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08/12/2009

一人一票実現国民会議の意見広告について

このブログでも最高裁国民審査について取り上げているわけですが、まだ完成しておらず、読者、訪問者の皆様には申し訳ない限りです。

告示日までには完成させたいと思っているのですが・・・

そういえば、先日から日刊新聞各紙で、一人一票実現国民会議というところが、国民審査に対する意見広告を出していました。

この広告を既に見た方もいるかもしれません。

当ブログでも、当該意見広告がベースとしている判例の一部を抜粋しているので、一人一票実現国民会議という団体の意見広告にあった、那須裁判官の関与した投票価値の平等に関する判例が気になる方は、那須裁判官の関与した判例について当ブログがまとめたホームページで確認してみてください。

なお、私はこの意見広告には反対です。

意見広告は、判決理由がどうおかしいかという批判をせずに、結論のみを批判し、国民審査で合憲判断をした裁判官を罷免すべきという趣旨で構成されています(はっきりと罷免すべきと言わないあたりも私は不満なのですが)。

また、当該団体の意見広告及びホームページは、最高裁裁判官の業績(判例実績)に対する知識のない一般の有権者に対する情報提供が、意図的なのか、そうでないのかは別として、非常に限定的であり、最高裁判事の資質を国民審査で判断する上で、ミスリーディングだと個人的には思っています。

とりわけ、那須裁判官についていえば、この一票の格差を扱った判例でも非常に説得的な補足意見を示していますし、他の判例に関しても詳細な補足意見を示し、当事者はもちろん、国民に向けて解りやすい判決意見を示しています。

那須裁判官は、名倉教授の痴漢冤罪に関する最高裁無罪判決においても、従来の下級審裁判例に警鐘を鳴らす多数意見をリードし、補足意見では、疑わしきは被告人の利益にという刑事原則の重要性を説いています。

また、当該団体は、有名人が賛同していることをかなり全面に押し出していますが、これも有名人が賛同するのだから正しいといったような錯覚を一般有権者に与え、思考停止状態に陥らせる可能性が高く、この種の宣伝方法も個人的には気に入りません。

一票の格差の是正であれば、直接選挙中の政党や立候補予定者、ひいては、総務省に対し働き掛けをすべきです。

国民審査において、最高裁裁判官としての適性を、一票の格差の問題に矮小化する手法がいかにも扇動的かつ衆愚的で、私は危機感を覚えます。

したがって、この団体の主張である一票の格差の是正の重要性には賛同しますが、那須裁判官を罷免すべきという趣旨の意見広告には、私見は強く反対します。

なお、私がなぜ那須裁判官を罷免すべきではないと考えるかについての詳細は、こちらをご覧ください。

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日本の法律」カテゴリの記事

Comments

いつも有り難うございます。

実際、わからない事だらけなので、このような助言は本当に有り難いです。

今後も参考にさせていただきますので、お忙しいとは思いますが宜しくお願いします。

Posted by: りんどう | 08/12/2009 at 04:01 PM

>りんどうさん

いつもコメントありがとうございます。
貴殿のように丁寧にコメントをいただけると、忙しい中記事を書いていて張り合いが出ます。

今週末辺りには時間を見つけて、最高裁裁判官の国民審査に対する私見を発表できればと思っています。

さて、一人一票実現国民会議ですが、私は主張には賛成なのですが、この種の扇動的な動きには非常に批判的ですし、専門家や有名人のおごりではないかと怒りすら感じます。

国民に何らかの呼びかけをするのであれば、裁判官の判決やその他の言動をしっかり示したうえで、それがどうおかしいのか論理的かつ説得的に主張しなければ、まったくもって意味がないからです。

「こんなに素晴らしい肩書きの人が賛同しているのだから、あなたはどうしますか?」的な宣伝方法は、非常に物事の本質を見誤らせます。

とりわけ、弁護士等の専門家としての肩書で、最高裁裁判官の資質を問題にする以上、そこには法律家としての責任として、どういう法律論がおかしいと批判しているのかをしっかり示すべきですが一切そうした言及がなく薄っぺらい運動になっているのは残念に思います。

有名な先生方が名前を連ねているのですから、もう少しまともな主張をしてほしいなと個人的には思うわけです。

Posted by: ESQ | 08/13/2009 at 11:31 PM

はじめまして。
一人一票実現国民会議が新聞に出した意見広告に驚き、検索をかけてみて此方に辿り着きました。 意見に賛同云々は別にして、自分もあの広告はいかがなものかと危惧しています。

自分は全く法律に携わる人間ではないのですが、ここ数年興味を覚えて、小さな事からぽつぽつと知識を集めています。 判例など、まだまだ解らない(読み解けない)事ばかりでですが、此方のようなサイトがあると、大変勉強になります。 またお邪魔させていただきます。

お忙しいとの事。
十分ご自愛くださいませ。

Posted by: 呂久江 | 08/25/2009 at 05:02 PM

>呂久江さん

はじめまして。
丁寧なコメントありがとうございます。
ブログをやっていて張り合いが出ます。

貴殿のおっしゃるように、一人一票実現国民会議の意見広告は、国民会議と言う名にふさわしいのか、ふさわしくないのか、非常に扇動的な印象を受けます。

一般市民の法律に関する弱さに付け込むようなもので、衆愚そのものであり、とても私は賛同できません。

貴殿のように、わからないながらも、知ろうとする姿勢が私は一番重要だと思っています。それは法律以外の分野であってもそうでしょう。

今、国民審査の情報提供コーナーを作っていますが、これは重要判例を掲載するとともに、私見はこう考えるという意思表示をするものです。

最高裁判事の国民審査の制度は十分に活用されておらず、多くの人が白票で投じることが多いと思いますが、それが裁判官を信任しているのだという意思表示を認識して行っているのかは疑問が残るところです。

わからないから、そのまま投票するという人も多いでしょうが、それは、「わからないから、信任します。」ということであって、「わからないから、棄権します。」とは意味が違います。

今回の国民審査においても、「わからないから、そのまま入れます」と何も考えずに投票するのではなく、そのまま入れると信任する意思表示だという認識をしたうえで、行動をすべきだと個人的には思っています。

いずれにしても、どういう意見を持っているかは別として、自分の意思をしっかりと示すことが重要です。
この制度を実施するのだって税金がかかっているわけですしね。笑

また、気軽にコメントください。

最後に、優しいお言葉有難うございました。

Posted by: ESQ | 08/26/2009 at 01:49 AM

 今回、某意見広告を見て、貴ブログにたどり着きました。
 最高裁判事の国民審査に関しては、一般の国民が判断を下すのに必要な情報が得にくいです。公報にしても、専門用語の羅列で法学を修めた人以外誰がわかるのだろう、と感じます。 裁判員制度の是非はいろいろありますが、裁判員に事件内容を理解させようと努力している、検察・弁護人に比して、同じ司法に携わる裁判所がこの公報で何を国民に伝えようとしているのだろうかはなはだ疑問です。
 もう一つ言えば、私はこの意見広告にうさんくささを感じています。選挙は議会制民主主義の根幹ですから、一人一票という主張はいいでしょう。
 しかし、過去にも同様な裁判があったにも拘わらず、なぜ今「国民会議」と名付け、各界著名人が名を連ね、莫大な費用負担をして全国紙の1ページに意見広告を出すのでしょうか。
 それも、涌井、那須両判事の意見をわかりやすく解説するわけでなく、矮小化して伝えている今回の意見広告は、その中で久保利弁護士が述べている「国民の知る権利」を保証せず、升永弁護士が言う「最高裁のサポーター」に値しないと思います。
 何か別の狙いがあるのでしょうか。発起人の名前を見ると、現政権与党に近しい方々のお名前が多く載っています。提訴→違憲・選挙無効判決を狙っているのでしょうか。

Posted by: 福朗 | 08/27/2009 at 12:20 AM

 私の場合は「意見広告 1票の格差」で検索して、貴ブログにたどり着きました。
 朝日新聞を購読していますが、2日間にわたって広告がうてること(高額でしょう?)自体があやしいと感じ、調べ始めました。
 私のヤマ勘では、T裁判官など他の裁判官を罷免を訴える真っ当な主張がネット上でなされていますが、それを間接的に阻止するのが狙いだと思います。名指しされていない人を「良い人」と暗示する手法ではないか? 私はそう感じます。

Posted by: sasuke | 08/27/2009 at 11:48 AM

>>福朗さん
はじめまして。
コメントありがとうございます。

貴殿のおっしゃる通りで、ご指摘の団体の主張方法は、どうして那須裁判官、および、涌井裁判官が合憲と言う判断に至ったのか、また、現在の判例法利はどういう理由づけで、衆議院選挙については1:3以内の較差を合憲の範囲としているのかを一切明示していません。

また、最高裁判事の国民審査は、判事の適当性を総合的に判断すべき制度なのであって、1つの判例の結論のみで、弁護士など名だたる人物が罷免を誘導するような広告、サイトを立ち上げているまたはそれに賛同していることには、個人的に疑問を感じますし、不適当だと思います。

この一人一票実現会議の呼びかけ人らしい久保利弁護士は二弁(第二東京弁護士会)に所属し、同会の副会長をしていたことがありますし、那須裁判官も同じく、1987年頃に同会の副会長をしていたことがあります。また、那須裁判官とともに司法改革の著書まで出していたわけですから、どうして急に罷免活動ともとれる動きを那須裁判官に対してしているのかは正直なところ良くわかりません。(正直にいえば、ある程度予想はつくのですが・・・)

ちなみに、久保利先生は大宮法科大学院立ち上げのメンバーでその教授です。

貴殿のご指摘のように、何らかの別の理由があって、こういう活動をしていると考えるのも、同団体のウェブサイトの扇動性、情報の歪曲性などからすると、無理もないと思います。

この団体の賛同メンバーを見ると、色々な思想の方が混在しており、必ずしも統一された何か別の意図があるわけではなさそうですが(それぞれ様々な別の思惑がありそうとも見えるわけですが。笑)、少なくとも法的知識が乏しい一般の方への情報提供としては、不適切なことは確かです。

法曹関係者からすれば、那須裁判官に対する評価は高く、一票の格差にかかわる判断のみをもって、罷免を呼びかける動きには到底理解できません。

なお、那須裁判官は、2006年頃に法曹人口増加に伴う質の低下という問題に対して、弁護士会のシンポジウムで、法科大学院による選抜意識の重要性を強調しています(合格者人数の抑制を支持しているわけではなく、大学院でできの悪い学生には厳しく退学などの引導を渡すことも必要という趣旨の発言のようです)。

これらを総合的に考えると、ある種の思惑を邪推してしまいがちです。

>> sasukeさん
はじめまして。
コメントありがとうございます。

おっしゃる通りで、田原裁判官に対する評価は、いくつかの判例を総合的に考えると、罷免相当と考える人が多いだろうなと思うのが正直なところです。

とりわけ、女性の臀部の隠し撮り行為がわいせつに当たらないと判断したことや、名倉防衛大教授の冤罪事件における反対意見には、多くの疑問が残るところです。

また、世間一般の注目は低い事件で、法律上の重要な争点を扱う事件においても、民法724条後段の20年という期間の性質について、通説実務とは異なり、時効と考えるべきなど実務上の混乱を生じるような解釈を平然としているあたりにも疑問が残るところです。

実際上の効果として、貴殿のご指摘のように、名指しされた那須裁判官、涌井裁判官以外は良い裁判官だという誤解を与えかねないですし、同団体の広告は、田原裁判官は反対意見(違憲判断)を述べたということを明記していますから、知識がない方が、田原裁判官は良い裁判官だという印象を抱くことはあるでしょう。

貴殿のように、この広告を安易に信じるのではなく、疑問を持って、自分の情報力を使って情報得、投票行動に至ることが重要だと考えます。

Posted by: ESQ | 08/27/2009 at 10:40 PM

「田原睦夫」氏についての「憲法の趣旨に沿うものとは言いがたい」という表現は、結局この一人一票実現を、良しとしているのか、そぐわないといっているのか?頭のわるい私には理解しがたい言い方ではないのか?×印なのか?

Posted by: ソネット | 08/30/2009 at 08:56 AM

今朝の「一人一票実現国民会議」の広告を見て、あまりの内容のひどさに驚愕しました。

「法の下の平等」の美名のもとに、ここに名を連ねている人たちが本当は何をやりたいかが見えてしまいました。

それは、「風評で(自分たちが気に入らない)最高裁裁判官を罷免に持ち込める世の中を作ること」だと思います。

「代議制民主主義」なんて、もっともらしいけれどもいい加減な言葉を使っているところから早くも胡散臭いのですが、その後も滅茶苦茶です。

違憲立法審査権や裁判官国民審査を活用することが無意味だとは言いませんが、それよりなにより憲法違反の立法をしないように、まず国会を、国会議員の質を何とかすべきではないのでしょうか。ところがこれは全くスルーです。

国民審査に関する記述の随所に現れる、「ほぼすべての国民は無知である」と言わんばかりの論調、あまりにも国民を馬鹿にしています。

日本人は「国会議員が三権を支配しているから日本は代議制民主主義国家だと思い込んでいる」というむちゃくちゃな決め付け。この先生方こそ、本当に「三権分立」という言葉を知らないのではないかと疑ってしまいます。

ガリレオ裁判のたとえも、「世間の常識」と合っていれば真実に反していても人を処罰してよい、という法曹がする発言とは思えないものに思われます。風評で人を罷免したがる人たちですから、当然の発想なのかも知れません。

さらに、米国の例を挙げて(これも大衆をなめている人たちがよく使う手法です)何か言ってますが、ここまで散々取り上げてきた参議院のことから、巧妙に米国下院や衆議院小選挙区制の話にすり替えています。まさか、「日本国民はほぼ全員米国上院の選挙制度がどうなっているか知らない」とでも思っているのでしょうか。彼らが知らないだけかな。

この意見広告を書いた人、そして賛同している人たち。どんな肩書や経歴があろうとも、馬鹿です。しかも危険です。

法の下の平等を、こんな悪意の隠れ蓑に利用してほしくないものです。

Posted by: わに | 12/18/2010 at 08:06 PM

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