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05/28/2009

本当のクエッションタイムは・・・

連日、エンターテイメント系の話題が多いので、少し真面目な話題を取り上げたい。

党首討論(Question Time)についてである。日本人とディベートという大きなテーマにもつながる問題になるかもしれない。

このクエッション・タイム、イギリスのPrime Minister's Question Timeと言われる下院(House of Commons)が毎週水曜日に行うものを日本が1996年に真似して取り入れたものである。

どれだけの人がしっかり最初から最後まで見ているかはわからないが、よっぽど政治が好きな人か、暇な人でない限り、これを生で最初から最後まで見る人はいないだろう。

しかし、イギリスではかなりの視聴者がいるし、私もかつて、ブレア首相のクエッション・タイムを見るのに、並んだことがあるが平日であるにもかかわらず、かなりの列ができていたことを思い出す。

では、なぜ日本の党首討論が定着せず、面白みに欠けるのか。

答えは簡単である。日本の政治家はディベートの本質がわかっていないからである。彼らはヤジを飛ばすのは一人前だが、勝つか負けるかというディベートに全く慣れていないのである。

また、日本では党首討論と名付けられて、党対党のやり合いで、党利党略というイメージが強いが、イギリスの本来のクエッションタイムは、議長に発言を許されたあらゆる議員がその時間の間に、首相にランダムに質問をぶつけ、それに首相が臨機応変に答えていくという性格のものである。

もちろん、野党の第1党党首には、6つの質問が無条件に許され、最初に質問するという伝統が続いており、また、第2党党首も2つの質問が無条件に許されており、その意味において政党色は強く出ているが、イギリスのクエッション・タイムの本質は、首相があらゆる質問に答えるという政府の国民に対する説明責任の原理に基づいて行われるものである。

これに対し、日本の「党首討論」は、何のために行うかという本質が定まっておらず、また、内容も非常に希薄である。

そこで、いくつかイギリスの過去の有名な政治家のクエッションタイムの映像を紹介してみたい。

まず、マーガレット・サッチャー元首相の映像である。

サッチャー元首相は、ポンドからユーロへの参加をすべき、EU議会の創設に参加をという当時の野党労働党の質問に対し、気丈かつ強い口調で、「NO,NO,NO」と答え、いかにポンドを廃止することがイギリス経済に良くないかを力説している。

英語が苦手な人でも、彼女の発言の雰囲気をつかむことはできると思うのだが、ディベートはまさに戦いなのである。彼女の攻撃的な鋭い口調は、まさに「鉄の女」という感じであるが、ディベートにはこのような攻撃性が必要なのである。

次に、メイジャー元首相とやり合う若き日のトニーブレア前首相(当時影の内閣の首相)の映像を紹介する。

当時の野党労働党内で50人近い議員がブレア氏に反対の立場を示しており、党内がばらばらではないかというメイジャー元首相の攻撃に対し、ブレア前首相は、以下のように答え、メイジャー元首相をやりこめた。

「議長、まず(私とメイジャー首相との間には)大きな違いがあります。大きな違いです。私は私の政党をリード(導いています)しています。しかし、メイジャー首相は自分の政党に従っているだけです。」

「本当に驚きではありませんか?我々の国の首相は、自分の政党がどの立場を取っているのかすら応えられないのです。(彼のリーダーシップは)弱すぎです。弱いのです。弱すぎるのです」

ブレア前首相も強い攻撃の姿勢を全面に出し、かつ、メイジャー元首相のリーダーシップのなさをユーモアを交え、巧に賢くやり込めるあたりは、サッチャー元首相以上に高度のディベート能力を持っており、国民へのメッセージ性が強く現れている。

こういう力強くかつウィットに富んでいる野党のリーダーなら、国民も安心して任せようと思えるのではないだろうか。

次に、紹介するのは、野党保守党のキャメロン党首がブレア前首相に健康保険の問題について質問したものである。

「医療・健康保険のサービスの質が悪くなり、不安を抱いている国民がたくさんいる中、医療・保険担当の政府高官は、質の低下を認めているがこれは政府の見解か?」というキャメロン党首の質問に対し、ブレア首相は「正しい政府の医療健康問題に対する認識を説明させてもらう。」と言い、政府の実績を紹介した後、「ある人が現在の医療サービスの状況を(私が就任した当時の)1997年の水準と比べれば、向上したと言わざるを得ないと発言した。それは、あなたの党の影の厚生大臣のスポークスマンです。」とやり返している。

日本のように回答の原稿を官僚任せにするのではなく、このディベートに対する準備を主体的にかなりした上で臨んでいることが明らかだろう。

また、ブレア前首相のディベートが上手いのは、キャメロン野党党首の激しい攻撃に対し、自分の政府の実績と野党の政策を持ち出して、ひるまずに攻撃を続けるところであろう。さらに、キャメロン氏も自分の党の政策を時間を無駄にして説明しようとするのではなく、政府の政策実績を徹底的に攻撃し続けており、かなり有効な議論をしていると考える。

なお、途中で、議長が積極的に討論に介入し、議場の秩序維持とクエッションタイムの本質である政府の説明責任にかかわる質問のみを取り上げ、指揮権を発動しているのは、日本のお飾り的な議長の在り方とは全然違う。

最後に紹介するのは、BBCが制作したブレア氏の発言で振り返る彼の政治の歴史である。私はブレア前首相が、現代の政治家でもっとも優れたリーダーだと思っている。

その理由は、また別の機会に紹介できればと思うが、彼の発言の多くは、オバマ大統領のような作られたスピーチをただ読み上げているわけではない。

御存じの方もいるだろうが、オバマ大統領はほとんどの記者会見で、スクリプターを使っており、ほとんどすべてのスピーチが彼のスタッフによって事前に作られたものである。

これに対し、ブレア前首相は常に自分の言葉で、国民に訴えかける姿勢を持っていた。彼の晩年の政治実績については、意見が分かれるところだろうが、こうして彼の政治実績を5分間で振り返ると、イギリスには素晴らしい政治家が多く、恵まれた国だと思う。

私は、上記にもあるように、イギリスに住んでいたころ、イギリス政治にかかわる機会があったので、クエッションタイムはもちろん、ある政党の会議にも参加させてもらったことがある。その時のブレア首相の演説は忘れられないほどインパクトの強いものだった。

以下の記事を見ても明らかだと思うが、日本の党首討論は「政府に対する説明責任を履行させる場」という本来の目的が忘れさられている。

麻生首相は、とにかく野党を批判するだけで、説明責任を果たす試みすらしていない。記事にある北朝鮮の問題についても、なぜ、事前に得た情報を公開しなかったのかという理由を丁寧に国民に説明する場なのに、それをしているとは全くもって言えない。

さらに、自分の説明責任を果たすという使命を忘れ去り、野党の党内人事を問題にしているのである。こんなことを本場イギリスのクエッションタイムで行えば、ヤジだけではなく、議長から注意され、政府の仕事に関係のない質問はするなと言われてしまう。

現に、3つ目の動画では、保守党のキャメロン党首が「次期労働党の党首として、ブラウン氏を推薦するのか?」という質問をしたところ、下院議長に、「この制度趣旨は政府の仕事についての説明責任を果たす場であり、政党の次期リーダーが誰かを議論すべきところではない」と質問を変えるように指揮権が発動されている。そして、キャメロン党首も「では、次の首相は誰になると思うか?」と質問を変えている。

マスコミも、この党首討論がどういう目的で行われているのか全くもって説明不足である。

制度が導入され10年経つが政治家の誰一人、また、どのマスコミも、制度の目的を忘れ去ってしまって、上っ面だけの形だけのパフォーマンスになり下がっているのは残念でならない。

ヤフーの意識調査では、ヤジを禁止すべきという意見が現在多いようだが、全くもって的外れな見解としか言いようがない。

上記の動画を見れば明らかだが、イギリスでもヤジはとにかく多く飛んでいる。私もヤジは嫌いだが、有益な議論ができるかどうかとヤジは正直関係ない。

このクエッションタイムという制度を活かせるかどうかは、政治家の能力の問題、つまり、制度趣旨を理解していない者が行っているクエッションタイムだから、揚げ足取りのかみ合わない議論で終わってしまうわけである。

野次がどうのこうのという薄っぺらい事は問題の本質ではない。国民を含め制度を理解していない無知が問題の本質である。以下の読売新聞の記事にある批判も制度趣旨を理解した上での批判かは疑問である。

もう一度、この制度が何のためにあるのか、また、イギリスの制度のように説明責任の原理に基づくものであるのかどうかのかを、国民全体が検証し直すべきであろう。

そして、有意義なものにするためには、究極的なことを言えば、賢い政治家を有権者が選ぶ以外に方法はないし、有権者が賢くならなければ、それも無理であろう。

麻生首相と鳩山代表が初の党首討論、政権交代巡り応酬
5月27日15時32分配信 読売新聞

 麻生首相と鳩山民主党代表による初めての党首討論が27日、国会で行われた。

 麻生首相は「政権交代は手段であって目的ではない」と民主党の姿勢を批判したのに対し、鳩山氏は「当然政権交代が目的ではない。スタートラインだ」と反論した。

 また、北朝鮮の核実験に関し、鳩山氏が「米国から事前通告があったのか」と追及したのに対し、首相は「米国からかなり早めに伝わっていたのは事実だ」としながらも、「この種の話はしないことになっている」とかわした。

 首相は、違法献金事件を巡り代表を辞任した小沢一郎・前代表が代表代行に就任したことについて、「それが責任の取り方なのか。国民目線から理解し難い」と批判。民主党が企業・団体献金の3年後の全廃を打ち出していることについては、「(小沢氏の)秘書の違反が契機なのに、論理のすり替えだ」と指摘した。

 これに対し、鳩山氏は、「聞き捨てならない。これから裁判で決着がつく話だ。(政治とカネを巡る事件・疑惑は)そちらにもたくさんいた」と強く反論した。

 党首討論の開催は、首相と小沢氏が昨年11月に行って以来。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090527-00000652-yom-pol

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