検察審査会とは?
17日に、メディアで大きく取り上げられていましたね。検察審査会というのは、皆さんニュースで聞くことはあるのですが、それが何かあまり知られていないのではないでしょうか。
我が国では、刑事事件については、検察官のみに公訴権が与えられています(刑訴法247条)。これは起訴独占主義といわれるものです。
したがって、ある事件の疑いがある場合に、起訴するかどうかは一義的には、検察官の判断に委ねられるわけです。
しかし、検察官が常に起訴すべきものを適切に起訴できているかは疑わしいでしょう。そこで、公訴権の行使に際し、検察機構とは独立した第三者的立場で、国民の意見を反映させる仕組みが設けられているわけです。
それが、検察審査会というものです。
あまり知られていないのですが、裁判員制度の開始に伴って、検察審査会法も一部重要な改正がなされました。
以前は、検察審査会の決議に法的拘束力はなかったのですが、5月の改正法施行により、以下のように変わりました。
【改正前】
41条 検事正は、前条の規定により議決書謄本の送付があつた場合において、その議決を参考にし、公訴を提起すべきものと思料するときは、起訴の手続をしなければならない。
【改正後】
41条 検察審査会が第三十九条の五第一項第一号の議決をした場合において、前条の議決書の謄本の送付があつたときは、検察官は、速やかに、当該議決を参考にして、公訴を提起すべきか否かを検討した上、当該議決に係る事件について公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしなければならない。
検察審査会が第三十九条の五第一項第二号の議決をした場合において、前条の議決書の謄本の送付があつたときは、検察官は、速やかに、当該議決を参考にして、当該公訴を提起しない処分の当否を検討した上、当該議決に係る事件について公訴を提起し、又はこれを提起しない処分をしなければならない。
検察官は、前二項の処分をしたときは、直ちに、前二項の検察審査会にその旨を通知しなければならない。
41条の2 第三十九条の五第一項第一号の議決をした検察審査会は、検察官から前条第三項の規定による公訴を提起しない処分をした旨の通知を受けたときは、当該処分の当否の審査を行わなければならない。ただし、次項の規定による審査が行われたときは、この限りでない。
第三十九条の五第一項第一号の議決をした検察審査会は、第四十条の規定により当該議決に係る議決書の謄本の送付をした日から三月(検察官が当該検察審査会に対し三月を超えない範囲で延長を必要とする期間及びその理由を通知したときは、その期間を加えた期間)以内に前条第三項の規定による通知がなかつたときは、その期間が経過した時に、当該議決があつた公訴を提起しない処分と同一の処分があつたものとみなして、当該処分の当否の審査を行わなければならない。ただし、審査の結果議決をする前に、検察官から同項の規定による公訴を提起しない処分をした旨の通知を受けたときは、当該処分の当否の審査を行わなければならない。
41条の6 検察審査会は、第四十一条の二の規定による審査を行つた場合において、起訴を相当と認めるときは、第三十九条の五第一項第一号の規定にかかわらず、起訴をすべき旨の議決(以下「起訴議決」という。)をするものとする。起訴議決をするには、第二十七条の規定にかかわらず、検察審査員八人以上の多数によらなければならない。
つまり、検察審査会が2回、「起訴相当(不起訴不当)」であると判断した場合は、その判断を検察官の公訴権の判断よりも優先させる仕組みに変わったわけです。
検察審査会は選挙人名簿(有権者)の中から選らばれた一般市民のより構成されるので、市民感覚として、起訴が相当であると判断した以上、その意思の反映を公訴提起段階でも、反映させようというものです。
より簡単なイメージ図は、最高裁のホームページにあります。
したがって、今回の二階経済産業大臣の政治団体による政治資金規正法違反事件は、第一段階において、東京地検特捜部の不起訴判断が妥当ではない、つまり、起訴相当であるという判断が出たわけです。
今回の審査会の決議内容は、審査申立人の代理人をされている阪口徳雄弁護士のブログで公開されている。
この決議を見る限り、被疑者である国沢氏については、「十分な証拠があるのに起訴猶予」という指摘がされているし、その余の被疑者についても、「捜査が尽くされているとは到底言えない」とのかなり厳しい指摘がされています。
安易に不起訴判断をした東京地検特捜部は自らの首を絞める結果になったかもしれません。これで、国策捜査だという批判はさらに高まるでしょう。
特に、国沢氏に対する起訴猶予判断については、自白して反省しているので不起訴という理由が挙げられているようであるが、日本で禁止されている司法取引が事実上されているという批判すら起きかねず、これが国民の目にどう映るか、検察の信用が落ちかねない事態に至るという最悪のケースも想定されそうです。
また、先日逮捕された厚生省の局長の関与が疑われる郵便代金制度の不正利用問題ですが、これについても、民主党の政治家の関与が疑われており、さらには国策捜査疑惑が出始めています。聞いてみると、その政治家は小沢氏に近い有名な衆議院議員だということです。
これも否認事件ですから、マスメディアはやはり慎重に報道すべきですし、十分な証拠がない限り、検察関係者が垂れ流した情報をそのまま報道するのは自制すべきでしょう。
検察は今まで以上に国民の厳しい目にさらされているという自覚が必要かもしれません。他方で、マスメディアに一方的な情報をリークするようなことをして、説明責任を問われると、公判を通じて説明するという従来の手法では、もう国民は納得しない状況にあると考えるべきです。
そして、そういう国民の司法参加を望んだのは、司法制度改革を進めた法務省であり、検察であり、裁判所であることも忘れてはいけません。
さて、検察審査会や裁判員に参加することについては、自分にはやはり関係ないことと思っている人も多いだろう。この記事を契機に興味を持った方などがいれば、次の小説をお勧めします。
この本は、一般人である主人公に突然検察審査会への参加通知が届き、刑事事件に円が無かった人間が、それに参加して犯罪のミステリーを解いていくというミステリー小説なのだが、司法に対する関心を高める上では読みやすい本だと思う。興味があれば値段も高くないので、読んでみてはいかがでしょうか。
自民二階派の不起訴不当議決=西松パーティー券購入問題-検察審査会
6月17日11時7分配信 時事通信自民党二階派の政治団体「新しい波」が西松建設のダミー団体からパーティー券代約830万円を受領した問題で、東京地検特捜部が会計責任者だった国会議員らを不起訴とした処分について、東京第3検察審査会は17日までに、不起訴不当とする議決をした。起訴猶予とされた同社前社長国沢幹雄被告(70)=政治資金規正法違反罪などで起訴=については起訴相当とした。議決はいずれも16日付。
同法違反容疑で告発した大阪市の市民団体が、処分を不服として審査を申し立てていた。
議決は、嫌疑不十分で不起訴とされた当時の会計責任者らについて「記録を見る限り、捜査が尽くされているとは到底言えない」と検察の捜査を批判。「さらに踏み込んだ捜査が期待される」として、処分の再考を求めた。
小沢一郎民主党前代表の政治団体に対する偽装献金事件で起訴されたことを理由に、起訴猶予とされた国沢被告については「十分な証拠があるのに起訴猶予は納得できない。この事件として責任を取るべきだ」と指摘した。
東京地検の谷川恒太次席検事は「議決については内容を十分に検討し、適切に対処したい」とコメントした。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090617-00000066-jij-soci
さて、自民党は、小沢代表だけでなく自分のところの議員についても同様の動きをするのであれば、わかるのですがどうも都合のいいことだけ言っていると思ってしまうのは私だけでしょうか。
なお、参考人招致をするというのは国政調査権の発動として、事件を調べると言うことですが、これについても司法権との関係で慎重さが要求されます。特に現在裁判所での審理が進行中の事件ですから、裁判所の訴訟指揮や審理内容に影響を与えるようなことになれば、司法権の侵害であり、憲法で定める裁判官の独立に抵触します。
行うのであれば、裁判所とは異なる目的で調査するということをはっきりと説明する責任が国会に生じるのであり、国民はこの点もしっかり監視しておく必要があるでしょう。
小沢氏の参考人招致も=自民・菅氏
6月21日18時25分配信 時事通信自民党の菅義偉選対副委員長は21日、宮城県東松島市で講演し、西松建設の違法献金事件の公判で、小沢一郎民主党代表代行の事務所が公共工事の談合に関与したと検察が指摘したことに関し、「小沢氏は今まで全く関係ないと言ってきたが、(関与が)明確になっているから皆さんに説明する責任がある」と指摘。「小沢氏が説明しなければ、参考人として出てもらうことも当然求めなければならない」と述べ、国会招致も辞さない姿勢を示した。
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