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03/04/2009

こんな時こそ報道は慎重に

政治資金規正法絡みで、小沢民主党代表の政治団体への捜査が問題となっている。

政権交代が想定されている微妙な時期だからこそ、報道は慎重であるべきだと思う。捜査自体は、令状に基づいてなされているので、民主党関係者が言っているような「国策捜査」かどうかはわからないが、いずれにしても、恣意的な「国策報道」にはならないことを期待する。

裁判員制度も始まるわけで、国民の司法に対する意識の向上も必要である。そのためには、マスメディアも「疑わしきは被告人の利益に」を徹底することが必要だろう。

東京地検特捜部が動いているのだから、確証があるということをいうことが多いが、これで有罪先行の報道をすることは非常に危険である。

昨年7月には、同じく東京地検特捜部が担当して起訴した旧長銀の経営陣に対する粉飾決済に関する無罪判決が最高裁で確定している。しかし、その後の名誉回復は図られているだろうか。

逮捕されたら有罪だという意識を根底から取り除かないと、裁判員制度はうまく機能しないだろうし、冤罪の温床になりかねない。

今回の報道が有罪先行報道になってしまえば、政権交代が現実味を帯びているだけに、民主主義の根幹を揺るがしかねない事態になる。最初だけセンセーションに報道するのではなく、争点は何なのかしっかりと経緯を報道する必要があるだろう。

特に、保守産経系列のフジテレビは喜んで報道している感じがする。

もっとも、小沢氏も今回の事態に対し、自ら説明責任をしっかり果たすことが重要である。

なお、今回は不正な献金である認識の有無という当事者の主観的意思内容が問題となる。つまり、政治団体から受けているという主観的意思であれば、違法ではなく、企業から受けているという主観的意思があったならば、違法となるわけであるが、この認定はそう簡単・単純に行うことはできない。

裁判所は、様々な客観的要素(例えば、取り交わしたメモ、証言)の証明力を勘案した上で、それらを総合考量して、慎重に判断するのであって、東京地検特捜部の起訴だから、有罪は堅いとか、証拠が相当あるというのは誤った理解を国民に与えることになる。

裁判所からすれば、東京地検特捜部であろうと、一弁護人であろうと、「当事者はずれた立証をしており、争点がわかっていない」、「判決を書く上で、そこの事実を聞きたいわけではない」、「立証したつもりでいるかもしれないが、全然立証できていない」と思うことがしばしばある。

報道関係者は、そういう司法の実態があることをもう少し慎重に考えて報道すべきである。また、今後法曹関係者が解説するだろうが、検察出身者だけでなく、裁判官出身者の意見をより報道すべきとも考える。

有罪無罪の判断は裁判官の心証によるのであって、その心証がどう形成されるのか経験に基づいて解説できるのは唯一裁判官経験の長い人だと個人的には思うが、多くの場合弁護人経験や検察官経験しかないメディア弁護士が解説していることが多い。

東京地検「心証ある」=自民の細田幹事長-小沢事務所への強制捜査で
3月3日18時6分配信 時事通信

 自民党の細田博之幹事長は3日午後、民主党の小沢一郎代表関連の政治団体が西松建設側から違法献金を受けていたとされる問題について、党本部で記者団に「事実は司直の手で今後明らかになる。小沢事務所に強制捜査が入ったということは、(東京地検に)ある程度の心証があると思うが、コメントは控えたい」と述べた。
 別の自民党幹部は「小沢氏には説明責任が出てくる」と指摘。衆院解散・総選挙への影響については「時期が早まるとかそんなことは考えていない」と語った

この細田氏のような発言が検察が常に正しい判断をしているという誤った認識を物語っている。

また、ある程度の心証では有罪判断はできない。ある事実を認定する上での心象の程度としては、「合理的な疑いを生じる余地がない程度に真実であるとの確信(真実の高度の蓋然性)」を、民事でも刑事でも要求するのが判例である。*民事においては、証拠の優越で足りると考えている実務家も多いが判例からすると間違いである。

いずれにしても、自民党関係者は、にわかに喜んでいるようであるが、自民党にも捜査が波及するのは明らかだろうし、波及しなければ、かなり不自然な気がする。

また、麻生総理の問題行為、国益損失(4島返還放棄とも取られかねない合意)に比べれば、我々の生活に関係する問題としてはその影響力は限定的である。

今後政治資金と倫理の問題が出てくるだろうが、9割の不支持を受けても行政の長として居座る総理の方が問題だろう。

<小沢氏>「問題ない」幹部会で献金疑惑に大半割く
3月4日2時37分配信 毎日新聞

 準大手ゼネコン「西松建設」側からの違法献金疑惑が浮上した3日、民主党の小沢一郎代表は、予定より1時間10分遅れの午後3時10分になって党本部に姿を現した。「そのまま姿を現さないのではないか」との憶測も党内に飛ぶ中、「河村君は来てるんだろうな」と職員に声をかけ、名古屋市長選出馬を表明している河村たかし衆院議員との面会に臨んだ。

 その後、小沢氏は引き続き党本部で幹部会に臨んだ。菅直人代表代行、鳩山由紀夫幹事長、輿石東参院議員会長、山岡賢次国対委員長、直嶋正行政調会長が出席。約1時間に及んだ幹部会では、本来の議題だった内閣不信任案や首相問責決議案の提出時期なども話題には上ったが、大半が小沢氏の献金疑惑に費やされた。小沢氏からは「全く問題はない。全く心当たりがない。きちんとやっている。すべて合法的にやっている。適正に処理している」などと説明があり、「必要があれば自ら説明する」との姿勢を示したという。

 小沢氏は1月31日、盛岡市での記者会見で、西松建設からの政治献金に関して「全部政治資金規正法にのっとって報告している。原資そのものが違法だという事実がはっきりすれば対応を考えたい」と語っていた。これに関連し、3日の幹部会で小沢氏は「個人的な献金と思っていた。そうでないなら返却する」と語ったという。

 小沢氏は3日午後4時20分ごろ、記者団の問いかけには無言のまま党本部を出た。支持者らからの問い合わせに追われた事務所の秘書には「やましいことは一切ないと言うように」と指示したという。夜には東京・紀尾井町の個人事務所に入った。関係者と対応を協議したとみられる。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090304-00000010-mai-pol

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Comments

政権交代が現実味を帯びる微妙な時期の不祥事の場合、裁判所は介入に消極的になるのが通例ですが、
検察は積極的なことが多いですね。笑

同じ法曹資格保有者なのに、裁判官と検察官のこの態度の違いはどこから生じるのでしょう???と思ってしまいました。

Posted by: scott1982 | 03/03/2009 at 08:51 PM

Scottさん

コメント有難うございます。

あくまで行政の役人という立場(準司法的立場とも言いますが)と純司法の立場の違いなのかもしれませんね。

憲法76条3項が「すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される」と定めていることから明らかなように、裁判官一人一人が司法権の担い手という権力そのものですから、自己の権力に対する自制心があるのかもしれません。

他方、検察官については、あくまで一般的ですが、体育会系の人や変わった方が多いかなという印象もありますが、おそらく起訴権限の唯一の担い手であるわけですから、刑訴1条の真実発見を優先する意識があるのかもしれませんね。

いずれにしても、1950年にあった造船疑獄事件のような国策捜査が疑われる事件も多いですし、三権分立の精神からすると、はたして選挙の近い時期に、捜査するほどの必要性が高い事件だったのか、また主観的要素の認定において裁判所が高度の真実たる蓋然性ありといえるだけの証拠資料があるのかどうかが問題でしょう。

仮にですが、逮捕して自白頼みということが万が一あれば、裁判員制度を控えていることもあり、批判の矛先は司法界全体に向けられる恐れすらある気もします。

Posted by: ESQ | 03/03/2009 at 11:46 PM

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