海外メディアが見る現在の日本の政治状況
日本の政治というのは、あまり海外から注目されないので、外国人記者が書いた記事というのは見つけるのもなかなか苦労する。
今回は、現在の日本の政治状況を海外の記事はどう伝えているのか紹介しようと思う。
まず、アジアタイムズ電子版の6月20日付記事は、オーストラリア、アデレード大学のPurnendra Jain教授の記事で、「さよなら自民党、こんにちは民主党」と題して、現在の日本の政治状況を紹介している。
この記事が面白いのは、1993年の自民党の衆議院選敗北と非自民による細川政権誕生の時と2009年の現状を比較し、現状の野党である民主党が政党としてより強固ものになっていると指摘している点である。
例えば、1993年の時点では7つの政党による連立政権だったが、このときは自民党から離党した政治家と非自民の野党が急きょ、あわてて作った連立政権であり、その連携が弱かったのに対し、現在の民主党の政治家はもともとの出身政党にこそ違いがあるが、民主党という1つの同じ政党に、十分な期間在籍し、民主党の議員と言うアイデンティティーを持っていると記事は指摘している。
また、民主党について、政権交代可能な政党として明確な立場を打ち出し、今までで一番大きな野党にまで成長していると紹介。仮に、民主党政権が誕生すれば、第二次世界大戦以降続く一党独裁政治に終止符を打てると記事は伝えている。
さらに、民主党のリーダーシップについても記事は言及している。
小沢氏の秘書が関わったとされる政治献金事件について、1990年代の出来事が問題になったと指摘、当初は小沢代表が辞任を拒否したが有権者の反応を素早く察知して、小沢代表は辞任し、新たな鳩山体制は有権者の信頼を得ていると評価している。
他方で、GDPが170%も落ち込んでいることを指摘し、これにより予算の赤字が益々進むことから、自民党のシンボルである大型公共事業政策の代わりに、民主党が掲げる生活保障、社会福祉分野での減税政策を増税なくしていかに財源を確保するのかについて、十分な説明が必要と述べている。
ただ、記事は「日本国民が既に消費税の増税について承認しており、民主党も早く正直になるべきだ。」という指摘もしている。この点については、日本の現状を正しくとらえているか多少疑問が残るところであろう。
新聞各紙の世論調査で、2009年1月の時点では、消費税反対が依然半数以上いたと記憶しており、国民が増税を承認しているという評価は正しくない。
面白いのは、この記事が、民主党内の議員の考え方がバラバラであるということを指摘した上で、しかし日本の有権者には、民主党に政権を担当させるチャンスを与える以外に選択肢が無いと指摘している点である。
なぜなら、民主党が参議院の過半数を押さえている以上、安定した政治運営には、自民党が再び2/3以上の議席を確保することは考えられないので、民主党が衆議院で過半数を獲得する以外に方法がないというのである。
記事は、仮に民主党が政権を担当できないような状況になれば、政治的な混沌状態に陥るだろうと指摘しつつ、世界第二位の経済を誇る先進国の国民が自らをそのような政治的混沌状態に陥れるような判断はしないはずと述べている。
自民党内では鳩山邦夫氏や、離党した渡辺善美氏のように、政界再編を望む動きや麻生総理に代わる別のリーダーを建てようという動きがあるようだが、下手な動きをすればするほど、日本の政治を空転させ、しわ寄せが全て有権者たる国民に来ると言うことを政治家は自覚すべきかもしれない。
駆け引きなどいわゆるポリティカル・ゲームは、メディアにとっては格好のネタであり、面白いだろう。しかし、ポリティカル・ゲームを楽しんでいるほど有権者に余裕はないのではないかというのが私の実感である。
この海外記事が指摘する大部分は正しいような気がする。特に、有権者に選択肢が無い状況だと言うのは事実だろう。
私はかねてより、衆議院と参議院で多数政党が違う状態は、適度な緊張関係をもたらし、望ましい状態と考えてきた。しかし、最近は考えが多少修正されている。というのも、政治家が未熟な日本に限って言えば、衆参で多数政党が違う状態は、無謀な緊張関係の身をもたらし、適度な緊張関係による政治の運営と言う状況は望めないようである。
今後、日本に二大政党制が定着し、議員数が減り、そして、成熟した政治家が増えて初めて私の望むような適度な緊張関係が生まれるのかもしれない。
いずれにしても、世界第二位の経済大国という名誉ある地位に汚名をつけたり、その地位を返上しなければいけなくなる事態に陥らないように、賢い行動が有権者には求められているようである。
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