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07/31/2009

民法の成人年齢引き下げについて

既に、メディアで報じられていますが、重要な視点からの考察は十分にされていません。

多くのメディアや一般の方は、大人になるのは20歳か、18歳かという薄っぺらい議論しかしていませんが、民法の成人年齢引き下げというのはそういうたぐいの無益な議論とは違うのです。

未成年者というのは、制限行為能力者、つまり、「単独で、確定的に、有効な」法律行為を行う能力のない者をいうのであり、この引き下げは、私たちの私生活に重大な影響を与えます。

つまり、民法の成人年齢の引き下げの議論は、制限行為能力者としての保護を引き下げる必要があるのかどうかの問題であって、大人は何歳からかとか、少年法の改正の問題とは、まるっきり別問題というのが本質なのです。

たとえば、成人年齢が18歳になれば、親の同意なくして、勝手に高校を出たばかりの若者が、クレジットカードを持つことはもちろん、あらゆる契約が単独で、確定的に、有効なものとして行えることになります。

しかし、果たして今の若者が、そういった生活判断能力を十分に持っているでしょうか。

成人の未熟化が指摘される昨今、高校卒業直後の19歳、18歳の若者が、計画的に行動し、法律行為(最も代表的なものとして、契約)の意味を十分に理解して、行動できるとは到底考えられません。

仮に、引き下げられれば、19歳、18歳の者は成年と扱われるわけですから、契約を誤ってしても、取り消しを行うことができなくなり、救済が著しく困難になります。

例えば、高校卒業後、親から独立して、生活するために、アパートの賃貸借契約を結ぼうと考えたX君がいたとします。彼は、不親切な不動産屋であるY不動産に不幸にもあってしまい、甲アパートの101号室の賃貸借契約をしたところ、そのアパートは暴力団が出入りしていることが後で解り、契約を解除したいと思ったとします。しかし、Y不動産は、そのことは契約書に書いてあったと主張し出しました。X君が契約書を見たところ、小さい字でそのことが明記されていたのです。

もちろん、改正後も、様々な法律構成を駆使して、この契約が無効であるという主張をすることは可能です。

しかし、改正前であれば、「未成年者なので、取り消します」ということで、救済が容易でした。

改正されれば、X君の側で、Y不動産が十分説明していないなどの事実を立証し、契約の意思表示が錯誤無効であるとか、賃貸借契約の目的物である101号室に瑕疵があるので契約を解除するなど面倒な訴訟行為をしなければならなくなってしまうかもしれないのです。

この問題を論じる上で、「契約行為に代表される『法律行為』を行う上で、十分に分別ある行動を、高校卒業直後の19歳、18歳の人間にできるか」という視点が一番重要なのです。

私はそんなことを期待するのは無理だし、若者に非常に酷であると思うのですが、そういう視点からの報道が非常に少ないことに危惧を感じます。

中には、何を勘違いされているのかわかりませんが、この議論と刑法の少年法の議論を混同している見解も散見されます。民法と少年法では法律の目的が全く違います。これを統一的に解釈しようとすることが、そもそもの間違いです。

最近は、大学内で、若者をターゲットにしたねずみ講ビジネスや悪徳商法の被害が多発しています。そういう現状から目をそむけ、成人年齢を引き下げるのは、悪徳商法業者を利するだけであって、これこそ改悪というにふさわしいでしょう。

若者は国の原動力であって、国の将来そのものです。一部の学者や有識者といわれる方々の自己満足(大人の定義を18歳にした方が統一的ですっきりしているなどのくだらない理由)で、若者にリスクを転換するような法改正をこの国が続けていけば、国が衰退するのは明白です。

日本は、経済大国第2位はおろか、「かつて」の先進国と呼ばれることになる日もそう遠くないかもしれません。

次の選挙では、この改正案を十分に審査し、若者に対する不当な不利益の移転を阻止できる立法者となる人間を国会議員として多く選ばれることに期待するしかありません。

有権者の皆さんには、立法者を選ぶんだという意識を持って、投票に行かれることを望みます。

なお、メディアが使う、「識者」って曲者なので気をつけましょう。この問題において一番重要な知識である、制限行為能力制度の趣旨と機能を知っていることが識者であることの大前提です。しかし、必ずしもそういう観点からの議論ができていない方を識者として、メディアを取り上げているので、非常に議論がずれた方向になっているのが恐ろしいです。

悪徳商法、消費者問題に詳しい紀藤弁護士もこの改正に懸念をフジテレビ系の番組でしていました、ただ、同番組のコメンテーター、木村太郎氏の争点のすり替え、知ったかぶりには驚きましたが・・・。彼はいつも法律の話とか持ち出すんですから、こういう問題こそ、制限行為能力制度の問題を十分理解した上での発言をすべきなのですがね。

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成人年齢、18歳に引き下げ=実施時期「国会の判断」-自立促す・法制審部会
7月29日17時6分配信 時事通信

 法制審議会(法相の諮問機関)の民法成年年齢部会は29日、現在20歳と定めている民法の成人年齢について、公職選挙法に基づく選挙権年齢が18歳に変更されることを前提に、「18歳に引き下げるのが適当」とする最終報告書をまとめた。引き下げ時期は、若者に自立を促す施策などの効果や国民意識の動向を踏まえ、「国会の判断に委ねるのが相当」と結論付けた。男は18歳、女は16歳となっている結婚年齢にも言及し、男女とも18歳とするよう求めた。9月の法制審総会に報告される。
 成人年齢が引き下げられれば、親の許可がなくても契約行為ができる年齢も下がるなど、国民の社会生活に及ぼす影響は大きい。今後は、法制化の時期に焦点が移るが、引き下げには反対論も根強く、実際にいつ実現するかは不透明だ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090729-00000094-jij-pol

<成人は18歳>「まだ子供、絶対反対」「大人を自覚、賛成」--識者ら
7月29日23時24分配信 毎日新聞

 法制審議会が成人年齢を「18歳に引き下げるのが適当」としたことについて、若者の生活習慣や文化に詳しい識者の意見は、「自立が促される」「機運が高まっていない」と賛否が分かれた。当の若者たちの反応も「早く選挙に参加したい」「大人の自覚生まれる」「関心がない」とさまざまだ。

 立教大教授で精神科医の香山リカさんは、成人年齢引き下げに賛成だ。「今の20歳が成熟しているかといえば決してそうでない。大学で学生を見ていると、20歳になっても学生であるために成年になったことを自覚しづらいようだ」と指摘した上で、「18歳に引き下げられると、高校を卒業すれば大人として扱われる、という分かりやすい線引きができ、本人の自立も促される」と語る。

 一方、反貧困ネットワーク副代表でフリーターやニートなど若者の実態に詳しい作家の雨宮処凛(かりん)さんは「若者の間で、成人年齢を18歳まで引き下げてほしいという運動が高まっているわけではなく『上から目線』の議論。子供の結婚年齢など全世代にかかわる問題にもかかわらず、大人からも『引き下げて』という運動は広がっていない」と疑問を投げかける。「国民不在で議論が進んでおり、違和感がある。今後議論するにあたり、国民要望がどこにあるかをまず重視すべきだ」と述べた。

 「夜回り先生」で知られる元高校教諭の水谷修さんは「今回は民法改正で成人年齢を引き下げようとしているが、民法だけにとどまらず『成人だから年金を18歳から払え』『払えないなら親が払え』という議論になる恐れが高く、絶対に反対だ」と批判する。さらに、少年法の対象年齢も20歳未満から18歳未満に引き下げようという議論につながりかねないと指摘。「親から見れば19歳まではまだ子供。今回の議論は拙速すぎる。もっと時間をかけてやるべきだ」と指摘する。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090729-00000040-maiall-pol

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