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03/08/2009

西松事件は裁判員制度の成否にも影響か。(世論調査に見る危機)

世論の動向や政治家の反応を見ていると、はたしてこの国において裁判員制度はやるべきなのだろうかと再考してしまうのは私だけでしょうか。

裁判を行う上で徹底されなきゃいけないのが、「疑わしきは被告人の利益に」ということと、起訴状一本主義です。

起訴状一本主義とは、裁判官の予断を排除するため、起訴の際には起訴状のみを提出させることができ、その他予断を生じさせる恐れのあるものを添付したり、引用してはならないことが刑訴法265条6項により規定されています。この他、予断排除のためには、捜査段階で、逮捕状や勾留令状、捜索差押令状等の発付を行う令状裁判官と第1回公判期日の担当裁判官は別の者でなければならない(刑訴法280条)など、種々の規定により、予断排除を徹底しようと努力しています。

このことは、裁判員にも要請されることです。

しかしながら、当の裁判員になりうる国民が、事前にマスメディアの情報に触れ、警察および検察から意図的に垂れ流される情報をそのまま受取り、それが真実であるかのような心証を抱いたまま裁判に参加するとなると、刑事事件の原則を揺るがし、ひいては冤罪の温床になりかねません。

実際に、イギリスなどでは、陪審員裁判を近年は極力減らす方向に進んでいます。それは、不公正さが出てしまうためと言われています。

我が国は裁判員制度を採用したわけですから、裁判員制度への参加を呼びかけるだけでなく、裁判所も、裁判員に対し資質ある裁判員を確保すべく、予断排除の姿勢を啓蒙すべきではないでしょうか。

裁判官のみの現行制度では、確かに十分な常識的事実認定に対する疑問があるのも確かです。しかしながら、逆に一般人が参加する裁判員制度により、常識的事実認定の基礎に予断があったということになれば、これは明らかに背理です。

裁判員制度は、国民に司法参加の機会を与える権利でもあります。したがって、この権利を適正化ならしめるためにも、国民の側による刑事原則の理解と、予断排除の努力が必要でしょう。

このような世論調査の結果は予想できましたが、被疑者が否認しているにもかかわらず、検察から流されている一連の報道のみをもって、国民の判断が出ているとすれば、裁判員制度を控えている中、テレビや新聞は正しいと思いこんでいるのではないかと非常に怖さを感じてしまいます。

現役の裁判官は一般的に世間とのかかわり合いを極力なくすようにする傾向があると言われています。それはやはり予断排除の関係もあるのかもしれません。

それが問題だということで、裁判員制度が採用されるわけですが、意図的な情報操作があるかもしれないという意識を持たずに無批判にメディア報道等を信用する人が裁判員になるとすれば、冤罪のおそれが生じてしまい、制度として失敗ということになるのではと懸念します。

穿った見方ですが、裁判員制度で得をするのは、より高い有罪率と厳罰を見込める検察庁ということにならないことを祈るばかりです。

<小沢代表>「辞めるべきだ」57% 民主、支持率も下落
3月7日20時33分配信 毎日新聞

毎日新聞は6、7両日、電話による全国世論調査を実施した。民主党の小沢一郎代表の資金管理団体を巡る政治資金規正法違反事件を受け、小沢氏が代表を辞めるべきかどうかを聞いたところ、「辞めるべきだ」が57%で、「辞める必要はない」の33%を上回った。事件に関する小沢氏の説明に対しては、「納得できる」12%、「納得できない」79%。このほか、政党支持率で民主党が2月の前回調査比7ポイント減の22%で、2ポイント増の自民党と同率になるなど、民主党に厳しい数字が並ぶ結果となった。

 「麻生太郎首相と小沢氏のどちらが首相にふさわしいか」との質問への回答は、小沢氏が12ポイント減の13%で、ほぼ半減。麻生首相は2ポイント増の10%、「どちらもふさわしくない」は12ポイント増の73%だった。

 この質問は昨年9月の麻生内閣発足以来続けており、当初は麻生首相が42%、小沢氏が19%だったが、首相の発言のぶれなどを受けて昨年12月に小沢氏が逆転。前回は小沢氏がリードを17ポイントに広げていたが、今回は3ポイントまで縮まった。

 「次の衆院選で自民党と民主党のどちらに勝ってほしいか」との質問への回答は、自民が7ポイント増の29%、民主が11ポイント減の40%だった。「今、衆院選が実施されるとしたら、比例代表でどの政党に投票するか」は、自民が2ポイント減の20%、民主が8ポイント減の28%。

 いずれも依然、民主党が上回ったものの、広がる傾向にあった両党の差が縮まった。「今回の事件を次期衆院選の投票の判断材料にするかどうか」への回答は、「する」が43%、「しない」が51%。判断材料とする層の「民主離れ」が進んだとみられる。

 四者択一で質問した「衆院解散・総選挙をいつ行うべきか」への回答は(1)「09年度予算成立後の4月ごろ」33%(2)「直ちに行うべきだ」30%(3)「任期いっぱいまで必要ない」18%(4)「今年夏ごろ」11%--の順だった。

 一方、麻生内閣の支持率は前回比5ポイント増の16%、不支持率は7ポイント減の66%。支持率は発足以来初めて上昇したが、低い水準にとどまった。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090307-00000077-mai-pol

なお、時期的にも面白そうなイベントを見つけました。参加メンバーもメディアでおなじみの人々ですね。こうした人が検察権力批判を始めたことは、良し悪しは別にして、今後司法への風当たりが強くなる気がします。

興味のある方は、下記のリンクから日時や申込方法がわかります。3月15日日曜日に開催するようです。

青年将校化する東京地検特捜部~小沢第一秘書逮捕にみる検察の暴走~」
■講師  魚住昭
佐藤優
鈴木宗男(衆議院議員/新党大地代表)
田原総一朗
永野義一(弁護士/元東京地検特捜部副部長・元最高検検事)
平野貞夫 (元参議院議員)
宮崎学
■コーディネーター 二木啓孝
■主催 フォーラム神保町
■会場
毎日ホール 毎日新聞東京本社 地下1階(東京都千代田区一ツ橋1-1-1、地下鉄東西線・竹橋駅)

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