完成しました!(最高裁裁判官の国民審査2009)
今日、金築裁判官の関与した判例と私見による評価を更新しました。
これで、長きにわたり更新を続けた、このブログの「最高裁判所裁判官の国民審査について」というコーナーもついに完成です。
途中諦めかけたのですが、なんとか投票日には間に合ったようですね。
既に、期日前投票をしてしまった人、参考になるような資料をアップするのが今日までかかってしまい、すいません。皆さんが独自の情報収集に基づき、主体的な意思決定をして、投票するか、又は、棄権したことを望みます。
国民審査という制度に、批判を向ける人が多いようですが、私はこれは全くの筋違いだと思っています。
批判する方は口ぐちにこう言います。「最高裁の裁判官なんて、わからないからこんなことしても無駄だ」と。
しかし、これは国民としての責任の放棄以外の何物でもありません。
確かに、マスメディアも裁判官に対する報道や情報提供は一切せず、選挙公報も見てもどういう裁判に関与して、どういう意見を述べているのか具体的に知ることは困難です。
また、選挙公報は良いことしか書いておらず、罷免相当と判断する判断材料がないのも事実でしょう。
しかし、これだけのインターネット、情報社会です。グーグルなどで検索すれば、そのサイトが信頼性のあるものか否かは別として、裁判官の人物像を判断できる程度の情報は氾濫しているはずです。あとは、その情報の信頼性を、情報を受け手が判断し、自分はどう考えるかという意思決定をすれば良いだけの話です。
私の周りの期日前投票を済ませた一般有権者の方の多くが、「わからないから、いつもそのまま投票している」と言っています。
私が、「それって、全員良い裁判官だと判断して信任しているってことだよね?」というと、「え、わからないから、そのまま投票しただけだよ。」と無責任な発言をするのです。
これに対し私はいつもこう言います。「うーん。わからないなら、なぜ棄権しないの?」
すると、多くの人が、「え!棄権できるの!」という反応をするのです。
実際、私も何度か選挙に行っているので、見たことがあるのですが、選挙管理委員会の一部(一部と信じたいのですが・・・)では、「わからない」という有権者に対し、「わからないなら、そのまま投票してください。」と助言していることがあるようです。
これは、信任票を誘導しているわけで、棄権できることを説明しないわけです。
確かに、投票会場内では、棄権できることが注意書きとして掲載されているのですが、短時間の間にそれを丁寧にみる人は少ないでしょう。
「わからない」と迷っている方がいるのであれば、丁寧にどういう選択肢があるのか公平に説明すべきであって、信任票を誘導するのは明らかにおかしな話です。
なぜこういう誘導とも取られかねない助言をするのかというと、投票率を上げるためというのが実態のようです。
国民審査によって罷免された裁判官は過去にいません。
しかしそれは制度が無駄なのではなく、一部の有権者を除き、多くの有権者が怠惰で情報を調べなかったり、無責任に信任票を投票している結果なのであって、国民自身の姿勢の問題だと私は考えています。
昔は、インターネットもなく仕方なかったのかもしれませんが、裁判員制度も始まり、司法への国民参加の重要性が増している現在、今までのように、無責任な投票行動は慎むべきでしょう。
たかが国民審査ですが、そうした無責任な行動のツケは必ず国民に戻ってくるものです。
したがって、どういう投票行動をするにしても、自分で意思決定をして、それに責任を持ってほしいというのが今日の心の叫びです。笑
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Comments
お忙しい中、本当にお疲れ様でした!!
本日の記事を読んでいて、恥ずかしながら私も無責任な国民のひとりでした。
棄権という制度がある事すら知りませんでした。
今回は、ESQ様のおかげで国民としての義務が果たせそうです!
日本の法律に、自分の意思を伝えられるこの機会を無駄にしないよう、こちらの情報を更に読み込んで明後日の投票に備えます。
本当に有難うございました。
Posted by: りんどう | 08/28/2009 01:35 pm
50000ヒット達成、

おめでとうございます!
簡単には達成できない
凄い記録だと思いますよ。
Posted by: scott1982 | 08/28/2009 07:51 pm
>りんどうさん
お久しぶりです。
コメントありがとうございます。
正直、一般の人で、国民審査をしっかりやろうと考えている人は少ないでしょう。
貴殿のように、国民審査のみ棄権できるということを知らない人はたくさんいると思います。
無責任な国民を作り出してしまう原因は、選挙管理委員会にあります。一部の選挙管理委員会では、「解らない場合は、そのまま投票していいです」と信任票を誘導してしまっているわけですから、不公正極まりません。
これは国政選挙における選挙実務が地方自治体の選挙管理委員会に丸投げされている部分があるためです。私の知る限りでは、国で統一したマニュアルを製作して、各選挙従事者に配布するなどはしていないようで、各自治体の選挙管理委員会で作り、それを市町村役場の職員が直前に読んでいるだけで、選挙法令に詳しい人間が配置されているわけでもなければ、直前の選挙法令に関する勉強会すらしていないようです。
確かに、年に1回あるかないかの業務なので、仕方ないという行政の側の声も一見解るような気がします。しかし、選挙というのは民主主義の根本であって、その実務に不公正さが残る運用が、国民審査に限らず、実際上多々行われ、見過ごされているところみると、ある種の怒りすら感じる方もいるのではないでしょうか。
私の友人の話では、選挙従事者の多くはバイトや派遣職員なので、問題が発生すると市町村役場の職員が一切対応することになっているのですが、その職員が無知識のため、さらに現場が混乱するということすらあるようです。接客に当たるバイトや派遣の権限のない方々が、理不尽にクレームをつけられ対応を要求されるのは、非常に酷です。
したがって、私の昨日の記事では国民の無責任な行為を指摘しましたが、その根本原因の1つは、選挙管理委員会のずさんな実務運用にもあると思います。
いずれにしても、これだけの情報化社会ですから、様々な情報に接して、自分の投票行動を決することが重要でしょう。
私のブログでも、参考までにということで、私見による裁判官の評価を載せていますが、これはあくまで私の意見に過ぎません。
面倒かもしれませんが、各裁判官の「関与した判例」というコーナーの情報を読んで、どの裁判官の判断がおかしいかなどを検討して、読者の皆様が、最終的な意思決定をして、投票行動を決していただければと思っています。
とりわけ、判例の評価というのは、人によって大きく異なってくるものです。価値判断が先行する場合もあります。
例えば、私は田原裁判官の数多くの意見、反対意見はおかしいと思いますが、違う観点から、評価する人もいるかもしれません。
重要なのは、①事件の概要ト争点を知り、②どういう判断をしたのかを踏まえ、③判決理由に納得できるかどうかという3点だと思います。
各裁判官の「関与した判例」コーナーでは、これらの3点から判例をまとめたので、そういう視点で読んでいただけると解りやすいのではと思っています。
ただ、どの判例を採用し、どの判例を採用しなかったかは、私の考える重要度で選んでいますので、そこに疑問を持たれる読者がいましたら、他のサイトを参照し、上記3点の視点で調べてみるとよいと思います。
なお、こちらこそ、いつもブログを見ていただき、温かいコメントには感謝しています。
Posted by: ESQ | 08/28/2009 10:46 pm
>scott1982さん
いつもコメントありがとうございます。
ココログブログ開設(ヤフーブログ時代は算入せず)から50000人もの訪問者に来ていただいたのは嬉しい限りです。
貴殿のように定期的に訪問してくださる方はもちろん、スーザン・ボイルさんの現象をリアルタイムでフォローしたことや、今回の国民審査の情報提供により、訪問者が急増したのが、1年経過ギリギリ前に5万人の訪問者を達成できた要因だと思います。
今後も、既存のメディアでは十分伝えていないと思うことを、法的な視点、国際的な視点から、記事にできればと思っています。
今後もよろしくお願いします。
Posted by: ESQ | 08/28/2009 10:51 pm
国民審査2009の意見整理、本当にお疲れ様でした。
国民審査の意見広告、ESQさんのブログを見ていなかったら、私もあの意見広告にかなり影響されてしまったと思います。
メディアリテラシーという言葉をかなり前に聞いて、
踊らされないよう気をつけていたつもりでしたが、難しいと実感しました。
明後日までにはESQさんの資料をじっくり拝見して
きちんと国民の義務を果たしたいと思います。
お仕事でお忙しい中、本当にお疲れ様でした。
こういった形での情報提供を今後も楽しみにしております。
Posted by: felicita | 08/28/2009 11:39 pm
最高裁裁判官の国民審査評の完成おめでとうございます。これには、かなりの時間を費やされたのではないでしょうか。ESQさんがまとめられた各最高裁裁判官の情報はとても貴重なものです。これを参考にして、これからも一人でも多くの方が、各最高裁裁判官による判決に普段から興味を持っていただけたらと思います。
Posted by: 美爾依 | 08/28/2009 11:56 pm
はじめまして。
このようなすばらしい特集を組んでくださり、誠にありがとうございます。
法曹関係に疎い私などにとっては、判決と言うと公報にあるような短い結論がすべてというイメージでした。だから審査するときでも、その結論が気に入るか気に入らないかが大きな拠り所となっておりました。
でも実際は、その結論に至る道筋があって、きちんと職責を全うされている裁判官ですと、その道筋を丁寧に判決文の中に示してくれているんですね。これを知ったことは非常に大きなことです。
例えば君が代裁判。短い結論では「原告の思想・良心の自由は無視か?」と思ってしまうわけですが、那須裁判官なんかはきちんと原告の信念の重要性も語っているわけですね。その後の論理展開は必ずしも納得できるものではありませんが、それを丁寧に説明しようとする姿勢には一定の評価を与えたいと思います。
実は痴漢冤罪判決を出した那須・近藤両氏は支持したかったのですが、君が代と一票の格差判決が心に引っ掛かっていたわけです。そこへこの特集に出会い、どうやら安心して任せられる裁判官であるという手ごたえを得ました。
そんなところで今回は、これまでとは違った見識での審査ができそうです。
特集の作成は、本当にご苦労様でした。
遅い時間のエントリが目立ちますが、お体のほうは大切に。
Posted by: tonton | 08/29/2009 12:01 am
>>felicitaさん
(ブログでは)はじめまして。
コメントありがとうございます。
Twitterの方、フォロー有難うございます。
おっしゃる通りで、メディアリタラシーは大切ですね。
しかし、殊に、法律となると、やはり、通常の一般人の方が、情報の真偽を見極めるのは大変難しいことであると認識しております。
少なくとも法律家であれば、それは十分理解しているはずですから、私はあの意見広告を出している団体の有名な弁護士の方々の動きには賛同できないわけです。
私もなるべく今回の関連判例の選定においては、私見の評価と切り離して、バランスをとったつもりですが、やはり価値判断というのが先行してしまいがちですね。
私のコーナーが少しでも参考になればと思います。温かいコメントありがとうございました。
>>美爾依さん
いつもコメントありがとうございます。
おっしゃるとおりですね。
多くの方が裁判官に関心を持ってくれることは重要だと思います。
とりわけ最高裁は、司法権力の最高峰ですから、国民が妥当かつ説得的でわかりやすい判決理由が示されるように、監視する必要があります。
司法は法律を司るということで、日本では専門家任せなところがありますが、健全な民主主義が機能するためにも、まずは、興味を持って調べてみることが重要ですね。
このブログでの今回のコーナーがそのきっかけになれば、嬉しい限りです。
>>tontonさん
はじめまして。
温かいコメントありがとうございます。
このブログが、貴殿のような、真剣にこの最高裁裁判官の国民審査に向き合って投票しようという方への情報提供としての機能を果たせたとすれば、やりがいがあったというものです。
私の今回のブログの意図を理解していただいているようで、嬉しい限りです。
各事件の概要と判決理由の要旨など色々な情報に接して、視野が広がった上で判断するのと、そうではなく結論のみで判断するのとでは、大きな違いがありますよね。
貴殿のおっしゃるように、どういう理由づけで判断しているのか要旨だけでも見ることで、各裁判官の姿勢と言うのは明らかになってくる気がします。
やはり、那須裁判官や近藤裁判官はそういう視点で見ると、努力されているなと私も思うわけです。
いよいよ明日が投票日ですね。
この国民審査は、大多数が何も考えずに、そのまま投函するとおもいますが、貴殿のような方が少しでも増えることを期待するばかりです。
Posted by: ESQ | 08/30/2009 12:00 am