ゲーツ発言で思いだした三国志のエピソード
このゲーツ発言を聞いた時に、私は三国志のあるエピソードを思い出した。
映画「レッド・クリフ」で、三国志が注目を浴びているが、三国志の歴史の中で、あまり目立たないが張昭という人物がいる。
この人物は呉の政治家で、赤壁の戦いでは、呉の君主である孫権に降伏するように進言するため、あまり良いイメージを持っている人は少ないだろう。
この張昭のエピソードをゲーツ発言を聞いて思い浮かべたわけだから、少しマニアックなのかもしれないが、お付き合いいただきたい。
詳しくない方のために多少説明を入れながら、どういうエピソードか紹介すると、三国志というのは、魏・呉・蜀に中国が分裂した戦国時代の話なのであるが、曹操という覇道をいく武将が率いた大国魏に対して、孫堅、孫策、孫権という一族が率いた呉と、三国志演義のヒーローである劉備玄徳が率いた蜀が赤壁の戦いで協力し、大国魏を返り討ちにする話がレッド・クリフで描かれている。
その呉の政治家、張昭は、内政での指導力に秀でており、孫策が死亡するときには、「孫権を頼む。もし孫権が指導者として適任でなければ、お前が代わってくれ」と言われるほど信頼を得ていた人物である。
そして、本題である私が思い出したエピソードというのは、赤壁の戦い後の話であるが、魏の曹操の息子である、曹丕により、孫権が呉王という形式的には、魏の家臣という地位に任ぜられたとき、魏の使者である刑貞が、車から下りずに、迎えた孫権に対応した姿をみて、張昭は「江東には一寸の刃もないと思っているのか」と怒鳴りつけたエピソードである。
張昭と言う人物は、戦争を嫌っており、赤壁の戦いのときも負けが目に見えているとして、降伏を進言したような人物である。しかし、そのような思想的に穏健派であった人物も、自分の国を侮辱するような態度には、堪忍袋の緒が切れたのだろう。
私は、アメリカ政府が、日米同盟に対し危機感がゼロのように感じる。つまり、常に日本は防衛の問題についてアメリカに歯向かうことはないと思っているようである。ゲーツ発言もそういう認識の下でなされたのであろう。
しかし、北朝鮮のミサイルの問題は日本にとっては、危機的な問題である。あれが衛星だと信じるのはよっぽどのお人好ししかない。日本のメディアは上っ面の報道しかしていないが、この問題は戦争にすら至る危険のある重大な防衛の問題である。
そして、日本の防衛に対し、日米安全保障条約を締結し、ミサイル防衛システムを共同開発・共同運用している同盟国のアメリカの国防長官が無責任な発言をしているわけである。
つまり、アメリカが標的でなく、日本が標的なら我々は関知しないとでも言っているような発言ではないだろうか。
これは、明らかに同盟国の危機状況を軽視した無責任な発言であり、アメリカは日本に何を言っても従うとたかをくくっているとしか思えない。
私としては、「日本はいくじなしで。日本には一寸の刃もないと思っているのか」と言いたくなるわけである。
アメリカ軍移転の膨大な費用を日本に負担させようとアメリカ政府はしているが、このような無責任な発言をする国防長官が率いるアメリカ軍を今後も信用できるであろうか。いつまでも、日米安全保障条約がそのままの形であると思うなよと言いたくなる。
しかし、他方で、張昭のように、いざというときには気骨のある姿を見せる政治家は今の日本に果たしているのだろうかと不安にも思う。
米標的でなければ迎撃せず=北ミサイルで慎重姿勢-ゲーツ長官
3月30日0時5分配信 時事通信【ワシントン29日時事】ゲーツ米国防長官は29日、FOXテレビの番組で、北朝鮮が発射を予告した弾道ミサイルとみられる「人工衛星」について、「ハワイに向かって来るようなら(迎撃を)検討するが、現時点でそのような計画があるとは思わない」と述べ、米国の領域を標的としたものでない限り、米軍がミサイル防衛(MD)で迎撃することはないとの見解を示した。
ゲーツ長官が迎撃に慎重姿勢を示したのは、発射予告期間(4月4~8日)を目前に控え、北朝鮮側への刺激を避け、自制を促す狙いがあるとみられる。
同長官は、ミサイルとみられる物体が既に発射台に設置されたことから、「多分発射するだろう」と述べる一方、アラスカや西海岸など米本土に到達し得る大陸間弾道ミサイルではないとの見方を示した。また、北朝鮮が現時点でミサイルに核弾頭を搭載できる能力を持っている可能性は低いと指摘した。
日本による迎撃に関しては、「もしミサイルが失敗して、破片が日本に落下するようなら、彼らは行動を取ると言っている」と述べた。
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