内定取消をした会社が破綻
日本総合地所が会社更生法の適用を受けた。
都内に住んでいる人はよく見かけたと思うが、この企業のよくマンション販売のチラシが郵便ポストに入っていたことが思い出される。
内定取消の学生に対する補償金はすでに支払われているということなので、最後に上場企業としての最低限のモラルは示せたようだ。
ただ、私はこの企業の従来からの対応には強い疑問を感じている。この時期に会社更生法の適用を申請しなければならない状況にまで追い込まれていたのであれば、なぜもっと早い段階で採用を取りやめるとか、内々定を取り消すなどの措置ができなかったのだろうか。
いくら景気が急速に冷え込んだとしても、負債総額が2000億近くあり、昨年8月には同業者であるアーバインコーポレーションの倒産が明らかになっている以上、その時点で何らかの手は打てたはずではなかろうか。
以前の記事に書いたことがあるが、日本社会はどうしても、「新卒者の価値」を過大評価する。そのような状況にあることは、社長をはじめ人事部も知っていたはずだろう。安易な採用継続がどれほどの学生の悲劇を招くのか肝に銘じてほしいと思う。
他方、会社再生法の適用を申請した、札幌の丸井今井の方は、すでに内定を出している学生は予定通り採用するということである。自主再建を断念した点では、日本総合地所も丸井今井も共通するが、内定者への対応は大きく分かれたようである。
この時期になって破たんの知らせを聞かされた丸井今井の内定者の立場に立ったら、「もっと早くに教えてほしかった」など色々な不満はあるだろうが、少なくともこの時期に至ってから内定取消という暴挙に出なかったことだけは評価したい。
そして、内定取消の被害にあった人は、ぜひこの過去の記事を参考に、泣き寝入りせずにしかるべき対応を検討してもらいたいと切に願う。
なお、この記事で、「内定取消の問題が直接の原因ではない」とご丁寧に説明してくれている。この指摘がなければ、内定取消のせいだとでも読者が思うと懸念したのだろうか。53人に100万円だから、せいぜい5300万円の賠償金。こんなことで会社が倒産したと誤解する人がいたら、計算ができない人かよっぽどのおっちょこちょいだろう。
日本綜合地所が破綻 負債総額1970億円 今年最大
2月6日8時5分配信 産経新聞採用内定の取り消しが問題となったマンション分譲大手で東証1部上場の日本綜合地所は5日、会社更生手続きを東京地裁に申し立て、受理されたと発表した。負債総額は約1970億円。上場企業の倒産は今年6件目で、負債総額は最大となる。マンション販売の不振や金融危機の影響で資金繰りに行き詰まり、自力再建を断念した。東証は3月6日付で同社の株式を上場廃止にする。
同社は「ヴェレーナ」のブランドで首都圏を中心に分譲マンションを展開。欧州風の外観などで人気を集め、平成19年にはマンション供給戸数で首都圏2位、全国6位にランクインするまでに成長。20年3月期決算では過去最高益を達成していた。
しかし、景気の冷え込みによる販売不振で業績が悪化。昨年11月には社債の償還資金の調達が難しくなり、この時は銀行に担保を差し入れて融資を受け、何とか乗り切ったが、その後、銀行などの融資姿勢が一段と厳しくなったという。この結果、2月上旬に期限が来る建築代金の支払いが不可能になり、更生法申請を余儀なくされた。
同社は昨年11月に業績悪化を理由に採用内定者53人の取り消しを決定。その後、批判が高まったことなどを受け、12月に1人当たり100万円の補償金を支払うことを決めた。
5日記者会見した西丸誠社長は「金融情勢の変化は想像以上だった」と述べた。同社によると、補償金の支払いはすでに済んでいるという。また、内定取り消し問題が倒産の直接の原因ではないとしている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090206-00000085-san-soci
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