チャンス・ステグリッチ(Chance Steglich)君の歌唱力にも注目
【追記:2009年6月16日】
ボイルさんですが、日曜日にマンチェスターで予定されていたコンサートに参加しなかったため、体調などが心配されていたようですが、月曜日のスコットランド、グラスゴーでのコンサートには参加して、Britain's Got Talentで披露した2曲を歌ったようです。
以下のウェブ上ではYoutubeの動画としてコンサートの様子が紹介されています。
http://www.inentertainment.co.uk/20090616/video-susan-boyle-glasgow-bgt-tour-2009/
さらに、イギリス、ウエストエンドでは、ボイルさん効果によって、ミュージカル、「レ・ミゼラブル」の売上が46%の上昇しているそうです。
http://broadwayworld.com/article/The_Susan_Boyle_Effect_Boosts_UK_LES_MIZ_Box_Office_20090616
また、すでに日本のメディアでも報じられているそうですが、英国メディアのテレグラフ紙は、Britin's Got Talentの決勝戦で、ボイルさんが負けた原因として、Youtube上での詐欺行為が関係するとの記事を報じています。
記事が指摘する疑惑は、非公式に掲載され、かなりの人が見ていたYoutube上の動画で、ボイルさんへの投票するための電話番号の字幕を故意に変更し、その変更先の番号が優勝者であるDiversityへの投票番号になっていたというものです。
さらに、通話が込み合い、数百名の視聴者がボイルさんへの電話投票ができなかったとの抗議も寄せられているとそうです。
これに対し、ITVのスポークスマンは、テレビ画面上ではっきり番号を掲載していたので、故意に何者かが変更を加えた動画を掲載することは難しいはずと回答し、Youtubeのスポークスマンは、間違った番号が掲載されていたか否かわからないが、Youtube上の説明書部分にはITVに全責任があると回答しているそうです。
この疑惑をタブロイドでなく、一般紙のデイリー・テレグラフ紙が取り上げるのですから興味深いです。
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スーザン・ボイル(Susan Boyle)さんの話題以来、音楽に興味のある方の訪問が多いので、私がYoutube上で発見した素晴らしい歌声を披露している海外の人を紹介しようと思う。
以前にも記事で少しだけ取り上げたのだが、アメリカの高校生、チャンス・ステグリッチ(Chance Steglich)君の歌唱力はプロ並みである。
今回、ブロードウェイの俳優が歌う同じ歌と比較しながら紹介していこうと思うが、歌唱力だけでいえば、高校生ながら決して引けを取らないとは私は思う。
まず、スーザン・ボイルさんで広く知られるようになった、ミュージカル・「レ・ミゼラブル」のマリウス(Marius)という役が歌う『Empty Chairs at Empty Table』を聞いてもらいたい。
この曲は、フランス革命下で、マリウスは他の学生とともに反政府活動に参加する。政府軍の装備には適わず、多くの学生が命を落とす中、主役のジャン・バルジャンが育てた娘(自分の子供ではない)コゼットと恋仲に堕ちた青年、マリウスを救出する。
その後、意識を取り戻したマリウスが、戦い、命を落とした学生の友人たちを想って歌う歌がこの曲である。
この歌は、高校生のチャンス君の歌である。
次の動画はプロのブロードウェイ歌手、Hugh Panaroが歌う歌である。数多くのミュージカル俳優がこの役を演じこの歌を歌っているが、彼はその中でも非常にうまくこの歌を歌いあげる俳優の一人である。
そして、次の映像がこのマリウス役をイギリスのWest EndとBroadwayでオリジナルキャスト(初回の配役)として演じた歌手、マイケル・ボール(Michael Ball)氏が歌うレ・ミゼラブル20周年記念コンサートの歌である。
チャンス君の歌声は、ブロードウェイの俳優の2人が歌う動画と比べると、演技力、感情の込め方、強弱の付け方等の技術的なところでは多少劣るところもあるが、声の質、声量は高校生の素人が歌っているとは思えない能力の高いものだと思う。
これは生まれ持った才能なのかもしれないが、単なる歌のうまい青年が歌っているというよりは、スーザン・ボイルさんやコニー・タブロットちゃんのように、声そのものに透き通る優しさと遠くまで通る力強さがある。
他の多くの人には無い「聞きやすさ」が声にあり、素晴らしい才能である。
具体的には、特に、この歌の後半部分の「Oh, my friends, my friends, don't ask me.」という部分の伸ばし方、声量は非常にレベルが高い。
他方で、ブロードウェイ俳優の二人が歌うように、「Phantom Faces at the Window. Phantom Shadow on the Floor.」と言う部分はもう少し、他のパートとの違いを出して、強弱をつけて歌いあげられると、より感情が現れやすくなるはずである。
さすがに、マイケル・ボール氏の歌声は、コンサートという特別の演奏環境にあることを差し引いても、声にまろやかさがあり、メリハリが上手い。
それにしても、17歳でこれだけの声の質、声量があるのは本当に驚きである。
また、以前にも紹介したのであるが、チャンス君が歌うジョゼフ・アンド・アメージング・テクニカラーコートというミュージカルで歌われる『Close Every Door』は、この曲以上にレベルが高い。おそらく、動画の映像は、高校で演じられた同ミュージカルの1シーンである。
この歌なら、ブロードウェイ等に出てきて歌っていても、素人とは気がつかないかもしれない。
今後、強弱の付け方、演技力、感情の込め方など技術的なところが訓練されれば、一層素晴らしいブロードウェイ俳優になるのではないだろうかと思わせてくれる。
Youtubeを見ていると、海外では、こうした自己表現がかなり多くなされている。
以前の記事でも指摘したが、日本ではなかなかこうした主体性のある芸術表現の場が少ないためか、Youtube上でもこうした日本人の高校生などがミュージカルやオペラの歌を歌っている動画などはあまり見かけない。
こうした現象を見ていると、欧米に比べ、日本では芸術性を発揮する場が非常に少ないのではないかという危惧がある。
今回は大学の制度と言う観点から意見を示してみたい。
私は音大卒ではないので、詳しい日本の事情を知っているわけではないことをはじめに言っておくが、海外では、総合大学にPerforming Artsという学部が多数存在する。
そして、そうした学部に通う学生向けの奨学金や財団が多く存在し、若い段階からの人材発掘が進んでいる。
しかし、そうはいっても、総合大学で、音楽を学ぶので、音楽一辺倒という生活ではなく、他の学部生との交流も必然的になされる。
また、海外の大学の場合は、最初の一年目は全員が大学の寮に入らないといけないという総合大学も多い。これは親元を離れ、学生の自主的な生活を促すとともに、そうした学業以外の時間において、多様な人材交流の機会を与える場といしての位置づけもある。
日本ではまだまだそうした大学文化は少ないし、音楽を志望する人は音大に行くことが多く、単科大学だけの生活になってしまっているのではないかと思うわけである。
音楽だけで生活できるようになる人はごく一部であることなどを考えると、就職難や不景気から音大ではなく、経営部や経済学部に行くことにして、芸術性の追求をあきらめざるを得ない状況があるのではないだろうか。
仮に、総合大学で、Performing Artsを専攻として学びつつ、経営学やその他の学問を副専攻として学べる環境があれば、就職が不利になると憂ぐこともなくなる。
さらに、学生奨学金制度(とりわけ無償型)が海外に比べると少ないことなどを考えると、若者の教育機会の充実こそ今やらなければならない日本の課題の1つのようにも思われる。
私が通った大学にも、将来ミュージカル女優などを目指す友人がいたし、ダンスがうまい黒人の友人は、現在もダンスを勉強しつつ、音楽等のエンターテイメント産業で働いている。
教育水準が良く問題となり、数学や理科のレベルが上がったとか下がったとかいうニュースは耳にする。しかし、それが本当に若者の教育レベルの評価基準として妥当なのか、すべてを把握できているのかは疑問である。
もしかすると、そうした多様性を勘案すれば、日本の大学生と欧米の大学生を比べると、歴然とした差が既にあるのかもしれない。
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