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06/11/2009

辻井さんの快挙

[追記:2009年6月12日]

ウォールストリートジャーナル紙の電子版は別の最新記事を掲載しました。この記事は、辻井さんが2歳でジングルベルを弾けたことなど日本でも報道されている内容に加え、やはり一部の評論家の厳しいコメントも紹介しています。

他方で、辻井さんの演奏を評価する審査員のコメントと辻井さんの演奏を見たピアニストで、南カルフォルニア大学ソーントン音楽学部(USC Thornton School of Music)教授のノーマン・クリーガー(Norman Krieger)氏のコメントも紹介している。

クリーガー氏は、「辻井君が選曲した曲の難しさに感銘を受けた。ベートーベンのハンマークラヴィーアソナタは物理的にも演奏するのが難解な曲として悪名高い曲である。」とのコメントとし、審査員のニューヨークの名門ジュリアード音楽院のピアノ学部長Yoheved Kaplinsky教授は、「辻井君は、公正で、率直で、美しい音楽家シップで我々を感動させてくれた」と述べ、盲目であることと受賞は関係ないと説明しているという。

また、APF通信電子版は、アマゾンジャパンの音楽アルバムランキングで、日本で人気の歌手の福山雅治のアルバムを追い抜き、現在2位になったことを紹介。さらには、辻井さんが演奏する際に、好きなオレンジ色と青色を思い浮かべながら演奏しているというエピソードを紹介している。

さらに、面白いことに、昨日紹介したウォールストリートジャーナルのベンジャミン・イブリー(Benjamin Ivry)の記事(下記参照)に対し、クラシック音楽評論家のスコット・キャントレル(Scott Cantrell)氏が批判記事をダラス・モーニング・ニュースの電子版に寄せているのである。

キャントレル氏はまず、一言、「私はこの記事は不愉快かつ不正確だと思う」と強い口調で断じている。

そして、キャントレル氏は以下のようなコメントを書いている。

16日にわたるコンテストをすべて見ているが、(WSJ紙に評論記事を寄せた)イブリー氏が実際にコンクール会場に出席して見ていたという形跡は一つもない。もし彼が、実際に出席していたのであれば、クライバーンコンクールの広報担当者すらしら気がつかなかったのであろう。

もし、彼の評論がインターネット上で見た演奏に基づいて評価しているとすれば、はれはそのことをまず前提として言うべきであろう。私は、移動上の都合から、ファイナリストの一人、Di Woさんの演奏の一部をインターネットで見なければならなかったのであるが、ネット上での演奏はトーンの質が落ちて聞こえ、これに基づいてのみ演奏を評価するのは、欠点があると言わざるを得ず、評論する上で、実際に見たのか、ネット上での閲覧なのかを明示すべきと私は思った。

イブリー氏の記事は、事実すら正しく示していない。彼は、ジョン・ジオーダノ(John Giordano)氏がフォート・ワース交響楽団を指揮していると述べているが、すでに退任し、後任のMiguel Harth-Bedoya氏が指揮者になって9年も経っている。イブリー氏はタカーク弦楽四重奏団がハンガリー出身であると説明しているが、元々のハンガリー出身者は2人しか残っておらず、同四重奏団は1983年からコロラド大学に在籍しているので、不正確な説明である。

イブリー氏が指摘するゴールドメダリストの辻井伸行君への留保(低い批評)のうち、その一部は理解できる部分もある。しかし、私たちの多くは、イブリー氏が「音楽的に成熟して感情的である」と評するDi Wuさんへの執着には賛同できないだろう。

(私が審査員なら)私はもう一人のゴールドメダリストであるHaochen Zhangに一票を入れるだろう。

テキサス北部のテレビ・ラジオ局KERAが運営するArts and Seekというウェブページにある記事は、こうした評論家の意見を紹介した上で、次のように締めくくっている。

「彼のクライバーンでの演奏が個人的に好きかどうかに関わらず、辻井さんはアジア出身者で初めて、盲目のピアニストとして初めて、ゴールドメダルを獲得したのである。」

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退院したボイルさんは元気になってきたようである。

スーザン・ボイルさんは現在金曜日からバーミンガムで始まる「Britain's Got Talent」のツアーコンサートの準備に忙しいらしい。

入院した理由として、過度のプレッシャーや過労、自信の喪失などもあったようである。

ところで、以前お伝えしたデミ・ムーア、アシュトン・カッチャー夫妻がボイルさんを結婚記念パーティーに呼ぶ計画があるという記事ですが、イギリスのテレグラフ紙電子版は、その報道を否定する記事を掲載している。

さて、日本でも多くのメディアが取り上げているので、記事にするか迷ったが、このブログでは、音楽に関する記事も多いので、辻井さんの話題を取り上げようと思う。

公式サイトの動画

http://www.cliburn.tv/client.aspx

美爾依(ミニー)さんと言う方が管理人を務める『カナダde日本語』というブログが非常に詳しく辻井さんについてYoutube上の動画を交えて、取り上げていらっしゃるので、興味がある方はそちらを参照されることをお勧めする。

そこで、今回、このブログでは視点を変えて辻井さんを海外のメディアがどうとりあげているのか注目してみようと思う。

まず、イギリスのガーディアン紙。記事は、「盲目のピアニストが一流のクラシック音楽の賞で共同優勝者に選ばれる(Blind pianist is joint winner of prestigious classical music prize )」と題して報じている。

二人の優勝者がアジア出身初の優勝者であることや辻井さんが2歳から音楽を奏でることができたことを伝え、優勝した辻井さんと中国の演奏者を称賛している。

盲目のピアニストと言うことに加え、歴史あるピアノコンクールで、アジア勢が初の上位を独占したという快挙が注目されている。

これに対し、金融危機の発信源となったアメリカの保守系ウォールストリートジャーナル紙は手厳しい。

「審査員は何を考えているんだ?(What Was the Jury Thinking?) 」と題した記事では、辻井さんの演奏レベルについて、学生レベル、2位の中国人演奏者は才能があるがまだ未完成と批判しており、審査結果が不透明だという記事を書いている。

さらに、記事には、辻井さんのオーケストラとの共演について触れ、その演奏を「惨事(Disaster)」と称し、指揮者の指揮が見えないソリストは演奏すべきではないとまで断じている。

批判は辻井さんだけに向けられているのではない。

ファイナリストに選ばれたブルガリアのエブゲーニ・ボザーノフ(Evgeni Bozhanov)氏(25)に対しても、「彼はけばけばしく、荒々しい演奏者であり、セミファイナリストで敗れたイスラエルの演奏者の方が演奏のレベルが高かった。彼がファイナリストに選ばれたのは驚いた」と選考を批判しているのである。

ただ、コンサートが開かれた地元ダラスのフォート・ワース・ビジネス・プレス紙電子版は、辻井さんの写真付きの記事で、アジア勢が上位を占めたことを報じているだけで、そうした受賞に関する批判は見られない。

シンガポールのThe Straits Timesは、審査員の一人で、ニューヨークの名門ジュリアード音楽院のピアノ学部長Yoheved Kaplinsky教授の発言として、「盲目かどうかは関係ない。辻井さんは彼の演奏によって優勝した。我々は他の演奏者と同じように彼を審査するように定められているし、辻井君自身もそのように審査することを望んでいた。」というコメントを紹介している。

私はピアノに関してはあまり詳しい方ではないので、どのファイナリストの演奏がベッターかという議論はできないが、審査員は一流の音楽家ばかりなので、その審査の結果の方が、金融危機にあたふたした保守派新聞のコラムよりよっぽど正当性があると私は思う。

また、芸術性の評価は万人に受けるものが良いというわけではなく一般人や観衆の投票になじむものでもない。こういう競い合いがあるものに一律に透明性を求めようとするのはいかがなものかとも思う。

アジア勢の快挙に水を差したいのか?と疑ってしまうのはゲスの勘ぐりかもしれないが、保守派のウォールストリートジャーナル紙であれば、ありえないことではないだろう。

もっとも、こういった音楽における芸術性は個人の趣向もかなり反映されるものなので、オールストリートジャーナルのコラムニストが気に食わない演奏者が最終に残ったという理解で十分だろう。

盲の天才ピアニスト辻井伸行さんが10月にコンサート
6月10日14時50分配信 両丹日日新聞

 先ごろのヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで、日本人として初の優勝を成し遂げた全盲のピアニスト、辻井伸行さん(20)=東京都在住、上野学園大3年=のピアノコンサートが、10月12日に福知山市中ノ、市厚生会館で開かれる。市文化公演自主事業実行委員会の主催で、世界でいま最も注目を浴びているピアニストによる旋律を福知山で聴くことができる。入場前売り券は7月7日からの発売となる。

 委員会は2001年11月の厚生会館全面改修で、ピアノの名器スタインウエイが購入され、音響照明設備が一新されたことを機に、市民らが集まり結成。クラシックの良さを広く知ってもらおうと、国内外で活躍する演奏家を招いて、毎年コンサートを開いている。事業に対しては市が補助している。辻井さんへの出演交渉は1年前からスケジュールを確認しながら進めてきた。

 辻井さんは生まれながらに全盲で、幼いころに母親の口ずさむ歌に合わせておもちゃのピアノで演奏を始めたという。1998年に三枝成彰スペシャルコンサートで、大阪センチュリー交響楽団と共演しデビュー。00年に第1回ソロリサイタルを開いた。海外での活動も多く、05年にワルシャワで開かれた第15回ショパン国際ピアノコンクールに最年少で出場し、批評家賞を獲得した。

 ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールは、第1回チャイコフスキー国際コンクールで優勝したアメリカ人ピアニスト、ヴァン・クライバーンを記念して創設された国際ピアノコンクール。62年の第1回から4年おきにアメリカで開かれている。

 辻井さんは中国、ブルガリアなどからの5人とともに決勝に進み、7日(日本時間8日)に発表があり、中国人ピアニストとともに見事優勝に輝いた。

 福知山でのコンサートは10月12日午後5時30分開場、同6時開演。指定席1500円、自由席1000円で、当日はそれぞれ500円増しとなる。前売り券完売の場合、当日券はない。チケットの販売は実行委員会事務局の市まちづくり推進課、厚生会館、オクムラ楽器、光陽堂楽器、三字屋楽器店、福島文進堂サンライズ店で取り扱う。問い合わせは同課=電話0773(24)7033=へ。

写真=ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで演奏する辻井さん(写真はヴァン・クライバーン財団提供)http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090610-00000001-rtn-l26

辻井伸行さんのCDは既に販売されているので他の曲もぜひ聞いてみるのも良いだろう。アマゾンでは視聴もできる(短いが)。

まず、フジテレビの人気ドラマ「のだめカンタービレ」でも演奏されていたラフマニノフピアノ協奏曲。

そして、下のCDにはショパンやリストの曲が数多く入っている。辻井さんは決勝で、リストのハンガリアン・ラブソディーを演奏しており、その曲ももちろん収録されている。

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Comments

ESQさん、
記事の紹介ありがとうございます。
それにしても、ウォールストリートジャーナルの記事はあまりにもひどいですね。その記事を読もうとしてリンク先に行ってみたら、すでに削除されてしまったのか、ネットの不具合なのか、記事がありませんでした。又、もう少ししたら、アクセスしてみようと思います。

Posted by: みにー | 06/11/2009 08:09 am

みにーさん

コメント有難うございます。
いつも記事紹介をしてくださり、こちらこそ有難うございます。

WSJの記事のリンクを再度新しいものに置き換えました。先ほど確認した限りでは、当該引用記事に行きつきましたので、再度確認してみてください。

もしそれでもいけない場合は、Googleのニュース検索でUSニュースに設定し、"Tsujii"で検索すると上の方に表示されると思います。

WSJの記事は辻井さんだけでなく、この賞に対してかなり厳しいものです。私はWSJのコラムには賛同しかねます。とりわけ審査員の経歴を見れば、コラムニストよりも音楽に精通した方々ばかりですし、記事の言う透明性が必要かについても疑問です。

Posted by: ESQ | 06/11/2009 08:52 pm

ESQさん、
記事の再リンクありがとうございました。
今度は読めました。

このWriterは、Di Wu がお気に入りのようですね。彼女が3位になれなかったことがよほどくやしかったのでしょう。確かに彼女のオーケストラとの演奏もすばらしかったけれども、辻井君の上をいくものではないと思いました。

ただ、音楽というものは、人によってそれぞれ好みが違うものなので、このような意見も出て当然かもしれません。もっとも、辻井君のピアノを学生並みと評するところは、この人、音楽というものがわかっているのかなと疑問に思えました。まあ、WSJの記者で経済専門でしょうから、あまり音楽に対するプロ意識が感じられないのもあたりまえかもしれません。

Posted by: みにー | 06/11/2009 10:50 pm

みにーさん

早速コメント有難うございます。
おっしゃる通りだと思います。
好みの違いがあるにせよ、この記事の著者の演奏者の評し方はあまりにも酷いと思ってしまう箇所がいつくかあります。

辻井さんの他にもブルガリアの演奏者について、けばけばしく、荒々しいという評価をしているのですが、私が聞いた限り、それほど荒々しい演奏には聞こえませんでした。

私はピアノに精通しているわけではないのでわかりませんが、少なくとも辻井さんが盲目がゆえに特別扱いを受けたかのような印象を与える書き方であったり、演奏者に対しタブロイド的な評し方はメディアとしての評判を落とすのではないでしょうか。
残念ですね。

ところで、1つ面白い記事を見つけました。
http://www.californiachronicle.com/articles/yb/131393899

このブルガリアのピアニストについてなのですが、非常にメディア嫌いのようで、メディアがクライバーンコンクール中にこぞって質問しようとした際に、「その質問は嫌いだ。答えたくない。」「コンクールについては聞かないでくれ。」などメディアに毅然とした態度示していたというのです。

記事はスーザン・ボイルさんのことに付いても触れ、こうした急に有名になった人へのメディア対応について書かれています。

記者は、こうしたブルガリアのピアニスト、ボザーノフ氏の対応はレポーターを苛立たせ、ファンに対して失礼だという趣旨の主張をし、「いかにボイルさんやボザーノフ氏にように才能があっても、それはメディアやファンのおかげだ。彼らには我々に借りがある。」という乱暴な主張をしています。

私はこういうメディアの主張が本当に嫌いです。なぜなら、メディアの奢りがあるからです。知る権利を振りかざし、すべて彼らの行動を正当化しようとする非常に乱暴で恐ろしい発想だと思っています。
しかし、こうした記事を平気で書いてしまうわけですから、タブロイド記事には恐れ入ります。

私は、ボザーノフ氏のような対応があってしかるべきだと思います。
彼らは政治家でもなければ、官僚でもありません。

歌手、音楽家、彼らは才能ある芸術家です。そのコンクールの開催中にそうした下らない質問攻めにする方がおかしいのです。

その芸術を才能のない我々が勝手に騒いで享受しているのですから、ファンだとか、ファンへの説明をすべきとかいう偉そうな主張には何様のつもりなのだろうと思ってしまいます。

日本だけでなくアメリカのメディア、特にタブロイドは低俗な主張をするものだと再度認識させられる記事でした。

Posted by: ESQ | 06/11/2009 11:04 pm

今日の夜のテレビニュースで、辻井さんが凱旋ミニコンサートをした映像が映っていました。彼の演奏するラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の一節で、感動して涙が出そうになりました。私はこの曲がピアノコンチェルトの中で一番好きで、数えきれないほど聞いていますが、それでも辻井さんの音がきらめくような演奏に新鮮な感動を覚えました。彼がたとえ外国人であったとしても、または健常者だったとしても、同じように感動したと思います。

Posted by: MS | 06/11/2009 11:37 pm

MSさん

コメント有難うございます。
残念ながら、私はそのミニコンサートのニュースを見逃してしまいました。見たかったです。

私は辻井さんのラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を公式ホームページの動画で見ました。

注意深く見ていると、辻井さんは指揮者の指揮を耳で見ているように見えました。もちろん、他の楽器の音を拾って指揮者の指揮を感じ取っているのでしょうが、あたかも耳で指揮を見ているように感じました。

そして貴殿のコメントにあるように、辻井さんの演奏は非常に明るい演奏で、「きらめくような演奏」とはまさにその通りだと思います。本当に素晴らしい才能ですね。

こういう方の話を聞くと、自分ももっと頑張ろうという元気を与えてくれます。

Posted by: ESQ | 06/11/2009 11:57 pm

ESQさん、
ブルガリアのピアニスト、ボザーノフ氏についての記事をご紹介してくださってありがとうございました。

ESQさんがおっしゃられるように、音楽家がメディアの人間にサービスする必要はないと思います。辻井さんはその辺、まだ若いせいか、ものすごくサービス心旺盛で、見ているほうがつらくなるくらいです。中には、目が見えたら、何を見たいかなんて不躾な質問をする記者までいてあきれてしまいました。そんな馬鹿らしい質問にも笑顔で一生懸命答えている辻井さんが気の毒になってしまいました。

今日は、こちらの記事をブログで紹介させていただきますね。

Posted by: みにー | 06/14/2009 03:45 pm

みにーさん
いつも記事の紹介をしてくださり、有難うございます。

辻井のインタビューシーンなどニュースで見逃してしまうのですが、1度だけみた彼の受け答えはしっかりと答えていて、20歳にしては成熟していると思いました。

彼の話を見ていると、才能はもちろんですが、非常に努力しているということは印象的です。人間は弱いものですから、努力していても上手くいかないと、何かのせいにして、努力をあきらめてしまいがちです。

私も彼の努力する姿を今回クライバーンコンクール優勝というニュースで知り、人生は努力し続けなければならないということを思い起こさせられました。

このブログのタイトル『Nothing Ventured, Nothing Gained』は、日本の諺では、『虎穴に入らずんば虎児を得ず』という意味ですが、辻井さんの快挙は、再度この言葉の考えさせられる機会になりました。

何をするにもリスクはあるでしょう。しかし、リスクを恐れるよりも、いかに努力すべきかという視点が常に重要だということを辻井さんから教えられた気がします。

Posted by: ESQ | 06/15/2009 12:36 am

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