんぞり返っていた大物議員が小選挙区で落選したことは良かったと思っている。これは自民党が生まれ変わるチャンスだろう。ここで、ゾンビ化した大物議員の影響力が低下し、党内で若手や中堅のまだマシな議員たちが再生に向け影響力を伸ばす契機になるかもしれない。
2.社民党、共産党の健闘
私は、今回の選挙で、大方のメディア同様、社民党や共産党は民主党の影に埋没して議席を大幅に減らすのではないかと見ていた。しかし、改選前を維持したことは健闘と評すべきであろう。
私の予測では、社民4、共産6くらいまで落ち込むのではないかと見ていたが、社民7、共産9には驚きをもって受け止めた。
共産党のこの健闘はおそらく、小選挙区の配置を絞ったことにあるだろう。負けが明らかな小選挙区に無駄な人員を配置して、選挙費用を浪費するのではなく、絞り込んで、人材や費用の余剰分を比例に回すことで、なんとか組織票を固め、比例区での一部の無党派層への浸透を図ることができたのではないだろうか。
社民においては、選挙協力が一部で功を奏し、また、連立前提ということで、従来の社民党支持者からの支持回復があったのではないかと分析している。福島みずほ党首は連立に積極的なようで、そのことも支持されたのではないだろうか。おそらく、左翼票の支持が民主党へのけん制として、比例などで伸びたと私はみている。
3.公明党の役員落ちと小選挙区全滅
今回、公明党の組織票固めはいつもの選挙よりも熱が入っており必死だったようである。私の知る限りの情報でいえば、意思表示能力が困難にも思えるお年寄りや病人などにも引き締めを図り、投票所では、耳元で「公明」と囁くような熱心な方々も数多くいたようで、以外に公明票が伸びるのではないかという予測も聞いていた。
しかし、小選挙区は全滅し、選挙間近で対立候補が発表された、太田代表に対する青木愛氏、冬柴鉄三氏に対す田中康夫氏など接戦を制した。
自民票が伸びなかったという話も出ており、おそらく、自民党支持者にとって公明党は目の上のたんこぶだったのだろう。
やはり、特定の宗教団体のために存在する政党であるから、非信者の大多数にとっては、支持しがたい政党である点は否めない。
さらに、フランスではカルト宗教と認定されていることもあり、保守層にとっては、公明党に投票すること自体、罪悪感を感じるという人も多いという話を聞く。
いずれにしても、党の代表と三役の一人が落選するというのは前代未聞の事態であろう。公明党の太田代表は、民主党との協力に含みを持たせていたが、公明党に残されている道はいばらの道だろう。
これだけ大勝した民主党が公明の議席を頼ることはないだろうし、万が一そのような事態になれば、民主と書いた人々が離反するのは目に見えている。そのようなことを今の民主党がするはずはない。
公明と創価との関係の追及などをして、さらに民主が公明に打撃をあたえることがあっても、公明党にとって好転の機会はしばらく廻ってきそうもないだろう。
4.民主党の勝利宣言に見る変化
民主党の鳩山代表は、開票センターで勝利宣言をしたが、その時の表情に笑顔が少なかった点が印象的であった。前回の郵政選挙では、小泉元首相は終始笑顔で上機嫌であったが、今回の鳩山代表の顔は時々笑顔が見える程度で、むしろ終始慎重な顔つきで、インタビューに答えていた。
これは、大きな変化である。つまり、既に鳩山代表は今後の政権運営をどうするかに気持ちが切り替わっており、選挙での勝利を満喫しているほど能天気ではないということなのではないだろうか。
ここに、私は前回の郵政選挙と今回の政権交代選挙の違いを見ている。
今回、民主に投票した1/3程度の人は、民主党に期待せずに、政権が短命に終わると見て、反自民票のつもりで、投票した人もいるだろう。
しかし、私の現在の認識では、民主党政権はしばらく続くと予測している。というのも、鳩山政権誕生後の100日間の間に、民主党政権が国民の期待に応えたように見せる手法は既に準備されており、この間に与える「政権担当能力ありそうだな」というイメージで、しばらくは民主党政権が安定的に治めると考えている。
この100日間は、基本的にメディアも批判を控えるのが常識であって、むしろ「対官僚」というイメージから、マスメディアも民主党政権を好意的に映し出すだろう。
それは、おそらく、小泉劇場ならぬ、小沢劇場ともいうべき舞台が用意されていると私は、この勝利宣言での鳩山代表の表情から読み取っている。
民主党内では、小沢氏との二重権力関係に対する懸念が出ているが、こうやって揺さぶりの声を出しているのは、前原グループとかの一部であって、今の鳩山氏、管氏、岡田氏、輿石氏、赤松氏という現執行部にとって、小沢氏の重しは必要不可欠なのであって、権力対立がおこることはまずあり得ないだろう。
とりわけ、1年後に参議院改選を控えているだけに、そんな余裕がないというのが本音であって、鳩山氏が閣僚名簿の事前発表などを控えたのも小沢氏の指摘を受けて、浮かれている場合ではないことを認識したためだろう。
さて、最後は今後の予測を無謀にしてしまったわけであるが、この予測が当たり、しばらく政治状況が安定することを望むばかりである。
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Comments
おかげさまで、無事、投票を終える事が出来ました。
最高裁国民審査も初めて×印を付けての投票で、なんともいえない爽快な気分でした(笑)
私の回りは、やはり棄権という制度を知らない者がほとんどでした。
改めてこちらのブログに感謝します。<(__)>
今回の選挙は、自民党にとっては当然の結果だと思います。
ESQ様おっしゃる、ゾンビ議員、顔ぶれを見るとまさしくゾンビです!
メディアが民主党にどのような偏向ぶりを発揮するのか見ていますと、小沢氏に何かを語らせて綻びを見つけたい様子でしたが、もの云わぬ小沢氏、アッパレでした(笑)
政権交代を実現した今、とりあえずではなく、確実な一歩を踏んで頂きたいと切に願います。
最後になってしまいましたが、こちらのblog訪問者数の激増、本当に嬉しいかぎりです!
今後もよろしくお願いします。
有り難うございました!
Posted by: りんどう | 09/01/2009 11:30 pm
>りんどうさん
いつもコメントありがとうございます。
このブログの最高裁判事国民審査コーナーが役に立ったとのこと、嬉しく思います。
私の周りを見ていても、まだまだ最高裁判事に対する理解不足、国民審査という制度に対する認識の低さは目立ちます。
国民審査という司法に対する直接民主主義という制度があっても、運用する国民が無知でそれを活用しなければ、宝の持ち腐れであるし、むしろ、某団体の広報活動のように、扇動的な悪用がなされ、非民主的な運用すら招きかねません。
重要なのは、国民が自分で判断する力をつけることで、政権交代に関しては、その一例だと認識しています。
私は、今後民主党政権により日本社会が良くなるとは期待していませんが、少なくとも何十年と日本社会の良い部分を引き延ばすことができなかった(負の部分を増やしてしまった)自民政権に続けさせるよりは、政権交代が起こったことは良かったと思っています。
メディアは必ずしも問題の本質を伝えません。非常に扇動的になり、誤ったイメージを受け付けることも多々あります。私がオバマ政権にずーっと批判的なのも、アメリカのメディア社会によるねじ曲がったオバマ像が先行しており、小泉劇場と同じではないかと思うためです。
とりあえず、欧米では就任から100日間、政権に猶予期間を与えます。メディアのプロパガンダが本格化するのは100日後です。
日本のメディアが100日間の猶予を与えるほど成熟しているかわかりませんが、我々有権者は、とりあえず、鳩山政権が100日間の間にどういう政策を実現できるか、もしくは、軌道に乗せるか、注視する必要があるでしょう。
Posted by: ESQ | 09/02/2009 11:58 pm