民法改正って本当に必要なのか?
民法の債権法部分を改正しようという動きがある。
本来、こうした法改正をする場合は、法務省や官邸で審議会ができるはずだが、なぜか商事法務という社団法人が主体になっている。
しかも、構成員のほとんどが民法学者である。その改正の理念については、一般人にもわかりやすい民法と作るということらしい。あるところの話によれば、現在の民法の1044条から、数千条にまでしようということらしい。
民法の会社法化?という気がしてならない。
ただ、本当にそこまでする必要があるのだろうか。一般人にわかりやすい民法というが、なぜ国会議員による監視や関与を避けるかのように私的団体を装いながら、委員会と名乗り、かつ、構成員のほとんどが学者で占めているのか非常に疑問が多い。
ある種の権威主義の匂いすらする。つまり、会社法の改正は、官僚主導でやられてしまい、立法者意思が重視され、学者が入り込める余地がなく、会社法学者の権威は落ちて、痛い目を見たので、民法はそうさせまいというような意識で、改正を考えているのではないだろうかとふと疑問に思ってしまう。
民法がなぜ抜本的に改正されずに、判例の解釈や、一部の改正、特別法による対処で今まで来ているのかという歴史的重みをもう少し考えた方が良いのではないだろうか。
なにより、法学者のみでこうした議論が進んでいるあたりが恐ろしさを感じる。民法の運用に直接かかわっている実務家が関与しなければいけないはずである。
それこそ、事件は学者の机上の自己満足の範囲で生じているのではなく、現場で起こっているのであり、現場から改正の声が強くなっているのであれば格別、そうでないのであれば、そもそも議論の必要性すら危うい気がしてならない。
裁判員制度が施行されようとして、初めて世間は騒ぎだす。民法が学者に勝手に改正されてから騒ぎ出してももう遅いということを肝に銘じてこうした動きに注視すべきであろう。
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