検察の事実上の敗北。
今後不公正な検察による捜査権の行使の問題が、国民の批判の的になるかもしれない。
昔から、私は亀井静香氏をさほど良い政治家と思ったことはないが、今回の同氏の批判にはそれなりの説得力があるし、小沢氏の関わったと言われている政治団体以上にダミーなものはたくさん存在するだろう。
それを差し置き、権力の中枢である与党ではない野党を狙った理由を示すべきだし、贈収賄疑惑まで情報を操作してマスメディアに垂れ流した責任としても、なぜ小沢氏への捜査が重要だったのかを検察は説明すべきであろう。
「自民の資金団体はダミー」=亀井氏
3月25日17時5分配信 時事通信国民新党の亀井静香代表代行は25日の記者会見で、東京地検が小沢一郎民主党代表の公設秘書を政治資金規正法違反罪で起訴したことに関連し「自民党は(政治資金団体の)国民政治協会を通じて、小沢氏や民主党の何十倍もゼネコンから献金をずっと受けている。この協会は全くダミーだ。検察はお構いなしなのか」と述べた。
同地検が起訴の理由を「特定の建設業者から長年、多額の金銭提供を受けた事実を国民の目から覆い隠した」と説明していることに疑問を呈した発言だ。亀井氏はまた、「(捜査が)これだけで終わるのであれば、検事総長以下、なぜ今やったのかを国民に説明しないと(いけない)」と語り、同地検に説明責任を果たすよう求めた。
さらに、面白いことに、検察OBから今回の起訴と捜査手法に様々な評価が出始めていることである。郷原弁護士だけでなく、宗像先生も今回の検察の動きには疑義を呈しているようである。
宗像先生は、検察OBといっても、特捜部長を務めるなど、郷原先生に比べれば、より検察検察しているキャリアの持ち主ではある。そのようなOBからも、「乱暴」といわれる今の検察の在り方については、何らかの形で見直しが必要になってくる気がする。
特に、宗像先生がいう、「従来の基準を変えた」という指摘に、私はすごく引っかかりを感じる。なぜ、従来の基準を変える必要があったのか。それこそ、田原総一郎氏をはじめとするジャーナリストがいう「検察の青年将校化」とか、「国策捜査」とかいう疑念がますます強くなってくるだろう。
最近は、裁判員制度は有罪・厳罰を目論む検察によって進められているという主張がかなり聞こえてくる。もちろん、制度趣旨も制度の導入過程においてもそのようなことは目的とされてはいない。しかし、結果として、検察だけに有利になる制度になりつつあることは、国民自身が肝に銘じなければならない。
「それでも僕はやっていない」という映画の最後に、「自分が裁かれているという気持ちで私を裁いてください」というような一節があったように思う。
国民自身のレベル、民度、意識を向上させなければ、無意識的に為政者や権力の意図に乗せられてしまったり、冤罪を生みだしたりするなど国全体の利益を損なうことがあるという自覚が今の日本には必要だろう。
ちなみに、ある裁判官の方の有名なブログでは、下記の土本氏の発言にある「一罰百戒」について、「自民党議員には捜査が及ばないことが検察OBの中でも当然の了解のようになっているように感じる」との指摘がされていた。
また、インターネット関係や刑事事件関係で有名な落合洋司弁護士のブログでも、今回の検察の捜査に対し、「『失敗』という烙印を押しても良いかもしれません」と痛烈に批判している。
このように司法関係者の大勢が、「この起訴には問題があるな。」「そもそもダミーであるとは認定が困難である。」「資金提供者を記載するのではなく、寄付名義人を記載するのだから、違法性はない」など検察の起訴判断に批判的な眼差しをもっている事件を私は過去振り返ってもあまり覚えが無い。
それだけ重大な決断をした検察は、その自覚を持って今後の捜査に当たってほしい。さもなくば、検察に対する信頼、司法に対する信頼を著しく低下させ、三権分立の根本を揺るがす、暴挙と評されることになるだろう。
【西松献金】政治団体のダミー性焦点 宗像紀夫元東京地検特捜部長
2009.3.24 07:36政権交代の可能性もある次期衆院選を控えた状況下で、民主党の小沢一郎代表絡みの事件に着手することの是非は、事件捜査全体をみなければ判断できない。例えば、今やらなければ次の重大な事件捜査に支障が出るなどの理由があれば理解できる。しかし、秘書の政治資金規正法違反事件だけで終わってしまえば、この時点での着手の正当性を説明することは難しい。
特捜部は今回、西松建設側がダミー団体を通じて提供した献金の実態が悪質なもの、つまり、公共工事の受注の謝礼であるという形で組み立てようとしているのではないか。
ただ、今回の事件は微妙だ。特捜部が政治団体をダミーと見立てても、客観的に立証するのは容易ではないだろう。ダミーというのは西松側からの見方であり、小沢氏側は政治団体から合法的に受けたと主張するだろう。政治団体のダミー性と、その認識が立証の上で最大のポイントになる。
捜査で疑問なのは、西松建設が2つの政治団体を通して小沢氏側の団体に献金しているが、ほかの政治家側にも同じことをやっており、小沢氏側だけの問題ではないこと。ほかの政治家の政治団体の関係者すべてを調べた上でないと結論は出せないはずだ。
小沢氏については、一般論で言えば、今回の献金の仕組みを知っていて秘書に受けなさいと指示していれば共犯にもなるが、政治家は普通、そこまで把握していないだろう。今後の展開は大久保容疑者の再逮捕の有無が鍵になる。(談)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090324/crm0903240737007-n1.htm
「やや乱暴では」「一罰百戒の意義」…検察OBの評価分かれる
3月25日2時21分配信 読売新聞小沢一郎・民主党代表の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件。検察OBの間では、今回の特捜部の捜査に対する評価が分かれている。
東京地検の特捜部長時代にゼネコン汚職事件の捜査を指揮した宗像紀夫・中央大法科大学院教授は、「特捜部は、従来の価値基準を変えて摘発した」と批判的だ。「政治資金規正法上、最も悪質なのは、収支報告書に記載しないヤミ献金。今回は、献金自体は記載されており、透明化の義務はある程度果たされていた」と指摘。さらに、「政治状況が緊迫する今、いきなり野党第1党の党首の秘書を逮捕したのは、やや乱暴だったのではないか」と疑問を投げかけた。
自民党長崎県連の違法献金事件(2003年)の捜査に携わった元検事の郷原信郎・桐蔭横浜大法科大学院教授も、「西松建設の政治団体がダミーなら、例えば業界団体が設立する政治団体はどうなのか。今回の事件が違法だとしても、ヤミ献金ではないので悪質性は低く、罰金刑が妥当。検察は、なぜ今回の事件を摘発したか十分に説明する義務がある」と指摘した。
一方、元最高検検事の土本武司・白鴎大法科大学院長は、「規正法は、政治と企業の癒着構造をただそうと、改正を重ねてきた。企業献金にダミーの政治団体を使うような、手の込んだ犯罪を立件したことは、一罰百戒的な意義がある」と評価。その上で「捜査がこれだけで終わるとは考えられない」との見方を示した。
元東京地検特捜部長の河上和雄弁護士も、「見返りを期待する企業が、その姿を巧妙に隠して献金した極めて悪質な事件。政治腐敗の温床となってきた企業献金のあり方が問われている中で、特捜部の摘発は当然だ」と意義を語る。さらに、「資金管理団体に加え、政治家の『第2の財布』である政党支部への献金も立件され、両団体の代表者である小沢代表の責任は免れないだろう」と話した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090325-00000165-yom-soci
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