法令遵守意識に欠ける企業
すき家を運営するゼンショーグループが牛丼の値下げ合戦に参戦という記事がありましたが、同時に、未払い残業代訴訟をしている従業員に対する報復的告訴と思われる行為をしていることが明らかになりました。
こういうのをコンプライアンス意識の欠如と言います。訴えたから報復的な訴訟をする。まして、今回は刑事告訴したわけです。
こういうのを順法意識の欠如と言わずして何をいうのでしょうか。
労働法関係訴訟でこういう事実が出てくれば、間違いなく会社側に不利な判断がでます。会社側は、法律に違反しているなら、それを改善する努力をすることが一番営業収益の向上につながることをはすれてはいけません。
こういう報道が伝わるだけで、イメージは著しく下がりますし、私のように労働者に共感した消費者が、すき家より、吉野家や、松屋にしようという不買運動に発展することだって十分考えられます。
昨今、裁判員制度も始まることから、国民の間での法律に関する意識は高まっている気がします。法令遵守を徹底しない企業に対しては、社会的制裁としての不買運動活動も今後多くなるでしょう。
そういうリスクを見越して、取締役等も行動しなければ、株主代表訴訟において、監視義務違反に問われ、任務懈怠責任に基づく損害賠償責任を負うことにもなりかねません。
役員など立場が高くなればなるほど、社会的・法的責任が重くなることを自覚することも重要でしょう。
私は吉野家の社員でもないし何の利害関係もありませんが、吉野家グループは、この企業に比べると順法意識が高いと評価しています。アメリカ産牛肉を使っていますが、吉野家は、輸入条件を満たしていない部位が混入しているのをグループ会社の輸入部門が事前に見つけ、すぐに政府に報告しています。
普通であれば、輸入した牛肉に、危険な部位と言われる部分(もちろんへたれ牛ではない肉なのでその部位自体は危険ではなかったわけでですが)が混入していたというだけで、アメリカ産牛肉を使う吉野家にとってイメージは悪くなります。
しかし、そういうことで、隠したりするのではなく自ら吉野家は、事実を報告しました。当時のマスコミや共産党なんかは(今もそうですが)は、「やっぱりアメリカ産牛肉は危険だ」という不安を煽るだけで、その肉を使う吉野家の牛丼も危険だというようなミスリーディングなメッセージとも取られかねないような報道をしました。皆さんの記憶にも新しいと思います。
私自身、未だにアメリカ産牛肉には抵抗がありますし、基本的にアメリカ産牛肉を好んで食べることはしません。しかし、今回の報道を機に、訴訟をした従業員に報復的な訴訟をし返す会社の商品と、不利な事実を公表しても食の安全を確保しようとしつつ、味のこだわりのためにアメリカ産牛肉を提供する会社の商品とを比較したときに、どっちの商品が魅力的かということを思い直しました。
私個人は、後者の商品の方が安心だし、自分の400円はどうせなら、コンプライアンス意識の高い企業の利潤になってほしいと考えます。
消費者も賢い購買行動にでなければなりません。不況なので安いものが良いというのはわかりますが、法令遵守意識のない会社に加担することになるという気持ちはどこかでもって購買行動を決めてほしいとも一方で望みます。
すき家ゼンショー、告発した店員を告訴「飯5杯盗んだ」
2009年4月15日21時0分
店のご飯を無断で食べたなどとして、牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショー(本社・東京都港区)が、残業代不払いで同社を刑事告訴した仙台市の女性店員(41)を、窃盗などの疑いで仙台地検に刑事告訴していたことが分かった。地検はすでに店員を不起訴としており、店員側は「こんな手段で威嚇、報復するのは許されない」と反発している。
店員側の弁護士らによると、ゼンショーは、商品用のご飯どんぶり5杯分を無断で食べたとする窃盗などの疑いで、店員を告訴した。店の監視カメラの映像が証拠だとしている。
店員は「ご飯に洗浄用ブラシの毛が入ったため商品に使わず、まかない用のおにぎりにした」などと反論。地検は今年3月、嫌疑不十分で店員を不起訴とした。
ゼンショー広報室は告訴の事実を認めたうえで、「正式な法手続きで進めたことであり、コメントは差し控えたい」としている。
店員は昨年4月、仲間2人と、残業代の割増賃金が不払いだとして労働基準法違反の疑いで同社を刑事告訴した。仙台地検は今年1月、同社を不起訴としたが、店員側が不払い分の支払いを同社に求めた民事訴訟が続いている。http://www.asahi.com/national/update/0415/TKY200904150306.html
不況で熱々 牛丼戦争再び?
4月16日7時57分配信 産経新聞景気が低迷する中で、再び牛丼の値下げ合戦が勃発(ぼっぱつ)する可能性が出てきた。牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーは15日、主力の牛丼とカレーの価格を今月23日から値下げすると発表した。すでに期間限定で値下げした吉野家と松屋に対抗し、恒常的な値下げに踏み切ることで来店客を増やして増収につなげるのが狙いだ。
ゼンショーの発表によると、すき家で販売する牛丼並盛りを現行より20円、カレー並盛りは50円それぞれ値下げして各330円とする。すき家の平成21年3月期の既存店客単価は前期比2・1%減少したほか、売上高も同1・6%減っており、値下げで価格に敏感な消費者の来店を促す。
すでに吉野家は15日までの期間限定で牛丼や定食などを50円値下げするキャンペーンを展開したほか、松屋も20日まで牛めしを80円値下げしている。ただ、吉野家を傘下に置く吉野家ホールディングス(HD)の安部修仁社長は、14日の会見で「値下げよりも品質を優先したい」と述べ、恒常的な値下げには慎重な構えをみせる。
吉野家と松屋は米国産の牛肉を主に使用しており、すき家がメーンとする豪州産よりも単価が約1・5倍高いため、コスト的に値下げは難しいからだ。しかし、吉野家の21年2月期の既存店客数は前年同期に比べて3・2%減、松屋も21年3月期で同3・7%減となっている。こうした中ですき家が恒常的な値下げに出ることでさらに客足を奪われれば、「対抗的な値下げに踏み切らざるを得ない」(業界関係者)とみられている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090416-00000114-san-bus_all
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