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12/14/2008

内定取消と労働者保護

以前も内定取消について書きましたが、日本総合地所が補償金100万円を支払ったそうです。

「内定取り消し」日本綜合地所が初の説明会、学生から怒りの声

12月13日20時41分配信 読売新聞

 マンション分譲大手「日本綜合地所」(東京都港区)が景気悪化を理由に来春採用予定の大学生53人全員の内定を取り消した問題で、同社は13日、取り消し者に向けた初めての説明会を本社で開いた。

 西丸誠社長は「家族として皆さんを迎えるつもりだったが、申し訳ない」と謝罪したが、学生たちからは「納得できない」と改めて怒りの声が聞かれた。

 この日は53人のうち31人が出席。10月1日に内定式を開いたばかりの会場で、西丸社長は「10月中旬以降にマンションの契約数が激減し、経営の先行きが不透明になったため」などと、急な取り消しについて釈明したという。

 学生たちは同社から補償金100万円を受け取ることになったが、不満は収まらない。

 建築専攻の男子学生(22)は「不動産業界では新卒の求人受け付けがほとんど終わっている。今は職種を選ばず履歴書を送っているが、こだわりを捨てていいものかと迷っている」と不安を口にした。

 関西の大学に通う男子学生(22)は「来年4月から働きたいが、間に合わないかも」と肩を落とした。補償金については「お金をもらっても、就職が決まるわけではないから」とやりきれない表情を浮かべた。

ブログが変わったので再度説明します。

内定取消がなされた場合、学生としては、①従業員たる地位の確認請求や②損害賠償請求、③入社式がある4月1日を過ぎた場合は、賃金支払い請求をすることが考えられます。

一般的に内定の法的性質は、実体が多様なので、事案に即して個別的に判断する必要がありますが、通常の日本における内定の場合は、内定通知のほかに労働契約締結のための特段の意思表示を必要としない場合が多いため、内定通知により、解約権留保の労働契約が成立している考えられます。

つまり、企業の求人広告が「申込の誘引」であり、これに対し、学生がエントリーすることが「申込」に当たり、内定通知が「承諾」に当たるため、承諾たる内定通知が発せられた時点で契約が成立する(民526条1項)ということです。

したがって、内定の取消しというのは、この留保された解約権の行使ということになりますが、この行使は、解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当と是認できる場合に限り認められ、それに違反があれば、解約権の権利濫用(労働契約法3条5項)となります。

解約権の行使が認められる具体的な場合としては、①内定後の事情の変更や②内定通知当時知ることが期待できなかった新事実が判明し、取り消すことが合理的と言える理由がある場合などに限られます。

経営の悪化を理由とする取消の場合、内定後の事情の変更を根拠として解約権の行使が正当であることを会社側は主張することになります。

正当かどうかは、(a)人員削減の必要性や、(b)取り消しを回避するために会社がどのような措置を尽くしてきたか、(c)取り消し対象者の選定基準に合理性があるか、(d)内定者との協議はあったのかなどの要素*を丁寧に検討し、解約権の権利濫用に当たるかどうかが判断されることとなります。

10月1日の内定式直前まで、何も知らせずに、その後に一方的に内定を取り消したような場合は、解約権の権利濫用として、取り消しが違法・無効となり、その結果、雇用契約が存続し、4月1日の入社となる基準日を超えていれば、実際に学生が社員として働いていなくても、賃料請求権も発生し、会社側はそれを支払わなければなりません(民536条2項)。

もっとも、その間に別の会社に勤めていたような場合は、中間収入が認められるため、副業的なものでない限り、民法536条2項後段の償還の対象となり、一定限度(4割程度)控除される可能性があります。

なお、企業は、従業員たる地位の確認請求や賃金支払い請求だけを受けるわけではありません。もちろん、こんな会社には働きたくないと思う人もでてくるでしょう。

そうなると、企業は、民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求(この場合の被侵害利益は、当該企業で働く期待権や将来の賃金債権の侵害など)や労働契約の成立を前提にそれを不当に破棄されたということで、415条の債務不履行責任に基づく損害賠償請求訴訟を受ける可能性があります。

会社にとっても、訴訟が長引けば、訴訟費用はもちろん、イメージダウンにもつながります。安易な判断での内定取消にはかなりのリスクがあることを会社側は認識した方がいいでしょう。

内定取消による学生の不利益は甚大です。仮に、このブログを読んだ方の身近に内定取消の被害にあわれた方がいらしたら、泣き寝入りせず、とりあえず各都道府県にある厚生省の労働局の相談窓口に相談してみることをお勧めします。また、各弁護士会の主催する無料法律相談なども活用されると良いでしょう。

・東京労働局 
http://www.roudoukyoku.go.jp/advise/index.html

・その他の地域の労働局のリンク
http://dir.yahoo.co.jp/Government/Agencies/Executive_Branch/Ministry_of_Health/Labor_Standards_Bureau/?frc=wsrp_jp0011

なお、詳しくどのような法的保護を労働者が受けられるのか知りたい方は、書籍紹介にもある以下の本が、平易で信頼できる記述なので、参考になると思います。

*要件として4つの事情を考慮するのか、要素として考えるのかという議論がありますが、現在は、要素として総合考慮しようという要素説が裁判例(名古屋高判平成18年1月17日、東京地判平成17年2月23日など)で増加しています。
学説上もこれら4つの点を要素と考えることを前提に、1つでも欠ける場合は特段の事情がない限り無効と考えるべきという見解が現在では有力なようです。
したがって、ブログでも要素説にたった説明をしています。

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