河上和雄弁護士のまともな一言
このブログを定期的に閲覧して下さる方々はすでにお気づきだろう。ブログのトップページを変更した。
日々更新する記事だけでなく、じっくり見ていただきたい情報もあるので、トップページと最新記事を分けた方が便宜的だと考えたためである。
とりわけ、最高裁判所の国民審査に関する情報(現在随時更新中)は、来る衆議院議員総選挙での投票行動の際に参考になればと思う。
さて、今日の本題に入ろう。
以前、「メディアに登場する弁護士の敗訴」という記事で、元東京地検特捜部長で、現在弁護士の河上和雄先生が素晴らしいと紹介したのだが、河上先生がまた素晴らしい功績(?)を残してくれた。
メディアが小泉劇場の際のポピュリズム、現在の衆愚政治の傾向に反省しないにもかかわらず、河上先生は、日本テレビ系の報道番組、「バンキシャ」で、テレビサイドの意向を無視し、生放送中で出演していた東国原宮崎県知事に対して、非常にまともな苦言を呈した。
その様子は、Youtubeや以下に掲載する記事などでも確認できるが、前者はいつ削除されるかわからないし、後者はやり取りの全てを記載しているわけではないので、そのやり取りを以下に再現してみる。
東国原(以下、「知事」):・・・中央集権という一律的な・画一的な制度を改革しないとこれはなかなか治らないんです。
福澤明氏(以下、「司会者」):河上さんは東国原さんの一連の動きどう思いますか?
河上和夫氏(以下、「河上氏」):そうですね。東国原さんにちょっとお聞きしたいのは、まあ、あなたが色々知事としておやりになったことはわかるんだけれども、要するに、あなたが知事になれた、または今度自民党から色々お誘いがあったってのは、結局あなたの結局あなたの人気ですよね。
まあ、国民的人気って言っても良いのかもしれないけど。まあ、それは、実は、マスコミ、テレビが作り上げたものだと思うんですね。
人気ってのは、非常にあやふやなものだってのは、あなた自身よくお解りになっていると思うんだけれども、要するに、土台が崩れてしまったらそれっきりなんですよ。
知事:(天を仰ぎながら小声で口を尖らせて)ほぉー
河上氏:ただ、こう見てましてね。あなたは少し人気の怖さってものをお考えになった方が良いんじゃないかと思うんですね。
知事:(首をかしげた後、指をカメラに指しながら、勢いよく)それは、人気ってのは世論の支持っていうのとイコールでおっしゃってるのですか。
河上氏:(途中知事の割り込んで、ペンで河上氏を指すようなしぐさをして発言しようとした知事の声にかき消されそうになりながら)いやいや。人気ってのはねテレビがはやし立てれば人気が出るんですよ。
知事:(河上氏の発言を遮って憮然とした表情で)そうですかね?テレビに出たって人気がでない人はいますよ。
河上氏:(途中、知事の「わからない!」という声で邪魔されながら、)いや、そうそうそう。テレビがあなたに背中を向けたら、途端にあなたの人気は落ちるわけですよ。
ですから、もっとしっかりした考え方で、例えばね、(知事の次の発言に遮られる)・・・
知事:(眉を一瞬ひそめ、語気を強めて)じゃあ、地方分権ってのはしっかりした考え方じゃないというんですか!
河上氏:(発言途中で遮られるのややめてほしいのか、手を前に出しながら)地方分権はしっかりしているかもしれないけど、地方分権だけで国政が済むわけでないでしょ。
知事:地方分権は大切な改革ですよ。
河上氏:いやいや、大切な1つかもしれないけど、ワン・オブ・ゼム(One of them)でしょ。
知事:一つじゃないですよ。最重要だと思ってますよ。
河上氏:(やさしく笑いながら)いやいや、それだけで国はやっていけないからね。国がやっていけるってのはそんなものじゃないんだから。
知事:そんなものってなんですか。他の政策は自民党さん、民主党さんそんなに変わらないじゃないですか。
河上氏:いやいや、あなたはそれを変えようとしているんだから。それならもっと変えようとしている方向を出さなきゃいかんでしょ。
知事:(河上氏の発言を遮るかのように)おかしいですよ!それは。
河上氏:(孫をあやすかのように)どうしておかしい?
知事:おかしいですよ。おかしいですよね。人気がどうのこうのとか。ポピュリズムとおっしゃってるのですか!
河上氏:(知事の発言にかぶせるかのように)あなたの意見に反対する人間をおかしいって言って切り捨てるのはおかしいんだよ。そりゃ。
知事:(顔をしかめながら)へぇー?そのしゃべり方もおかしいですよね。
河上氏:(呆れてしまい)ハハハ(とにこやかな笑いを見せる。)
司会者:(たまらず別のコメンテーターに)渡辺さんどう思いますか?
<別のコメンテーターが「知事、お久しぶりです」と発言>
知事:(怒りが収まらない様子で)ビックリしちゃいます。もう。
<番組の最後に司会者が東国原知事の残したコメントを紹介>
司会者:河上さんいかがでしたか?
河上氏:50歳というのは若いなぁと思って(東国原知事の)話を聞いていたけどね、まだ若いですよ。(司会者に向かって)あなたもまだ若いよ。ハハハ。
司会者:(笑いながら)いやいやいや。まだまだっていう意味合いもあんでしょうね。
<番組終了へ>
このやり取りを見れば、おそれらく、9割以上のまともな人は、河上先生の鋭い指摘に共感するのではないだろうか。まさに、「馬脚を現す」とはこのシーン東国原知事にあるような言葉である。
相手の言葉をしっかり聞いて受け止めようとせず、言葉先だけで反論しようとする知事の姿勢は、テレビに出るだけで国会での仕事をしていない既存の国会議員とまっとく同じである。
東国原知事ははっきりいって、議論すらできない人間である。河上先生の手厳しい意見を受けて、しっかり意見を聴いた上で反論するなり、努力が足りない面については素直に認め、今後しっかり示していくと回答すればいいのに、喧嘩を吹っ掛けるような姿勢で、終始子供じみた捨て台詞で応酬するしかないバカっぷりと言っても言い過ぎではないだろう。
反論や異なる意見に耳を傾け、充分な再反論と説得ができない人間は、政治家としての基本的資質を欠く。なぜならば、民主主義の正当性は反対意見(少数意見)を十分に聞き、徹底して議論し説得するところにあるのであって、その根本原理をわかっていない人間に政治家の素養はないためである。
私の言いたいことの全ては、河上和雄先生の「あなたの意見に反対する人間をおかしいって言って切り捨てるのはおかしいんだよ。」というまともな一言に集約されている。
中には、「河上先生、テレビ局の選挙を面白おかしくしたいという方針に反して、こんな率直な意見を述べて大丈夫?干されない?」と思った人もいるかもしれない。
しかし、私の記憶が正しければ、河上先生は日本テレビの顧問弁護士を務めていらっしゃるはずなので、立場上はっきりと自分の見解を言うことができ、番組製作者に気を使う心配はないので、そのような心配は不要だろう。
冷静かつ物静かな物腰で話す河上先生に対し、「しゃべり方がおかしい」と稚拙な批判を展開した総理大臣志望の東国原宮崎県知事。こういう人間が政治家として人気を集める日本の民度はまだまだ未熟である。
私が見る限り、知事が語気を荒げる必要があるような、特段失礼と感じる部分は、河上和雄先生の御指摘の中には無かった。
世間では、先日、私の記事で「本命総務大臣説」が流れていると紹介した情報に加え、「地方分権担当大臣説」がさらには報じられている。閣僚にして、シングルイシュー化したい、小泉流解散を真似たいという麻生総理の思惑かもしれない。
しかし、国政への考え方を示すことができず、鋭い指摘に怒りを見せるようでは、全くもって話にならない。こういう人間をもてはやすメディアのレベルも低ければ、国民の民度も低い。
今回の河上氏とのやり取りを見て、目が覚めた人も多いはずであろう(目が覚めないほど愚かではないと期待したいところであるが・・・)。
なお、それ以上に、私が気になったのが、ワタミ社長の渡邊美樹氏のコメントである。
河上和雄先生のコメントで険悪な雰囲気になったため、中和する意味を込めて、司会者が振ったと推察するが、そのコメントで、「知事が問題提起したことは高く評価したい」などと発言し、持ち上げていた。
にもかかわらず、知事の出演が終わった番組の最後では、「たぶん、チャンスだと思われたから出て来たんでしょうが、国政に関して言えばまだ準備不足でしょうね。地方分権は万能でもなんでもないですから。」との変節ぶりである。
こういう人に場当たり的なコメントしかできない人をゲストコメンテーターとして、視聴者を代表しているかのようなに扱うのはとても違和感を覚えてしまう。
どんなに議論によって雰囲気が悪くなろうと、それの是非を判断するのは視聴者であるし、そうした雰囲気を作り出す政治家の資質が問題なのであって、テレビ局もコメンテーターも薄っぺらいことをせずに、毅然とした姿勢を河上弁護士から学ぶべきと私は思う。
ちなみに、河上先生は、刑事法学の分野でも優れた業績も残しているし、いつもこういう姿勢でまともな発言を発信するので、私が尊敬する法曹の一人である。
こういう方がメディアの衆愚政治を助長する流れに一石を投じているのは非常に貴重なことだろう。
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河上弁護士が東国原知事を痛烈非難 「地方分権だけで国政やっていけない」
6月29日19時55分配信 J-CASTニュース
日本テレビ系報道番組での東国原英夫宮崎県知事と元検察官の河上和雄弁護士の、白熱したやりとりがネットで話題になっている。河上弁護士は東国原知事の人気はTVで「作られた」もので、いつ下降するかわからないし、「地方分権を叫んでいるだけで国はやっていけない」などと痛烈に批判した。東国原知事は地方分権以外についても考えていると反論。さらに、河上弁護士の「しゃべり方がおかしい」と激怒、非常に険悪な空気になった。
■「マスコミ、特にテレビが作り上げたものだと思うんです」
日本テレビ系報道番組「バンキシャ!」(2009年6月28日放送)に東国原知事が出演した。国政進出を考えた理由を聞かれると、地方と都市部の格差を是正するには中央集権という画一的な制度を変える必要があるが、宮崎県知事という立場では限界があるため「次期自民党総裁候補として出たい」と説明した。当選後は国の行政を半分以下にスリム化し、国民生活に直結する部分の権限は地方に与える、という「公約」を述べた。
河上弁護士はかなり不満の表情だった。東国原知事の首長としての功績はよくわかる、としたうえで、まず、こんな言葉を投げかけた。
「自民党から出馬の誘いがあったのは、あなたの人気ですよね。国民的人気と言っていいかもしれないけれど。それはマスコミ、特にテレビが作り上げたものだと思うんです」
人気というのはあやふやなもので、その土台が崩れてしまったら終わり。人気の怖さを知事は考えた方がいい、と突っ込んだ。
知事が、
「人気というものは世論の支持、ということですか?」
と尋ねると、河上弁護士は、人気というのはテレビが囃し立てると出るもの、テレビが背を向けたとたんに人気はなくなる、と説明。これに対し知事は、「テレビに出ても人気の出ない人もいる」とし、「河上弁護士の言っていることはわからない!」と反論した。
河上弁護士はさらにこう言った。
「地方分権は大切な一つではあるけれど、それだけで国はやっていけないからね。(自民党の政策を)あなたは変えようとしているのだから、それならばちゃんと変えようとする方向性を出さなければいかんでしょう」
知事から国際問題や財政、医療などの問題についての発言が聞こえてこない、というのだ。
■「しゃべり方もおかしいですね。ビックリします」
知事は、地方分権は自分の最重要課題だから真っ先に話しているし、他の様々な国の問題についても考えている、とした上で、
「おかしいですよ、それ(河上弁護士の発言)は。おかしいですよ、人気がどうのこうのとか」
すると河上弁護士は、
「あなたの意見に反対する人間を、『おかしい』と言って切り捨てるのがおかしいんだよ!」
これに対し、知事は、
「えぇー?そのしゃべり方もおかしいですね。ビックリします、もう」
とやり返し、非常に険悪なムードになった。
番組の終了間際、司会の福澤朗さんから知事の感想を聞かれた河上弁護士は、
「50歳というのは若いなぁと思って(東国原知事の)話を聞いていたけどね、まだ若いですよ」
と語った。知事は出演後、
「私自身のマニュフェストに対しては、かなりの認識の違いが感じられました。生放送の性格上、充分に説明をできなかったことも心残りです」
というメモを残し、番組内で紹介された。
二人のバトルが激しかったこともあり、ネットではこの論争が大きな話題になっている。掲示板やブログなどには、
「喧嘩上等河上の挑発にのった東がアフォw」
「爺さんのいうことが正しいのに なぜ分からないんだ東」
「東国原を批判するだけで、他に何もしないジジィより国を変えようと動く東国原を応援するよ」
などさまざまな意見が出ている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090629-00000004-jct-soci
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Comments
この記事に大変共感したので、コメントさせていただきました。
初めまして。何度かこのブログを拝見させていただいてました。
今回この動画を見て、あまり政治等に詳しくない私でも東国原知事のレベルの低さを再確認しました。河上さんの言う通り、自分と違う意見を切り捨てるような考え方は上に立つ者としてふさわしくないと感じます。
相次ぐ政治家の問題発言に続き、上に立って日本を変えようとしているのならば、冷静な議論をしてほしいものだと感じました。
少し話が"言葉の重み"のことになって、話が逸れてしまいすいませんでした。
今後とも覗かせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
Posted by: 崖の上のポチャ | 07/01/2009 10:47 pm
崖の上のポチャさん
はじめまして。コメント有難うございます。
率直なご感想もっともだと思います。
貴殿の御指摘の通りで、上に立つ者は反対意見に耳を傾けなければ、必ず失敗します。東国原知事の姿勢は、「自分に不都合な他人の意見には耳をかさない」、「自分が正義」という日本の政治家に多い高慢なタイプに思います。
やはり、意見が違うのであれば、妥協点を見つけるべく議論すべきですし、けんか腰とも受け取られかねない姿を露呈して興奮してしまったの同知事の姿勢は甚だ政治家として不適切です。
アメリカでは、こういう政治家は政治生命を絶たれます。
その良い例が、ヴァーモント州知事だったハワード・ディーン民主党大統領候補(2004年)です。彼は当時民主党の予備選でリードしていましたが、興奮した姿をメディアの前で見せてしまったがために、予備選レースから一気に外れ、その後は政治的影響力を失いました。
現在は民主党全国委員会の委員長をしていますが、アメリカでは、党内役職はそれほど重要なものではないため、政治的影響力はほとんどないというべきでしょう。
崖の上のポチャさんのように、東国原知事の行動に違和感を感じた人は多いでしょう。冷静な議論ができない人間に政治家としての資質はないということは、日本でもアメリカでも同じなのだと思います。
また、思ったことがあれば気軽にコメントを寄せてください。
Posted by: ESQ | 07/02/2009 12:21 am