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06/01/2009

ボイルさん現象を分析する(コメントへの返信)

とても面白いコメントをいただいたので、返信の形ではなく、記事の形でそのコメントに対する私の見解を紹介しようと思います。

個人的にはコメントの内容に賛同できないのですが、このコメントは、今回のスーザン・ボイルさんの人気現象を分析することを通じて、アメリカ社会の本質や日本社会について考える上でとても良い材料となると思い、こうした形をとらせてもらいます。

以下のコメントは、「どんどん注目を浴びるスーザン・ボイル(Susan Boyle)」という記事に寄せられたコメントです。

>日本も、早く物欲主義がら抜け出せて、一般の人に>埋もれているこういう>才能が発掘されるチャンスが
>ある世の中になってほしいものですし

そうでしょうか?
根底に偏見が根強い国、人ほど彼女を評価すると思います。
私に偏見がなかったせいか、彼女の歌、ギャップで感動することはなかったですね。私の周りもそうです。
彼女はとてもうまいし素敵です。ただ普通にプロ並にうまい。スーザンさんほど上手に歌う人はプロにたくさんいるため、これほどの話題になるのはやはり偏見からではないでしょうか。
そういう意味では日本であまり話題にならないのは、ある意味、偏見のなさもあるかもよ

以下、私の見解とコメントに対する回答です。

Teraさん

はじめまして。コメント有難うございます。

>根底に偏見が根強い国、人ほど彼女を評価すると思います。
>私に偏見がなかったせいか、彼女の歌、ギャップで感動することはなかったです
>ね。私の周りもそうです。

確かに、一面においては、彼女の見た目が普通の人なのに、すごい歌を歌うという点で偏見があり、それとのギャップで感動ということはあるでしょう。

しかし、私は以前からこのブログで指摘していますし、他のコメントしてくれる方もそうですが、ボイルさんの歌声は、技術では測れない何か不思議な魅力があると思っています。

私は音大こそ出ていませんが、アメリカの大学で2年間、オペラ歌手の先生からボーカルスタディーを受けていました。なので、歌の技術という点では、多少うるさいと自認しているのですが(自分が声楽が上手いかどうかは別として・・・)、ブログでも指摘していますが、彼女の歌の技術はやはりアマチュアです。ただ、プロにはないまた普通のアマチュアにもない不思議な魅力のある声だと思うのです。

私は彼女の歌声を何度も聞いていますが、目を閉じて聴覚を研ぎ澄ませ、その歌声に集中すると、より彼女の不思議な声の魅力が鮮明になると思います。これは、彼女のもともとの素質、生まれ持った才能としての声の良さではないかと考えていますが、人に癒しを与える不思議な魅力ある声だと思います。

>彼女はとてもうまいし素敵です。ただ普通にプロ並にうまい。スーザンさんほど
>上手に歌う人はプロにたくさんいるため、これほどの話題になるのはやはり偏見
>からではないでしょうか。

私は、彼女が話題になるのは偏見からでは無いと思います。

おそらく、貴殿の言われる偏見というのを定義するならば、「その辺のオバサンなんかに人を感動させる歌なんて歌えない」とか、「小太りのおばさんが世界の注目を集めているから話題性がある」とかいう意味で偏見があるということなのでないかと思います。

ただ、彼女の話題性の原動力は、偏見ではなく、彼女の不思議な魅力ある声はもちろん、インターネットによる原動力と特にサクセスストーリーを好む世論にあるのだと私は思います。

つまり、既存主要メディア(特に、アメリカ)が取り上げるのは、

①インターネット(Youtube)で、過去6番目に再生回数が多いと言うほど注目を浴びていること、

②アメリカではYoutubeが選挙戦にも影響を与えるほどの強いメディア媒体になっていること、

③そして、アメリカンドリームの精神が根強く残っていること

以上3点が理由であると分析しています。

①②については、そのまま御理解いたただけると思うのですが、③については多少補足します。

アメリカという国の本質は、フロンティア精神(開拓精神)です。つまり、このフロンティア精神の本質は一攫千金を狙うハングリーさという要素があります。そして、アメリカンドリームはまさにフロンティア精神そのものだと言えます。

このアメリカンドリーム(またはフロンティア精神)は、アメリカ社会において、最も重要な価値であり、アメリカ合衆国の統一はこれによって、支えられていると言っても過言ではありません。

御存じのように、アメリカは他の国に類を見ないほどの人種、異文化のるつぼです。

これは世界中広しといえどもアメリカ以外にこれほど多様な人種が国民を構成している国家はありません。とすれば、アメリカには様々な異文化、異民族が混在しているのであり、常に衝突しうる状態であるともいえます。

そこで、これを1つの国家として、秩序維持するには、多様な文化が混在する国民に1つの価値を提供して統一を図る必要があります。それが、まさに、フロンティア精神の継承であり、アメリカンドリームという価値そのものです。

アメリカの1セント硬貨には、「e pluribus unum」という言葉があります。これは、ラテン語で、「多くから作られた一つ」とう意味で、さかのぼるとこ、1776年のアメリカ独立宣言が発表された時に、起草委員会のベンジャミン・フランクリン、ジョンアダムス、トマス・ジェファーソンにより考案されたといわれています。この「多くから作られた1つ」を統一する価値が現在でいう、「アメリカンドリーム」、すなわち、「フロンティア精神」という価値だと考えています。

(蛇足ですが、類似する異民族国家、中国が、中華思想や共産主義思想という価値で国の統一を図っているのと同じようなものだと考えるとより分かりやすいかも知れません。)

アメリカンドリームの例を挙げると、アメリカ国民の皆に愛される大統領、リンカーンは開拓時代の丸太小屋の中で生まれ、両親は開拓者の子孫の農民だったので、それほど恵まれた子供時代ではありませんでした。しかし、若いころから家を離れ、その後、いくつかの失敗を繰り返した後に、弁護士、政治家と成功していくわけですが、財のないところから成功していく姿はまさにアメリカンドリームです。

現代でいえば、引きこもりのように内気で、友人にはオタク扱いされ、馬鹿にされた少年時代を過ごしたスティーブン・スピルバーグが、今や世界的な映画監督になって成功するとか、同じように、コンピューターオタク扱いされていたビル・ゲイツが自分の才能だけで成功するとか、そういう普通の人が一攫千金するのがアメリカのフロンティア精神の体現であり、アメリカンドリームそのものといえます。

テレビ番組で、億万長者ドナルド・トランプ氏が司会をする一攫千金番組)「アプレンティス(The Apprentice)」が人気なのもこのアメリカンドリームという価値に合致しているためかもしれません。

私は、今回のアメリカでの熱狂的なボイルさんへの陶酔も、このアメリカンドリームの体現そのものとして、アメリカ国民に受け入れられていることに起因していると私は分析しています。

すなわち、ボイルさんという48年間誰にも注目されない普通の人が、隠れた歌声という才能を公衆の前で開花させ、成功していく姿はまさにアメリカンドリームそのものとして、アメリカ国民に共感されているのではないでしょうか。

したがって、偏見がどうのこうのというレベルの話ではないと私は考えています。

>そういう意味では日本であまり話題にならないのは、ある意味、偏見のなさもあ
>るかもよ。

日本で話題になっていないといえるのかは疑問です。

私の認識としては、かなり話題にはなっていると思っています。今日もフジテレビの「とくダネ」では番組のトップ扱いで、時間を割いて取り上げていたようですし、読売新聞の朝刊でも大きく取り上げられていました。

また、このブログは通常50人も閲覧に来れば良いくらいのものでしたが、この話題を取り上げるたびに、1000人、2000人の閲覧者が記録され、私にとっては異常な訪問者数を記録しました。また、アクセスログからわかるのですが、多くのメディア関係者の方もこのブログを参照してくださっているようです。そういう意味で、日本社会のボイルさんに対する関心はかなり高いと言っていいでしょう。

ただ、確かに、アメリカの熱狂ぶりや現地イギリスでの盛り上がりと比べると、話題性は低いかもしれません。

しかし、その話題性が低いというのは、相対的な話ですし、日本でも多くの人が彼女の歌声の不思議な魅力に感動したのではないでしょうか。

また、盛り上がりがイギリスやアメリカと違うのは、言語の壁も大きいでしょう。多くの日本人がこの情報に接しようとしても、英語という壁があるので、得られる情報が限られています。英語が苦手な人は特に情報を得るのに苦労するはずです。

そして、仮に、貴殿の偏見度の国別の違いにより、ボイルさんの取り上げ方が違うという見解に乗るとしても、これをもって、我が国の偏見が少ないという帰結になるには論理の飛躍があります。

私からすれば、日本は偏見に満ち溢れた社会と言っても過言ではありません。

例えば、刑事事件では、「犯人=容疑者=被告」という偏見をもった取り上げられ方です。松本サリン事件の教訓を一切活かしていません。裁判員制度が始まりますが、どれだけの人が「疑わしきは被告人の利益に」という原則を本当に理解できているか疑問です。

小沢一郎氏の秘書逮捕の報道もそうですが、検察が流す情報はいつも正しいという認識(偏見)がマスメディア、その受け手である国民にあり、情報操作されていることすら気が付いていない人も多いはずです。

また、身近なところの話でいうと、私のイギリス人の(現在はロンドンに在住)友人が日本に住んでいた時の話ですが、店などに行くと、他の客がその友人は英語しか話せないと思い、日本語で外国人の悪口(白人はすべてアメリカ人と思いこんでいるのか、彼をアメリカ人だと思って悪口を言っていたそうです)をおもむろに話し出し、非常に気分を害することになったという経験を何度もしていると言っていました。

不幸なことにその友人は日本語が堪能なので、すべて悪口を理解できたそうです。そういう経験がかなり頻繁にあったと聞きますし、そういう経験をした外国人の友人はかなり多くいます。

学歴や経歴に対する偏見もそうです。近年はだいぶ緩和されましたが、未だに学歴に対する偏見は根強くあります。

これまた私の友人の話ですが、京大出身で、官僚なのですが、やはり根強く東大の学閥があり、こんなことでは優秀な人材が辞めてしまうと嘆いていました。現に、法曹界もそうですが、学閥は根強くあります。最高裁の判事の経歴や大手法律事務所のパートナーの学歴を見れば、東大出身者で多く占められています(決して、東大出身者が多いのが悪いというわけではありません)。それには少なからず、採用段階等で、東大卒の方が他大より優秀だろうという偏見が存在すると思います(それが良いか悪いかは別の話です)。

経歴もそうです。「医者、弁護士、商社勤務=収入が高い」という偏見があるでしょうし、企業や公官庁内部でも、「Aさんは、○○に飛ばされた経験があるだ。」とか「Bさん、可哀そうに△△課に行くなんて、出世コースから外れたね」、なんていう話をよく耳にすることがあるのではないでしょうか。つまり、左遷組だという偏見があるわけです。

関西に行けば、未だに部落差別が存在します。例えば、京都の九条あたりには、スラムのような地域があり、部落差別の温床となってきました。未だに、その地域出身の人が就職したり、結婚する際には、どこからともなくその人が部落出身者であることを伝える情報が周り、邪魔をされるということが現に行われています。私もその地域を訪れたことがありますが、なんとも言えない雑然としたスラムの雰囲気があり、それが偏見の温床になっているのだなと感じた思い出があります。

数を挙げればきりがないですが、日本だって偏見社会と言ってもいいかもしれません。偏見があるかどうかは国によって違いはないでしょう。どのような国に言っても偏見はありますし、その度合いも基本的には変わりありません。なぜなら、偏見は先入観から生じるものだからです。人間である以上、先入観を捨て去るのは容易なことではありません。

唯一の違いは、その偏見についてオープンに語る文化があるか、そうでないかの違いだと私は思います。

以上、とても長くなりましたが、①ボイルさん現象に偏見は関係ないということ、②偏見が日本にはないというのは間違いだというのが、私の見解です。

この反駁を通して、アメリカ社会の本質や日本社会の偏見の在り方などについて、読者の興味関心が喚起できれば幸いです。

48歳の英歌姫、優勝逃す=でも前途は洋々?
5月31日21時8分配信 時事通信

【ロンドン31日AFP=時事】英オーディション番組で地味な外見に似合わぬ美声を披露し、一躍有名になったスコットランド人女性スーザン・ボイルさん(48)が30日、番組の決勝戦に出場したものの、優勝を逃し2位に終わった。
 優勝候補に挙げられていたボイルさんは、先ごろ行われた準決勝でミュージカル「キャッツ」の「メモリー」を歌ったが、ときどき調子を外すなどやや不安定な歌いぶりで、精神的プレッシャーに苦しんでいるとの見方が出ていた。また英メディアによると、滞在していたロンドン市内のホテルでかんしゃくを起こし、警察が介入する騒ぎもあったという。
 生放送で行われた決勝戦では、4月に初登場した時と同じミュージカル「レ・ミゼラブル」の「夢やぶれて」を熱唱し、改めて審査員や聴衆から喝采を浴びた。だが、100万人を超える視聴者の投票の結果、優勝し賞金10万ポンド(約1500万円)とエリザベス女王の前で演技する機会を手に入れたのは、10人組の若いダンサーグループだった。
 「最も優秀な人々が勝ったのであり、彼らの成功を祈っている」と勝者をたたえたボイルさんだが、複数のメディアは31日、世界的となった知名度を生かせばボイルさんは来年大金を手にできるかもしれないと伝えた。ニューズ・オブ・ザ・ワールド紙によれば、アルバム制作などのプランが進行中とされる。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090531-00000074-jij-ent

この記事にも一言。ホテルでかんしゃくを起こしたと書いていますが不正確です。BCCなどの報道では、二人組のタブロイド紙の記者が滞在先のホテルに押し掛けてボイルさんを追い回し、挑発する発言浴びせたので、ボイルさんが怒りを顕わにし、その場にいた警察官が記者を追い出して、ボイルさんに事情を聴いたという話なのに、まるでボイルさんが理由なく精神的不安定になったかのような記事の書き方です。

時事通信はもう少し正確な記事を配信しなければ、今でさえ難しい経営はさらに難しくなるのではないでしょうか。

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