リベラル勢力、共産党、社民党が生き残る道はあるか
真面目に主張しているにもかかわらず、笑ってしまうということは不謹慎だとは思うがよくあることではないだろうか。
共産党支持者がこのブログの読者の中にいれば、申し訳ないとだけ先に言っておこうと思う。
共産党の志位委員長が、政権政党を目指すと述べているらしい。
共産・志位委員長「政権党への成長」に意欲 8中総開幕
6月4日13時30分配信 産経新聞共産党の第8回中央委員会総会が4日、東京・千駄ヶ谷の党本部で始まった。志位和夫委員長は幹部会報告で、次期衆院選を「21世紀の日本の進むべき道が問われる歴史的選挙」と位置づけた上で、東京都議会選挙の告示日の7月3日までに全党的に態勢を整え、衆院選比例区で650万票以上の獲得を目指すなどの党方針を示した。
志位氏は、共産党について「二大政党の悪政に立ち向かう唯一の政党だ」と強調し、自民、民主両党の双方を「異常な財界、大企業中心の政治、軍事同盟絶対の政治を共有している」と批判した。
さらに次期衆院選で政権交代を目指す民主党について「官僚支配を打開してどうしたいのか。外交をどうしたいのか。民主党政権がどういう日本を目指すか、さっぱり見えてこない」と厳しく批判した。
また昨秋以降、共産党が、これまで批判の対象としてきた財界幹部と会談したり、オバマ米大統領に、核廃絶を表明したプラハ演説を歓迎する書簡を送るなど“柔軟な対応”をしていることについて、「私たちが政権を担う党へと成長していく上で、初歩的だが意義ある一歩だと強調したい」と述べた。
真面目に政権政党を目指していると言っているのか、冗談なのか良くわからないが、おそらく当の本人は真面目に言っているに違いない。
このニュースを聞いて、単に共産党のことだからと鼻で笑って済ませるのでは、読者の皆さんにも申し訳ないので、このニュースから私が考えたことを紹介したい。
おそらく、”従来の”共産党の存在意義が現在は非常に希薄になっているのだと感じる。これは、社民党も同じなのであるが、二大政党、政権交代という大義名分の陰で、少数政党になり下がった社民党や、万年野党の共産党は百害あって一利ないと考える人も多いかもしれない。それはおそらく民主党支持者に多いのではないだろうか。
つまり、論理はこうである。共産党や社民党が選挙で勝ち目がないのに小選挙区に出ると、リベラル票が流れ、民主党に不利になるという考えだろう。これはおそらく正しいし、実践的な見方といえる。
しかし、本当に共産党や社民党の存在意義はなく、百害あって一利ないのかはわからない。支持者にそんなことを言えば、そんなことないと大きな反論が来るに違いない。
ただ、私が一つ確信をもって言えることは、社民党も共産党も、過渡期に来ており、第三政党としての適格性を有するには至っていないということである。
私はある種、現在の状況は、1997年頃のイギリスの政治状況に似ていると思っている。ただ一つの例外は、野党にトニーブレアのような柔軟で、スマートで、雄弁で、リーダーシップ、実行力のある指導者はいないということだけである。
この頃のイギリスは、肥大した公共サービスにメスを入れたサッチャー改革による民営化・市場化政策により、一時的には経済的な恩恵を受けたが、その弊害により苦しんでいた。教育、社会福祉等の分野で、予算削減による質の低下が生じ、サッチャー元首相は一部からは「魔女」とまで罵られ、後を継いだメイジャー元首相も指導力不足がしてきされていた。
これを現在の日本に引きなおしてみよう。小泉改革の弊害により、教育、社会福祉分野は問題山積である。一部の人間は、小泉が全て社会を悪くしたと罵る。そして、後を引き継いだ、安倍、福田、麻生も指導力を発揮できずにきている。
非常に似た状況ではないだろうか。
そこで、イギリスでは、万年野党になり下がっていた組合の支配力が強い労働党を生まれ変わらせた、トニー・ブレアが登場することはご存じだろう。このブレア前首相の話はまたの機会にしようと思うが、当時のイギリスでもう一つ注目すべきなのは、第三政党の存在である。
イギリスには当時、社会民主党と自由党が存在した。両方ともリベラル勢力であるが、前者は、高福祉政策等の大きな政府を好む社会主義思想の強いリベラルであり、後者は小さな政府を好む自由主義思想の強いリベラル勢力である。
これらが生き残りをかけ、合併し、英国自由民主党が成立する。
英国自由民主党は、労働党が中道化(右よりになった)ことによる、左派の受け皿として、第三政党化を目指すが、ブレア政権下では、その存在意義に苦心して、なかなか受け皿となることができなかった。
これは、ブレア前首相が在任中比較的支持率が高かったため、労働党の支持率もそこまで落ちなかったことがおもな原因であると言えるが、他方で、英国自由民主党もブレア前首相に対抗できる強いリーダーがいなかったこと、現実味のあるリベラル政策を提唱するのが困難であったことなども原因といえる。
しかし、ブラウン首相に代わると、労働党の支持率もガタ落ちし、現在は第二位の支持率を得ている状況にある。
これを日本に引き直して、日本の将来を占ってみたい。
現在日本にある第三政党足りうる野党勢力は、社民党と共産党である。英国の事情とは違い、両党ともに社会主義思想を基本とするリベラル勢力である。また、防衛問題についても、イギリスとは違い、無防備な平和主義を好む傾向にある。
まず、第三政党になりうる適格の障害として、無防備な平和主義があるだろう。どんなに共産党や社民党が頑張っても、自衛に関する現実的な視点がなければ、政権政党になりうる存在には奇跡が起きてもなることはできない。
そこで、まずこれらの政党は、護憲の立場を保持しつつ、無防備な平和主義を改めて、平和主義的国家防衛の在り方を国民に提唱する必要があるだろう。さもなければ、どんなに良い政策を主張しても、政権政党適格は得られない。
次に、共産党と社民党は共通点があるのだから、合併の道を模索する必要があるかもしれない。そのためには、共産党が共産という名を改め、党是から共産主義の実現という死したスローガンを捨て去る必要がある。
第3に、民主党には、ブレアのような有能でスマートな強い政治家はいない。そこがチャンスである。社民党や共産党といったリベラル勢力の中で、党の方針を現実的なものへと変化させ、雄弁かつ強いリーダーシップを発揮できるスマートな人材を発掘し、党首に置けば、政権政党に代わるチャンスもありえるだろう。
しかし、これら3点を今の社民党や共産党が実現するのはほぼ不可能であろう。
だからこそ、共産党の志位委員長が真面目に政権政党になろうという発言をしていても、私は笑ってしまうのである。
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Comments
社会主義や共産主義が考えられたころには、今のような機械化・コンピューター化は想定されてなかったと思います。
まさしく、現実対応ができないことが最大のネックでしょう。
Posted by: 山路 | 06/07/2009 12:16 am
山路さん
はじめまして。コメント有難うございます。
日本の社会主義や共産主義が現実対応できていないという点はおっしゃる通りだと思います。
ただ、思想そのものがもう古いということではないという点は喚起しておきたいなと思いました。
共産主義は別として、社会主義思想というのは程度差はありますが、社会福祉国家の樹立が要請された20世紀以降は、多くの先進国で取り入れられています。イギリスの労働党が復活したのも、過剰な社会福祉国家の在り方を第三の道により修正しつつ、家罪発展との調和を図ったことにあります。
また、北欧諸国は高福祉・高負担の社会福祉国家を維持しており、この根底には社会主義思想があるわけです。
社会主義思想そのものは、資本主義国家においても未だ生き続けているわけですが、日本の社会主義(社民党、共産党)の問題点は、山路さんのおっしゃるとおり、現実との調和をどう図るか、それを推し進める若いリーダーの不存在という点にあると私は思っています。
ついでに補足的に言いますと、日本でもう1つ問題なのは、この高福祉政策を提唱する議員は、自民党にも民主党にも、社民党にもいるわけで、わかりにくい構造になっているのはもちろんのこと、共産主義思想と社会主義思想が非常に混同されて理解されているところにあります。
これはアメリカで顕著にある特徴と同じなのですが、共産主義思想と社会主義思想は一緒のものと乱暴な説明がなされるわけです。おそらく、歴史的なレッド・パージの影響があるのでしょう。
これがイギリスに行くと様相が違います。社会主義と共産主義は完全に分離して理解されており、社会主義政党の代表が労働党でした。労働党は未だに社会主義インターナショナル(国際的な社会主義政党の連携組織)に属しています。
しかし、何度も言うのですが、社会主義といっても、共産主義ではありません。多少乱暴ですが、簡単に言うと、両者の違いは目的と手段の関係にあるといえます。
社会主義思想は、社会福祉国家の実現を含めた国家像の目的であり、その手段として、マルクスが共産主義を主張し、ソ連や中国はそれを自分たちの都合のよいように修正した共産主義を主張したわけです(もちろん、両国の共産主義にも違いがあります)。
私も含めて、なかなか共産主義に違いを分析的に理解している人は少ないでしょう。私も一般論として、社会主義と共産主義に違いがあること、マルクス、レーニン、スターリン、中国がそれぞれ主張した共産主義には違いがあるということしか理解できていません。
なので、社民党も共産党も、自分たちが考える国家像を都合のよい部分だけ主張するのではなく、すべて明らかにしなければ、なかなか時期選挙で埋没を回避するのは難しいでしょう。
労働党が政権政党に返り咲いたのは、トニーブレアが明確な国家観と方法論を示し、現実の問題解決ができる能力をアピールした点にあります。
民主党もそうですが、もう少しブレア首相のリーダーシップ等を研究しなければ、政権交代が良い形で実現できるか(一時的なもので終わってしまわないか)は疑問でしょう。
Posted by: ESQ | 06/07/2009 03:25 pm
財界や団体から献金を、政党助成金を税金からくすねてる政党達の政治は、イギリスの政治とは比べられないと思います。 党員増員で共産党にスポットが当たったことでマスコミで無視され続けた活動をやれるようになって披露しただけのことじゃないですか?
政権を取れる取れないかは個人的にどうでもいいこと(国民全体で結果的に体勢が決まるから)で他国と比べる必要もないと思います。
今は裕福な人と貧困にあえいでいる人の差が激しくなり、職場でも経営者の立場と労働者の立場が対立してながら表面化させずに仕事をして色んな事故や事件や病気に結びついてる感じがするのです。
でも、まだ自分の幸福だけ追いかけている人が多いと思うので、もっと、貧困が増えれば考えの軌道修正は人間どの党に所属してもせざるを得ないと思います。
防衛については、アメリカの下僕みたいな自衛隊で日本を守れるっていう考えがおかしいと思いますし、ほとんど非武装の国もあるのであながち平和政策も夢ではないと思います。
Posted by: たまやん | 06/10/2009 02:49 pm
たまやんさん
はじめまして。コメント有難うございます。
私の見解とは異なるようですね。
貴殿のようなご意見があることはわかりますが、まず、私は政党の究極的な目的は、掲げる政治理念の具体的実現にあると思います。
それは、自民党だろうが、特定の宗教団体とのかかわりの強い公明党だろうが、民主党だろうが、社民党だろうが、国民新党だろうが、共産党だろうが変わりません。
だとすれば、民主主義国家において、各政党がすべきことは、彼らが各自で掲げる政治理念の実現に向け努力すべきことであり、それにはマジョリティーにその理念を理解し受け入れてもらう努力をしなければなりません。この努力がなければ、近代政党としての使命を果たしていることにはならないでしょう。
共産党の最大の問題点は、いかに良い主張をしても、政権を任せたい、連立を組んでほしいと思える政党には至らないことです。これは近代政治における政党として致命的です。
とりわけ、現在の世論は二大政党制を望んでおり、小選挙区制が導入され、我が国の憲法に衆議院の2/3条項がある現状において、民主党が仮に地滑り的な大勝に至れば、第三政党足り得ない少数政党はどんなに吠えてもその政策の実現は困難なのが現実です。
また、仮に民主党が地滑り的大勝に至らなく、参議院の過半数が少数野党の協力なくして維持できない場合は、再び大連立が望まれたり、自民党を離党した一部議員との統一会派形成という事態に至ることになるでしょう。
そうすると、やはり連立を組める妥当な条件を提案できない共産党の存在意義は非常に小さくなってしまいます。
したがって、共産党は多少増えた党員に喜んでいるとすれば、それは大間違いであり、現状は党の存亡にかかわる危機的な状況にあると思います。
社民党のその点は同様です。現に社民党が共産党よりましだと思う点は、少なくともその状況には気が付いており、連立の条件を民主党に提示するなど差別化を図りつつも、なんとか自分たちの政治理念の具体的実現を図ろうと努力している点です。
また、共産党は弱者救済という主張をしていますが、内部の政策決定の実態は東大エリート主義が横行しているという指摘もかつての党員などによりなされることが多々あります。
以上を考えると、私は、本質的に共産党も自己改革できなければ、生き残る道はないのではないかと考えるわけです。
次に、防衛について、非武装の国があるとの指摘がありましたが、地形、周辺諸国の状況、外交関係など基本となるベースが日本とそれらの国とは根本的に違います。
日本は敵対的な国(北朝鮮)及び、領土紛争が残る国(中国、韓国、ロシア)に完全に囲まれているわけです。このような状況下で、スイスや他の中立国や非武装の国を例に挙げて夢ではないというのは、非常にナイーブといわぜるを得ないのではないでしょうか。
先進諸国の左翼政党を見ても、このような共産党や一部の社民党の主張をするような政治家はごくわずかです。
たとえば、ドイツのシュレーダー元首相、フランスのロワイヤル社会党前党首、ブレアイギリス前首相、ブラウン首相、オバマアメリカ大統領、アメリカ大統領候補だったラルフネイダー氏どの左翼系政治家を見ても、かかる無防備な平和主義を訴える人はいません。
その理由は明らかです。無防備な平和主義では、国民の生命、身体、財産を保護することができないためです。
このような観点からも、共産党は広く支持を得ることができ無いのが現状です。しかし、共産党は、これに対し何らかの努力をするどころか、結局は自己満足の主張をするだけで、自らの平和主義をどう現実的に実現するのか理解してもらえないという問題点を解決する真摯な努力をしていません。
だから、生き残る道は、若いリーダーを探したりするなど自己改革以外にないという結論に至るわけです。
Posted by: ESQ | 06/11/2009 02:15 am
私は大国の真似をする必要は無いと思ってるし、まだどれが正しいとか結果は出てないように思います。
リーダーがいないとか待望論は私は好きではありません。 日本国民があまりにも受動的過ぎて全託したがるからです。 これから氷河期のの日本人の意識に期待したいと思い、これからの10年が日本の政治の正念場と考え、どう変わるか楽しみにしてます。
Posted by: たまやん | 06/11/2009 10:15 am
正直、共産党は参議院にいるだけでよし。
できれば、共産には、政策提言集団となって、国会の外から、政治の問題を暴いてもらいたい。
社民は、「みずほ・辻本」党みたいになっているから
ある程度議席があるけど、それで票をつなぐのも限界がある。社民は民主と合併してしまえばよい。民主が部分的に社民主義を取り入れているんだから、社民にしても悪くはないと思う。
そうすれば、
保守政党:新自由主義からリベラル
リベラル政党:リベラルから社民主義
と、英米型二大政党中心政治になる。
実際、アメリカのオバマ大統領は、
ttp://news.livedoor.com/article/detail/4270714/
所得税最高税率引き上げ、大企業増税、軍事費カット
軍事よりも対話重視の外交
なんて、社民党もびっくりの政策をやっている。
二大政党中心でもやりようはある。
Posted by: なんちゃってリベラル | 08/23/2009 12:43 pm
>なんちゃってリベラルさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
貴殿のコメントですが、特定の政党を支持すると受け取られかねない内容のコメントであるため、公職選挙法との関係から、選挙期間中はその公開を保留にさせていただきたいと思います。
選挙日後に改めて公開させていただきます。ご理解よろしくお願いします。
Posted by: ESQ | 08/24/2009 12:25 am