事実が何なのかという判断が先なのでは?
鳩山幹事長は、「新事実判明」とはどの時点を言っているのでしょうか。
裁判において事実が明らかになった時なのか、それとも検察の垂れ流す情報で事実とされうる話が明らかになった時でしょうか。
否認事件においては、事実が何なのかを簡単に断定すべきではありません。裁判所は常に慎重に判断します。今回も、小沢氏の秘書や小沢代表自身は違法性を否認していますし、そもそも今回の事件においては、違法性の認定が難しいという特徴もあります。
以前、このブログで、痴漢冤罪に関する最高裁判例を紹介しました。これは民事事件の中で示された判断ですが、裁判所の事実認定に大きな影響力を与えるものだと思います。
どういう事案だったかは、こちらで確認してもらいたいのですが、何を言いたいかといいますと、何が事実なのかという事実認定作業というのは綿密に行われているということです。この判例は、高裁判決の乱雑な事実認定に不備があるとして、差し戻しました。
「検察がいうから」とか、「メディアがいうから」という単純なことで、それを事実として捉えることは、あってはなりません。これは司法手続きの大原則です。
事実認定があって初めて、法律の適用ができるのであって、この事実認定作業を誤れば、法適用も誤ります。実務では、事実認定が裁判での勝敗を分けると良く言われています。
そういう意味で、『何が事実なのか』という視点を裁判員制度が始まる今、国民全体が意識しなければならないのではないでしょうか。
代表辞任か、次の代表は誰かという節操のない報道が目立ちますが、否認事件である以上、国民は冷静な目でこの事件を捉えるべきでしょう。
直近の過去に東京地検特捜部が担当した事件で、最高裁で無罪が確定した冤罪事件(旧長銀経営者に対する粉飾決済による証券取引法違反事件)があることも忘れてはいけません。
今回の小沢代表と西松の事件は、国民の裁判員たる資質を考える上でも非常に重要な気がしています。
小沢代表、進退発展も=「新事実判明なら」-民主幹事長
3月8日10時26分配信 時事通信民主党の鳩山由紀夫幹事長は8日午前のNHK番組で、小沢一郎代表の資金管理団体をめぐる違法献金事件に関し、「(小沢氏の)進退問題が浮上しないと言い切るつもりはない。当然、新たな事実が判明すれば、新たな展開になると思う」と述べ、捜査の展開によっては代表辞任もあり得るとの認識を示した。
鳩山氏は、小沢氏の秘書が逮捕された3日には「この問題で今すぐにという判断にはならない」と述べ、進退問題への発展を否定していた。しかし、一部世論調査で小沢氏の辞任を求める声が大きいことや、民主党内で次期衆院選への危機感が強まっていることなどを考慮し、発言を修正したとみられる。
なお、漆間発言について、いろいろな声が出ていますが、あるブログでは、河村官房長官もその旨の発言をしていたという指摘を見かけました。いずれにしても、そういう不適切な発言は、捜査への不信を増大させることに間違いはありません。
さらに、一部報道では、小沢代表の秘書が西松建設側に請求書を送りつけていたという話があったようですが、誤報だったようです。
否認事件のおいて、あたかも犯人性を決めつけるような事実のでっち上げであり、あってはならない誤報です。これについて、どうしてかかる誤報が生じたのかメディア自身での検証を徹底させるべきでしょう。
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