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03/05/2009

裁判員制度が始まるからこそ、刑事訴訟の原則の徹底を

昨日に引き続き、小沢民主党代表の第1公設秘書逮捕事件について、一言言いたい。

自民党の細田幹事長をはじめとする多くの与党議員が、「検察が捜査しているのだから、小沢代表に説明責任がある」などの発言をしている。マスコミも、説明責任という言葉を一斉に使っている。

しかし、説明責任は何を根拠に求めているものなのだろうか。

先日の記事でも指摘したが、この事件は、民主主義の根幹を揺さぶる検察の行動である。通常ならば、小沢代表以外の政治家も含めて捜査すべきであるし、このような狙いうちという疑惑が持たれるような手法は、三権分立の精神からすると、謙抑的に行われるべきであり、慎重でなければならない。

そして、刑事訴訟の基本原則は、犯罪の立証責任は、検察官の側になるのである。「疑わしきは被告人の利益に。」である。

また、起訴されるかどうかがポイントになっているが、起訴は民事訴訟でいう訴えの提起とからわないのであって、司法権を唯一になっているのは裁判所の裁判官であり、検察官ではない。

検察官は、行政官に過ぎず、起訴したとしても、無罪になれば、刑事責任を負ういわれはないし、むしろ起訴の判断に間違いがあったことになる。

こうした原理原則は、マスコミや政治家はもっと意識すべきである。このような検察が動けば限りなくクロという理解の仕方は、裁判員制度を控える我が国の国民に対し、非常に間違ったメッセージを送ることになりかねない。

私が今回この点を強く主張したい理由は、先日の記事にも書いたが、昨年7月に東京地検特捜部が起訴した重大事件である旧長銀経営陣への粉飾決済事件について、無罪判決が最高裁で確定した事例を、マスコミをはじめ全くもってこの社会が軽視しているためである。

無罪判決の確定は検察の起訴判断に誤りがあったことを意味する。そして、それは国家賠償請求の対象になる非常に重大な問題である。にもかかわらず、こうした重大な利益がかかわる問題であることをマスコミをはじめ与党の政治家も一切考えている素振りが無い。

検察が捜査しているから説明責任というのは、平時であるばわかる理由である。しかし、今回は、総選挙を控えた異常時における検察の捜査権行使である。そうすれば、検察の側で、今回の捜査権行使に至った理由を説明するのが、筋であろう。

さらに、挙証責任は常に検察にある。マスコミに情報を小出しにして、マスコミの関心を煽り、見せ締め的逮捕・起訴効果を狙っているとすれば、これは、司法に対する著しい不信を招きかねない。その意味で、鳩山由紀夫氏の主張は説得力がある。

検察は、たとえば逮捕状請求の際に疎明した逮捕理由や逮捕の必要性等について、可能な限り情報を公開すべきであるし、それをマスコミは正確に伝えて、国民に判断の材料を与えるべきである。

起訴があればクロという認識を今回を機に考え直さなければ、5月からの裁判員制度は有罪のための制度、死刑台に送るための制度、冤罪の温床となる制度という結果にもなりかねず、恐ろしさを感じるわけである。

自民党の最大派閥の会長職にある町村氏は以下のような発言をしているが、検察の捜査批判が許されない本気で思っているとすれば、罪状を否認する被告人は冤罪を甘んじて受けろと言っているようなものである。これが行政の長の女房役と言われる官房長官や外務大臣を務めた人間の発言と思うと、いよいよ日本の司法に対する無防備な信頼に対し畏怖の念すら感じざるを得ない。

捜査批判「許しがたい」=自民町村氏
3月4日20時13分配信 時事通信

 自民党の町村信孝前官房長官は4日夜、都内で開かれた同党衆院議員の会合であいさつし、小沢一郎民主党代表の公設第一秘書が逮捕された事件に民主党幹部が「国策捜査」などと反発していることについて、「許しがたい。民主党が政権を取ったら、どんどん国策捜査をやると逆に言っているようなものだ」と批判した。 

さらに、今回の事件においても、検察側が従来のように情報を小出しにして世論への影響を狙っている(結果的にそうなったとししても)とすれば、司法への国民の信頼は著しく傷つけられるだろう。

最近は裁判員制度に対応すべく、法務省や検察は、法廷で様々な視覚効果を使うことにより裁判員への心象形成に役立てるために、劇場型の立証方法を模索していると言う指摘もある。

仮に、裁判員となる国民自身が、疑わしきは被告人の利益にとか、被告人=犯人ではないという前提、さらには起訴状一本主義の意義などについての理解が不足している中で、この制度が始まるとすれば、誤った判断が出る可能性は否定できない(もっとも、裁判官3人対裁判員全員という評議になることで、冤罪防止になるということもありえるが・・・)。

いずれにしても、今回の事件で、検察は正しいという国民の先入観が明らかになったのは事実である。日本の司法の崩壊につながらないことを深く危惧せざるを得ない。

小沢代表支持を確認=衆院選控え辞任論再燃も-民主執行部
3月4日22時36分配信 時事通信

 民主党の小沢一郎代表が4日、自らの資金管理団体をめぐる政治資金規正法違反事件について違法性を全面否定したことを受け、同党執行部は「説明責任を果たした」(鳩山由紀夫幹事長)として、小沢氏の代表続投を支持していく方針を確認した。ただ、事件が、次期衆院選での政権交代を目指す同党に与えた打撃は大きく、捜査の展開などによっては代表辞任論が再燃する可能性もある。
 鳩山氏は同日の党代議士会で、小沢氏が記者会見で東京地検の強制捜査を批判したことに触れ、「検察側は(捜査の)根拠を国民にしっかり示す説明責任がある」と指摘。「政権交代に向けて一致団結して行動してほしい」と結束を求めた。この後、鳩山氏は記者団に、党として事実関係を調査する考えはないことを明らかにした。
 これに先立つ参院議員総会で、輿石東参院議員会長も「責任を取ろうにも取る必要がない」と述べ、小沢氏を擁護した。しかし、衆院選への影響を懸念する党内には「もっと大きな容疑が出てくれば、代表は辞めざるを得ない」(中堅)との見方が出ている。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090304-00000184-jij-pol

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ひきつづき小沢一郎氏の公設第1秘書逮捕の件について。 裁判員制度についてのビデオニュース・ドット・コムのマル激トーク・オン・ディマンドを見て初めて知ったのだが、逮捕された人が、実際に裁判にかけられるかどうかは、検察が決めている。 つまり、裁判で有罪になるかどうか以前に、逮捕した容疑者(まだ有罪かどうかも分からない人)を、そもそも裁判にかけるかどうか、それはすべて検察が決めているのだ。 このことをち... [Read More]

Tracked on 03/05/2009 at 12:20 AM

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