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12/31/2008

文明の衝突の著者サミュエル・ハンティントン氏が逝去

文明の衝突でしられる、サミュエルハンティントン氏が亡くなられたそうだ。かつて、国際政治などを勉強したことがある私にとっては衝撃的なことだった。

2008122800000020maipsociview000_2同氏の著書である『文明の衝突』には、批判の声もあれば、肯定的な意見もある。しかし、彼の著書が革命的な議論を巻き起こしたことは事実であり、貴重な著書であったと思う。

文明の違いからくる衝突という視点から国際政治をひも解いたのは斬新であったし、それ以前には、体系的にそうした視点を説明した著書は珍しく、国際政治を学んだ者のほぼすべての人間がハンティントン氏の思想に触れたといっても過言ではないだろう。

同氏の『文明の衝突』理論に対する個人的な評価であるが、総論としては、外交や国際政治を文明という大枠で整理した点については、とても重要な業績だと思うし、その部分についてはとても評価している。また、国際的な対立軸が冷戦後は文明の違いによるものに変わったという整理は正しいと思う。

ただ、各論に当たる各文明の理解には、ややハンティントン氏の知識的な限界があるようにも感じていた。

というのも、もちろん、8つに分けられた文明の1つである日本文明に対する誤解があると思うことである。まず、同氏は日本が中国文明のHybrid(雑種・混合)という説明をしている。しかし、これは日本の開国・文明開化以前の歴史に基づいており、近代および現代の日本(どっぷり西洋文化に使った生活スタイルと思想への影響)を正確にはとらえていない。

また、日本が物質的な国力増強のための外交戦略を重視しており、日米同盟を破棄して、中国との同盟があるだろうという予測をしている。しかし、これについても、バブル崩壊以降の日本の唯物主義への反省と、スローフードやスローライフに代表される精神的な充足感への転換、さらには、会社への帰属意識の低下、企業の人材軽視の動きなどをとらえきれていない。そして、日本社会が西洋的な民主主義・自由主義思想に独占されていることへの分析を欠いていたように思える。

ましてや、中国との同盟はありえない。最近の食品偽装問題ではっきりしたが、明らかな民度の違いがある。食の安全が当たり前の日本と、毒餃子や毒ミルクが流通する中国とでは、文明的な意識の差がある。さらに、反日教育がなされている中国とそれを知っている日本とでは真の相互理解には相当な軋轢がある。

例えば、中国が南京大学殺の話を持ち出すたびに、日本人の多くは、嫌な気持ちになる。中国国民は「反省」を日本に対して促すが、我々は「もっと建設的な話をすべき」と考え、「どうして中国は過去の日本の間違いばかり指摘して将来を見ないのか」と思う。

他方、原爆投下の問題について、通常の日本人は「原爆投下は残酷な惨事をもたらした。絶対に繰り返すべきではない」と考えても、アメリカ政府に対して、「原爆を落としたことの責任を取れ」と運動を起こしたり、ましてや、大使館やアメリカ関連施設に対する暴動行為を起こすことはない(もっとも、一部の左翼的思想で活動されている方の中にはそういう方もいるかもしれないが)。

そして、仮にアメリカの国力が落ち、仮に日米同盟の危機にいたっても、日本は中国と手を組もうとはしないだろう。むしろ、イギリス、ドイツ、フランスなど欧州やオーストラリア、ニュージーランド、カナダなどやはり西洋文明国との連携強化を模索すると思う。現に、保守の代表格である安倍元総理もオーストラリアとの軍事的連携を模索していたといわれている。

つまり、現代の一般的な日本人にとっては、欧米文明に対する親しみや安心感の方が強く、中国文明に対する警戒感の方が大きい。こうした日本人の心理をハンティントン氏は読み切れていなかったと思う。

他方で、私はイスラム文明と西欧文明との衝突という点の説明はなかなか鋭いと感じている。イスラム文明はどうしても特異な部分があり、西欧文明や日本文明からは理解しがたいことが多い。

例えば、1991年に起きた悪魔の詩事件は、イスラム文明が理解しがたい宗教観に成り立っていることを世界に知らしめたと思う。日本でも、翻訳者の五十嵐一が刺殺され、2006年に時効が成立したことなどは記憶に新しい。

仮に、イスラム関係者の犯行であったとするならば、自分たちの宗教に批判的な文書を翻訳したから殺すという思想は到底理解できないし、理解する必要もないと考えるのが、民主主義・自由主義の精神に立脚した欧米社会および日本社会であるといえるだろう。

その意味で、イスラム文明と西洋文明には本質的に相互理解の障壁が存在するという同氏の指摘は正しいだろう。

いずれにしても、ハンティントン氏の業績は国際政治学の発展において重要な役割をになっていたと言っても過言ではないだろう。

「文明の衝突」ハンチントン氏が死去 宗教・文化の対立“予言”世界で論争
12月29日8時3分配信 産経新聞

 【ニューヨーク=長戸雅子】冷戦終結後の世界での宗教や文化による対立を警告した著書、「文明の衝突」で知られる米国を代表する政治学者、サミュエル・ハンチントン氏が24日にマサチューセッツ州マーサズ・ビンヤードの介護施設で亡くなっていたことが、27日、明らかになった。81歳だった。ハンチントン氏が58年間、教鞭(きょうべん)をとっていたハーバード大学が同大サイトで発表した。死因は明らかにされていない。

 冷戦終結後の1993年に米外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」で発表した論文をもとに96年に出版した「文明の衝突」で、世界の紛争はイデオロギーから文化や宗教の違いによる対立を要因とするようになると指摘。米国を含む西欧やイスラム、日本、中国など世界は8つの文明圏に分かれ、相互の争いや対立は不可避になると論じ、世界的な注目を集めた。

 とくに2001年の米中枢同時テロ後は、イスラム諸国と西欧との関係をめぐって米国内で幅広い論争を引き起こした。

 また、04年の著作「分断されるアメリカ」では、メキシコからの大量の移民が米国の伝統やアイデンティティーに危機をもたらす恐れを予測し、こちらも論議を呼んだ。

 1927年、ニューヨーク市生まれ。飛び級で18歳でエール大学を卒業した。ハーバード大学で50年から2007年まで教職についていたほか、1977~78年に民主党のカーター政権で国家安全保障会議のメンバーも務めた。共著を含め17の著作、90以上の学術論文がある。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081229-00000062-san-int

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