裁判にある誤解とトリビア
裁判によくある誤解とトリビアについて紹介する。
<初心者編>
1.日本の裁判官は木槌を持っていない。もっとも、アメリカやイギリス、フランスの裁判官は木槌を利用する。これは、判事に限られたことではなく、伝統的に議長やその会場の統制をする者が利用してきたので、その一例として、海外の裁判所では利用されている。
2.弁護人と訴訟代理人は違う。刑事手続きでは、弁護人と言い、民事手続きでは、訴訟代理人という。よって、弁護士というのは、職業を示す言葉であって、訴訟手続き上の言葉ではない。
3.滅多に法廷で「異議あり!」は聞かない。恥ずかしいからかもしれないが、多くの場合は、「すいません、今のところ異議をとどめます」などの申し出が多い。
4.法廷を弁護人や検察官、訴訟代理人は動き回って発言をすることはない。公判期日、弁論期日での発言はすべて調書に記録されるため、設置されているマイクに向かって発言しなければならない。ドラマで、法廷内を歩き回って色々発言するシーンがあるが、実際にそれをやれば、裁判官に、「先生、マイクに向かって話してください」と怒られる。
5.次回期日指定をするときに、裁判官が、「○月○日△△時はどうですか?」と訴訟代理人に聞くと、都合が悪い場合に、「その日は都合が悪いです」とか、「その日は差支えます」というのではなく、「差支えです」という言葉のみが飛び交うことが多い。
<中級者編>
身柄の拘束手続きには、逮捕と勾留が正しい言葉であり、拘置とか拘留とかいう表現は、法律上存在せず、誤りである。よって、拘置期限という言葉も存在しない。
<上級者編>
刑事事件において、被疑者ないし被告人が勾留された場合、刑訴法82条1項、2項に基づき、勾留理由の開示請求ができる。
滅多に利用されない制度ではあるが、利用した場合に、弁護人等が、勾留理由に対して意見を述べることができる。しかし、この制度はあくまで、勾留理由が何か開示するだけの制度であり、不服申し立て制度ではない。
よって、勾留理由として、罪証隠滅の恐れ、逃亡の恐れを裁判官が挙げて開示したことに対し、それに納得できないということを言っても、多くの場合はあまり意味が無いが、稀に傍聴人等が騒ぎだし、法廷が混乱することがある(学生運動や労働争議関係で刑事事件に発展した場合にある)。
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