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May 2009

05/31/2009

Britain's Got Talentの優勝者は・・・

The Diversityというダンスグループです。

Diversityの優勝した演技はこちらで確認できます。

http://talent.itv.com/videos/video/item_200288.htm

残念ながら、スーザン・ボイル(Susan Boyle)さんは準優勝でした。

以下、結果発表の場面です(Youtubeより)。

ブレイクダンスがイギリスの若者受けしたのでしょうか。

これをエリザベス女王が見るのですから、イギリスというのはある意味革新的です。

準優勝に終わりましたが、ボイルさんの大勢の観衆の前でプロの歌手として歌いたいという夢はかなうことになるでしょう。いつか来日してくれる日が来るのが楽しみです。

決勝戦のダイジェストは以下の動画で確認できます。

敗因ですが、おそらく、ボイルさんを含め、多くのパフォーマーが決勝では、予選での演技を再度披露するというものが多く、これに対し、一般視聴者は決勝では新しい演技を見たかったのではないでしょうか。

Diversityというグループの演技は、予選、準決勝よりも軽快なダンスだったため、視聴者のSurprise的な要素への期待と合致したとも言えそうです。

他方、ボイルさんについては、視聴者の多くがどんな歌を歌うのかとかなり新しい彼女の歌を聞きたいという欲求があったと思います。イギリスでは彼女の予選の歌は何度も放送されているので、目新しい演技でなく、視聴者が彼女のこの歌に聞き慣れてしまったのではないでしょうか。にもかかわらず、すでに聞いた曲を再度歌ったので、彼女に対する過剰な期待のせいで、「期待はずれ」という気持になった人も多かったのでしょう。これが票が伸び悩んだ理由ではないかと思います。

他の原因として、AP通信の電子版は、多くのボイルさん支持者がボイルさんが優勝するだろうと思って実際に投票しなかったことが影響したとみているようです。

よく選挙戦であることですが、事前に注目を集め、勝利を確信している候補の支持者が、自分が投票しなくても勝つだろうと思って投票しないでいると、負けてしまうという現象で、これが今回、ボイルさんの決勝戦でも生じたという分析です。

いずれにしても、世界中の注目はボイルさんに集まっており、ITVの公式サイトのサーバーが一時クラッシュするほどでした。そして、公式サイトのコメント投稿欄は、ボイルさんが優勝を逃したことに落胆するコメントが多く掲載されています。おそらく、特に人気となっており、電話投票がイギリス国内に限られているため、投票ができなかったアメリカのファンの投稿も多いのではないでしょうか。

アメリカ人と思われる人のコメントの多くは、

「アメリカに来れば彼女は絶対優勝だ。」、

「あんなダンスグループはアメリカに沢山いる。優勝には値しない」、

「ニューヨークの地下鉄でもっと良いダンスを踊れる。」、

「イギリスのダンスに対するレベルは低すぎる。」

などと厳しいものも多く寄せられています。同じ英語圏でも、文化の違いがあることが如実にわかります。やはりポップダンスの本場アメリカの目は肥えているということなのかもしれません。

司会者のAnt and Decも番組後のインタビューで話していましたが、予選の動画が世界中の注目を集め、普通のおばさんがこの7週間、メディアに追い回されるという誰もかつて経験したことのないようなプレッシャーを経験したわけですから、結果は優勝できませんでしたが、その事実だけに注目するのではなく、決勝まで歌い上げた彼女の精神力の強さも評価すべきだと思います。

上位3人(グループ)が発表される際、緊張のせいか視聴者に手を振る余裕すらなかったボイルさんですが、優勝を逃した直後のインタビューでは、「最も勝つべきグループが勝ったと心の底から思う。今後はアルバムを出せたら嬉しいわ。」とにこやかに語っています。

今後、彼女が歌のレパートリーを増やし、ポール・ポッツさんのような活躍をしてくれることを期待したいですね。

彼女の夢はこれからでしょう。She Will Dream Another Dream Around The Worldといったところでしょうか。番組も終了したことで、彼女をイギリスに繋ぎ止める契約も終了しました。今後は、アメリカで、彼女の夢が達成されると思います。

ところで、YoutubeのITV公式チャンネル(イギリスの視聴者は視聴できない)の動画再生回数は、ボイルさんの方が優勝者のThe Diversityより、倍の数で勝利しています。やはり同じ曲でも世界の注目は、ボイルさんにあるようです。

他方、イギリスのYoutubeユーザーも視聴可能な非公式チャンネルの方はDiversityの動画再生回数が多く、文化の違い、関心の違いを示しているかもしれません。

下のものは、公式チャンネルのボイルさんの決勝戦の動画です。

さらに、下の動画は、Youtube上にあるレ・ミゼラブル10周年記念コンサートのプロによる「I Dreamed A Dream」です。ボイルさんの歌と聴き比べるのも良いかもしれません。

日本でも結果が報じられ始めました。

「夢やぶれて」も大人気=48歳英歌姫ボイルさん、惜しくも2位
5月31日7時21分配信 時事通信

 【ロンドン30日時事】英オーディション番組で美声を披露し、インターネットを通じて一躍世界的な人気者になったスーザン・ボイルさん(48)が30日、同番組の決勝に登場し、視聴者投票で惜しくも2位となった。優勝は、テンポ良く息の合った演技を披露した10人組のダンスグループが手にした。
 ボイルさんはこの日、4月の初登場時に歌った歌劇レ・ミゼラブルの名曲「夢やぶれて」を再度選択。張りのある伸びやかな高音で歌い上げると、会場はスタンディングオベーションで称賛した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090531-00000007-jij-int

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いよいよBGTの優勝者が決まります!(生放送のインターネットチャンネルあり)

ボイルさんは、予選で歌ったLes Miserablesの「I dreamed a dream」を歌いあげました。審査員のピアーズ氏を、彼女が優勝すべきとまで言わしめました。公式チャンネルの動画がアップされ次第掲載します。

かなりのプレッシャーの報道がありましたが、見事にはねのけて、得意の歌を素晴らしい声量で歌っていました。

ボイルさんの決勝戦の公式サイトの動画です。

http://talent.itv.com/videos/video/item_200287.htm

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接続の良い生放送チャンネルがあったので追加します。

http://www.justin.tv/smoggychris

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スーザン・ボイルさんの決勝戦直前ということもあり、このブログへのアクセス数も急増している。

公式サイトによれば、番組は、ロンドン時間の30日18時45分に放送が開始される。よって、日本との時差が現在8時間なので、日本時間の31日午前2時45分に放送が開始されるようである。

そして、結果の発表は、現地時間の21時と予定されているので、日本時間の午前5時頃には結果が出てるだろう。ITVによれば、放送直後に結果をネット上に公開する予定ということなので、待ちきれない人は、以下のITV公式ページを上記時間帯あたりにチェックしてみると良いだろう。

公式サイトの動画掲載ページはこちら

http://talent.itv.com/videos.htm

また、Daily Contributorというメディアの電子版によると、以下の「Justin.TV」という動画サイトでも生放送がみれるらしい。確かに、現在もITVの番組、「Britain's Got More Talent」という舞台裏を紹介する番組が生放送中である。

http://www.justin.tv/dragonblades_big_brother

または、以下の記事の下にあるJustin.TVの動画をクリックすると生放送が流れてくる。

http://dailycontributor.com/britains-got-talent-2009-finals-live-video-stream/5244/

ところで、事前のメディアの予想では、ボイルさんが圧倒的な支持を受けているという。

大衆紙ミラーが行った直前の世論調査によると、全体の過半数以上がボイルさんに投票し、次点のサックスフォン奏者のジュリアン・スミス(Julian Smith)氏に5倍近い大差をつけている。

第三位はブレイクダンスを披露した11歳のエイダン・スミス(Aidan Smith)君、僅差で追うのが、ダンスグループのダイバシティー(Diversity)。

5位は、裸ダンスの親子、Stavros Flatley、6位がシャヒーン・ジャファゴーリー(Shaheen Jarfargholi)君、7位が、ホーリー・スティール(Hollie Steel)ちゃん、8位がショーン・スミス(Shaun Smith)君、9位がダンスグループFlawless、10位が孫と祖父が歌う2Grandとなっている。.

ただ、これはあくまでのミラー紙が行った読者(約1000人)への世論調査の結果に過ぎない。

女王の前でパフォーマンスができる栄光をつかむのがだれになるのか、そして、ボイルさんが嫌がらせやプレッシャーを克服して彼女らしいパフォーマンスを見せてくれるのか、とても楽しみである。

ただ、週末といっても時間が時間なだけにリアルタイムで、番組HPを監視してこのブログで更新するわけには行かないので、ぜひ興味のある人は公式サイトで確認してほしい。

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05/30/2009

Britain's Got Talent準決勝戦最終日(5日目)はアクシデント発生も

スーザンボイルさんの決勝辞退の恐れが報じられる一方、イギリスの人気オーディション番組「Britain's Got Talent」の準決勝戦も最終日5日目を迎えた。

決勝戦の結果と出場者のダイジェストはITV公式ホームページで確認できる、

公式HPの結果とダイジェスト

http://talent.itv.com/videos/video/item_200279.htm

5日目は子供と変わったパフォーマンスが多かった。

まず、子供のパフォーマーとして、11歳のエイダン・デービス(Aidan Davis)君のダンスと10歳のホーリー・スティール(Hollie Steel)ちゃんが歌うエーデル・ワイスである。

変わったパフォーマーとして、3人中年おやじが踊るダンスや、男性ソプラノ歌手などである。

番組の制作側が決勝に出したいと思う人と、一般聴衆に受ける人にはかなりギャップも生じてきているようである。このホーリーちゃんは、医者の誤診の結果、命の危険がある肺炎にかかり、そこから回復して、オーディション番組に出て歌を披露できるようになったという美しい背景話があり、番組側も決勝に出したいという意図が読み取れるのだが、一般視聴者の投票では一位通過はできていない。

また、決勝進出者が歌とポップダンスが続いていることについての批判も増えている。つまり、他のオーディション番組でやれば良いということらしい。

この人気番組も現在はスーザン・ボイルさんの人気により支えられているが、歌とポップダンスという偏りを何とかしなければ、来シーズン以降は視聴率が激減するかもしれない。

また、子供のパフォーマーを気遣うあまり、ジャッジが甘くなりすぎているという批判も散見される。今回このホーリーちゃんは、一回目の歌の最中に歌詞を忘れてしまい泣き出してしまうという事態が生じた。番組は生放送で、放送時間の限りがあるため、本来再度のパフォーマンスを演じたいというホーリーちゃんの要望は認められないのであるが、泣く子には勝てないということなのか、結局、再演技を認めている。

この措置に、イギリスの視聴者の多くはかなり批判的で、公平を徹底して、現実の厳しさを知るべきという意見がYoutubeや公式ホームページなどに寄せられている。

中にはかなり過激な意見もある。

「彼女の行為はこの番組の公平さをぶち壊し、番組を台無しにした」、

「こんなことで泣き崩れるような子が決勝戦にいくべきではない」、

「ボイルさんが仮に失敗しても、こんな措置はしないはずだ。甘すぎる」、

「この番組は今夜の措置で多くのファンを失った」、

「子供の教育上泣けば特別扱いされると勘違いされて良くない。彼女は若いし、来年再度出場すれば良いだけのこと」

などの強い批判が寄せられている。

こうした批判に番組関係者も、無視はできず、公式サイトのコメント欄に「御批判も含めコメント有難うございます。もっとも、出演者を尊重し、誹謗中傷は止めてください。」と書きこむに至っている。

一部で、「彼女はまだ子供なんだから」と番組の対応を擁護する声もあるが、公平性という重要な価値を揺るがしただけに、公式サイトのコメントの大勢はホーリーちゃんと番組の対応に批判的である。

また、Youtube上では、「なんて性格の悪い女だ(What a little whiny bitch)」などという罵りのような誹謗中傷の攻撃もされている。

日本のマスコミと違い、批判的意見もしっかりホームページや公式チャンネルに掲載しているあたりは、言論の自由の本質である思想の自由市場をより体現している英国ならではと思う。

この番組の過去の放送でも、審査員は厳しい態度をこうしたプレッシャーに負けたパフォーマーに対して見せてきた。それと矛盾した審査員の態度にも批判が集中している。

番組が愛されるからこそこういう真剣な批判をうけるのであろう。

ホーリーちゃんは決勝に進んだものの、10歳ながらにして、厳しい公衆の批判を受けることは避けられそうにない。再チャレンジの代償はかなり大きかったといえそうである。

さて、番組のゲストとして、ポール・ポッツ氏が登場しその歌声を披露している。公式サイト等では見れないので、番組に黙認されているYoutubeの動画アドレスを紹介する。

http://www.youtube.com/watch?v=xaLTPUdrYdc

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05/29/2009

スーザンボイル(Susan Boyle)さんが決勝戦出場見合わせのおそれ

追記(2009年5月30日):

BBCの電子版は、ホテルでのボイルさんを追い回した二人組の男については、タブロイド紙の記者であると断定して報じている。また、連日のメディアのひどい扱いから、精神的に参っていたため、現在は親友の家に移り、決勝に向けて落ち着きを取り戻そうしているという。

また、ミラー紙の報道によれば、友人の話しとして、有名になったボイルさんの家に卵を投げつけた若者がおり、そういった嫌がらせに対するストレスが溜まりにたまって爆発したのではないかという見解を紹介している。

さらに、ボイルさんの話が世界に報道されたことを受け、ボイルさん人気の火付け役となったアメリカの女優デミムーアさんやボイルさんが憧れているミュージカル女優のエレイン・ペイジさんが、以下のようなコメントを寄せているとイギリスの大衆紙ミラーが「夢をあきらめるな、スー(Don't Give Up On Your Dream, Sue)」と題した記事で報じている。

デミ・ムーアさんのコメント

テレビ番組での結果がどうであれ、世界中があなたを応援しているわ。何も失うものはないのよ。あなたのもっている輝きを皆に共有させ続けて。

"The whole world is rooting for you whatever the outcome. You have nothing to lose - just keep sharing your light."

エレイン・ペイジさんのコメント

(明日の)あなたのパフォーマンスの成功を神に祈りながら見ています。

"I'll be watching with my fingers crossed for you."

ちなみに、ミラー紙はピアーズ・モーガン氏が編集員を務めた大衆紙サンをやめた直後に、ピアーズ氏のコラムを掲載するなど今回ボイルさんの奇怪な行動(罵り言葉)を報道したサン紙とはライバル関係にある。

いつもは有名人のゴシップを喜んで報じるミラー紙が、今回ボイルさんを擁護する記事を書いているのは、そうしたライバル関係の反映もあるのかもしれない。

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ボストン・グローブ紙の電子版掲載のAP通信配信のニュースによれば、審査員のピアーズ・モーガン氏が現地時間の5月27日水曜日に明らかにした情報として、ボイルさんが「Britian's Got Talent」の決勝戦への出演を辞退可能性があると伝えている。

一躍注目を集めたボイルさんであるが、報道が過熱化し、パパラッチなど始終注目の対象になってしまっているため、決勝戦に向けた精神状態の安定を図ることができない状況にあるという。

AP通信によれば、二人のジャーナリストを名乗る男が、ボイルさんをホテル内で追いまわしたという。2人の男は警察により連れ出されたが、ボイルさんはかなりショックを受けた状態にあると番組のスポークスマンが伝えている。

また、大衆タブロイド紙、サンの報道によれば、ボイルさんはかなり興奮した状態で、二人の男に対し、罵り言葉(F-Word)を叫んでおり、現場にいた警察がボイルさんを誘導し、落ち着かせる事態にまで至ったと報じている。

さらに、一部のメディア(上記タブロイド紙サンなど)では、準決勝戦3日目に決勝進出が決まったライバルのシャヒーン君をピアーズ氏が絶賛しているシーンをホテルのバーで見て、テレビの画面に向かって罵り言葉を使ったとの情報も報じられており、精神的にボイルさんが追い詰められているとイギリスの各紙メディアが伝えている。

ただ、この情報については、イギリスのテレグラフ紙の電子版が、このような事実はなかったという報道もしており、信憑性は疑わしい。おそらく、上記2人の侵入者に対して興奮した状態だったという事件と情報が錯綜してねつ造されたのかもしれない。

テレグラフ紙によれば、番組のスポークスマンの話として、「当時ボイルさんはバーにいなかったので、そのような事件が起こりえない。一緒にいた友人の話によれば、ホテル内を移動中に、嫌がらせ(挑発行為)を受けたのは事実である。」と伝えている。

なお、テレグラフ紙の別の記事は、事件の概要について、二人組のジャーナリストがボイルさんに挑発的な言動をし、それに興奮したボイルさんの様子に気がついた警察官が、ジャーナリストをホテルの外に追い出した後に、事情を聴かれているボイルさんとその妹の写真を大衆タブロイド紙サンの記者が撮影したという。

Boyle_and_cop

また、記事は、ピアーズ・モーガン氏の発言として、「スーザンはこの1週間大変なプレッシャーに耐えてきた。彼女はおびえた兎のような状態だった。突然田舎で暮らしていたスーザンが世界中の注目を浴びたのだから、そのプレッシャーは計り知れない。何度も泣いて精神を保つのがやっとである。そして、ホテルの事件についても、着色されて面白おかしく報じられている。私はこうしたタブロイドの業界に20年以上いるので慣れているが、彼女は初めて経験することで大変な苦痛であろう」との話を紹介し、仮に精神が不安定のまま、健康状態に問題が生じれば、ボイルさんが決勝戦への見合わせもありうると、ピアーズ・モーガン氏が語った報じている。

同時に、記事は、ピアーズ・モーガン氏は、「あなたが突然有名になったから、足をひっぱたり、嫌がらせをしたいという人もいるかもしれない。でも、今スーザンがすべきことは、土曜日のパフォーマンスに集中すべきことだ。」とラジオ番組で、ボイルさんに語りかけるように話していたと報じている。

これらのことからわかることはただ一つであろう。いかに、彼女の才能に便乗しようという質の低いマスメディアを多いかということである。これは日本のメディアもそうだが、彼女が人気になる本質を分析して報道するのではなく、とにかく面白おかしく報道して、無知な人間の関心と購買意欲を刺激したいというタブロイド的姿勢の現れであろう。

このサン紙の電子版にある風刺絵なんか記者およびタブロイド紙の質の低さを如実に現わす、低レベルなものであると感じざるを得ない。

いずれにしても、こうした雑音により、ボイルさんが本来の力を発揮できずにいるとすれば、パパラッチを含め、ボイルさんに嫌がらせをした人物は、世界中の彼女のパフォーマンスに期待する人間に対する背信行為ではなかろうか。

こういう人気者へのプライバシー侵害行為について、よくメディア関係者は、有名税だとかいう馬鹿げた発言をすることがある。

確かに、有名になればプライバシーが侵されやすくなるが、それはプライバシーが無くなったり、犯してもよいという帰結にはつながらない。有名人でもプライバシーは尊重すべきだし、侵害行為は有名であろうとなかろうと侵害行為として違法だという認識を持たなければならない。

ボイルさんが、ロンドン時間の30日土曜日午後20時30分頃(日本時間の31日午前4時30分頃)からスタートする番組で、自分の持てる力を発揮して、世界中の期待にこたえられるパフォーマンスができることを切に願うところである。

ところで、タブロイド紙という言葉を耳にすると、私のフランスにいる友人がかつて、「日本で電車の中でタブロイド紙を読む「おやじ」がきもい」と発言していたことを思い出す。その友人によれば、海外の「おやじ」の多くはタブロイド紙でなく、高級紙を読んでいるので、そういうおじさんの方が好感が持てるというのである。理由は、タブロイド紙はエロい記事が書かれており、それを公共の面前で女性がいるにも関わらず、開けっぴろげに読んでいる無関心さに腹が立つという。なるほど、その意見ももっともだと思ったのを思い出す。

日本でも、ロイターが伝えている。ただ、私の記事の方が情報量が多いと思うが・・・笑(自己満足です)。

48歳の歌姫、決勝前の緊張で帰り支度も=番組審査員

5月29日14時13分配信 ロイター

 [ニューヨーク 28日 ロイター] 英国の素人オーディション番組「Britain's Got Talent」に出演し、世界的に話題となったスーザン・ボイルさん(48)が今週、極度のプレッシャーの中で、決勝への出場を断念する行動を示していたことが明らかになった。
 同番組の審査員ピアーズ・モーガン氏は、28日に放送された米CBSテレビの番組「Inside Edition」で、「(ボイルさんは)涙を流すことが何度もあった」と話し、27日には「荷物をまとめていた」と明かした。
 また、同氏によると、「ロンドンのホテルで客をののしった」という英タブロイド紙の報道を、否定しているという。
 モーガン氏はボイルさんに、新聞やテレビを見ずに、決勝に気持ちを集中させるようアドバイスし「ほとんどの人は(ボイルさんに)好感を持っていて、優勝することを心から願っている」と励ましているという。
 ボイルさんが同番組で初めて歌声を披露して以来、動画共有サイト「ユーチューブ」 での彼女の動画視聴回数は6000万回以上に上り、世界中のテレビクルーがスコットランドの自宅周辺で泊り込みの取材をしていた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090529-00000868-reu-ent

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Britain's got Talent、準決勝4日目

さて、「Britain's Got Talent」の準決勝も、後半になってきた。4日目も状況は以下のようになっている。

4日目のダイジェスト

http://talent.itv.com/videos/video/item_200267.htm

4日目も色々なパフォーマーが登場した。

激しいブレイクダンスを踊る72歳のお爺さんや、体格の良い体の柔らかいストリッパーのおばちゃん、謙抑的なサックスフォンのアマチュア奏者、12歳の孫とデュエットを歌う76歳の元女王陛下の近衛騎兵隊員だったお爺さんなど様々な一般人パフォーマーが登場している。

とくに私が気に入ったのは、12歳の孫、サリー(Sallie)さんとデュエットを歌う76歳のお爺さん、ジョン(John)さんのパフォーマンスである。

審査員のピアーズ氏も言っているが、この番組がファミリー向けのゴールデンタイムの番組であることを考えると、こういった異色のデュエットは視聴者に安心感を与え、何か温かい気持ちにさせてくれる。

このデュエットは、「2 Grand」というグループ名をつけている。英語で孫娘と祖父を意味するGranddaughter、GrandfatherのGrandを取って付けた名前である。2008年にJohnさんの妻(享年54歳)が他界したのだが、生前この二人に音楽の楽しさを教えていたのが、その妻だったという。彼の妻(サリーさんのお婆さん)は、地元の歌手で、劇場関係の仕事にも携わっていたため、音楽が身近なもので、二人が本気で音楽を人前で披露しようという決意をする上で、多大な影響を与えたとジョンさんは話している。

予選では、ディズニー映画「アラジン」の「A Whole New World」を歌い、聴衆から大きな声援を受けた。予選では、審査員のサイモン・コーウェル氏は合格の判定をださなかったが、特別審査員の女優ケリー・ブルック(Kelly Brook)氏、アマンダ・ホールデン氏、ピアーズ・モーガン氏の三人から合格の判定をもらい、予選を通過した。

確かに、お爺さんの方は歌の技術という点では、そこまで凄いとはいえないかもしれない。しかし、孫と二人でポップソングを歌う姿、そして彼らの裏にあるストーリを聞くと、イギリスの良き家庭のイメージそのもので、一般参加者によるパフォーマンスを披露するバラエティー番組というコンセプトにまさに合致し、聴衆に魔法をかけたようにうっとりさせてくれる(Charm)パフォーマンスではなかろうか。

また、ジョンさんの人柄も視聴者が気に入ってしまう理由かもしれない。彼は長くイギリス王室の近衛騎兵隊として、仕えていたこともあり、保守的な伝統ある人間である一方、孫娘と現代の音楽を懸命に歌い、かつ、他界した妻の写真を肌身離さずもっており、天国にいる妻のことを想っているという自然な姿が共感を得るのだと思われる。

そして、サリーさんは12歳にしては、素晴らしい声量を持っているし、また、思春期で、周りから祖父と歌うことを笑われたりしているというにもかかわらず、祖父のことが好きで何を周りに言われても歌い続けたいという彼女の育ちの良さにも共感が持てる。

予選のときの映像、準決勝の映像は以下のITV公式サイトで確認できる(残念ながらYoutubeの公式チャンネルの方にはアップされていないようである)。

特に、予選の時に失格の判定を出した、サイモン・コーウェル氏が準決勝ではどう判断したのか見るのも面白いだろう。

予選の映像

http://talent.itv.com/videos/video/item_200186.htm

準決勝の映像

http://talent.itv.com/videos/video/item_200264.htm

その他のパフォーマーを含めた4日目の結果は以下の通り。

それにしても、ふざけたコメディー番組をやっている司会者のAnt and Decが完全に真面目な司会者に代わり、一般参加者をメインにして司会をするあたりは、常にふざけて自分の笑を取ろうとする日本のコメディアンとは大きく違うと毎回思う。

これだけ臨機応変だからこそ、イギリスでテレビ出演料が一番高い有名人になるのであろう。

また、準決勝四日目には、昨年の優勝者で現在はロンドンのウエストエンドで活躍する、ジョージ・シャンプソン(George Sampson)氏がゲストとして登場し、映像と激しいアクロバッティクな動きを駆使したダンスを披露している。

http://www.youtube.com/watch?v=Sf19kjrakqU

なお、明日の準決勝5日目には特別ゲストとして、初代優勝者のポール・ポッツさんが登場し歌声を披露してくれるらしい。いよいよ、明日、最終8組の演技をもって、三代目のチャンピオンを決する決勝の舞台が整えられる。

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05/28/2009

アメリカのディベート(Presidential Debate)は・・・

昨日紹介したイギリスのクエッション・タイムの本当の姿に引き続き、今日は、アメリカ政治におけるディベートの在り方を紹介しようと思います。

直近のアメリカ大統領選挙でもディベートは非常に大きな役割を果たした。とくに、オバマ大統領とヒラリークリントン国務長官のサウスカロライナ州でのCNN主催のディベートが考察に値する。

もちろん、両者ともに、日本の政治家に比べれば、ディベート能力は高いし、かなりの訓練をして、臨んでいる。

その中でも、ヒラリー氏のディベート能力は極めて高いと言えるだろう。まず、彼女は冷静さと攻撃性を、ディベートの目的に合わせて、非常に巧に使い分けている。

まず、この時期のディベートは、ヒラリー氏にとって、民主党党大会で選ばれるための戦いである。そこで、ヒラリー氏は、ライバル共和党の政策にも擦り寄るような政治家で、信頼できないというイメージを受け付けるため、オバマ大統領の過去の投票行動の矛盾と一貫性のなさを具体的例を出して攻撃している。

ただ、攻撃の中にも、冷静さがあります。一見すると、お互い熱くなって言い合っているだけのように聞こえるかもしれませんが、ヒラリー氏は、『無駄な声』をだしていない。

例えば、オバマ氏が「ロナルド・レーガン大統領について話しましょう。」と思わず言ってしまったことに対し、ヒラリー氏はすかさず、「私はレーガン大統領について何も言っていない。レーガン大統領の話なんか何もしていないわ。」と攻撃をさらに深めている。

この間、オバマ氏は無駄な声をだし続けている。「あー、ヒラリー、あー」という感じである。これは、どちらを支持するか決めていない視聴者からすると、無駄な声を出している方が、慌てている、困っている、劣勢だというような印象を与えかねない。

オバマ氏のディベートにはこういう弱さがあるのだが、ヒラリー氏は攻撃されても、笑顔を見せながら、白熱してきたことについて、「やっと体が温かくなっってきたわね」とジョークすらいえる余裕がある。

また、オバマ氏が「あなたは共和党のレーガン大統領を私が賛辞したとメディアにいった」と応じたのに対し、ヒラリー氏は、「私はレーガン大統領とは一切言ってません。私はそこにいたのだから自分自身ことはわかります。でも、あなたはそこにいて聞いていたわけでないでしょ?」と終始余裕を見せながらディベートをしているのである。

私のアメリカ人の友人で、学生時代の全米ディベート大会で準優勝をした者も言っていたが、ディベート能力についていえば、ヒラリー氏やマケイン氏の方が数段オバマ氏に比べると上だという。それは、アメリカでの共通認識のようである。

日本では、掘り下げてディベート能力を考察するメディアはない。これは単にメディアに評価能力がないためである。また、昨日の党首討論に対する一般の評価を見ていると、日本の国民もその大半がディベートを経験したことが無いだろうし、何が良いディベートで何が悪いのか判断する能力も未だ乏しいと思ってしまう。

ディベートとは言論と言論の戦いである。攻撃をし、その攻撃に対し、さらに攻撃しながら自分の立場を防御していく。これがディベートの本質であり、攻撃されたことについて、はぐらかそうとしたり、防戦に回ってしまえば、負けなのである。

そして、攻撃といっても、ただ熱くなればいいわけではない。攻撃する最中もジョークを交えたり、笑顔を見せたり、慌てていると捉えるような言動をしないようにして余裕を見せなければ、勝利することはできないのである。

以上のような視点から、前回紹介したブレア前首相とヒラリー氏のディベートのスタイルは共通点がある。二人とも、ジョーク、笑顔を巧に利用して、冷静さと攻撃を使い分けている。

もちろん、今まで紹介した英米の政治家の大半は、ディベートの訓練をしたり、受けたりしている。法曹出身者が多いのもそういう能力が政治家には求められるからかもしれない。

でも、「じゃあ弁護士出身の人を政治家にすれば良い。橋下知事のように。」などと短絡的な結論に至らないでほしい。日本の弁護士にこうしたディベート能力があるかは非常に疑問である。裁判はもちろん、反対尋問などを通じて、弁護士が法廷で発言する場が多いが、今までは職業裁判官という、いわば、訴訟に慣れた法律のプロ相手に行っていたのであり、アメリカのように、刑事・民事ともに陪審員制度が採用されているところや、イギリスのように、法廷弁護士と事務弁護士と役割分担され、前者にディベート能力に近いものが求められるという制度でもない。

そして、書面でのやり取りが結局のところ多くなっている従来の弁護士にディベート能力が自然と培われていると考えるのは、間違いであろう。

では、日本にはそういう能力のある人がいないのか。

実際のところ、本当の意味でのディベートを理解している人が少ない以上、その能力がある人も少ないし、それを訓練する場も、普通の教育を受けていればないかもしれない。ただ、裁判員制度の導入により、今後検察官や弁護人の活動方法は大きく変わる。そうすると、今後そうした能力を持った法曹が誕生することは考えられるだろう。

また、現時点においても、これだけ国際交流が進んでいるのだから、民間人の中でも、海外との交渉を日々の業務にしている人などにはそういう能力が備わっているかもしれない。

さらに、そういう業務にかかわっていなくても、友人や同僚と議論し合ったり、議論する環境にある人、ディベートに興味がある人などはそういう能力を鍛えることができると思う。

ただ、日本の政治家にそうした人物はいないか、いても目立たないごく一部なのだろう。なぜなら、私はそういう政治家を未だみたことがないからである。

麻生VS鳩山…互いの非突く激論、でも双方「党首力」不安
5月28日2時33分配信 読売新聞

麻生首相と民主党の鳩山代表による初めての党首討論は、秋までにある衆院選を意識し、相手の非を突く激しい展開となった。しかし、経済危機や北朝鮮の核問題への対応などについて議論は深まらず、衆院選に向けて、ともに「党首力」に不安を残した。

 ◆感情的◆

 冒頭、鳩山氏は北朝鮮の核実験を取り上げ、事前に情報を得ていたのかと尋ねたが、首相は質問にすぐには答えず、こう指摘した。

 「どちらが首相にふさわしいか。どちらの政党が政権を担う力があるか。意見を戦わせるのは正しい」

 さらに、「民主党は何をしようとしているのか。社会保障や安全保障の問題で、極めて不安を抱かざるを得ない」とも語った。民主党の政権担当能力に疑問符を付ける狙いだ。

 鳩山氏は国家像に話題を移し、持論の「友愛社会」について「人の幸せを自分の幸せと思えるような世の中にしたい」と強調した。首相は「我々は百年に一度の経済危機に直面している。理念や抽象論でなく、現実にどう対応するかが重要だ」と攻撃。「政権交代は手段であって目的ではない」と畳みかけた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090528-00000182-yom-pol

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本当のクエッションタイムは・・・

連日、エンターテイメント系の話題が多いので、少し真面目な話題を取り上げたい。

党首討論(Question Time)についてである。日本人とディベートという大きなテーマにもつながる問題になるかもしれない。

このクエッション・タイム、イギリスのPrime Minister's Question Timeと言われる下院(House of Commons)が毎週水曜日に行うものを日本が1996年に真似して取り入れたものである。

どれだけの人がしっかり最初から最後まで見ているかはわからないが、よっぽど政治が好きな人か、暇な人でない限り、これを生で最初から最後まで見る人はいないだろう。

しかし、イギリスではかなりの視聴者がいるし、私もかつて、ブレア首相のクエッション・タイムを見るのに、並んだことがあるが平日であるにもかかわらず、かなりの列ができていたことを思い出す。

では、なぜ日本の党首討論が定着せず、面白みに欠けるのか。

答えは簡単である。日本の政治家はディベートの本質がわかっていないからである。彼らはヤジを飛ばすのは一人前だが、勝つか負けるかというディベートに全く慣れていないのである。

また、日本では党首討論と名付けられて、党対党のやり合いで、党利党略というイメージが強いが、イギリスの本来のクエッションタイムは、議長に発言を許されたあらゆる議員がその時間の間に、首相にランダムに質問をぶつけ、それに首相が臨機応変に答えていくという性格のものである。

もちろん、野党の第1党党首には、6つの質問が無条件に許され、最初に質問するという伝統が続いており、また、第2党党首も2つの質問が無条件に許されており、その意味において政党色は強く出ているが、イギリスのクエッション・タイムの本質は、首相があらゆる質問に答えるという政府の国民に対する説明責任の原理に基づいて行われるものである。

これに対し、日本の「党首討論」は、何のために行うかという本質が定まっておらず、また、内容も非常に希薄である。

そこで、いくつかイギリスの過去の有名な政治家のクエッションタイムの映像を紹介してみたい。

まず、マーガレット・サッチャー元首相の映像である。

サッチャー元首相は、ポンドからユーロへの参加をすべき、EU議会の創設に参加をという当時の野党労働党の質問に対し、気丈かつ強い口調で、「NO,NO,NO」と答え、いかにポンドを廃止することがイギリス経済に良くないかを力説している。

英語が苦手な人でも、彼女の発言の雰囲気をつかむことはできると思うのだが、ディベートはまさに戦いなのである。彼女の攻撃的な鋭い口調は、まさに「鉄の女」という感じであるが、ディベートにはこのような攻撃性が必要なのである。

次に、メイジャー元首相とやり合う若き日のトニーブレア前首相(当時影の内閣の首相)の映像を紹介する。

当時の野党労働党内で50人近い議員がブレア氏に反対の立場を示しており、党内がばらばらではないかというメイジャー元首相の攻撃に対し、ブレア前首相は、以下のように答え、メイジャー元首相をやりこめた。

「議長、まず(私とメイジャー首相との間には)大きな違いがあります。大きな違いです。私は私の政党をリード(導いています)しています。しかし、メイジャー首相は自分の政党に従っているだけです。」

「本当に驚きではありませんか?我々の国の首相は、自分の政党がどの立場を取っているのかすら応えられないのです。(彼のリーダーシップは)弱すぎです。弱いのです。弱すぎるのです」

ブレア前首相も強い攻撃の姿勢を全面に出し、かつ、メイジャー元首相のリーダーシップのなさをユーモアを交え、巧に賢くやり込めるあたりは、サッチャー元首相以上に高度のディベート能力を持っており、国民へのメッセージ性が強く現れている。

こういう力強くかつウィットに富んでいる野党のリーダーなら、国民も安心して任せようと思えるのではないだろうか。

次に、紹介するのは、野党保守党のキャメロン党首がブレア前首相に健康保険の問題について質問したものである。

「医療・健康保険のサービスの質が悪くなり、不安を抱いている国民がたくさんいる中、医療・保険担当の政府高官は、質の低下を認めているがこれは政府の見解か?」というキャメロン党首の質問に対し、ブレア首相は「正しい政府の医療健康問題に対する認識を説明させてもらう。」と言い、政府の実績を紹介した後、「ある人が現在の医療サービスの状況を(私が就任した当時の)1997年の水準と比べれば、向上したと言わざるを得ないと発言した。それは、あなたの党の影の厚生大臣のスポークスマンです。」とやり返している。

日本のように回答の原稿を官僚任せにするのではなく、このディベートに対する準備を主体的にかなりした上で臨んでいることが明らかだろう。

また、ブレア前首相のディベートが上手いのは、キャメロン野党党首の激しい攻撃に対し、自分の政府の実績と野党の政策を持ち出して、ひるまずに攻撃を続けるところであろう。さらに、キャメロン氏も自分の党の政策を時間を無駄にして説明しようとするのではなく、政府の政策実績を徹底的に攻撃し続けており、かなり有効な議論をしていると考える。

なお、途中で、議長が積極的に討論に介入し、議場の秩序維持とクエッションタイムの本質である政府の説明責任にかかわる質問のみを取り上げ、指揮権を発動しているのは、日本のお飾り的な議長の在り方とは全然違う。

最後に紹介するのは、BBCが制作したブレア氏の発言で振り返る彼の政治の歴史である。私はブレア前首相が、現代の政治家でもっとも優れたリーダーだと思っている。

その理由は、また別の機会に紹介できればと思うが、彼の発言の多くは、オバマ大統領のような作られたスピーチをただ読み上げているわけではない。

御存じの方もいるだろうが、オバマ大統領はほとんどの記者会見で、スクリプターを使っており、ほとんどすべてのスピーチが彼のスタッフによって事前に作られたものである。

これに対し、ブレア前首相は常に自分の言葉で、国民に訴えかける姿勢を持っていた。彼の晩年の政治実績については、意見が分かれるところだろうが、こうして彼の政治実績を5分間で振り返ると、イギリスには素晴らしい政治家が多く、恵まれた国だと思う。

私は、上記にもあるように、イギリスに住んでいたころ、イギリス政治にかかわる機会があったので、クエッションタイムはもちろん、ある政党の会議にも参加させてもらったことがある。その時のブレア首相の演説は忘れられないほどインパクトの強いものだった。

以下の記事を見ても明らかだと思うが、日本の党首討論は「政府に対する説明責任を履行させる場」という本来の目的が忘れさられている。

麻生首相は、とにかく野党を批判するだけで、説明責任を果たす試みすらしていない。記事にある北朝鮮の問題についても、なぜ、事前に得た情報を公開しなかったのかという理由を丁寧に国民に説明する場なのに、それをしているとは全くもって言えない。

さらに、自分の説明責任を果たすという使命を忘れ去り、野党の党内人事を問題にしているのである。こんなことを本場イギリスのクエッションタイムで行えば、ヤジだけではなく、議長から注意され、政府の仕事に関係のない質問はするなと言われてしまう。

現に、3つ目の動画では、保守党のキャメロン党首が「次期労働党の党首として、ブラウン氏を推薦するのか?」という質問をしたところ、下院議長に、「この制度趣旨は政府の仕事についての説明責任を果たす場であり、政党の次期リーダーが誰かを議論すべきところではない」と質問を変えるように指揮権が発動されている。そして、キャメロン党首も「では、次の首相は誰になると思うか?」と質問を変えている。

マスコミも、この党首討論がどういう目的で行われているのか全くもって説明不足である。

制度が導入され10年経つが政治家の誰一人、また、どのマスコミも、制度の目的を忘れ去ってしまって、上っ面だけの形だけのパフォーマンスになり下がっているのは残念でならない。

ヤフーの意識調査では、ヤジを禁止すべきという意見が現在多いようだが、全くもって的外れな見解としか言いようがない。

上記の動画を見れば明らかだが、イギリスでもヤジはとにかく多く飛んでいる。私もヤジは嫌いだが、有益な議論ができるかどうかとヤジは正直関係ない。

このクエッションタイムという制度を活かせるかどうかは、政治家の能力の問題、つまり、制度趣旨を理解していない者が行っているクエッションタイムだから、揚げ足取りのかみ合わない議論で終わってしまうわけである。

野次がどうのこうのという薄っぺらい事は問題の本質ではない。国民を含め制度を理解していない無知が問題の本質である。以下の読売新聞の記事にある批判も制度趣旨を理解した上での批判かは疑問である。

もう一度、この制度が何のためにあるのか、また、イギリスの制度のように説明責任の原理に基づくものであるのかどうかのかを、国民全体が検証し直すべきであろう。

そして、有意義なものにするためには、究極的なことを言えば、賢い政治家を有権者が選ぶ以外に方法はないし、有権者が賢くならなければ、それも無理であろう。

麻生首相と鳩山代表が初の党首討論、政権交代巡り応酬
5月27日15時32分配信 読売新聞

 麻生首相と鳩山民主党代表による初めての党首討論が27日、国会で行われた。

 麻生首相は「政権交代は手段であって目的ではない」と民主党の姿勢を批判したのに対し、鳩山氏は「当然政権交代が目的ではない。スタートラインだ」と反論した。

 また、北朝鮮の核実験に関し、鳩山氏が「米国から事前通告があったのか」と追及したのに対し、首相は「米国からかなり早めに伝わっていたのは事実だ」としながらも、「この種の話はしないことになっている」とかわした。

 首相は、違法献金事件を巡り代表を辞任した小沢一郎・前代表が代表代行に就任したことについて、「それが責任の取り方なのか。国民目線から理解し難い」と批判。民主党が企業・団体献金の3年後の全廃を打ち出していることについては、「(小沢氏の)秘書の違反が契機なのに、論理のすり替えだ」と指摘した。

 これに対し、鳩山氏は、「聞き捨てならない。これから裁判で決着がつく話だ。(政治とカネを巡る事件・疑惑は)そちらにもたくさんいた」と強く反論した。

 党首討論の開催は、首相と小沢氏が昨年11月に行って以来。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090527-00000652-yom-pol

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05/27/2009

スーザン・ボイル(Susan Boyle)さんの準決勝の視聴率が明らかに。

イギリス・ガーディアン紙の電子版は、スーザン・ボイル(Susan Boyle)さんが登場した24日(日曜日)の「Britain's Got Talent」の視聴率は、8時半から10時まで放送時間の平均で、49%、およそ1180万人の視聴者に達したと伝えている。

記事によると、この日は、同じ時間帯に、裏番組のBBC1で、人気ドラマ「捜査官、ジョージ・ジェントリー(Inspector George Gently)」の最終回が放送されていたが、それをボイルさんが完璧に打ち破った。

特に、ボイルさんが登場した9時半から9時45分の間の視聴者数は1330万人と伝えられているという。

日本の長い歴史がある紅白歌合戦で、やっとこのレベルの視聴率に届くか否かといわれているのに、歴史の浅い2,3年前から始まったこの番組が、49%の平均視聴率を取るというのは、国が違うにしても驚きである。

やはりボイルさん人気も相まって、この番組のエンターテイメント番組としての質の高さがこうした高視聴率の原因だろう。そして、世界中の人がこの番組を公式サイトで見ていることを考えると、スポンサー企業のドミノピザの宣伝効果も相当なものである。

視聴率に悩むテレビ局、とくに1桁台の視聴率が1日中続いて、再放送の水戸黄門が一番視聴率が高いという不名誉な記録を更新した局や、月9というドラマブランドの時間帯を生かせていない局、経費削減のために、ゴールデンタイムに生放送の下らないバラエティー番組をやっている局、この番組が気持ち悪いと言い放った司会者を起用している偏向報道番組を看板番組にしている局は、この番組がなぜイギリスでこうも高視聴率を打ち立てているのか、しっかり分析すべきだろう。

エンターテイメント産業には文化等の違いによる影響は少なからずある。しかし、なにが大衆に受けるのか、そしてそれが支持され続けるのかという価値の分析なくして、ヒット番組は作れないだろう。

この番組の審査員、サイモン・コーウェル氏はいくつかのオーディション番組の制作を担当しているが、注意深くみていると、それらすべてのオーディション番組の趣旨には違いがある。

先日の記事でもしてきしたが、「X-Factor」や「Pop Idol」という番組では、若者層をターゲットにしたポップ歌手のオーディションという要素が前面に出ている。

これに対し、多少のブレはあるものの、審査員のピアーズ・モーガン氏が指摘するように、この番組では、若者から高齢者まで幅広い視聴者をターゲットにして、普通の一般人がすごいパフォーマンスをするという番組のコンセプトが明確にある。

ポール・ポッツ氏やボイルさんが人気になるのも、彼らがアマチュアの歌手で、普通の生活をしていた素人だからであろう。

最近、テレビ欄を見ると、「今日は面白そうな番組が一つもないな」というのが口癖になっている人も多いのではないだろうか。

日本のテレビ業界も、過渡期に来ているのかもしれない。そして、スポンサー企業も、どういう番組に投資すればいいのか、今までの広告代理店任せの姿勢ではなく、独自のスタッフによる分析と戦略的な姿勢がなければ、大量の広告費をドブに捨てるようなものと言っても過言ではない。

ある調査で、視聴者の8割近くがテレビCMをほとんど覚えていないと答えたという話があったが、ソフトバンクのCMのようなインパクトの強いCMは格別、単なる有名芸能人を使っているだけのCMは企業にとって、広告費の無駄使いという百害あって一利ないだろう。

考えてみてほしい、有名な芸能人がCMしているというだけで、「買いたい」と思うのは、その芸能人のコアなファンだけではなかろうか。

その上、スポンサーをしている下らないテレビ番組の視聴率が低ければ、そのCMを見る人も少ないのであり、その中から、CMに起用された有名人のファンで、「買いたい」と購買意欲を刺激される人がどれだけいるのか。多少の想像力ある人間にとっては、その答えは簡単で思いつくであろう。

テレビ業界も従来の思考を大転換して自己改革すべきことはもちろん、スポンサー企業も、有名広告代理店にお任せしていれば大丈夫という時代はとっくに過ぎたのであり、そういう姿勢をつづけていると、広告代理店をメタボにするだけの効果しかないという現実に速く気がつくべきだと私は思う。

なお、日本の報道番組ももう少し、下調べをして、ボイルさんの情報を報道してほしいものである。私のような片手間に、インターネットを検索して、信頼性のある情報かどうかを判断して掲載しているブログとは違い、報道番組はもっと組織としての情報収集能力があるのだろうから、誤報や古い情報をあたかも最新情報のように流すのはいかがなものかと思ってしまう。

例をあげると、フジテレビの「とくダネ」で、デーブス・ペクター氏が、以前このブログで紹介したボイルさんの過去の映像(あるテレビ番組のオーディションに参加したときの映像)を紹介していたのだが、明らかに誤報というか、不正確な解説をしていたようである。

まず、賢明に歌うボイルさんをからかっている男について、ペクター氏は、「ボイルさんの歌のパートナーで、最後にはキスをしている」というような趣旨の説明をしていたが、これは明らかに間違いである。

このふざけている男は、マイケル・バリモア氏というテレビ司会者で、「My Kind of People」という番組のオーディションの最中、彼女の見た目から、歌をろくに聴かずに彼女をからかい続けていたとボイルさんの弟がミラー紙に対して答えている。そして、イギリスでは、この司会者は見る目が無いと批判すらされている。

また、未だに、「キスをしたことが無い」という部分と取り出して伝えているが、すでにジョークだったというのは周知の事実であるのに、古い情報を訂正することなく、知ったかぶりの解説を行っているのは目に余る。(なお、個人的に、司会者の小倉智昭氏は、多少知ったかぶりをすることもあるが、知ったかぶりの多いデーブス・ペクター氏の疑わしい解説をいつも適当にあしらっているし、古館氏のような気持ち悪い演出の報道はしないので個人的には好きな報道司会者の一人ではある。)

デーブス・ペクター氏に限らず、日本の海外情報の報道能力にはかなり疑問を持たざるを得ない。

私は、このブログで片手間に情報更新をしているに過ぎず、もちろん、私の専門はアメリカ政治や法律分野なので、こういう情報に精通しているわけではない。しかし、それでも海外の新聞やメディアの電子版を見れば、この程度の情報の更新はできるし、日本のメディアの不正確な報道にはすぐに気がつく。テレビ局は組織力があるのだから、日本の報道番組の制作関係者も、もう少ししっかり報道してほしいものである。

これはエンターテイメントの話題だから、多少の誤報は許されるにしても、重要なニュースをあやふやな形で、誤った情報をあたかも正しいように報道し続けているとしたら、おそろしいプロパガンダであろう。

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Britain's Got Talent、準決勝3日目の結果です。

追記:著作権の問題があるため、一部の動画を除き、公式チャンネルの動画に入れ替えました。[2009年5月29日]

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ボイルさんの準決勝の動画(Youtube上にあるもので、一番再生回数が多いもの)は、既に200万回を超えていました。まだ、二日程度しか経っていないのに凄い人気ですね。

ボイルさんの同じ動画はかなりの数が既にアップされているので、それらとITV公式サイトの動画の再生回数を合算するとどのくらいになるか、そろそろマスコミが報じ出すことかもしれません。

さて、「Britain's Got Talent」の準決勝三日目も様々なパフォーマンスをする人が登場しています。

①親子で裸ダンスを踊るパフォーマー

②12歳の歌手少年

③兄妹で13年間社交ダンスをするパフォーマー

④工事に使う手押し車を音楽に合わせて踊るパフォーマー

⑤「Rule Britania」というクラシック曲を歌いながら、フラワーアレンジメントをするパフォーマー

⑥激しいメイクアップと曲でダンスを披露する女性だけのダンスグループ

⑦不思議な声で人間サックスという楽器(?)の演奏をするパフォーマー

⑧ピンク一色でキャピキャピした二人組の歌

などが3日目の出場者です。

Youtubeにあった動画もアップしておきます。上記に埋め込みが無いものについては、ワーナー・ミュージック・グループ(WMG)が著作権に基づく削除申し立てをしたことにより、視聴不可能になっているものです。

ITVではなく、WMGがなぜ申し立てたのだろうと多少疑問に思ったのですが、音楽の著作権がWMGにあるということなのかもしれません。

世界的に話題になっている番組を見たいという要請と、インターネット上の著作権の問題というのを考える上でも面白い現象です。特に、スーザンボイルさんの世界的人気の裏にはインターネットパワーの存在が不可欠だったわけであり、音楽産業が今後生き残る上でもこの著作権の主張とインターネットとの共存というバランスをどう考えるのか、そして、この判断を専ら権利者に委ね続けるのか、など様々な世界規模での法的な問題がありそうです。

ところで、各パフォーマーの題名にあるリンクは、ITV公式サイトの動画へのリンクなので、Youtubeで見れない画像があれば、そちらで確認してください。

さて、3日目の結果はどうだったのでしょうか。

結果はこちらの公式サイトで確認できます。

http://talent.itv.com/videos/video/item_200254.htm

私は個人的には、もうポップな歌とポップダンスには飽きたので(そんなパフォーマンスは大衆受けするのかもしれませんが、この番組でなきゃ見れないものではないので)、①の親子や、同じダンスでも③の社交ダンスの兄妹、⑤のクラシック曲とフラワーアレンジメントなど今までにないパフォーマンスをした出場者が決勝に進んでほしいと思いました。

興味がある方は結果を見てみてください。

ちなみに、「歌に飽きた」という発言から、スーザン・ボイルさんもアマチュア歌手じゃないかという反論があるかもしれませんが、歌は歌でも、彼女の歌う歌は、他に登場している並みのアマチュア歌手とは違う良さがありますし、ポップな歌ではないので、何度聞いても私は飽きることはありません。

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05/26/2009

生放送ならではのミス(Britian's Got Talentより)

昨日紹介したボイルさんの出演した番組の最後をよく見ると、生放送ならではのミスが起こっている。

気がついた人はかなり注意深い人だろう。動画の6分あたりから司会者のAnt(おでこの広い方)の表情に注目してほしい。

「明日、9時からまた会いましょう」というような発言をした後、口をあけたまま表情が突然曇る。そして、相方のDecが笑いをこらえながら、「明日会いましょう」と続けた。

何が起こったかというと、海外のテレビ番組はすべてジョークなどもカメラの近くにあるスクリプト(セリフを表示するパネル)にすべて表示され、それを正確に読みながら司会を進めるのが一般的なのだが、相方のDecが読むべきセリフをAntの方が読んでしまい、困惑している状況だったらしい。生放送ならではのミスである。

それを知ってもう一回見ると、人気の司会者で、コメディー番組などを担当しているのに、ここまで、困惑するか?と思ってしまう表情をしており、面白い。

また、ボイルさんも素人ならではの動きをしている。結果が発表されるや、本来はその場で司会者の質問に答えるはずのところを、ステージ脇に向かって歩き出してしまう。だいたい、56秒あたりからその状況をみることができる。

司会者のDecが、「スーザン!こっちだよ。」と呼びかけても、しばらく声がする方がどっちなのか気がつかないあたりが実に普通の中年女性という感じがして、彼女の自然な姿が見て取れる。

また、第二位の発表がなされ、最後のエンディング向けに、ボイルさんがまた脇から登場するのだが、彼女はまた、第二位のグループの後ろの方に消えそうになり、あわてて司会者が呼び止め、彼女がどっかに言ってしまわないように手をつかんでいるあたりも、自然な感じがして、どことなくこの番組に共感を持てる。この状況は、動画の5分40秒あたりで確認できる。

どっかの日本のテレビ局の報道(?)番組の司会者が、演出が気持ち悪いと馬鹿げた発言をしていたが、まさに自然な動きだし、さほど過剰な演出なんてないだろう。同じ生放送の報道(?)番組を担当しているその司会者の番組の方が、生放送なのに不自然な演出があり気持ち悪いと改めて思った。

私も気がつかなかったが、世界中にはよくこういうところを注目してみて発見する人がいるものだと感心した。

それにしても、この番組の認知度は世界中に広がっただろうし、テレビ局のITV、審査員の3人、司会者2人は、ボイルさん人気に乗じて、彼らの知名度も世界中に広めたのではないだろうか。

なお、スーザン・ボイルさんが一夜明けて、準決勝戦の様子を振り返るインタビューの動画がITVの公式サイトにアップされている。内容を訳する時間が無いので、英語が苦手な人には申し訳ないが、リンクの紹介だけにとどめる。

準決勝から一夜明けたスーザン・ボイルさんのコメント

http://talent.itv.com/videos/video/item_200231.htm

ただ、紹介だけして、後は知りませんというのも読者の期待を裏切るだろうから、簡単に話をまとめておく。以下、4点について、ボイルさんは語っている。

①第一声の出だしがあまり良くなかったのは風邪を少し引いていたことが原因ということ、

②でもとにかく歌い続けようと思い、歌い続けたらだんだんいつもの声の調子になってきたということ、

③実際、テレビ局のスタジオで歌うということ、たくさんの人が見ていることはプレッシャーにはなっていたが、とにかく自分の歌に集中しようと思って歌ったということ、

④決勝に向けて、100%確かということは言えないけどとにかく自分のベストを尽くして最後まで頑張りたいという抱負を語っていること。

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準決勝戦二日目は混戦。

追記:Youtube上に「Britain's Got Talent」の公式チャンネルが存在するため、動画を入れ替えました。以後、動画は公式チャンネルのものを掲載します。[2009年5月29日]

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スーザン・ボイルさんの話題を取り上げると、このブログへのアクセスが急増します。それだけ多くの日本人も、ボイルさんの動向を気にしているということではないでしょうか。

彼女の歌声はもちろん素晴らしいですがが、彼女をここまで世界中で有名にしたインターネットの凄さ、とりわけ、Youtubeの潜在的パワーには本当に驚きであり、Youtubeなどインターネットがまさに第4の権力であるマスメディアを凌駕した、新たな第5の権力として、社会的な影響力を有していることが明らかになった一例でしょう。

さて、Youtubeで、「Britain's Got Talent」という番組の動画をアップしている人がかなりいるわけですが、とりわけ、今回のボイルさんブームの火付け役となったユーザーの一人がアップした昨日のボイルさんの映像は、すでに100万回の再生を記録しています。もちろん、他のユーザーがアップした動画やITVの公式ウェブサイトにアクセスしてみた人もいるでしょうから、世界中での彼女の昨日の歌の動画の再生回数を合算したらどのような数になるかは楽しみなところです。

準決勝戦二日目の結果がでました。公式サイトの動画は以下で確認できます。

結果とダイジェスト

http://talent.itv.com/videos/playlist/id_27.htm

事前のイギリスメディア予想では、ジェイミー・プー氏とショーン・スミス君の一騎打ちとされていましたが、結果は・・・

やはり、ジェイミー・プー氏は、上がり症が嘘で、今までに何度も多くの聴衆の前で歌ったことがあるという報道があったことと、歌声がボイルさんほどの音域・音量がないことなどから、十分な一般投票を得ることができなかったようです。

どうも一般投票が入ると、歌かダンスに投票が集まるようですね。今回も1日目と似たようなパフォーマンスが一般の人気投票を集めたようです。歌VSダンスという様相を呈してきています。

また、審査員のサイモン・コーウェル氏が音楽産業に身を置いているため、そういうパフォーマンスを優先的に評価する傾向があることも影響しているのかもしれません。

ただ、結果発表の際に、別の審査員、モーガン・ピアーズ氏が言っていますが、このテレビ番組のコンセプトは、「Britain's Got Talent」という題名通り、イギリスの一般人の才能を披露する場を提供し、ひいてはエリザベス女王にそれを披露するというものです。したがって、歌とダンスだけがイギリス人の才能ではなく、才能の層の厚さ、種類の多さ(Varietyというのがキーワードです)を決勝戦で披露する機会を提供すべきだとピアーズ氏は指摘しています。

ピアーズ氏の意見は全くその通りだなと思います。この番組以外にも音楽関係のオーディション番組はイギリスにあります。そういう意味でも、決勝戦進出者が全て歌とダンスのパフォーマーになると、この番組の人気も危うくなるかもしれません。なぜなら、この番組がとりわけ人気なのは、一般のイギリス人が参加し、おかしな演技を披露したり、変わった人が出てきて、笑わせるという要素もあるためです。

ピアーズ氏はこの点に、いち早く気づいて、このコメントをしており、なるほど、おっしゃる通りだなと思わせてくれます。テレビ番組は、その基本となるコンセプトがしっかりしていないと、迷走し、最後は視聴率低迷で打ち切りになるというのは、日本でも過去多くのテレビ番組で起こっており、この点は国や文化は関係なく同じなのかもしれません。

実際、イギリスの視聴者のコメントなどを見ていると、同じようにピアーズ氏の発言に共感している人が多いようです。

以下、二日目の注目パフォーマーの動画です(Youtubeより出演者順)。

1.ジェイミー・プー氏 歌手

2.ショーン・スミス君 歌手

3.フローレス(Flawless) ダンスグループ

4.ギャレス・オリバー氏 腹話術師

私の個人的な投票では、1位が腹話術師のギャレス・オリバー(Gareth Oliver)氏です。腹話術で歌を歌うのはすごく難しい技術が必要ですが、全く口が動いておらず、のどをうまく使って歌を披露できているのがすごいですね。

しかも、パバロッティーの太い声を出すのは腹話術では特に難しい技術が必要だと思いますが、これもとても上手くできていると思います。腹話術の腕はおそらく私が今まで見た腹話術師の中でも一番うまいと思います。いっこく堂さんより上ではないでしょうか。

審査員のサイモン・コーウェル氏のコメントを見ていると、やはり、彼の審査基準は正直というのでしょうか、お金になるような音楽の才能を披露するパフォーマンスを好むようです。

コーウェル氏が「小さなクラブで演じているわけじゃないんだからこの場に腹話術は合わない」という発言に、ピアーズ氏がすかさず、「(彼の発言は)今まで聞いたことがない程のたわけた発言だ」とやりかえすあたりも、審査員が重きを置いている基準の違いを知ることができ、おもしろいですね。

ただ、一般視聴者も、オリバー氏を上位3人の一人に選んだのであり、この番組のイギリスの視聴者はやはり、音楽だけの才能を見たいのではないということもわかります。

残念ながら、決勝戦の通過はできませんでしたが、彼のさらなる腹話術を見てみたいものです。

明日もこの番組は続くようです。ブログで紹介できるかはわかりませんが、時間がある限り紹介して、情報を提供できればと思います。

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05/25/2009

スーザン・ボイル(Susan Boyle)さんの準決勝の模様です。(公式サイトより)

追記:Youtube上の動画の一部を変更しました。イギリスのテレビ局ITV、この番組の公式Youtubeチャンネルがあるため、以後、Youtubeの動画はそちらを掲載します。[2009年5月29日]

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以前からお伝えしているイギリス人のアマチュア歌手、スーザン・ボイルさんの続報です。

イギリスの人気番組、「Britain's Got Talent」で、ボイルさんは決勝戦で、ミュージカルキャッツ(Cats)の「メモリー(Memory)」を歌ったようです。

以下のITV公式サイトでその映像が見れます。

ボイルさんの準決勝の模様

http://talent.itv.com/videos/video/item_200228.htm

第一声はちょっと緊張しているのか、音がしっかりしていないので、心配になる方もいると思うのですが、その後は音程も安定し、訴えかけるような歌いあげ方が印象的です。

とりわけ、最後の「Touch me. It's so easy to leave me」という部分の歌いあげ方は本当の上手いなと思います。メモリーの肝の部分をしっかり歌いあげる実力は本当にすごいですね。

このメモリーという曲は、グリザベラという昔は美しかった猫が、若いころに、自分の育った村を飛び出し、外の世界に出ていくも、成功することはできず、さらに年老いて誰にも相手にされなくなった現状を憂い、昔を振り返りながら、皆に受け入れてもらいたいという気持ちを歌いあげるものです。

ボイルさんが、なりたいと言っていたミュージカル女優のエレイン・ペイジ(Elain Paige)さんがこのキャッツのグリザベラ役のオリジナルキャスト(最初のキャスティングメンバー)でこの曲を歌っており、有名になりました。そうした憧れのエレイン・ペイジさんへの思いも込めて選曲したのかもしれません。

Youtubeでも、既に彼女の紹介シーンなども含めたもっと長いボイルさんの動画がアップされています。投稿されて一日も経っていませんが、すでに約50万回も再生されています。

公式チャンネルにあるダイジェストは以下の動画です。

パフォーマンス直後に、司会者の一人であるアント・アンド・デック(Ant and Dec)のデック(Dec)に感想を聞かれて、ボイルさんは、「Fantastic」と一言答え、続いて、アント(Ant)に「Youtubeを通して世界中で話題になったが、プレッシャーは感じなかったか?」と聞かれ、「何のプレッシャー?とても楽しかったわ」とケロッと答えているあたりは彼女らしさを感じられます。

さらに、デックの「一番重要なのは、歌っている瞬間の1分1分を楽しめたかどうだけど、どうでしたか?」という質問に対し、「歌っている1秒1秒を楽しんだわ。またやりたいわ」と答えています。

また、辛口批評の審査員で有名なサイモン・コーウェル(Simon Cowell)氏は、「正直、君に謝らないといけない。予選で歌う前から馬鹿にしたような態度をして」とコメントしたのに対し、おどけた表情で、「何のことかしら?知らないわ」と答えたりしているあたりも、彼女の人の良さを感じるシーンです。

ちなみに、以下の動画がエレイン・ペイジさんがグリザベラ役を1997年のビデオ・DVD版を演じたときの映像です。やはり、プロのミュージカル女優であるペイジさんと比べると、声の演技力という点では差があり、そこはプロとアマチュアとの違いだとは思います。

ただ、そうした演技力や技術的なところを抜いて、声の良さという点だけで比べると、ボイルさんもプロの歌手並みの音量、音域を持っていると思います。

準決勝の結果についても以下の公式サイトの動画で確認できます。

今回は、視聴者投票により第一位が決まり、視聴者投票の第二位と第三位について、審査員による決選投票という形式のようです。

また、審査員の3人は、演目の途中で、やめさせることもできるようで、×が3つ演技の途中で付くと、その時点で、演技は終了させられるようです。

ボイルさんが決勝戦に進出できるか気になる方は以下のサイトで確認ください。

準決勝の結果

http://talent.itv.com/videos/video/item_200229.htm

また、準決勝の全体的な演技を見たい方は、以下の公式サイトのプレイリストで、確認できます。他の出場者の演技も大したものです。

その他の準決勝進出者の演技

http://talent.itv.com/videos/playlist/id_25.htm

決勝戦は、イギリス時間で5月30日に生放送される予定です。同じくイギリスのテレビ局ITVの公式サイトにその模様が掲載されると思います。

最後に、ボイルさんの歌った「メモリー」の歌詞を知りたい方のために、以下に歌詞を掲載します。日本語訳もネット上にあると思うので、気になる方は探してみてください。

Midnight
Not a sound from the pavement
Has the moon lost her memory?
She is smiling alone
In the lamplight
The withered leaves collect at my feet
And the wind begins to moan

Memory
All alone in the moonlight
I can smile at the old days
I was beautiful then
I remember the time I knew what happiness was
Let the memory live again

Every streetlamp
Seems to beat a fatalistic warning
Someone mutters
And the streetlamp gutters
And soon it will be morning

Daylight
I must wait for the sunrise
I must think of a new life
And I musn't give in
When the dawn comes
Tonight will be a memory too
And a new day will begin

Burnt out ends of smoky days
The stale cold smell of morning
The streetlamp dies, another night is over
Another day is dawning

Touch me
It's so easy to leave me
All alone with the memory
Of my days in the sun
If you touch me
You'll understand what happiness is

Look A new day has begun

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ボイルさんの以外のパフォーマンスで、私が気に入った準決勝戦のパフォーマンスは以下の2人のコメディ―ダンス、「Faces of Disco」です。

http://talent.itv.com/videos/video/item_200227.htm

Youtubeでも、より長い映像がアップされていたので、以下に掲載しておきます。残念ながら、決勝には進出できませんでしたが、とても面白いユニークなアイデアですし、注意深く見ていると、使われた有名人の細かい描写がダンスの中に織り込まれていることが発見できます。なかなかコメディーダンスとしての質は高いと思います。

彼らが最初に登場したときの予選の映像をみると明らかなのだが、なんとこの二人、かなりのイケメンで、コミカルな踊りとは対照的である。予選でも、サイモン・コーウェル氏から途中で、失格の×のブザーを押されてしまうも、最後まで演じ切り、サイモン氏の判定を覆すことに成功している。下の映像は公式チャンネルにある予選の動画である。

なお、この番組が日本のテレビ番組より私は素晴らしいと思うことが一つあります。それは、この視聴者投票は電話で行われるのですが、1回の投票にかかる通話料の50ペンスがチャリティーに回されるという仕組みになっていることです。

日本では年に一度偽善的な「○○時間テレビ」などという番組が放映されますが、イギリスやアメリカなど欧米では、こうした一般視聴者参加型番組で、通話料を視聴者に求める時のほとんどの場合に、チャリティーに回るような仕組みが作られたりしていることが多いです。

チャリティー(Charity)という言葉には、キリスト教的な価値があり、「キリスト教の教え(Christianity)」が語源であるということをきいたことがありますが、そういう宗教的、文化的な違いがあるにしても、現代社会で問われている企業の社会的責任の一つとして、チャリティー事業がテレビ局やスポンサー企業をはじめ、常態化している点は、日本の企業をはじめとして、見習うべき良い例だと思います。

また、司会者のAnt and Decですが、彼らの司会のスタイルも国の違いを感じます。彼らは、以前紹介したように、最初は若手のアイドル歌手・俳優としてデビューし、その後は完全にコメディー番組を中心に司会者をやっていますが、司会のスタイルがその番組に合わせて違っています。以前紹介したコメディー中心の視聴者参加型番組では、ジョークを多用していますが、オーディション番組の準決勝では、メインの挑戦者を引き立てる司会方法で、番組の趣旨が解り易く伝わってきます。

仮に日本でこの種の番組の司会をコメディアンに任せると、私の独断と偏見ですが、完全に自分の笑いのネタに持っていってしまい、出場者が引き立たない完全に芸能人の自己満足的な番組になってしまうのではないでしょうか。

「一般人の出場者のパフォーマンスを楽しむ、評価する」という番組のコンセプトが明確だからこそ、イギリスでは人気の番組になっているのかもしれません。

海外の番組を楽しみながら、こういった国民性の違いを発見できるのも、楽しみ方の一つでしょう。

以下、日本のメディアによるこの話題のニュースです。

遅咲きの歌姫、英オーディション番組の決勝進出
5月25日14時45分配信 ロイター

[ロンドン 24日 ロイター] 英国の素人オーディション番組「Britain's Got Talent」に出演し、動画共有サイト「ユーチューブ」で世界的に話題となったスーザン・ボイルさん(48)が24日、同番組の電話投票で決勝進出を決めた。
 紫色の服でドレスアップし、整った髪で登場したボイルさんは、ミュージカル「キャッツ」の「メモリー」を披露。堂々とした歌声に、観客は再び息をのんだ。
 ボイルさんは、緊張したかを問われると、「今夜は楽しかった。この場に立てたことを幸せに思う」と返答。審査員のサイモン・コーウェル氏は「本当に特別な女性だ」とボイルさんを絶賛した。
 30日に行われる決勝には、ストリート・ダンサーのグループなどが進出し、優勝者は10万ポンド(約1500万円)の小切手を獲得する。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090525-00000855-reu-ent

準決勝二日目は、ショーン・スミス(Shaun Smith)君というイケメンのラグビー選手の歌やピザの配送運転手をしている極度の上がり症のジェイミー・プー(Jamie Pugh)氏の歌が放送される予定で、この二人のパフォーマンスに注目が集まっているそうです。特に、スミス君には、女性票が流れるのではないかとイギリスのメディアは伝えています。

また、プー氏については、最近、審査員の女優アマンダ・ホールデンさん(Amanda Holden)が、上がり症というのは嘘だったということを暴露しており、そうした逆境をどうはねのけてパフォーマンスをするのかという観点から、番組を見るのも面白いかもしれません。

これら二人に興味のある方は、名前のリンクをクリックして動画を見てみてください。

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05/24/2009

スーザン・ボイル(Susan Boyle)さんの準決勝はロンドン時間の24日に放映されるようです。

以前に紹介したボイルさんがまた世界中で話題になりそうである。

AP通信によれば、番組担当者の話として、イギリスのITVのウェブサイト上で、現地のテレビ放送とほぼ同時にインターネット上にボイルさんの歌う映像が放映されるという。

http://www.itv.com/

↑のリンクがITVの公式ウェブサイトなので、おそらくここにアップされるだろう。興味のある方は、チェックしてみると良いだろう。

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05/21/2009

刑事訴訟の全体像と裁判員の心得

久しぶりに更新します(楽しみにしている方、しばらく更新期間が空いてしまい申し訳ないです)。

今日、5月21日は、裁判員法がいよいよ施行されます。既に御存じの方も多いと思いますが、本日以降に起訴された事件について、この裁判員法が適用されるわけです。

裁判員制度は、今マスコミが急に取り上げ出して、多々説明がなされていますが、意外にも、裁判員がかかわる前の話は説明が省略されてしまっているので、刑事訴訟がどういうシステムか全体像がつかめていない人も多いのではないでしょうか。

そこで、裁判員がかかわる前の流れを、簡単に説明します。

まず、以下のような事件の流れをイメージしてください。

①4月10日、午後1時34分、被害者V(31歳)が自宅で殺害されるという事件が発生。

②4月28日、午後8時58分、警部補Xらが、近所に住む、会社員30歳の男、甲がV恋愛のもつれから、たびたび口論していたという聞き込み情報を得た。そこで、警部補Xは、東京地方裁判所の裁判官Jに逮捕状を請求。裁判官Jが発付した、逮捕状に基づき、V殺害の容疑で、甲を逮捕。

  • 司法警察員(警察官のうち、巡査部長以上の者が通常これに当たる)による逮捕に基づく身柄拘束時間として、許されるのは、この場合48時間。

③4月30日、午後6時52分、司法警察員Xが被疑者甲を検察官Pに送致(いわゆる、身柄付送検)。

  • 検察官Pに逮捕に基づく身柄拘束として許されるのは、この場合24時間。

④5月1日、午後4時45分、検察官Pが、被疑者甲の勾留請求をし、午後7時01分、東京地方裁判所のJ判事が勾留状を発付。

  • 裁判官Jは、甲を拘置所から呼び出して、甲にどういう殺人事件の疑いで勾留されることになりうるのかを説明し、甲に事件についての認否を含め、弁解の機会を与える。
  • そして、甲の供述や検察官から提出されている勾留のための資料に基づき、甲に殺人の疑いがあることについて、一応確からしいという心証を得れば、勾留状を発付する。
  • 今回、逮捕状と勾留状を発付した、裁判官Jは、起訴された後に、甲の被告事件の公判手続きに後述する受訴裁判所(起訴状を受け取って、事件を担当する裁判所)の一員として参加することはできません。これは、起訴される前の事情をしっていることから、予断を排除して、公平な裁判を実現するための制度的要請で、捜査段階に関わる裁判官と公判で審理する裁判官を分離しています。

⑤5月21日、午後1時、検察官Pが、被疑者甲を殺人容疑で起訴。

  • 起訴されたことにより、被疑者甲の被疑者勾留は、自動的に被告人勾留へと変わります。まず、起訴があった日から2か月の勾留が認められ、その後は必要性がある場合に限り、1か月毎に更新されることになります。

ここまでが捜査段階の話で、これにより初めて、甲のV殺害被告事件について裁判員法の適用があります。

裁判員法の適用は対象が、(a)死刑または無期懲役の重大犯罪、(b)合議体(裁判官が3人による審判)で、裁判をしなければならないもので、かつ、故意に人を死亡させるに至った事件となります。

この後者の合議体で裁判しなければならないものとは、通常、地方裁判所においては、死刑、無期、または短期1年以上の懲役・禁固にあたる罪が対象とされています(裁判所法25条2項2号)。

さて、これで、甲の事件に裁判員法が適用になるということがわかりました。しかし、裁判員の出番はまだまだ先です。

⑥6月15日、甲のV殺人被告事件が、公判整理手続きに付されることになり、弁護人Aと検察官Pが参加して、東京地方裁判所刑事第1部の裁判官らで構成する受訴裁判所により行われた。

  • この公判整理手続きとは、裁判所が主催して、検察官、弁護人(もちろん被告人も参加)の参加の下で、争点の整理をして、迅速な裁判を実施するというものである。
  • 例えば、本件で、甲がVを刺したことは認めているが、殺意を争っていたり、別れ話をしたところ、Vが逆上して刃物を持って向かってきたので、身を守るために、もみ合っているうちに刺さってしまった等正当防衛を主張している場合は、その有無が主要な争点となる。
  • このように当事者に争いのある事実に争点を絞り込むことで、長期にわたる裁判により被告人の身柄を過度に拘束しないのと同時に、裁判員への負担を軽減することを制度として確保しようという趣旨である。

⑦7月21日、第1回公判期日の開催が決まり、それに向けて、裁判所が裁判員を選定する手続きに入った。

これ以降の具体的な裁判員選任手続きやその後の公判については、ニュースなどで多々説明されているので、割愛しますが、いくつか重要な点だけ説明します。

まず、弁護人は、裁判員の選任において、50人の裁判員候補の中から、通常、4人まで理由を示さずに排除を求めることができます。これはアメリカの陪審員制度と似ているところなのですが、弁護人が、裁判員の見た目や年齢などから、被告人に不利になると思われる印象のある裁判員を無条件に排除する権利を与えたものです。無制限に認めると、濫用されるのは明らかなので、4名までに限定されています。

次に、裁判員選任手続きの通知が来ているにもかかわらず行かないと、その裁判員候補には、10万円以下の過料に処せられます。

裁判員には守秘義務が課されます。これは、全て話すなという意味ではありません。裁判員しか知りえないことを公開してはいけないということで、例えば、評議の様子なのです。傍聴人が知りえるようなことは、守秘義務の対象になりません。

さて、これ以降の手続きについては、法務省のHPやマスメディアなどでも説明されているので、そういうものを参照してもらえればと思います。

ここで、感の良い読者なら気がついたかもしれませんが、裁判員制度の一つの問題として、予断排除と裁判員候補へのマスメディアによる情報と思いこみをどうするかという最大の課題があるわけです。

上記にもあるように、刑事訴訟法は、予断排除を制度的に要請されており、公判前と公判後に関わる裁判官を分離していますし、職業裁判官は職務上、事前のメディア等による雑音を遮断して、審理に臨むことはできるでしょう。しかし、一般の国民がそれをどれだけ意識して裁判員として審理に臨むかは未知数です。

もし裁判員に選任された場合は、被告人を公判廷で初めて目撃し、「人相が悪い」とか、「やってそうだな」とか、そういう印象で臨まないでください。痴漢冤罪をテーマにした『それでも僕はやってない』という周防正義監督の映画があります。ぜひ、裁判員に選ばれた方は、その映画を見てみてください。

何が真実かはわかりません。裁判官にもわかりません。わかるとすれば、神様だけでしょう(無神論者の方からすれば、誰一人真実をわかる人はいないことになるかもしれませんが)。

「真実はわからない。本当に被告人甲がやったのだろうか。」 このような持ちで臨むのが重要なのです。

周防監督の映画の最後に、「自分が被告人席に立っているつもりで、どうか私を裁いてください」というような一節が出てきます。これは本当に重要なことです。マスコミであんなに報道されてたから被告人は有罪だという意識が仮にあれば、捨ててください。

マスコミの報道の大半は、検察側の情報だけに基づいたものを垂れ流しているにすぎません。マスコミの最大の目標は視聴率の確保と、特ダネを早くスクープしようということになり下がっています。

もし、自分が疑われ、被告人席に立ったときに、裁判員が予断を排除する意識なく裁かれることになったら、あなたは、どう思うでしょうか。

今まで、多くの人が刑事裁判には関わらないと思っていたかもしれません。まして、被告人なんかにはならないと思っているでしょう。しかし、いつ被告人の席に立たされてしまうかはわかりません。疑われることなんて自分ではどうしようもできません。

「もし冤罪があれば。」「もし自分がその冤罪の対象になってしまったら。」

特に、否認事件では、こういう意識を持って、審理を見届けてほしいとおもいます。

上記事例は私が作った架空の事例ですが、おそらく「甲が犯人なんだな」と思い込んでいる人は多いでしょう。しかし、記載された文言を丁寧に見てもらえるとわかるのですが、私は、上記事例で甲が犯人とは断定していません。甲は被害者で彼女であるVと別れ話のもつれがあり口論が絶えないという第三者の証言があるだけです。その殺害の当日に口論していたという目撃情報ですらありません。しかし、「逮捕された」という事実をもって、犯人だと決めつけてしまう深層心理があるわけです。

もし、決めつけていた方がいれば(ほとんどの方が犯人だと思ったと思いますが)、実際、裁判員に選ばれたときは、意識的に予断を排除するような努力をしてほしいです。

そして、裁判員になったあなたが「合理的な疑いをはさむ余地がなく、有罪だ」との確信を持てたときには、堂々と有罪に投じてください。そうでなければ、「疑わしきは被告人の利益に」の原則にしたがって、堂々と無罪と判断してください。

一般国民であれば、皆、自分の意見を表明する自由と責任があります。

「私にはわからない」という一言で逃げるのではなく、私は素人的感覚からすると、「証拠を見る限り、有罪だと思う。反省もしていないし、今後反省する可能性もないのだから、極刑の死刑にすべきだと思う」とか、「有罪だと思う。だけど、被告人は反省しているし人の命を国家によって奪う死刑とまでは言えないと思う」とか、または「無罪だと思う。」とはっきり言って良いのです。

なにもはばかることはありません。ぜひ、裁判員になられた読者がいれば、自分の意見を表明できる貴重な機会だとくらい思って、あなたの常識を司法に反映してください。

裁判員制度、きょう始動 初の審理、7月下旬にも
5月21日7時57分配信 産経新聞

裁判員法が21日に施行され、国民が刑事裁判に参加する裁判員制度がスタートする。司法に国民の視点を反映して信頼性を高め、刑事裁判を分かりやすくすることが狙い。この日以降に起訴された事件のうち、もっとも重い刑で死刑や無期懲役が定められている殺人や強盗致死傷などを対象にした1審で、被告が有罪か無罪か、有罪なら刑の重さについて、6人の裁判員が職業裁判官3人とともに審理し、判決を出す。裁判員裁判の第1号は、7月下旬にも開かれる見通し。

 対象事件が起訴されたあと、裁判官と検察官、弁護人は「公判前整理手続き」を開き、争点を絞るとともに、証拠を厳選する。調書など書類を重くみてきたこれまでの「精密司法」から脱却し、法廷でのやり取りを中心とした裁判になる。

 公判前整理手続きでは綿密な審理計画も立てられる。日程が決まれば各地裁は、初公判の6週間前までに、裁判員候補者に「呼出状」を送る。呼び出される候補者はひとつの事件について50~100人。この中から、裁判官の質問などを経て、6人が選任される。

 裁判員裁判は原則として連日開廷され、最高裁は9割の事件が5日以内に終了するとしている。裁判員の役目は判決を宣告したところで終わるが、裁判官とともに議論した「評議」の中身などについては、守秘義務が課せられる。

 裁判員法の付則では法施行後3年で施行状況を検討し、必要があれば見直すと規定されている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090521-00000130-san-soci

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05/07/2009

Ant and Decの番組が英国ヴァージン社の黒字に貢献

ヤフーや楽天は参考になるかもしれません。

イギリスの巨大企業、バージングループが運営する「バージン・メディア」が黒字に転じたという。

このバージンメディアとは、イギリスのテレビ局、ITVなどの番組をネット上で再放送したり、視聴者が好きなときに好きな番組がみれるというサービスをインターネットを通じて提供している。

2008年の第一四半期は200万ポンドの赤字を計上していたが、今年は世界的な不況が広がる中、1,300万ポンド(日本円で約20億円)の黒字を計上したという。

この黒字の要因は、今年1月から3月にかけて利用者数が増えたことにあるようで、イギリスメディアの報道では、とりわけ、配信していたあるテレビ番組が好調だったに起因しているようである。

その番組は、以前このブログでも紹介した、「Ant and Dec Saturdaynight Takeaway」である。

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このTakeawayという言葉には、お持ち帰りという意味があり、日本でいうテイクアウトの意味がある。ミラー紙は、「ヴァージン社がもうけをお持ち帰り(Virgine Takeaway Nice Profit )」と題して、このニュースを報じている。

日本では、楽天がTBSとの統合から撤退したが、最近視聴率で伸び悩むテレビ各局が今後どう生き残るべきなのか、ヴァージン・メディア社のビジネスモデルがひとつの鍵になるかもしれない。

とはいっても、日本とイギリスは多少メディアや芸能界の状況が異なる。

イギリスは日本のように、大手芸能プロダクションが圧力をかけるような状況にはない。

メディアの側の権力の方が強いし、政府の監視(OFCOM:英国情報通信庁による監督)が厳しいため、順法規律が高いようである。

実際、このAnt and Decの番組でも、一般視聴者が競い合う内容のコーナーにおいて、不公正な人選があったということで、英国情報通信庁の指摘を受けるなど、番組の内容についての公正さが要求されている。

また、これに対して、制作側、および、司会者の二人も、指摘を受け入れ改善することを視聴者に約束するなどしており、日本のような表現の自由を盾に、放送規制を排除しようという動きより、英国では公正な番組作りを目指す動きの方が重視される風潮がある。

番組の制作にあたっては、芸能人とテレビ局が専属契約を結び、特定のテレビ局の顔として、認知されている人も多い。また、契約に当たっては、あやふやにしたりせず、法律家による詳細な契約が組まれている。

こうした風土、民度、文化の違いがあるにしても、今後のヴァージン社の動きは、インターネット世代に対する情報発信方法として、日本のテレビメディアがどう変革し、生き残れるかというヒントになるかもしれない。

ちなみに、ガーディアン紙によれば、この番組の制作権をもつITVは中国の扶南テレビに制作権を売っており、中国でも同じような番組が作られているという。

また、フィンランドでも既に3シーズン分の同種番組が放映されているらしい。

日本にも、ミリオネア(Who wants to be a millionare)やウィーケストリンク(Weakest Link)ように形を変えて入ってくる可能性はあるかもしれない。

英国のITVは自分の番組を海外に売ることでのビジネスが成功しているようである。

日本のメディアも世界に通ずる番組作りに力を入れるべきだろう。その成功例の1つは、フジテレビの料理の鉄人(Iron Chef)だったのであろう。

料理の鉄人に続く想像力豊かな番組作りとインターネット時代への対応ができなければ、視聴率低迷はさらに進むかもしれない。

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Ant&Decが司会をするBritain's Got Talentに関連し、スーザン・ボイルさんが次にでるのはいつなのか、準決勝はいつかなどの問い合わせもあったので、追記しておく。

5月23日の土曜日までは事前に収録された予選が随時放映される。

5月24日、25日、26日、28日、29日の5日間は準決勝として、生放送が予定されている。

ロイターの英語電子版によれば、ボイルさんが出演するのは、25日の放送らしい。

そして、5月30日が決勝で、これも生放送の予定。

今まで4回の視聴率が45%~52%を保っているというから驚きである。日本では考えられない数字である。初回は45%台だったのが、ボイル人気で2,3回と50%越えをしている。最新の4回目は、47%と少し落としているが、依然高い。

以下はヤフーニュースより関連記事。

動画視聴ランキング、47歳の歌姫S・ボイルが5位に
5月7日14時59分配信 ロイター

 [シドニー 6日 ロイター] 英オーディション番組で歌声を披露し、一夜にしてスターとなったスーザン・ボイルさん(47)の映像が、動画共有サイトの視聴回数ランキングで、1億8600万回の5位となったことが明らかになった。
 米調査会社ビジブルメジャーズによるこのランキングは、150以上の動画共有サイトに投稿されたビデオの視聴回数を集計したもの。
 1位は、3億5600万回だったラップ歌手ソウルジャ・ボーイの「クランク・ザット」のミュージックビデオ。2位が映画「トワイライト~初恋~」予告編、3位が米歌手マライア・キャリーの「タッチ・マイ・ボディ」のミュージックビデオ、4位がスタンダップ・コメディアン、ジェフ・ダンハムのビデオだった。
 ボイルさんは、米CNNの人気テレビ番組 「ラリー・キング・ライブ」に出演したほか、数多くの新聞やインターネット記事でも取り上げられている。
 ビジブルメジャーズは発表で「ボイルさんについて驚くのは、たった3週間前に突然現れてこれだけの記録を作ったことだ」とコメントした。 
 ボイルさんの出場するオーディションの準決勝は5月25日の週、決勝は5月30日に予定されている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090507-00000710-reu-ent

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いくつか、記事に関連して、面白い動画(イギリスのジョークとして)があったので紹介する。英語が苦手な方には申し訳ないが、字幕はないのでご了承いただきたい。

その1:番組の司会者として、出演者がクラックションで驚いてたことについて、「何百万人が見ているのに、クラックションなんかで驚くなんて恥ずかしいよね」と言っている最中に・・・

今にも、放送禁止用語を言いそうになっています。

その2:10年くらい前の子供向け番組の視聴者クイズコーナーで、適切な解答ができない解答者に・・・

英語な母国語でない我々にとってはなかなか難しいコーナーなのですが、このクイズではぬいぐるみが現わしている状況を韻を踏んで答えるというコーナーです。

解答は、Smitten Kitten(夢中になっている子猫)というもので、韻を踏んでいるわけです。司会者の二人が、しきりに「Kittyではなく、『子猫』の正式な言い回しは何?」とKittenという言葉を誘導したりしています。

答えられない解答者の子供に、「君のことが弱点な猫をなんて呼ぶ?(its a kitten that has a soft spot for you)」とほぼ解答に近いヒントを与えたのに、ヒントを繰り返しただけ(Soft Spot Kitten)の解答者に「出ていけ(GET OUT)」とキレてる素振りをしたり、「Kitty, Kitty Kitty」とただ繰り返していた解答者を馬鹿にしたような動きは、海外のテレビらしく、面白いです。

その3:上記で紹介したイギリスの人気番組「Saturday Night Takeaway」のCM

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05/03/2009

憲法記念日なので

憲法記念日なので、憲法にちなんだ記事を書きます。

ヤフーニュースで見たのですが、以下のような記事がありました。憲法記念日になると、改憲・護憲という話が出て、いつも9条が話題に上がります。

ただ、9条の解釈について十分に、国民一般は理解しているでしょうか。感覚や一定の解釈だけに従って、改憲が必要とか、護憲が重要という議論がされている気がしてなりません。

そこで、簡単に9条について、説明したいと思います。

9条1項ですが、解釈上重要な部分は、「『国際紛争を解決する手段としては』、永久にこれを放棄する」と定めている部分です。

まず、この部分で、何を放棄しているのかが問題となります。1つの見解(憲法学上の通説)は、『国際紛争を解決する手段』という部分につき、国際法上の用例でいう、「国家の政策上の手段としての戦争」を意味しており、これは侵略戦争の放棄であると考えます。この見解に従うと、自衛権は放棄していないということになります。

もう1つの見解は、あらゆる戦争の放棄をしたと考えます。

次に問題となるのが、9条2項です。2項は、「前項の目的を達するため」と定めています。

まず、憲法が九条の通説的な見解は、前項の目的とは、1項のいう「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求すること」と捉え、この為にはあらゆる戦争を放棄したと考え、自衛の戦争も放棄したと考えます。

これに対し、政府見解をはじめとする現実的な見解は、前項の目的とは、侵略戦争の放棄のためと理解し、自衛の戦争は許されると考えます。

さらに、解釈上の3つ目の問題点は、「戦力を保持しない」としている部分です。何が戦力なのかという議論があり、通説は警察力以上の力はすべて戦力と捉えます。

これに対し、政府見解は、自衛力を超える力が戦力であると説明します。

いずれにしても、これらの見解はあくまで、何の拘束力もありません。我が国で唯一権力をもって、判断できる機関は最高裁です。

最高裁が、9条をどのように判断しているかが重要であり、以上の議論は机上の空論でしかないといっても過言ではないかもしれません。

そこで、最高裁の判断を見るわけですが、砂川事件(最判昭和34年12月16日)が最高裁判例の中でも一番、9条に踏み込んだ判断をしています。

まず、最高裁は、9条により、我が国が主権国としてもつ固有の自衛権は否定されたものではなく、憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではないと判示しています。これは、自衛権の放棄はしていないということを明確にしています。

次に、憲法9条は我が国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることをなんら禁じるものではないと判示し、2項は、我が国がいわゆる戦力を保持し、自らその主体となり、指揮権・管理権を行使して、侵略戦争を引き起こすことが無いようにするための規定という考え方をしています。

そうすると、最高裁は、9条で禁止される戦争および行為は、①侵略戦争、②我が国が主体となって指揮権・管理権をを行使し得る戦力と考えていることがわかります。

他方で、最高裁は、③自衛のための戦力を禁じたかどうかについては判断せず、④一見極めて明白に違憲無効と認められない限り、裁判所の司法審査権の範囲外にあるという統治行為論にも言及しています。

結局のところ、最高裁判決から明らかなのは、侵略戦争は憲法上禁止されるということ、自衛権は我が国に存在するということのみです。

また、本判例の事件は、日米安保を扱った事件の中で判断されており、特に、否定する文言が無いことから、最高裁は、自衛権の中の集団的自衛権についても、日本には存在するという考えのように思われます。

以上のことを前提に、あとは私の私見です。

通常、政府見解や学説の多くは、現行法上、集団的自衛権は行使できないと説明しますが、少なくとも我が国で憲法の有権的解釈ができる最高裁がそれに言及したことはありません。したがって、勝手に言っているにすぎません。

現在政治家などが議論している9条改正議論ですが、改正しなくても、集団的自衛権の行使は可能でしょう。

仮に、最高裁が判断したとしても、最高裁は統治行為論を援用していますから、集団的自衛権の行使が侵略戦争に当たるような方法によりなされない限り、一見極めて明白に違憲無効とされる可能性は低いと思います。

以上のような理解からすると、憲法改正をする必要性があるのかは疑問ですし、しなくても、海賊船対策やPKO等において、武器使用の規制を解除することは十分対応できるのではないかと思っています。

むしろ、改正という名の下に、憲法の別の部分が国民の知らない間に改正され、権利利益を制限を認める余地ができる方が恐ろしいのではないでしょうか。

憲法改憲護憲の前に、最高裁の判断に対する検討や議論がなされ、国民に周知されるべきと私は思います。

以上、憲法記念日の記事でした。

「改悪の危険」「改正の王道を」=護憲、改憲両派が集会-憲法記念日
5月3日17時32分配信 時事通信

 憲法記念日の3日、憲法改正に賛成、反対する市民団体がそれぞれ東京都内で集会を開いた。
 護憲派の「5・3憲法集会」には4200人(主催者発表)が参加。ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英京都産業大教授が講演し「憲法9条改悪のきな臭いにおいがする。大変危険な状況だ」と強調。一方で「日本人の9条への思いは軽くない。改憲に乗らないと信じている」と話した。
 社民党の福島瑞穂党首は、アフリカ・ソマリア沖の海賊対策の根拠となる海賊対処法案について「ソマリア沖に範囲を限っていない。『どこでもドア』を使って自衛隊が世界中に行くことに大きな危惧(きぐ)を持っている」と語った。
 改憲派は「第40回新しい憲法をつくる国民大会」を開き、500人(同)が出席。小池百合子元防衛相は「世界貢献は中途半端、自国を守ることにも大きな疑問符が付いている」と現行憲法を批判。「憲法改正という王道を進む政治状況を作ることがわれわれの任務だ。衆院選後に政治は一度大同団結すべきだ」と訴えた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090503-00000067-jij-soci

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ジェイミー・プー(Jamie Pugh)さんが新たなライバルか?(+ボイルさんの過去映像)

スーザン・ボイルさんで、お馴染みの番組、「Britains Got Talent」で、また新たなスターが登場しそうな気配です。

番組4回目、ジェイミー・プー(Jamie Pugh)さんが、Les Miserablesの主人公ジャン・ヴァルジャンが歌う、「Bring Him Home」を歌い、会場ではスタンディング・オベージョンが起こりました。審査員も高く評価したようです。

職業は、ピザの宅配業務(運転手)だそうで、今までこれだけの観客の前で歌ったことはなかったそうです。なので、動画でもわかりますがかなり緊張しています。極度の上がり症らしいです。

この「Bring Him Home」は私も好きな歌です。どういう場面の歌かというと、主人公、ヴァルジャンは、育ててきたコゼットと恋仲に堕ちたマリウスのことを知り、マリウスを助けるため、革命軍の一員として参加します。

マリウスは、フランス革命の中、学生の一人として反乱軍の一員として決起しようとしています。

戦いの前夜に、ヴァルジャンは自分の命と引き換えに、娘・コゼットを愛するマリウスの命を助けてくれるように、神に向かって祈るという場面で、この歌がうたわれます。

個人的な感想ですが、ジェイミーさんの歌声は、確かに上手いですし、なかなか思いが伝わってきて良いとは思います。ただ、ボイルさんと比べると、歌の歌唱力、技術力からすると、多少劣る気がします。

この歌は、本当に難しい歌で、ジェイミーさんくらい歌えるのも大したものなのですが、歌の中で最も重要なパートが省略されており、少し物足りなさを感じます。その部分を、強弱をつけて、感情的に歌いあげられるかどうかがこの歌の一番の重要な要素だと思うので、その部分が欠けているのは少し残念です。

また、ボイルさんは、第一声から明らかなのですが、ある程度トレーニングされた声で、遠くまで届く力強さが声の奥にあり、その強弱の付け方も、歌のパートに合わせてうまく行っており、その技術と比べると、ジェイミーさんは少し見劣りしてしまいます。

いずれにしても、一般人がこうやって一瞬にして注目を浴びる番組がイギリスで高視聴率なのは、同じような芸能人ばかりが番組で騒いでいるような日本のバラエティー番組とは違うところかもしれません。

以下、Bring Him Homeの歌詞と、ブロードウェイとロンドンでオリジナルのヴァルジャン役をやったColm Wilkinsonさんの「Bring Him Home」です。

VALJEAN
God on high
Hear my prayer
In my need
You have always been there

He is young
He's afraid
Let him rest
Heaven blessed.
Bring him home
Bring him home
Bring him home.

He's like the son I might have known
If God had granted me a son.
The summers die
One by one
How soon they fly
On and on
And I am old
And will be gone.

Bring him peace
Bring him joy
He is young
He is only a boy

You can take
You can give
Let him be
Let him live
If I die, let me die
Let him live
Bring him home
Bring him home
Bring him home.

なお、ボイルさんの情報がYahooニュースにありました。

Yahooの記事によると、22歳となっていますが、デイリーレコード紙の電子版によれば、これは、ボイルさんが33歳のときにオーディション番組に参加した時の映像のようです。

ジーザス・クライスト・スーパースターというミュージカルの歌「I Don't Know How To Love Him」です。

イギリスでは、このコンテストの司会者だったマイケル・バリモア(Michael Barrymore)氏がいかに先見の明が無いかがわかると話題になっているそうです。

確かに、スーザンの近くで、馬鹿にしたような態度を取っている人がいますね。これがバリモア氏なのでしょうか。Britains Got Talentの司会者、アントとデック(Ant and Dec)のような盛り上げ方ものできないようです。

めげずに歌い続けるボイルさんも素晴らしいです。

47歳の歌姫スーザン・ボイルさん、22歳時のビデオ見つかる

5月2日15時51分配信 (CNN) 英国のオーディション番組で突出した美声を披露し、突如注目を浴び始めたスーザン・ボイルさん(47)が、22歳だった25年前にコンテスト会場で歌っていたビデオが見つかった。当時の様子を撮影していた男性がビデオを探し出し、スコットランド紙に渡して1日に公開された。ボイルさんが歌う様子をおさめた、最も古いビデオと見られる。

ビデオはスコットランド紙デイリー・レコードのウェブサイトで視聴できる。

ビデオは1984年、スコットランドのサッカークラブ、マザーウェルFCの本拠地フィア・パーク・ソシアル・クラブで開かれたコンテストを撮影したもの。撮影者のゲリー・マッギネスさん(61)が、最近のボイルさんの報道をみて当時のことを思い出し、ビデオを探したという。

ボイルさんがステージで歌ったのは、バーブラ・ストライサンドの「追憶(The Way We Were)」。マッギネスさんはこの夜のことを鮮明に覚えており、「彼女はとてもシャイな若い女の子で、後ろ姿が魅力的だった。あまりにもおとなしすぎて誰も注目していなかった。けれど、歌い始めた途端、みんなが彼女に気づいたんだ」と、当時の様子を語っている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090502-00000006-cnn-int

また、上記の動画とは別に、ヤフー記事の動画は以下のリンクで見れると思います。

http://www.dailyrecord.co.uk/news/scottish-news/2009/04/30/video-exclusive-susan-boyle-s-earliest-singing-performance-on-film-revealed-86908-21321999/

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